14人のアイドルに密着したドキュメンタリー写真集を刊行ーー外林健太の撮影哲学とは?

外林健太

BiS、BiSH、GANG PARADE、EMPiREといったWACK所属のグループをはじめ、多岐にわたり写真、デザイン、衣装制作などで活躍中のフォトグラファー / 衣装デザイナー、外林健太。彼が2017年12月、初の写真集をリットーミュージックより発売した。BiSとGANG PARADEの全国7箇所を巡る2マンツアーに密着し、14人の女の子たちが行なったライヴ、楽屋裏、移動中の素顔を収めた写真集。なぜ外林は写真集を作ろうと思ったのか? そして彼にとって写真とは? ロング・インタヴューで迫った。また、今回外林の写真を撮ったのは、彼のスタジオマン時代の先輩フォトグラファー、大橋祐希。普段あまり見ることのできない外林の表情にも注目してほしい。

インタヴュー&文:西澤裕郎
写真:大橋祐希


単純に自信がつきました

──外林さんは、どういうきっかけで写真の仕事を始めたんでしょう?

外林健太(以下、外林):美術大学の服飾学科に通っていたんですけど、ビジュアルを表現する人は展示やポートフォリオを作るとき写真を撮れないと生きていけないので、写真も独学でやっていたんです。大学卒業後3年間働いてフリーになったけど、服の製作だけじゃ食べていけないから写真の仕事も始めて。ただ独学だったから舐められたし、ライティングの方法も知らないし、自分が撮りたい写真も撮れなかった。それで当時バイトでアシスタントをさせてもらっていたカメラマンの人に相談をしたら、「2年くらいで出れるからスタジオに入ったほうがいいよ」って言われて。30歳までにちゃんとしないとなと思っていたので、28歳でスタジオに就職しました。

──結婚はいつしたんでしたっけ?

外林:28歳です。

──じゃあ、結婚してからスタジオに入ったんですね。

外林:いや、合格してから向こうの親に挨拶に行ったんですよ。そこから2年間働いて、スタジオを辞めた日に子どもが産まれました。

──すごいですね! ドラマチック。

外林:ただ、そこからは暇で、子どもと遊ぶ日々ですね(笑)。

──スタジオでの2年間を振り返ると、どんな日々でしたか?

外林:初めての会社員でいろんな経験をしたし、今思えば楽しかったですね。

この日の撮影は、外林健太のスタジオの先輩・大橋祐希が行なった

 

──会社員のカメラマンって、どんな撮影をするんですか?

外林:あ、スタジオマンはカメラマンではなくて、貸しスタジオのスタッフなんですよ。カメラマンがお客さんで来て、そのアシスタントをする。「こういうライティングを組んで」って言われたら僕らが全部組まないといけない。要するにアシスタントのプロですね。普通は、スタジオで学びながらいいカメラマンと出会って弟子になって、その人から独立してやっとカメラマンって名乗れるんです。

──外林さんに師匠的な人はいたんですか?

外林:いないですね。28歳からアシスタントをやっているから、年齢的に師匠になるような人がいなかったんです。

──スタジオを出てから、撮りたいものは撮れるようになったんですか?

外林:単純に自信がつきましたよね。スタジオ時代って、雑誌をぱって開いて、その写真と同じライティングを組むテストをしたりするんですよ。最初は難しいんですけど、どういう照明を組めばいいかがだんだん分かるようになるし、それに従って自然光で撮った写真とは違うものが撮れるようになっていきました。

 

根本的に自分は物を作りたいとしか思ってない

──そもそも外林さんはどんな写真が撮りたかったんですか。

外林:わかりやすく言えばアー写とかジャケ写とかですね。もともとはファッション・フォトが撮りたかったんです。

──現在は写真だけじゃなく、衣装制作、デザインなどの制作もしていますけど、外林さんにとって写真はどういう位置づけのものなんでしょう。

外林:根本的に自分は物を作りたいとしか思っていなくて。成果物ができることをしたいんです。その道具がミシンとかカメラでしかない。カメラマンの人からしたら嫌な言葉だと思うんですけど、写真ってシャッターを押したら作品ができるじゃないじゃないですか? 自分が使える道具の中で1番時間をかけず物を作れるのがカメラなんです。

──形が違うだけで衣装も写真も一緒の成果物だと。

外林:やっていることは一緒だと思っています。

──衣装は自分のイメージに従って作れると思うんですけど、写真って対象物がいるから必ずしも自分のイメージ通りいかないんじゃないですか?

外林:ライヴ写真やドキュメンタリー写真に関してはオリジナルがあって、それを撮っているだけと思っているんですけど、アー写とかジャケ写は打ち合わせでイメージをすり合わせてから撮れるじゃないですか? あと写真でしか世に出せないものが撮れる。例えば、BiSHが海の前に立っているジャケ写があるとしますよね? お客さんたちは海の前に立ってるBiSHは見れないけど、写真を通してその姿を見ることができる。そういう意味での作り物として、すごいものを作りたいんです。

 

自分は0から発信できる人間じゃない

──とはいえ、アー写やジャケ写に関しては、レコード会社や事務所の意向もあったり、100%外林さんの思い通りにはいかないですよね?

