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VaporwaveとFoodPornを融合させる謎のアパレルブランド『GIRL FOOD SEX』の正体に迫る

StoryWriter

2019年6月10日に突如現れたアパレルブランド、『GIRL FOOD SEX』。Twitterでそのデザインを見たときに、一目でそのポップを超えた毒々しいデザインに釘付けになり、「自殺三十六景 LongTshirts」を思わず購入してしまった。その謎に包まれた不思議な魅力で、Online Shop開設後、30分足らずで商品は即完売。公式HPやSNSには、ブランドについての詳細が全く書いていない。そんな謎多きブランドを運営している山田太郎(仮称)に、今回コンタクトを取ることに成功した。なぜこのブランドが生まれたのか、メールインタビューを行なった。

取材&文:ヨコザワカイト


目が肥えたオタクだったんだと思います。

──ブランド立ち上げおめでとうございます。まずは、GIRL FOOD SEXをどのような方が運営されているのか伺ってもよろしいでしょうか。

山田太郎(仮称):私は、石を投げて獲物を捕る時代から、クリック一つで何でも買える時代まで、様々な発展を体験しながら生きてきました。ゲームはGIRL FOOD SEXに深く関わっています。印象深いのが、せがた三四郎や湯川専務の登場で、今でもあの時代と調和の取れてないアンバランスな狂ったCMやプロモーションには影響を受けています。基本的にオタクだったんだと思いますが、親に沢山海外に連れて行ってもらっていた影響もあって目が肥えたオタクだったんだと思います。後はオタクやマニアックな友人が多いので色々教えてもらったり、一緒に話す中で影響されていって今の自分があるんだと思います。

──当時は、どんなゲームに熱中しましたか?

山田:『シーマン』、『シェンムー』、『パワーストーン』は、食事や家族の事を忘れる程熱中していました。ゲームのサントラは『ドンキーコング2』が好きで、今でも作業中に聞いたりします。

──ブランド立ち上げに至った経緯はどのようなものでしたか?

山田:中二病ではないんですが、人生は死ぬまでの暇つぶし感覚で生きているので、自分の脳が感じる行為に重きをおいてブランドを始めたんだと思います。仕事をしていて沢山のプロジェクトを同時並行で進めている中で、自分にとって制作やクリエイションが、一番脳が幸せになる行為なので、ブランドとして成り立たせるのは大前提ですが、基本的に気持ちいいかどうかを大事にしています。その上で偏見のある物をいかに料理するかが、プロデュース力も試されるのでゲーム感覚で楽しんでいます。

──GIRL FOOD SEXのコンセプトを教えていただけますか?

山田:コンセプトは食と性です。漠然とテーマを大きく設けた方がこれからの広がりを期待出来ると予想したのでそうしました。大きい風呂敷を広げた上で、まずは端っこでサンドウィッチでも食べるかって感じです。それから空いているスペースでジェンガをしたりゆっくり桜眺めたり沢山の事ができるなって思いました。小さい風呂敷を広げて、後でツギハギで大きくしていく方法もありだとは思うんですが、自分には向いてないなと。食と性がテーマのブランドで、その中でFoodPornのシリーズをやるのと、FoodPornメインのブランドでそこからいきなり性だけに着目すると、あれ? 今回は食べ物ないの? ってなるのも不自然で嫌だったからです。そういう意味では割りと冷静にテーマやコンセプトを決めたのだと思います。見ている人はそこまで見てないかもしれないですが、自分が気になるところなので大事にしています。なので、名前はテーマや方向性が決まった後に付けました。

──FoodPornというジャンルは初めて聞きました。

山田:食と性を合わせたFoodPornってジャンルがあって、それには二つの意味があって。1つは日本で言う食テロってやつで、SNSに美味しそうなご飯をあげることを言うんですが、もう1つは食物や料理を性と捉える遊び心のあるFoodPornです。これはサブカルチャーだと思うんですが誰も相手にしてないジャンルで、このジャンルを普通に扱うだけではただのセクハラになるんですが、自分のフィルターを通したら、いやらしさの部分だけを除外してかっこよくストリートに表現できるんじゃないかなって思って挑戦してみたくなりました。

