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【連載】テラシマユウカの「それでも映画は、素晴らしい。」Vol.3『そこのみにて光輝く』

StoryWriter

人からの理解はどのくらい得られる物であるのでしょうか。

皆さんはどう思いますか?

人に自分の事を理解してもらったり、
自分が人の事を理解したり、、

とってもとっても難しい。

人からの理解って100%を得ることは不可能なのではないかと思います。

言葉にはきちんと意味があるのに、人によってそれぞれ捉え方は違います。

自分の繊細な気持ちを言葉で表すのなんて、細かいことを言ってしまえば、言葉=感情になる事は少なく、せいぜい言葉≒感情くらいにしかなりません。

それでも、人からの理解って欲しい。

SNSを通すと更に理解を求める事は難しくなってしまいます。

大勢が面白がっている事でも、裏で傷付いてる人がいたり。伝えたい気持ちを抽象的な表現にしてしまって裏に隠された思いが無いものになったり、別解釈をされたり。

なんでもかんでもSNSのご時世、メディア上の表現がだんだんと日常生活に浸食してきていて、線引きがなくなった世界に”真の理解者”を求めるのは果たして可能なのでしょうか……?

そんなキリのないことはさておき。

* * * * * * * * *

多くは語らずとも自然と惹き合わされた、そんな理解者に少し羨ましくなりつつも報われず切ない。

そんなGANG PARADE、ココ・パーティン・ココのおすすめ映画をご紹介します!

Vol.3『そこのみにて光輝く』

 

仕事を辞めて何もせずに生活していた達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で気が荒いもののフレンドリーな青年、拓児(菅田将暉)と出会う。拓児の住むバラックには、寝たきりの父親、かいがいしく世話をする母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫と千夏は互いに思い合うようになり、ついに二人は結ばれる。ところがある日、達夫は千夏の衝撃的な事実を知り……。

ひたすらに重い、救いのない話でした。

ココは上映当時、3回観に行ったそうです。

個人的に邦画の方が感情移入しやすく、基本邦画ばかり観ているのですが、ここ最近は不思議と洋画を観ることが多かったので久しぶりに感情移入し、気持ちがズシンときました。

モントリオール世界映画祭の最優秀監督賞など様々な映画賞を受賞し、高い評価を得た作品ともあり想像以上に見応えがありました。

80年代の函館を舞台とし、社会の底辺でもがきながらも互いに惹かれ合う、妙に生々しい人間の姿が描かれています。

『万引き家族』を観たときにも感じた様な感覚がありました。

拓児達が住む家のセットひとつひとつに、底辺の生活感が染み付きリアリティに満ちている。

こういった貧困をテーマにした作品にある言い様のない暗く濁った空気は、特に”家”というものが綿密に作り込まれていることが重要で、そこで生活しているかのような雰囲気があってこそ、極々自然に醸し出されるのだと思います。

達夫役、綾野剛さんは出会った瞬間から千夏に惹かれますが、口数は少なく、分かりやすい愛を伝える言葉もない。けれども、千夏に対する湧き出る想いを、静かに”間”で語るかのようにビシビシと刺さるように伝えてくる。

千夏役、池脇千鶴さんは不幸で悲哀に満ちているけれど、どこか色気と哀愁が漂っており、絶妙な身体の肉付きにドキドキさせられ、ただの後ろ姿でも目が離せなくなってしまったり。説明なくとも達夫が一目で惹かれるのが分かります。

とにかくこの映画では役柄の説得力が本当に本当に素晴らしすぎる。

そして菅田将暉さんは主演ではないものの、この作品において1番のキーマンなのではないかと思います。バカでろくでもないけどほっとけなくて憎めなくてどうしようもなく可愛い。そんな拓児という存在が大きかったです。

社会からドロップアウトした救いの無い底に生きる人間。現実世界ではあり得ない程、残酷なまでに美しく描かれると皮肉でどうしようもなく苦しい。

『そこのみにて光輝く』

タイトルとストーリーを照らし合わせても、そういうことね。とはならず素直に完結できずに、思わず自分に問いかけてしまいます。

“そこ”とは一体何だったのか?

タイトルに込められた意図とは。
光輝く”そこ”は果たして存在するのか。
存在したとして”そこ”は何処なのか。
“そこ”が例え底にあっても光輝くのか。
はたまた底でしか輝けないのか。
どん底まで落ちたからこそ光があるのか。

なんだかゲシュタルト崩壊しそうですね。

“そこ”に込められた意図は無限に解釈できますが、千夏にとって達夫は光であり、達夫にとっても千夏は光であった。

それだけは間違いのない事実だと思います。

そして、自らが追い求め続ければ、誰にも必ず光輝ける場所が存在すると信じています。

しょうもない言葉で薄っぺらいたわむれをしている人が多いと感じてしまうこの頃、人と人との関係性や、惹かれ合う感情が言葉ではないもので感じ取れる作品に、存分に魅力を感じる事が出来ます。

言葉が無くとも通じ合える人に出会いたいと切に願っています。

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次回はいつも楽曲制作をして頂いている、SCRAMBLESの沖悠央さんオススメの映画をご紹介します!

また来週〜。

 

※「それでも映画は、素晴らしい。」は毎週火曜日更新予定です。

【連載】Vol.1『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』(推薦者:テラシマユウカ)
【連載】Vol.2『ライフ・アクアティック』(推薦者:渡辺淳之介)

テラシマユウカ


2014年に結成され、現在9人組として活動中のアイドル・グループGANG PARADEのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

テラシマユウカ Twitter

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