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元MIGMA SHELTERブラジルと田中紘治が語る、新バンドの構想――AqbiRec初のプロデュースバンドで目指すものとは?

StoryWriter

BELLRING少女ハートやMIGMA SHELTERなど、数多くのアイドルを輩出してきた音楽プロダクション・AqbiRecが、ガールズバンドを結成することを発表した。

このプロジェクトでは、今年6月に無期限活動休止となったMIGMA SHELTERを卒業したブラジルがドラムを担当し、ボーカル、ギター、ベースのメンバーはオーディションで選出される。エントリーは専用フォームより行われ、書類選考および審査を経てメンバーが決定。バンドの活動は来春以降を予定しており、準備期間を経て本格的に始動する。

プロデュースはAqbiRecの代表である田中紘治が担当し、「破壊的で色気があり、踊れるグルーヴ」を目指す。また、技術的なディレクションはヤなことそっとミュートを手掛けた他、数々のバンドやアーティストにエンジニアとして評価される慎秀範(DCG LLC)がサポートする。

本プロジェクトの始動にあたり、ドラムを担当するブラジルと、AqbiRecの代表である田中紘治に、どんなバンドを目指していくのか、どのようなメンバーを探しているかなど、ざっくばらんに話を聞いた。

取材&文:西澤裕郎


エモーショナルでノスタルジックな魅力を持ったメロディー。そういうバンドをやりたい

――人生を捧げるくらい熱心に活動していたMIGMA SHELTERを卒業してから、バンド結成発表に至るまでの、ブラジルさんの気持ちの変化を聞かせてもらえますか。

ブラジル:MIGMA SHELTERが終わった時は本当に何の気力もなくなって、もう表に出る活動も辞めようかなと思っていたんです。ラストレイヴ1週間後に、アフターパーティーみたいな感じで、お客さんと軽く話して乾杯してメンバーもフロアで踊る、すごく緩めのイベントがあって。

田中:「NO MEMBER RAVE」って恒例企画があって。メンバーがいない状態でMIGMA SHELTERのインストだけを繋いでいく、ガチレイヴっぽいことをたまに遊びでやってたんです。最後にメンバーもお客さんと一緒にフロアで一緒に騒いで終わろうと思ったんです。

ブラジル:正直、個人的にそのイベントはやりたくなかったんです。ラストレイヴで一区切りしたかったし、そんなゆるいイベントで終わるのは微妙だなと思っていて。でも、フロアで踊る体験をして、ちょっと吹っ切れたんですよね。思い入れが強すぎてすごい落ち込んでたんですけど、過去のものにできそうな兆しが見えたというか。それで、そのイベントの後に、メンバーと田中さんで打ち上げをやったんです。ちょっといい肉を食べさせてもらって。

田中:ちょっとじゃないよ(笑)。

ブラジル:すごくいい肉を食べさせてもらって(笑)。その帰り道に、そういえば田中さんが昔バンドやりたいなって言ってたことをふと思い出して、思いつきで、「あのバンドってやらないんですか?」って聞いてみたんですよ。ドラムやりたいんですけど、って。そしたら、思いのほか乗り気になってくれて。

田中:ブラジルすごいんですよ。「どんなバンドやりたいの?」って聞いたら、真顔で「任せます」って(笑)。責任重大だなと思いつつ、翌日、元々やりたかったスタイルのバンドの音源を送ったら、結構気に入ってくれたみたいで。

――どんな音源を送ったんですか?

ブラジル:クラクソンズでしたよね?