──名前には”SEX”も入っていますね。

山田:正直なんでもよかったんですが、出来るだけ簡単で鋭い名前のデザインにしたかったので、多分「SEX」はどの世界線に移行しても入れていたと思います。名前から先につけるとブランドが名前に引っ張られて自由性が少なくなると思っていて。例えば“LOVEマシーン”って言葉に個人的にずっとはまっているんですが、名前から先につけていると今のデザインは出てこなかった気がしています。アパレルでデザインが大事なのは勿論ですが、自分はプロモーションも同じくらい大事だと思っていて。それを踏まえた上で 日本人の食と性への欲求は凄まじいので、今後の広がりを考えた時に、そこに注目してブランドを動かした方が自分の中にあるアイディアも落とし込みやすいと思いました。

全身Diorのモデルが、スラム街でワインと葉巻を嗜んでるような

──服のデザインには、様々なモチーフが使われています。これはどのようなチョイスでデザインに落とし込んでいっていますか?

山田:表現したい物は特に決めてなくて、未来の自分がどうするかに基本舵取りは任せています。正直数秒後の自分が何を考えているか全く予想もつかなくて…… それは不安な反面、楽しみでもあります。ただこれからブランドの知名度が上がって、出来る事が増えてくると思うので、自分が注目しているアーティストと沢山仕事をして、自分の価値観を潤わせつつ、GIRL FOOD SEXという箱を大きく出来たらなって思っています。

デザインに関しては決してサボっているわけじゃないんですが、わざと下手くそには作ってます(笑)。下手くそっていうかヘタウマっていうジャンルに入れたらなって思っています。たまに気を抜くと、めちゃくちゃ綺麗なデザインが出来てGIRL FOOD SEXっぽくなくてすぐボツにしますし、フォントも編集作業も心がザラザラする、なにか取っ掛かりのある不完全な物を丁寧に作ることを意識しています。その不完全な丁寧な物に対して、完璧に仕上げてくるアーティストのコラボが関わると、全身Diorのモデルが、スラム街でワインと葉巻を嗜んでるような、本来交わる事のないアイコラ感が出て、それがGIRL FOOD SEXにしか出せないカオスな魅力につながるのかなって思っています。

──デザインには、Windows95のイメージも使われています。インターネットに対しては、どのようなイメージを持って作品制作に臨まれていますか?

山田:裏テーマとしては、“Vaporwave”っていう失ったカルチャーをもう1度蘇らせたいっていうのがあって。今ではまた流行ってきていますが、元々は死んでました。死んだっていうかリビングデッドに近くて、更に新たな時代の解釈が混じって腐臭のする香ばしいカルチャーに今はなっていると思います。Vaporwaveは1度オタクの神様に魂を売らないと理解しにくいカルチャーなので難しいジャンルだとは思いますが、アニメやゲームが当たり前に存在している日本で育った日本人だから、理解する為のパーツは生まれながらに持っているはずなので、そこに気持ちさえあれば体に馴染むのも早いんじゃないかなって思っています。

Windows95に関しては、多分Windows95の一枚のエロ画像を開くのに10分かかった時代を体験して、ファミコンからPS4まで順番に体験しないと完璧には分からないゾーンだとは思うのですが、こればっかりはどうしようもなく感覚で感じ取れるようにデザインの中に取っ掛かりのあるヒントを出しながら、それぞれに感じてもらうっていうのを落としどころにしています。そういう意味ではGIRL FOOD SEXのデザインは誰でも簡単に真似できそうで出来ない、手が届きそうで届かない月みたいな存在になれたらなって思っています。月の表現はきもすぎました、忘れてください(笑)。又、けなし愛としてですが、自分はWindowsユーザーなんですがWindowsは糞だなって思っています。ですが長年連れ添った女房感と言いますが、どうしようもない愛着があって、Windowsがそういうなら自分も付いて行こう、更新でまたパソコンぐちゃぐちゃにされるけど黙って見守ろうって精神があります。抱いてるのか抱かれてるのかよくわかってないですが、その関係が居心地いいですね。過去や今のWindowsの変化や時代の進化のエモさに惹かれながら、Vaporwaveを楽しみたいです。

