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【LIVE REPORT】BELLRING少女ハート’22、リキッドワンマンで魅せたサイケと熱気の全16曲

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BELLRING少女ハート(以下、ベルハー)が2022年4月24日、ワンマンライヴ〈BABEL ’22〉を東京・LIQUIDROOMにて開催した。

2016年末に崩壊したアイドルグループ・BELLRING少女ハート。独自のサイケデリックなサウンドからブチ上げロックまで、変幻自在アイドル・ユニットとして活動。幅広い音楽性と、黒い羽をつけたセーラー服でステージを駆け回るパフォーマンスで「東京最狂」の名を欲しいままにした。しかし、その儚さ故に、惜まれながらも崩壊という形で解散を迎えた。

ベルハーにとってデビュー10周年を迎えた2022年4月8日。全楽曲のサブスク配信スタートを開始し、約5年半ぶりとなるワンマンライヴ〈Grave Robbery〉を東京・Spotify O-nestにて開催。詳細が一切明かされていないにもかかわらずチケットは即日完売。大きな注目の中、BELLRING少女ハート’22としてライヴを行った。

また、デビュー10周年イヤーである今年、5、6回ライヴを行うことを発表。メンバーはベルハーと同事務所AqbiRecに所属するNILKLYの小河原唯(おがわらゆい / 小笠原唯)、MIGMA SHELTERの橘田あまね(きったあまね / タマネ)、新倉のあ(にいくらのあ / ブラジル)、美波未優(みなみみゆう / ミミミユ)であることが明らかとなった。

さらにライヴの中で、ディレクターの田中紘治がミニトークコーナーに登場すると、リキッドルームのワンマンチケットが完売したらBELLRING少女ハート’22の新メンバーを募集することも表明。ライヴ直後にチケットは完売するなど、リキッドルームへのワンマンだけでなく、ベルハーへの注目度の高さを改めて示した。

そんな中迎えた、リキッドルーム。

雨が降り頻る中、会場に集まったヲタちゃん(※ベルハーファンの通称)たち。会場SEとして流れているベルハーの音源にあわせて手拍子でコールを起こすなど、ライヴ前からすでにベルハーならではの独特な雰囲気が漂っていた。

17時45分。「こういう情勢の中でやるため、周りに気を使ってください。周りに当たらず自分に当たってください。あと地面なら許す!」という田中のアナウンスが流れ、暗転。ステージと客席の間に貼られた白幕にメンバー4人のシルエットが写り幕が落ちると、「憂鬱のグロリア」でライヴがスタート。デジタルなシンセベースとノイジーなエレキギターに「グローリア」というメロディが三位一体となるベルハーらしい世界観の楽曲だ。黒い羽を広げて前後左右に動き表現すると一転、爽やかな鍵盤のメロディとともに「夏のアッチェレランド」を続けて披露した。

そして、「みんなのファンをいただきます、私たちBELLRING少女ハート’22です!」と一度目は枕詞を忘れながらも挨拶をした後、1人ずつ自己紹介をした。

「この日のために練習をがんばりすぎて、MCを考えられてなかったんですけど、みなさんと一緒に楽しむためにやってきました」という小河原唯の挨拶を経て、4人でトークをしはじめたがグダグダになりかけたため、田中が影アナで「よし、いこうか」と伝えると、メンバーたちはホッとした表情を見せた。「次の曲ぶちあがるんですけど、絶対ミックスとか大声はだめです」と田中が改めて注意をした後、初期楽曲「ダーリン」、「yOUらり」、激しいバンドサウンドとメロディアスのピアノの戦慄の組み合わせが美しい「アイスクリーム」と続けてパフォーマンス。ミドルテンポのサイケデリックな楽曲にもかかわらず、踊れて客席の温度をあげていくのがベルハーならではのサウンドスケープということを見せつける。

そのまま、架空の映画のサントラをモチーフに作られたEP『13 WEEKS LATER EP』より、「low tide」と「鉄の街」を披露。終末を感じるような退廃的な世界間を想起させるヘヴィーでダークなサウンドの上で、4人のヴォーカルと羽と髪を振り乱しながら歌う姿があまりにも美しい。「low tide」で〈命赤く赤く儚く舞う お揃いのモラトリアムなんていらない〉と歌うパートでの新倉のあの切迫感はあまりにも強烈だった。