外林:衣装も含めてなんですけど、オリジナルでできるなら自分で展示しているし、ブランドを立ち上げているし、個展も勝手にやっていると思うんですよ。それができないから、クライアントから仕事をもらって自分なりのやれることを全うしているんです。

──外林さんは自分のことをアーティストと思っていない?

外林:アーティストになりたいとは思っていますけど、自分は0から発信できる人間じゃないってことに美大にいる頃から気づいていて。美大の子たちはそんなことしか考えていないし、展示をして有名になってたりするけど、自分はできなかった。

いつもは見せないリラックスした表情の外林

 

──外林さんがそう思い込んでるだけで、実はできるんじゃないんですか?

外林:いや、できるんだったらやっていると思うんですよ。19歳で美大に入ってからやってきたことはたくさんあるんですけど、やり続けないとアーティストにはなれないし、それで食えないといけない。自分はクライアントがいて、その要望に応えてやっているほうが性に合っているのかなって。カメラマンで展示をしても無名だったら誰も見に来ないじゃないですか? 自分は成果物を表に出していくのができない人間なんですよ。それを手伝ってくれたのが渡辺(淳之介/株式会社WACK代表)さんだったんです。

──淳之介さんとの出会いが大きなきっかけだったんですね。

外林:めちゃめちゃでかいですね。たぶん出会ってなかったら本当に今何をしているかわからないし、この仕事はやってないかもしれないです。

──衣装も?

外林:やっていないと思う。諦めていたと思います。

 

自分の推しを1番かわいく撮れるのはその人
写真集では裏側を見せたいと思って撮った

──今回、BiS、ギャンパレのツアーの写真集を撮りたいっていうのは外林さんの発案ですよね? なんでこの提案をしたんでしょう。

リットーミュージックより発売中の写真集『BiS/GANG PARADE TOUR THE PICTURES』


外林:
OTOTOY
のインタヴュー(https://ototoy.jp/feature/2017100607)で、自分の写真に対して行き詰まりがあったって話したじゃないですか? BiSHを活動初期から撮っていて、写真で出来る限界を感じていたので方向転換をしようと思っている中、幕張の海でBiSHの写真を撮るという企画が生まれたりしたんです。そのタイミングで、BiSとギャンパレが2マンやるってことを知って渡辺さんに自費出版で写真集にしたいって話をしたら、今すぐ出版社に言うからって、10分後くらいに企画を通してくれたんです(笑)。

──それは2人の信頼関係があってこそですよね。外林さんはWACK所属グループのオフィシャル写真もライヴ写真も撮っているわけですし、全国ツアーのライヴ写真というのは貴重なものになるでしょうし。

外林:ただ、今ってお客さんがライヴ写真を撮れるじゃないですか? 今回は一般流通したからライヴ写真を入れたんですけど、それほどライヴ写真は必要ないかなと思っていて。逆にドキュメンタリー写真だと見る人によって全然見方が違うんですよね。それに自分の推しを1番かわいく撮れるのはその人じゃないですか。だから、写真集では彼女たちの裏側を見せたいと思って撮りました。ライヴ後、1回だけみんなぶっ倒れていたときがあったんですよ。BiSHの場合は、一切そういう姿を見せないんです。BiSHとは付き合いが長いからカメラを向いてくれる写真はあるんですけど、他の人でも撮れるんだろうなと思っていて、それはBiSHが悪いとかじゃなくて彼女たちは媚も売らないし、アーティストっぽくなってきている。逆に、ギャンパレやBiSはなんだったら楽屋に来い!! くらいの勢いで来るじゃないですか(笑)。

──確かに(笑)。ツアーに臨むにあたり外林さんの中で決めていたことはありましたか?

外林:とりあえず仲良くなるっていう目標を立てていました。カメラを向けたとき、普通にいえい!! ってポーズをしてくれるくらいラフな信頼がほしかった。向こうからしたら「衣装を作ったりジャケ写を撮ってくれる外林さん」って認識だったから、もうちょっと安心してもらえる立ち位置に行ければと思っていたんです。

『BiS/GANG PARADE TOUR THE PICTURES』よりBiSの楽屋風景

 

──撮影した写真の中から、使用するものはどうやって選んだんですか?

外林:うーーん。良さそうなやつとしか言いようがないですね(笑)。どういう構成にするかが最後まで案が出なかったんですけど、ぶっ倒れていた写真をメインに使いつつ、あとはエロいか、かわいいか、変なところが写っているものを選んでいます。あと、仲が良いのか悪いのかわからない行動をとっている雰囲気やニュアンスが詰まっている写真もあります。っていうのも、知らない人が写真集をめくった時に、なんなんだこの子たちは? 何をやっているの!? みたいな雰囲気で見れた方が、今のBiSとギャンパレはおもしろいかなと思って、そういう写真ばかりにしました。

1人1人、何かと戦っている顔をしていた

──キャッチコピーを、BiSGANG PARADEという区切りではなく、「14人の女の子たち」にした理由は?

