ゴールデンウィーク、いかがお過ごしでしたでしょうか。
色々な所へ旅行へ行ったり、家でごろごろ過ごしたり。どんな過ごし方でも終わってしまうと恋しくて仕方なくなる。
私は有難いことに、水戸→博多→大分→広島→名古屋→新潟→東京という全国を駆け回るというゴールデンウィークを過ごしました。
これだけ色々な所へ次々と行くと、朝パッと目覚めた時に自分が日本のどこにいるか分からなくなったりします。
5月は体調を崩しやすいので適度に頑張り過ぎず、健やかに過ごせたらいいですね。
GANG PARADEは今月に野音ワンマンツアーを控えており、5/19には私の地元大阪でワンマンライブがありますのでちょっとした息抜きに、良かったら遊びに来てください。
5/19大阪城野外音楽堂
https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=1900786&rlsCd=001
GWが明けていつもの日常という現実に目を逸らしたくなる、そんな時は映画でもいかがでしょうか。
今週は私の父のオススメ映画をご紹介します!
Vol.25『クレイマー、クレイマー』
舞台はニューヨーク・マンハッタン。仕事熱心の会社員テッド・クレイマーは、家事と育児を妻のジョアンナ・クレイマーにすべて押しつけていた。ジョアンナは何か自分が打ち込める仕事をしたいと夫に相談を持ちかけるが、それに対してテッドは、夫が順調にキャリアを重ねて収入が増え、家族の生活にまったく不自由がないのに、何が不満かと言ってとりあわない。
やがて、ジョアンナはテッドに別れを告げてきた。はじめは冗談だと思っていたテッドだったが、翌日会社から自宅に電話をかけても誰も出ないことから初めてことの重大さに気づく。テッドの生活はその日から一変した。
テッドは5歳の息子ビリーと戸惑いながらも父子二人きりの生活を始める。息子の分まで朝食を作り、学校まで送った後、自らは急いでタクシーで会社へ向かう。ビリーのために作ったフレンチトーストは、最初のうちは真っ黒にしてしまっていた。順調に進んでいた会社の仕事も家まで持ち帰る羽目になり、かまってもらえない寂しさからビリーはその仕事を邪魔するかのように振舞う。そんな二人はまるで噛み合わず、とても父子とは思えないような有様であったが、次第に協力して一緒に生活することを自覚するようになり、時間とともに二人の絆は深まっていった。
ジョアンナが出奔してから1年半の間に、家事と育児に精を出すテッド。ビリーとの関係も以前よりも親密になった。そんなある日、すこし目を離した隙にビリーがジャングルジムから転落し大怪我を負ってしまう。そのうえ息子に気を取られ仕事に身が入らないテッドは、会社から解雇されてしまう。さらに、1年以上連絡のなかったジョアンナが、カルフォルニアへの出奔中に成立させた離婚で息子の養育権はテッドに渡すと認めたにも係らず、離婚時の取り決めを反故にすべく母性を盾に養育権の奪還を裁判所に申し立てた。弁護士に相談するも、失業中のテッドが養育権を勝ち取る見込みはほとんどない。
テッドは慌てて就職活動をし、裁判前にようやく仕事にありつけたが、以前の勤務先より遥かに給与は少なく、手に職を得たジョアンナの方が収入は多かった。また、それまで仕事ばかりで家庭を顧みなかったというジョアンナの主張に反論できず、テッドは裁判で苦戦を強いられた。
不毛な裁判「クレイマー対クレイマー離婚事件」で、結局テッドは「子の最良の利益(best interest of the child)」の原則により敗訴する。結局ビリーの養育権はジョアンナの手に渡ることとなり、ビリーの存在が生きがいであったテッドは悲嘆に暮れる。
やがて、養育権者への引渡しの時が来た。ビリーをジョアンナに引き渡す日の朝、テッドは最初のころこそうまくつくれなかったフレンチトーストを難なくつくり上げ、ビリーと二人で最後の朝食をとった。ジョアンナが来るのを待つ二人であったがジョアンナからの電話でテッドが階下に降りると彼女は思いつめたかのように呟く。「ビリーのためを思えば連れていくのはよくない。彼の家はここよ。上に行ってビリーと話してもいい?」。二人は、法廷での虚虚実実の応酬を忘れ、父子のアパートの1階で感極まって抱擁する。エレベーターに乗り込むジョアンナをテッドは見守った。
テッドの妻であり、ビリーの母であるジョアンナが突然に家を出て行く所から始まります。
