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【INTERVIEW&REPORT】台湾の若手ギターポップバンドDSPSに訊く「台湾インディーシーン」の現在

StoryWriter

「DSPS」という台湾のバンドを皆さんはご存知だろうか? 卓越したソングライティング能力とその爽やかなサウンドで人気を集めており、台湾各地でもフェスに出演している、台湾のインディーバンドシーンで台頭している若手ギターポップバンドである。

昨年リリースされたアルバム『時間的產物』は国内外で話題となり、今年3月に高雄で開催された〈MEGAPORT FESTIVAL〉では入場規制になるなど、正に飛ぶ鳥を落とす勢いのあるDSPSが、5月9日~12日まで〈DSPS LIVE in JAPAN 2019 spring〉と銘打った日本公演を行なった。5月9、10日はそれぞれ東京と名古屋で対バン公演、12日は静岡〈FUJI&SUN ‘19〉に出演し、日本でも活動を着実に大きくしつつある彼らのライヴ直前、StoryWriterで初の突撃インタビューを行い、彼らが語る台湾のインディシーンを訊いた。5月9日の東京公演@青山月見ル君想フでのライヴの様子とともにお届けする。

取材&文:エビナコウヘイ


──こんにちは。

メンバー一同:こんにちはー!

──私、初めてのインタビューという事で緊張しております(笑)。

メンバー一同:緊張しなくていいですよ(笑)。

──(笑)。ではまず、皆さんの自己紹介をしていただいてよろしいですか?

Ami:全員ですか? 私はボーカルのエイミです。

Teru:僕はギタリストのテルです。要するにあの〜… テルです(笑)。

左から、Ami、Teru

Andy:僕はベーシストのAndyです。

Chicken:僕はドラムのChickenです。

左から、Chicken、Andy

──チキン?

Ami:ニックネームがね(笑)。

──それって鳥の意味でのチキンですよね(笑)?

Ami:(笑)。そうです、私達はいつも彼のことを小雞(鳥ちゃん)って呼んでいるので(笑)。

──なるほど(笑)。では早速インタビューに入りますが、皆さんは今回日本でライヴするのは何回目ですか?

Ami:1、2… 4回目かな?

他メンバー:そうだね、4回目。

──前回最後に日本に来たのはいつでしたっけ? 前回日本に来た時と比べて、何かライヴに向けて違う感覚や感情はありますか?

Ami:最後にライヴに来たのは昨年末ですね。うーん、そうですね、この1年半くらいは大体半年に1回のペースで日本でライヴをしているので、来てくれるお客さんには何か毎回異なるものを与えたいと思ってます。新曲も用意してきたりしていますし。あと異なってきている部分は、演奏する上で細かく調整してきているってことですかね。

Chicken:更に今回のツアー期間は今までに比べて長めで、今までの公演は関東か関西で1回ずつという感じだったのですが、今回は3公演と公演数が前よりも多く、他県への移動もあって、まだ行った事がない場所にも行けるのでとても楽しみですね。

──今回のツアーは東京、静岡、名古屋の3か所を回られるんですよね?

Teru:そうです、静岡に行くのも初めてですし、日本の音楽フェスに出るのも初めてです。

 

──日本のバンドも結構お好きなんですよね? SUPERCARが特に好きだと伺いました。

Ami:そうです! SUPERCARはメンバー皆大好きなんですが、それぞれ日本の音楽が好きで色々聴いています。

──SUPERCARをはじめ、自分の好きなバンドがDSPSの音楽に与えた影響って大きいと思います?

Ami:そうですね、もちろん、たくさん日本のバンドの音楽を聴いてきました。でも、私達が自身のバンドの作曲をするにあたってどんな曲を作ろう! とか、どのバンドを参考にしようというのは全然話さなくて、自由に作り上げていこうっていう感じなんですよ。なので、毎回少しづつ異なる作品になってきていると思います。でも、日本のバンドもやはりたくさん聴きますし、好きなバンドや曲があったらメンバー内で共有したりしてますね。

──そうなんですね。ちなみに、SUPERCAR以外にはどんな日本のバンドを聴いたりするんですか?

Teru:皆それぞれ違うけど、例えばフィッシュマンズ、後はちょっと前だとオリジナルラブとか。田島貴男さんが好きですね。ちょっと古いやつがいい。

Chicken:僕は個人的にコーネリアスとかかな。

Ami:私も好きです!

Teru:僕も好き!