田中:そう。エレクトロニカとインディー・ロックのエネルギッシュなバンドで、メディア的にはニューレイヴってジャンルで呼ばれました。有名な「Golden Skans」はダンスミュージックなグルーヴで、哀愁が刺さってくる。エモーショナルでノスタルジックな魅力を持ったメロディー。そういうバンドをやりたいなと。あとは、ザ・ストーン・ローゼズとか。ロックのフィーリングを持っていて、気持ちよく踊れるバンドが好きです。いつかバンドをプロデュースできるなら、アメリカからマシーンのようにリズムキープできるドラマーを1、2年契約とかで招聘して、日本人とインターナショナルに結成しようと考えていたんですよ。なんとなく。なので、本当はドラマーはアメリカ人のはずでした。

ブラジル:そしたら、ブラジルから来ちゃいました(笑)。

 

――(笑)。ニューレイヴは、2000年代後半に盛り上がりかけましたが、大きなシーンにならずに言葉を聞かなくなってしまった印象があります。

田中:変にカテゴライズしたのがまずかったんでしょうかね。発展する前に括られて、なんとなく分散して萎んじゃった印象が。あの感じの続きをAqbiRecでもやりたいなって、ずっと思っていたんですよ。例えばビッグビートとかも、かっこいい曲やアーティストが多いけど最盛期に日本のクラブシーンでどハマりしたとは言えなくて。時代を経て、改めてみんなで楽しみたい欲があります。

マシーンのように叩けるフィジカルを手に入れてバンドを支えてほしい

――バンドをスタートするにあたって、メンバーを公募しようと思った理由は?

田中:いろんな人に幅広く声かけていきたいというのと、手の届く範囲だけじゃなく、日本全国から探してみたかったんです。

ブラジル:知らない逸材がどこに隠れているかもわからないですし。

――募集パートは、ボーカル、ギター、ベースとなっていますが、4人組のバンドをイメージしているんでしょうか?

田中:条件と関係なく応募してくる人がいても面白いなと思っています。可能性を閉じてるわけではないです。

ブラジル:キーボードは入れないんですか?

田中:ライヴでは、ブラジルがシーケンサーを走らせて演奏するスタイルを想定してるので、オーディション告知の段階では必ずしもキーボードがマストってわけではなかったけど、全然NGではないですね。

――ブラジルさんは、MIGMA SHELTERで活動中、ドラムを触る時間はあったんですか?

ブラジル:たまにですね。電子ドラムを持っているのでたまに叩いたり、禁断の多数決って音楽グループでたまにドラムを叩く機会もあったので、時々は叩いていました。

――今回バンドを始動するにあたって、練習もスタートさせているんですか?

ブラジル:そうですね。毎日何時間も叩いています。

――どういった部分を強化しようとしているんでしょう?

ブラジル:今は、とりあえず叩きまくることが大事だと思って、本当好きな曲を叩いています。最近ハマっているカイジューバイミーさんっていうアイドルの曲を叩いたり、ベルハーの曲を叩いたり。あとは、ロックだけじゃなくて、ジャズとかトランスとか、あまりドラムがないような曲に自分で適当にドラムを入れてみたり。とりあえず今は、楽しく何時間も叩き続けることをやっています。

――田中さんとして、ブラジルさんのドラムに期待することはどういう部分でしょう?

田中:マシーンのように叩けるフィジカルを手に入れてバンドを支えてほしいし、ブラジルらしい狂気も欲しいというか。何をしでかすかわからない空気。バンド全体でフロアに攻めていくような狂気に期待しています。小さくまとまんないで、ブラジルらしく本能的であってほしいなとは思いますね。

――ブラジルさんのレイヴでの何かに取り憑かれたかのようなパフォーマンスは本当に魅力的でした。

田中:MIGMA SHELTERの活動休止直後は、僕はブラジルはまだまだアイドルとして活動した方がいいと思っていたんです。活動を続けたかった他のメンバーにも、休止の発表前にAqbiRecから離れることのメリットは説明してたんですよ。グループがこういう閉じ方をする以上は、他の事務所に移った方がファンも応援しやすいからよく考えてって。ブラジルにも各方面からお話があったり、せっかく勢いのあるグループから誘いをいただいたので仲介したりして。でもブラジル本人がアイドルとしての活動はもう考えられない状況で、バンドやりたいって相談してくれたから、真剣なんだろうなと思って。今までは与えられた曲を表現するポジションだったけど、自分でいろんなこと吸収して学んで音楽に反映していくことを楽しんでほしいです。

――色々な話がある中で、ブラジルさんはどうして田中さんと一緒にやりたかったんでしょう?