そして突然、子どもとまた暮らしたいと帰ってきたジョアンナは養育権を巡って裁判を起こします。
原題は「クレイマー(原告)対クレイマー(被告)の裁判」の意で同じ名前の人が争っている裁判、つまり離婚裁判のこと。
観終わった後にどうしようもなくフレンチトーストが食べたくなる。
ジョアンナが家出し、朝ごはんを作ることになったテッド。最初はコーヒーもまともに入れられずフレンチトーストは真っ黒焦げにしてしまいますが、気づけば最後には慣れた手つきに変わり、テッドの父親としての成長が分かりやすくフレンチトーストに表れています。そんなところが個人的に好きでした。
この映画で見逃してはいけない大きなポイントがありまして、男女平等であることや女性が子を持ちながらも社会で自立することについて強いメッセージ性が込められているという点です。
息子を置いて出て行ってしまったジョアンナを悪だと決めつけて観てはいけない、これが本当に重要!!!
ジョアンナは精神的に追い詰められて家を出てしまったと話しますが、あまりそういったシーンは描かれていなかったので同情の気持ちが生まれにくいところもあるかもしれません。ですが裁判によって始めて、仕事を辞めなければいけなかったことや、いつでも”母親”という存在でいなければならなかったことが語られます。これは現代の日本においてもとても大きな問題となっており、仕事と子育てと心のバランスを保つのが大変に困難になっています。
私が女性目線で観ていたというのもあるかもしれませんが、弁護士の「子どもを捨てて出て行ったのに母親面するな」という言葉にとても悲しくなりました。
子どもが産まれてから、父親が仕事に熱心に取り組んでいる中でジョアンナも子どもとずっと向き合ってきたはずです。想像つかないほどに大変であろう子育てをしてきたジョアンナに弁護士がかけた言葉はあまりにも冷たすぎるのではないかと思います。
ぱっと見、この映画は”子のため仕事も子育ても頑張る父親”の美しい物語として捉えられてしまいますが、その様な捉え方をしてしまっては無茶苦茶に勿体ない。その奥に隠された社会的問題に対する批判がうまく描写されている所がこの作品の素晴らしい点だと感じます。
“愛する子どもを自分の元へ置きたい”という気持ちで争われた親権問題でしたが、最後には”子どもの気持ちを考えるとこの家に居るべきだ”と思い直します。子どものことを本当に愛しているからこその結末だったのだと、胸を打たれました。
ここでは、夫婦が離婚するかしないかに関しては深く言及されていません。子どもの為によりを戻せばいいのに、と思ってしまう気持ちもありますが無理して再婚することが必ずしも子どもの幸せに繋がることには限らないという考えも見えます。
この作品では夫であるテッドの目線から家を出て行った妻について描かれていますが、逆に妻のジョアンナ目線で描かれた物語も観てみたいです。
互いに尊重し、互いの役目に感謝と深い理解をし合えるような人と結婚したい……。
『クレイマー、クレイマー』を、”父親”からオススメしてもらえて良かったと思いました。皆さん是非、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
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次回は、私が大好きな「LEBECCA boutique」のブランドディレクター、赤澤えるさんオススメの映画をご紹介します!
それでは、また来週。
※「それでも映画は、素晴らしい。」は毎週火曜日更新予定です。
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テラシマユウカ
2014年に結成され、現在9人組として活動中のアイドル・グループGANG PARADEのメンバー。2016年に行われた新生BiSの合宿オーディションに参加し、BiS公式ライバル・グループSiSのメンバーとして活動を始めるが、お披露目ライヴ直後にまさかのグループが活動休止。2016年10月にGANG PARADEへ電撃加入し、多くを語らない性格ながら強い意志と美学を持ってグループになくてはならない存在に。映画好きが高じて、StoryWriterにてテラシマユウカの映画コラム「それでも映画は、素晴らしい。」の連載スタート。