──SNSでは、TwitterとInstagramを使われています。

山田:SNSに関して言うと、InstagramっていうよりはTwitterの雑多でスラムな感じの方が好きで、あの偏った日本の情報が混在するコンテンツは今自分がやっている事にも近いような気がしています。SNSの普及で皆さん完全に目が肥えているので、実は美しいものより少し歪みのある、不完全だけど完全に近い物の方が、心には馴染むんじゃないかなって思いました。美しい物を作れない言い訳みたいに聞こえるかもしれませんが…… 陽を陰に変える事は簡単だけど、陰を陽に変えられたらこんなにデザイナー冥利に尽きる事はないなと思います。

人間らしくていいなと考えています

──6月10日に、Online Shopを開設されると30分ほどで即完売になりました。これは想定を超えた反響でしたか?

山田:あえて買いにくいデザインも数点入れて売りたい商品と対比させていたので、正直数点は残るかなって予想はしていたんですが、完売してよかったです。全く売れないと自分が世界から必要とされなくなった感覚になるので正直安心しました(笑)。

まだ初めて間もないブランドですが、ブランド始動前に売上目標やプロモーション等の必要なプランは正直1年後まで1ヶ月刻みで既に決めていて、後はその通りに動かす体力と精神力のみ必要って感じなんですが。それでもやっぱり発売前はひやひやしてたと思います。プランを一年後まで決めたのは、いい意味でトレンドに左右されない為に予め設けました。以前の自分が出した決断を信じて、最初に決めたプランを最後まで遂行してやりきるっていうルールを設けていて成功したら自信がつくし、途中で意見を変えるとブランドがぶれるので、自分的には気に入ったルールです。自分一人でリレーしているみたいな感覚ですね。そんなこと言いながらいきなり軌道修正もしたりしますし、感覚で動いている分、矛盾する部分も多いと思います。その時は、すいません。

──プランを1年先まで決められているとのことで、今後の目標はなんでしょうか?

山田:最終的な目標は決まっていないです。ですが、GIRL FOOD SEXのアパレルとしての成功って意味で言うと、

①売上目標を達成し続ける
②認知された上で新しいカルチャーであり新鮮であり続ける
③自分が楽しみ続ける

っていう事がブランドを楽しんで持続する上で大事だなと思っています。最終的にはアパレル以外の方に重きを置いていて、アパレルで成功した売上をGIRL FOOD SEXを絡めてアーティストの技術を使って発信して、しっかりとギャラを払った上で良質なアーティストの力に少しでもなれたら、人の為になるので人間らしくていいなと考えています。

あくまで今のGIRLの提供するシーンやスタイルを進化させて、発信していき続けるっていう部分にこだわっていきたいです。もし、スーパーに毒処理されてないフグが売っていたら問題になります。毒処理した方がもっと売れるのにとか、捌いた方が安く買えるとか、色んな意見はあると思いますが…… 今現段階でGIRL FOOD SEXは、寂れた市場で毒フグを売っている状態です。これが大型スーパーで売ろうと、百貨店で取り扱おうと、あくまで毒を処理しないでそのまま売っていく事がGIRL FOOD SEXの意思です。最後まで寂れた市場で売り続けるのもありだなって思っています。ありがちですが、インディーズになってださくなったとか、メジャーになると組織っぽくなるとか、アパレル業界以外でもよく聞く話ですが、GIRL FOOD SEXはインディーズのコアで真っすぐな感じ、初期衝動を大事にしたいです。


GIRL FOOD SEX

Online shop :
https://www.girlfoodsex.com/

Twitter :
https://twitter.com/GIRLFOODSEX

Instagram :
https://www.instagram.com/girlfoodsex/

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