Chicken:(笑)。後はパンク系とかも好きで、10-FEETとかも結構聴いてて好きですね。

Ami:10-FEETは私も聴きますね。

Andy:僕は銀杏BOYZとか。

──色々とそれぞれ幅広く聴かれてるんですね! 台湾では日本のバンドって結構人気があるんですか?

Teru:我々は特に、メンバーそれぞれが普段から日本の音楽を好きで聴くことが多いですよね。新旧、老若問わず幅広く聴いてると思います。

Ami:私は台湾で日本の音楽がとても人気あると思いますよ。台湾人が日本の音楽から受けている影響っていうのはとても大きいと思います。

 

──そうなんですね。日本ではあまり台湾の音楽情報っていうのは、あまり入ってこないんですが、現在の台湾のインディーズロックシーンの状況っていうのは、日本と比べて一体どんな感じなんですか?

Ami:大きな違いといえば、台湾のインディーシーンっていうのは発展してきた時間が日本に比べてそんなに長いわけではないんです。なので、そういうインディーシーンのシステムはまだゆっくり成長している最中なんです。実は、ほとんど台湾のインディーズバンドっていうのはレーベルに所属していなくて、大部分のインディーズバンドは自分達の力だけでやっているような状況です。トップまで上り詰めて、ようやくレーベルと契約したり、レーベルと一緒に仕事ができる、もしくは自分でレーベルを立ち上げることができる感じなんです。そういう意味で、日本と台湾のインディーシーンの大きな違いっていうのは、そういったシステムがまだ整っていないという事ですかね、私が思うに。

Teru:システムがまだ完全にならないまま、僕達の第3世代になったわけです。

※編注 台湾では1989年に初のインディーズCDがリリースされてから、海外でも活躍し、台湾内でも国民的バンドとして名高い「五月天」がデビューする1997年までを第1代、そこからを第2代としており、ここ数年の台湾ロックの界隈で人気の「草東沒有派對」や「落日飛車」などが台頭してきた時期から第3代と称する見方。

Chicken:日本だったら比較的小さくてもたくさんレーベルがありますよね。地域によっては、地域に根付いたレーベルもあったりするし、それよりもっと大きなレーベルもありますよね。でも台湾の場合だと、さっきも言った通り、やはりそういったレーベルシステムが完全に整っているわけではないです。小さいレーベルは本当に小さい。だから、新しいバンドはきっと…成功してある程度の段階まで行きたいと思った時に、どこに行って何をしたらいいか分からないという事があると思います。次の段階に行くのにどうしたらいいか分からないかも。

Ami:あとは観客について言うと、私が思うに、日本では曲のスタイルや規模の大小に関わらず、各グループが各々の客層を持っていますよね。でも台湾のライヴの風景っていうのは、ほとんど同じ層のお客さんなんです。例えば、私達が日本でライヴを行う時、サラリーマンのような人もいれば、年配の方もいらっしゃいますよね。台湾では、インディーズ音楽の発展の時間がまだ長くはないという事もあってか、ライヴを観に来る人たちっていうのも、小さな違いはあっても、大体似たような雰囲気の人が多いなあっていう印象です。そういう意味では、日本ほどロック音楽を受け入れるような文化というものがまだ育っていないのかもしれませんね、私が思うに。

Chicken:日本では主流の音楽であるなしに関わらず、たとえニッチなジャンルであれ、支持してくれるファンはいますよね。でも台湾だと、比較的ニッチだったり、あまり主流ではない曲調だったりすると、お客さんの数が一気に少なくなったりするかもしれません。

Teru:きっと台湾の音楽リスナーっていうのはチキンが言ったような人もいるかもしれませんが、でも時期が異なれば流行る音楽も違いますよね、台湾でも以前はパンクやエモのようなロックが流行っていたけど、今はラップなどが流行ってますし。時期によって本当に違いますね。

Ami:まあでも日本もきっとそんな感じだよね。

Teru:そうかもね。

──確かにそうかもしれないですね。日本と台湾、レーベルなど音楽業界のシステムには多少差はあれど、流行とかは似通っているかもしれないですね。さて、最後なんですが、今日のライヴに向けて何か意気込みなどはありますか?

Ami:今回の日本でのライヴではまだ音源化していない新曲も用意してきました。更に、シャムキャッツとの対バンという事で彼らのある曲を中国語の歌詞にしてカバーしたりもしますのでお楽しみに!