外林:別に対バンライヴだからといって対決をするわけでもしないし、寄り添うことも、しゃべることもいつも以上にあったわけでもなかったので、BiSGANG PARADEでわける必要がなかったんですよね。女の子としての垣根はないから、14人の女の子でいいのかなって。BiSGANG PARADEの垣根はあるのに、このツアーではその垣根が全く見えなかったっていうのもあります。

『BiS/GANG PARADE TOUR THE PICTURES』よりGANG PARADEの楽屋風景

 

──ツアー終盤で淳之介さんから「外林が仕掛ければいいんじゃない?」って言われていたじゃないですか? それは外林さん的にはやりたくなかった?

外林:そういうわけじゃないんですけど、何も思いつかなかったんですよね。単純に僕の予想が外れただけで、喧嘩とかしてほしかったわけでもないので。

──上手い仕掛けが見つかったら仕掛けた可能性もあった?

外林:多分、やらないですね(笑)。話せるメンバーには話していたんですよ。「全然対立しないね」みたいに。お互い相手のライヴを観たほうがいいんじゃないって話は数人にはしたんですよ。

──たしかに、始まる前はもっとドラマが起こるんじゃないかっていう勝手な期待はありましたもんね。

外林:元々のBiSイメージもあるから、それもよくないのかなと思ったりもして。

──あえてかき乱すものではないと。

外林:うん、みんながふわふわしていたらなにか言ったかもしれないんですけど、1人1人、何かと戦っている顔をしていたから。

2017年12月20日(水)渋谷にて撮影

 

──僕も取材でライヴ前の楽屋に入るときがあるんですけど、メンバーが集中していたりするじゃないですか? そこに入ることを躊躇するみたいなことはあります?

外林:BiSとギャンパレは全然ないかな(笑)。BiSHのステージ前のオーラや覇気には自分が負けているというか、BiSHには思うときはあります。ギャンパレとかBiSはどっちかっていうと、一緒に円陣組みましょうとかスタッフに言ったりするし雰囲気が違う。真面目な打ち合わせしてたら話しかけるのは辞めておこうと思うんですけど、ここにいちゃいけないなとかって思ったことは1回もないと思います。

──ただ、どこまで介在していいのかっていうのは難しいですよね。

外林:難しいです。BiSとかギャンパレからすると、あまりカメラマンさんってイメージがないと思うので、常にいる人みたいな存在になろうと思って、わざとカメラ持ってかないとか、そういうことに気は遣ってました。「これ撮ってください」って言われても、わざと「今カメラ持ってないから」っていう話をするだけで、ちょっと変わることもあるので、そういう工夫はしていました。

 

ヒリヒリした、神経を研ぎ澄ませた写真を撮るのが自分

──ツアーを通して、メンバーとの距離は近づきました?

外林:近づいたと思います。その辺は、衣装、アー写、ジャケ写にもかなり影響していて。もしツアーに行っていなかったら今のギャンパレの衣装は作っていないと思うんです。前は客観的な部分しか見れなかったので、想像で作っていた部分もあったけど、中のことがわかってから作った衣装は全然違うなって。

外林がデザイン・制作したGANG PARADEの衣装


──
カメラマンさんって撮影する時に対象者とコミュニケーションをとってリラックスさせる人も多いですけど、外林さんはコミュニケーションをどれくらいとるんでしょう?

外林:一切とらないですね(笑)。というか、とれないんですよ。だから「カメラマンをやめろ」って渡辺さんから散々言われ続けた時期もあって。本当に人見知りだし喋れない。もちろん自分が頑張らないとヤバいなと思ったらコミュニケーションをとるんですけど、逆に相手を緊張させるぐらいの圧で撮りたいときもあって。和ませていい笑顔を作れるアイドル・カメラマンさんは多いので、もっとヒリヒリした神経を研ぎ澄ませた写真を撮ったりするのが自分なのかなと。5分以上何もしゃべらず撮り続けるっていうこともわりとしますし、撮られる側がおどおどしてくるくらいまで緊張感あるのが大好きなんです(笑)。

──あえて緊張感を作るんですね。

外林:そう。フェチっぽいかもしれないですけど、今ちょっとやばい!! っていう時の女の子の表情の方が好きかもしれない。BiSHとかはピリついたような澄み切った写真のほうがかっこいいなと思うんですけど、BiSやギャンパレはぐちゃぐちゃにがむしゃらにツアーをやっている写真の方が確実に映えると思うので、今回はそういう選び方をしました。そういう部分も楽しめる写真集なんじゃないかと思います。 

 

外林健太

外林健太(そとばやし・けんた)
フォトグラファー / 衣装デザイナー。RIM所属。BiS、BiSH、GANG PARADE、EMPiREといったWACK所属グループはじめ多数のグループの衣装やオフィシャル写真を手がける。2017年12月にはBiSとGANG PARADEの2マンツアーに密着した写真集『BiS/GANG PARADE TOUR THE PICTURES』をリットーミュージックより発売。
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