ブラジル:やっぱり田中さんの作る音楽というか、今まで作ってきたグループの音楽性も全部好きだし、田中さんだったらいいバンドをプロデュースしてくれるだろうなと思って。そこはすごく信頼してたので、お願いしました。

田中:今回、テクニカルディレクターとして、BELLRING少女ハートからずっとお世話になってるエンジニアの慎秀範さんにも参加してもらったんですよ。バンドが目指す音楽をサポートできて、メンバーをスキルに応じて向上させるには慎さんが必要だと思って。彼との共同作業も楽しみですね。

――まさに田中さんが培ってきたものが詰まったバンドになりそうですね。

田中:ですね。だけどバンドですから、自分たちのプロデュース能力を養ってほしいなと考えています。いずれブラジル自身のバンドになります。

――楽曲は、ブラジルさんやメンバーが作るんですか?

田中:舵取りはしますが、徐々にでも自分たちで書けるようになってもらいます。

――ブラジルさんは、これまで作詞作曲はされたことがあるんですか?

ブラジル:本当に趣味程度ですけど、作曲と編曲はやったことはあります。本当に趣味なので、ちゃんとこれから勉強し直さないとなというところですけど。

覚悟の決まった変態に来てほしい

――ブラジルさんの応募者へのコメントが印象的でした。「一時的な思い出作りではなく、本気で音楽を仕事にするつもりの人と一緒にバンドをやりたいです。覚悟の決まった変態をお待ちしております!バンドで食っていきましょう!」と。

ブラジル:一時的な思い出作りじゃなくて、ちゃんと仕事としてバンドで食っていきたいなと思っていて。最終目標が大きい武道館でやるとかじゃなくて、バンドで食っていく。もちろん食べていくには、規模も大きくしなきゃいけないんですけど。とにかく、ずっと音楽をやっていたいんです。

田中:家賃が払えて、飯も食えて。

ブラジル:コメントにも書いたんですけど、覚悟の決まった変態に来てほしいと思っていて。変態的に音楽に打ち込める人。バンドだからもちろんメンバー同士めっちゃぶつかると思うんですけど、バンドで食っていきたい覚悟がある人と、ひたすら音楽を変態的にやることができる人たちに来てほしいなと思います。

――技術面も大切だけれど、それ以上に覚悟も大切だと。

ブラジル:その気持ちがある人って、多分めっちゃうまくなれると思うんですよね。どれだけうまくても、その気持ちがない人とはできないかなって感じです。もちろんうまいに越したことはないんですけど、変態性は重視していますね。

――田中さん的に、こんな人に来てほしいというものはありますか?

田中:面倒くさい人。パフォーマンスは100点に収まっててほしいんです。でも200点、300点を狙える面倒くさい人に来てほしいですね。70点、60点だとお客さんは退屈だよね、と。でも200点、300点を取っちゃったら、破綻して一部の人にしか刺さらないよね、と。200、300点、500点のエネルギーを圧縮した、ものすごい100点を取れるバンドにしたい。これは今所属してるアイドルグループにも同じように伝え続けてることなんですけど、そういう人を求めてます。

――田中さんが「面倒くさい人」と言ったとき、ブラジルさんは苦笑いしてましたよ。

田中:昔からそういう人を採っちゃうんですよね。

ブラジル:私もそうだと思います。

田中:ブラジルもだいぶ面倒くさい方です(笑)。僕はなるべくそれを、どうにかコントロールするっていう形でやりたいです。バンドはまだ僕の初期衝動が入る余地が残ってるというか。

――ちなみに、バンド名はなんとなく構想してるんですか。

ブラジル:いや、してないです。

田中:全くだよね。メンバーを見て決めようかと。ブラジルは中学校の時からバンドやりたいなって思っていたわけでしょ? バンド名は考えたことある?

