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東京初期衝動がコロナ禍で完遂した全国ツアー、ファイナル東京公演をレポート

StoryWriter

東京初期衝動が2020年8月16日(日)、全国7都市を巡る〈東京初期衝動の全国逆ナンツアー〉のファイナル公演を、東京・恵比寿LIQUIDROOMにて開催した。

コロナ禍の今年3月の岡山公演からスタートしたバンド史上最大規模の全国ツアー。新型コロナウィルス感染拡大防止策を講じ、安全性を確保するために日程やライヴ会場を変更するなど、最大限安全を考慮した上で観客を入れてライヴを行う方法を模索しながらツアーを行ってきた。

7月5日(日)には〈東京初期衝動の抗体検査大作戦〉と題し、延期となった東京公演のチケットの所持者を対象に、新型コロナウイルスの抗体検査を無料で開催。東京・渋谷のライヴハウス、スターラウンジで、約60名の参加者とスタッフをあわせた約70名全員が検査を行い、陰性という結果が出た。

さらに、ソーシャルディスタンスを保った状態で観客がライヴを見られるように、大阪、東京はキャパシティをより大きな会場に変更。東京公演は新代田FEVERから4倍以上の広さの恵比寿LIQUIDROOMへ変更した。追加チケットも販売されたが即日完売。

また、このツアー中にベースかほの脱退が発表され、現体制でツアーを回るのは最後ということもアナウンスされていた。

ファイナル当日も万全を尽くし、開場時間から開演時間まで1時間かけ、観客はQRコードから飛べるアンケートサイトで体調などの項目を入力。入場時に入力画面とチケットを見せて入場を果たした。会場内でも観客はマスクを着用し、スタッフはフェイスシールドを装着するなどして感染対策を行なってライヴに臨んだ。

コロナ禍の世の中と正面から向かい合い、観客を入れてライヴを行ってきた東京初期衝動が、バンド史上最大規模の会場で開催する節目のワンマン。どのようなライヴが行われるのか、様々な想いが溢れる中、公演が開催された。

今日が東京初期衝動、第二章のはじまりでした

18時7分頃、レーベルオーナーでロックエージェント・ATフィールド代表の青木勉がステージに登場。ライヴ中のマスク着用徹底、飛沫拡散防止のため大声で叫んだり歌うことやモッシュの禁止、ソーシャルディスタンスを保つこと、アルコール販売を中止していること、本日用のチケットをお土産に作ったことなどを伝えた。

「本日ここにいるすべてのみなさんのおかげでライヴを決行できることになりました。次なるスタートになればいいなと思っています。お互い悔いのないように楽しめたらと思いますので、最後までよろしくおねがいします!」

前説が終わり暗転すると、Tommy feburuary6のSEに乗せて観客が拍手で一体となる中、ドラムのなお、ベースのかほ、ギターのまれがステージに登場。息をあわせるようにノイジーな楽器をかき鳴らす中、ヴォーカル・ギターのしーなちゃんが現れると一転静寂に包まれ、「Because あいらぶゆー」の歌い出しでライヴがはじまった。バンドのアンサンブルと共に、しーなちゃんが「東京初期衝動です!!」と叫ぶと、観客の拳が突き上がった。

赤い照明がステージを照らす中、ロック楽曲「高円寺ブス集合」へ。しーなちゃんがハンドマイクでステージの左右に移動しサビの〈ヴァニラヴァニラ〉と叫ぶと、観客もその場で拳をあげて盛り上がりを見せた。しーなちゃん、かほのコーラスで歌い出す「流星」、まれのギターソロがメロディアスでサビのユニゾンが心地いい「商店街」と続けて披露。観客たちは大音量のロックサウンドに各々体を揺らし楽しんでいる。

しーなちゃんがまれへの想いを込めて書いた「BABY DON’T CRY」を生々しい歌声で披露し、なおのタイトで骨太なドラムとまれの印象的なリフで始まる「STAND BY ME」では〈ここでつまづくなよ 東京初期衝動!〉としーなちゃんが歌詞を引用しながら叫ぶ。メンバーの狂気的な叫び声が曲へのリアリティを与える「うちのカレピに手を出すな」と、間髪なく演奏していった。

各メンバーが楽器を持ち替え、しーなちゃんの弾き語りで始まった「中央線」では、感極まり言葉が詰まるようなシーンも見せ、せーのでバンドアンサンブルが増幅すると、よりエモーショナルなサウンドスケープが生まれた。しーなちゃんがかほの方向に身体を向けながら、時に嗚咽のようにさえ聴こえる力のこもった声で歌う姿に、メンバーは涙を流しているようにもみえた。なおのカウントとかほのベースにしーなちゃんのヴォーカルでスタートした初期代表曲「再生ボタン」では、〈自分の居場所は自分で守れよ〉という歌詞を、より一層力強く歌い放った。

なおのドラムとかほのベースによるリズム隊のグルーヴではじまる「黒ギャルのケツは煮卵に似てる」では、しーなちゃんがかほに抱きついたり、まれに軽く体当たりをするなど溢れ出るエネルギーを身体で表現。

「リキッドルームまだまだ行けますよね?」と問いかけると、観客は手をあげて応えた。耳に残るリフが印象的なオルタナティヴロック曲「愛のむきだし」、〈いますぐやりたい!〉と衝動的に叫ぶ「兆楽」、衝動に満ちたフィードバックノイズとなおのダイレクトなドラムが掻き乱れる「ロックン・ロール」では、この日1番客席が揺れて踊った。曲を演奏し終わると、しーなちゃんが「東京初期衝動でした」と、本編一切のMCなしのまま13曲を駆け抜け4人はステージを後にした。

声は出さずとも観客たちの想いは一緒だ。間髪おかずに起こるアンコールの拍手に応えて再びステージに登場した4人。し―なちゃんがアコースティックギターを手に、東京初期衝動的バラードソング「SWEET MELODY」を歌い出した。なおの強烈なドラム、まれのエレキギター、かほのベースの重なりあった音の迫力がボディソニックとしてダイレクトに伝わってくる。そして最後は、バンド名を冠した「東京初期衝動」でコーラスも共に叫び、「このステージにいつまでもいます!」としーなちゃんが叫んで約1時間強を駆け抜けた。

「今日が東京初期衝動、第二章のはじまりでした!」

しーなちゃんが最後に一言だけ言い放ち、大きな拍手の最中に走って4人はステージを後にした。

エンドSEで森田童子「ぼくたちの失敗」が流れる中、再びしーなちゃんが1人ステージに現れ、観客が曲にあわせて手を左右に振る中でワンコーラスを歌い、「今日はありがとうございました!」と感謝を述べ、別れを惜しみながら再びステージを去った。

新型コロナウィルスによって様々なライヴが延期や中止になったり配信ライヴに切り替わる中でも、観客を入れてライヴを行う最善の方法を探しながら全国ツアーを駆け抜けた東京初期衝動。そこまでしてでもライヴに懸ける想いがパフォーマンスにも現れた、東京初期衝動史上最高のワンマンライヴだった。

取材&文:西澤裕郎
写真:横山マサト

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