このように、台湾のインディーズ音楽シーンの現状と、今回の日本公演への意気込みを語ってくれたDSPS。今回の東京公演は青山にあるライヴハウス「月見ル夜君想フ」でシャムキャッツとの2マンライヴであったが、当日は会場いっぱいの観衆が集まる程の盛況ぶりを見せた。

開演時間となった19時半に先ず姿を表したのは、シャムキャッツ。「lemon」や「このままがいいね」など洗練された爽やかな曲で会場を和やかな雰囲気に染めていき、それに応えるように、観客も身体を揺らしながら心地良さに溶け込んでいくような雰囲気に包まれた。MCでは、ギターボーカルの夏目知幸が「僕らが会場を92℃まで上げます、残りの8℃はDSPSが上げてくれるはずなので」とDSPSへの信頼感を寄せるような一言を残し、会場に心地良い余韻を残すようなライヴを行った。

セットチェンジの後は、DSPSがステージ上に登場した。

昨年にリリースされ、国内外で評価を得たデビューアルバム『時間的產物』収録の楽曲をメインに行った。

1曲目の「19歲的秋天之歌(Fall song of 19 years old)」からライヴはスタート、初めてDSPSを観る人もそうでない人も一斉に身体を揺らして曲に乗り始め、会場はDSPSの雰囲気に染まっていく。「我想進入感情的海洋(Diving into sea of emotion)」、「溫柔的生活革命(The Sweet Revolution)」と、3曲披露した後にギター、ヴォーカルのAmiが日本語で簡単な挨拶自身の代表曲「Unconscious」でノリやすいバスドラムの四つ打ちで、思わず跳ねたくなるような軽快な曲調で会場のテンションを上げていく。

1曲挟んだ後には「冬天再去見你(See you in winter)」を披露。しんみりとしつつも、暖かな冬の午後のような透明感のある曲で会場をほっこりと染み渡らせていく。

その後のMCでは再びギターボーカルAmiによる日本語でのMCが始まった。

「私はDSPSを始める前からずっとシャムキャッツのファンで、自分の好きなアーティストに自分達を好きになってもらえることが嬉しいです。これから辛いことがあっても、この事を思い出して頑張れます」との言葉を残して、リスペクトと感謝を込めてシャムキャッツの代表曲「このままがいいね」を中国語に翻訳して披露、会場のDSPSファンもシャムキャッツファンも一斉に盛り上がりを見せた。

続けて2曲披露した後のMCでは「自分の音楽を自分が好きなバンドと一緒にライブが出来て、私たちの歌を届けられることは当時の私には想像できないことです。今日は本当に皆さんありがとうございます。そして、次の曲は今日最後の曲です」と改めてシャムキャッツへのリスペクトと今回の共演への感謝を口にして、本編最後の曲「成為日常(日常になる)」を披露、合計10曲を披露して本編は終了。

本編終了後は観客からのアンコールに応えて、再びDSPSが登壇。今回の日本公演の為に、まだ音源リリースしていない新曲「Folk song for you」を用意してきたとしてサプライズ披露した。DSPSらしく、洗練されたギターポップで最後に向けて会場を一気に盛り上げてライヴは幕を下ろした。

ライブ前のインタビューでは、台湾のまだ発展途中のインディーズ音楽シーンの現状を、そしてDSPSのパフォーマンスでは、発展途中の場所だからこそ、そこから始まりつつある台湾のバンドシーンの可能性を感じた。音楽から東アジアがもっと繋がっていく事に期待して、今後も東アジアの音楽を、まだ我々が巡り会っていない彼らの声を届けていきたい。

今回の日本公演では、5月12日の静岡県でのfuji&sun fesにも出演するなど、日本でも着実にその活躍の幅を増やしてきているDSPS。台湾のバンドの中でもかなりのペースで日本でライブを行なっているDSPS。日本と台湾のギターポップシーンを繋ぐ存在になりうるホープとして、注目していきたい。


DSPS LIVE in JAPAN 2019 spring / 東京八點台北七點
2019年5月9日(木)青山月見ル君想フ
出演:DSPS、シャムキャッツ

セットリスト
1. 19歲的秋天之歌(Fall song of 19 years old)
2. 我想進入感情的海洋(Diving into sea of emotion)
3. 溫柔的生活革命(The Sweet Revolution)
4. Unconscious
5. Fully I
6. 冬天再去見你(See you in winter)
7. siamese cover このままがいいね
8. 住在你的腦袋(Living in your brain)
9. 我會不會又睡到下午了(Sleep till Afternoon)
10. 成為日常(Becoming part of daily life)
-encore-
11. Folk Song

・DSPS オフィシャルサイト:https://www.dspstw.com
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