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【連載】テラシマユウカの「それでも映画は、素晴らしい。」Vol.5『ライフ・イズ・ビューティフル』

StoryWriter

今、幸せですか?

幸せです!
って自信持って言えたら幸せですよね。

人間みんな幸せになりたいし、どうせなら自分だけ幸せになろうとするのではなく、みんなでせーので幸せになれたらいいのに…… なんて思います。

今回ご紹介する映画を鑑賞し終わってから”愛と幸せ”について考えさせられています。

恋は盲目と言いますが、愛は盲目では成り立たないと思っています。

言葉は人を守るものであり、そして凶器にもなり得る。盲目になってしまえばどんな言葉ですら疑いなく全肯定してしまうため、大変に危険です。

盲目な独りよがりでは、何も見えないまま幸せを掴みきれないのかもしれません。

言葉を取捨選択し、見定める必要がある。

幸せは何もしなくても勝手に降ってくるものではありません。

人に愛を向け、目を向け、幸せに暮らす少しの工夫を見つけて行きたいですね。

* * * * * * * * *

ということで今週は、愛に溢れたこちらの映画をご紹介します。

GANG PARADE マネージャー、辻山さんのオスス映画です。

Vol.5『ライフ・イズ・ビューティフル』

 

【以下、ネタバレを含みます。】

これは、私の物語である

第二次世界大戦前夜の1939年、ユダヤ系イタリア人のグイドは、叔父を頼りに友人とともに北イタリアの田舎町にやってきた。陽気な性格の彼は、小学校の教師ドーラに一目惚れし、桁外れなアタックの末に駆落ち同然で結婚して、愛息ジョズエをもうける。

やがて戦時色は次第に濃くなり、ユダヤ人に対する迫害行為が行われる。北イタリアに駐留してきたナチス・ドイツによって、3人は強制収容所に送られてしまう。

母と引き離され不安がるジョズエに対しグイドは嘘をつく。「これはゲームなんだ。泣いたり、ママに会いたがったりしたら減点。いい子にしていれば点数がもらえて、1000点たまったら勝ち。勝ったら、本物の戦車に乗っておうちに帰れるんだ」。絶望的な収容所の生活も、グイドの弁術にかかれば楽しいゲームに様変わりし、また、周囲の子供たちと引き離されてしまった父親たちの助けや、「シャワーの日(実際には毒ガスで殺害する日)」にジョズエがシャワーを嫌って父の言うことを聞かずベッドに隠れた運の良さから助かり、ジョズエは希望を失うことなく生き延びることができた。

戦争が終わりナチスが撤退する最中ジョズエとグイドは逃げようとする。しかしドーラを探す最中にグイドは見つかってしまう。ゴミ箱の中に隠れていたジョズエを怖がらせないように、グイドはジョズエにウインクし、背中に銃を突きつけられてもまるで喜劇の主人公のようにジョズエの前を戯けて通りすぎる。グイドは最後の憂さ晴らしにとナチスの兵士にジョズエの見えないところで銃殺されてしまった。

ナチスの撤退後、朝を迎え、誰もいなくなったのを見計らいジョズエがゴミ箱からトボトボと出てくる。すると父が言った通り、砂埃からゲームの「シナリオ」通り「1000点取ったら戦車で家に帰れる」と言うように、収容所に連合軍の戦車が現われ、若い兵士がジョズエを戦車に乗せた。若い兵士がジョズエを抱き抱え自らのヘルメットをかぶせ、お菓子を与えながら外を見ていると、ジョズエは母を見つけ、再会する。何も知らない母に「僕たちはゲームに勝ったよ!」と告げると母はジョズエにキスしながら「そうよ 本当に勝ったのよ」とジョズエを褒め讃えた。 成長したジョズエは父が命を捧げて贈り物をしてくれた、「これが私の物語である」と、物語を終えるのだった。

ユダヤ人迫害という重い題材にも関わらず、笑いあり涙ありのなんだかほっと心が温かくなるような作品でした。

『ライフ・イズ・ビューティフル』というタイトルはロシアの革命家レフ・トロツキーがヨシフ・スターリンからの暗殺者に脅えながらも残した「人生は美しい」という言葉にちなんでつけられています。

グイド役ロベルト・ベニーニは監督と脚本も手がけており、そしてドーラ役ニコレッタ・ブラスキとは実際も夫婦の関係だそうです。

なぜナチスがユダヤ人を差別し迫害していたのか興味があった小学生の頃、図書室でアンネ・フランクの「アンネの日記」やユダヤ人迫害についての本や歴史漫画を読み漁ったのをこの作品を観て思い出しました。

この作品で驚いたのは、開始1時間ずっとグイドとドーラの出会いがまったりと描かれていたことです。

ストーリー進行が遅いとぐだってしまいそうですが、イタリア語はとても耳触りがよく、リズム感の良い音として聞くことができ、会話のテンポを感じ取れたのでただの日常的なシーンが続くのも私は好きでした。

グイドのドーラへのアタックの仕方がユーモア満点でとても愛おしく、むしろそれだけで誰も傷つかず幸せに暮らしていけたらいいのにな〜、なんて考えてしまいます。

グイドは、過酷な状況や時代に置かれても楽しく陽気に生きていました。

強制収容所にいながらも、全てをゲームに変換させて息子に恐怖を感じさせず、最後の最後まで明るく生きた彼は、息子に人生を美しくする意味とそのヒントを与えたと思います。

そしてグイドの底抜けな明るさによって見落としてしまいそうになりますが、戦争の恐ろしさもひしひしと伝わってきます。

結果的にグイドは射殺されてしまいますがその悲しみに暮れることなく、彼の人間性があったからか不思議とスッキリとした後味が残りました。

最後に父親の優しい嘘が実現し、息子ジョズエが戦車に乗り込むシーンでは思わず母親のような気持ちになってしまいます。

壮大な結末が待っている訳でもなく、特にハッピーエンドな訳でもないですが、これで良かったと思わせてくれます。

人間は上手くいかなかったり、辛いことが起きた時に、周りのせいにしてしまいがちかもしれません。

ですが、本当に人生を美しく幸せに味付けするのは、時代でも環境でもなく”自分自身”であると、この映画を通してグイドが教えてくれました。

彼の様にユーモアとハッピーで生きることができたら、なんて素敵なんでしょう。

* * * * * * * * *

次週は、花柄ランタンのぷきちゃんオススメ映画をご紹介します。

それでは、また来週

※「それでも映画は、素晴らしい。」は毎週火曜日更新予定です。

【連載】Vol.1『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』(推薦者:テラシマユウカ)
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【連載】Vol.4『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(推薦者:沖悠央/SCRAMBLES )

テラシマユウカ


2014年に結成され、現在9人組として活動中のアイドル・グループGANG PARADEのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。

テラシマユウカ Twitter

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