楽曲を歌い終えると床に転がりながら給水をし、メンバー4人で固まってハグをすると、横並びでステージ後ろを向き、「タナトスとマスカレード」へ。怪しげなピアノの旋律の上で4人が合唱。アコースティックギターの音色が加わり、コンテンポラリーなダンスを逆光の照明の中で行っていく。会場を破壊するかのような轟音のバースを挟み、圧倒的な世界観を魅せる。エッジの利いたギターリフからはじまり、ジャジーなベースラインやウワモノが混ざるベルハー流ロック曲「rainy dance」、クロック音と神聖さを感じるレトロなサウンドで始まる「ROOM 24-7」では、途中で銃声のような音が聞こえ、一度時が止まる。逆再生のようなサウンドとともに再び展開しベルハーの世界を堂々と表現していく。すると壮大なイントロで始まるアンセム楽曲「asthma」へ。ヲタちゃんたちはその場で手をあげたり飛び跳ねたりし、声を出さずとも強い一体感を生み出してみせた。そして、松隈ケンタ作曲のロックサウンド「UNDO」、サイケな初期楽曲「ボクらのWednesday」とベルハー節を出し惜しみなく吐き出した。

再びのMCでは、美波未優が「本当にこの会場が最低温度が知りたい」と空調が効いているのかを確認するくらいライヴで熱があがっていることを表した。新倉のあの目に衣装の毛が入ってしまったことを伝えると、美波未優が手でとろうとし客席を驚かせた。

そんなマイペースな2人と、自由に動き回る橘田あまね、3人をまとめようとするしっかりものの小河原唯の4人で再びハグをし、4人が立ち位置につきポーズをとると、初期楽曲「サーカス&恋愛相談」へ。4人が右肩を一心不乱に振りまくり熱はさらに増していく。楽曲を歌いきり4人の悲鳴が響く中、「the Edge of Goodbye」のイントロが流れ、初期アンセム楽曲である同曲を力強くパフォーマンス。落ちサビ部分では、ヲタちゃんたちが16ビートの手拍子で盛り上がり、特効の黒テープが飛ぶなど最高潮を迎えた。

最後は、西部劇的なレトロな雰囲気とマーチングを合体させたような楽曲「WIDE MIND」へ。新倉のあが靴を脱ぎ捨て、靴下も脱いで放り投げ裸足でステージを全快で動き踊るなど、ステージ上での自由さとアーティスティックさが炸裂する。多幸感あふれるメロディのうえにノイズがかったサウンドが混じるなど、最後までベルハーらしさに満ちたライヴパフォーマンスを徹底的に表現しきった。

全16曲をパフォーマンスし終え、最後に1人ずつ感想を述べた。

美波未優「最初はすごく緊張していたんですけど、記憶が徐々に消えて行き、いまはとても楽しいです」

新倉のあ「曲によって情緒の使い分けが大変だったんですけど、いまはすごく楽しいです」

橘田あまね「楽しい、悲しい、嬉しい、怒っている、喜怒哀楽すべての感情をフルに表現できたのと、みんなが盛り上がっているのが見えて本当に嬉しかったです。こんな私たちを受け入れてくれて本当にありがとうございます」

小河原唯「緊張してやばいと思っていたんですけど、すべてのフラストレーションをみんなにぶつけてストレス発散できたのと、本当にみなさんに会えてよかったです」

そして小河原唯の「楽しかったですか?」の問いかけに、ヲタちゃんたちから大きな拍手が起こった。そのまま美波未優ことミミミユの生誕祭が5月1日に同じ会場であるリキッドルームで開催されることを告知し、ヲタちゃんたちと写真撮影をすると、「以上、私たち、みんなのファンをいただきます。BELLRING少女ハート’ 22でした!」と、復活2回目となるワンマンは熱気の中で幕を閉じた。

かつてのメンバーたちが伝説的なライヴを残している中、わずか2回目にして堂々とベルハーとしての圧倒的なライヴを見せた4人。ベルハーとはなんなのか? それを言語化することは難しいけれど、この4人がベルハーの本質的な部分を間違いなく表現していたことは間違いない。それは鳴り止まない拍手が物語っていた。新メンバーを迎え入れて、この先、BELLRING少女ハート’ 22はどうなっていくのか。否が応でも期待したくなるような圧倒的に素晴らしいワンマンだった。

また、BELLRING少女ハート ’22は新メンバー・オーディションを準備中。2022年限定での活動となるが、この4人と共に10周年を駆け抜けるニューフェイスを募集する。詳細は4月27日(水)にBELLRING少女ハート公式よりアナウンスされる。

取材&文:西澤裕郎
写真:Masayo


〈BABEL ’22〉
2022年4月24日(日)@東京・LIQUIDROOM
セットリスト
1. 憂鬱のグロリア
2. 夏のアッチェレランド
3. ダーリン
4. yOUらり
5. アイスクリーム
6. low tide
7. 鉄の街
8. タナトスとマスカレード
9. rainy dance
10. ROOM 24-7
11. asthma
12. UNDO
13. ボクらのWednesday
14. サーカス&恋愛相談
15. the Edge of Goodbye
16. WIDE MIND

■イベント詳細
BELLRING少女ハート × 二丁目の魁カミングアウト「Kill Her, Mommy」
2022年5月13日(金)@東京都 新宿LOFT
出演者:
BELLRING少女ハート ’22 / 二丁目の魁カミングアウト

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