ブラジル:日本語か、すごい短くて存在しない英単語みたいな、どっちかがいいなとは思っているんですけど、あんま具体的なことはまだって感じですね。

――どんな人たちが集まるか楽しみですね。イメージとして、どういう人を求めているか聞かせてもらえますか?

ブラジル:ボーカルは、すごくカリスマ性がある人が欲しい。この人の後ろで叩きたい、この人についていきたい、みたいなカリスマ性のあるボーカルに来てほしいですね。ベースは、すごいエロい女に来てほしい。ギターは、どんな感じの方がいいですかね?

田中:リフを作るのが好きな人に来てほしいですね。3つか4つの音で耳にこびりついて離れないような、繰り返し口ずさみたくなるリフが作れるギタリストを入れたい。

ブラジル:そういうギターはいいですね。

田中:パワフルさだけじゃなくて涙腺にかかるとか、琴線に触れるような声を持ってるボーカルがほしいです。僕と慎さんが作ることもあり、ベースが固くて太い曲が増えると思うので、高音域が強いといいかなと考えてます。

――ちょっと余談ですが、最近刺激的だった音楽はありますか?

ブラジル:最近クラクソンズみたいな音楽を聴いている中で、CSS (Cansei de Ser Sexy)にハマって。ブラジルのガールズバンドなんですけど。

 

田中:CSS!

ブラジル:いいですよね。ああいう感じになりたいなと思ってますね。

――わかりやすい例ですね。2025年春以降のデビューということで、期待しています!

田中:イベント全体が盛り上がる、勢いのあるライヴをやりたいです。あと本当に些細なことで言えば、例えばAqbiRecのアイドルは次の出演者をメンバーに紹介させて、盛り上がりを繋げるように心がけてます。すごく昔、初代ベルハーでそうやって繋いでもらったフェスのヘッドライナーとして大いに盛り上がったことに、今でも感動があるので。ただアイドルもバンドも、アーティスト同士の物語や対バンの流れをファンが楽しめる雰囲気が減ってきていて、それが今の在り方でもあるし、仕掛け方の問題だとも思います。バンドシーンについてはまだよくわからないことが多いですけど、外様なりのやり方で面白く引っ掻き回せたらなと思っています。今から楽しみです。ご応募お待ちしています!


■プロジェクト概要
・募集パート:ボーカル、ギター、ベース
・プロデューサー:田中紘治(AqbiRec)
・技術サポート:慎秀範 (DCG LLC)
・活動開始予定:2025年春以降を予定
【応募資格】
・15歳から28歳までの女性
・歌唱または演奏に情熱を持ち、都内での活動が可能な方
・心身ともに健康で、特定のレーベルや事務所との専属契約がない方
【オーディションの流れ】
■書類選考
・自己紹介と音楽活動の経歴(バンド経験含む)
・演奏や歌唱のデモ音源(リンクや動画ファイル)
・全身およびバストショット写真2枚(3ヶ月以内に撮影、無加工)
・志望動機およびバンドへの意気込み
・ボーカル志望者はオリジナルの作詞を提出 ※詳細は後述
※選考通過者には申込から10日以内に通知
■一次審査(オンライン)
・ZOOMなどのツールを使ったオンライン面談
・音楽に対する考え方やバンド活動への目標を質問
・リアルタイムでのパフォーマンス(歌唱、演奏)
・ボーカル志望者には作詞に関する課題を伝えます
※オンライン審査が難しい場合は、都内スタジオでの対応も可能
■二次審査(対面オーディション)
・演奏技術や表現力のチェック、セッションを通じたグルーヴ感の確認
・音楽活動のビジョンやバンド活動への意気込みを深掘り
・ボーカル志望者は、前回の課題に沿った作詞を披露
■最終審査(リハーサルとパフォーマンステスト)
・本格的なリハーサル:指定楽曲の演奏テスト
・選考基準:パフォーマンス力とコミュニケーション力
■最終決定
・2024年12月~2025年1月に合格者を決定
・契約内容および今後の活動スケジュールを確認し、正式に加入
・2025年春以降にデビュー予定

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