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【INTERVIEW】モモコグミカンパニーが語る、2冊目のエッセイ集『きみが夢にでてきたよ』

StoryWriter

BiSHのモモコグミカンパニーが、自身2冊目となるエッセイ集『きみが夢にでてきたよ』を2020年12月4日、全国書店にて一般発売した。

同書は、CAMPFIRE内で行われていたクラウドファンディング・プロジェクトを通して制作されたもの。4401名の支援者が参加し、モモコによる書き下ろしエッセイが毎週メルマガで送付され、最終的に印刷・製本して支援者の手元に届けられた。BiSHのモモコグミカンパニーになった彼女が活動を通して感じたことや、言いたいけど言えなかったこと、日々の生活の中で気がついたことなど書き下ろし全28話が収録されている。

『きみが夢にでてきたよ』の発売から約1ヶ月が経つ師走、本書について込めた想いや、発売後の気持ちなどをモモコグミカンパニーに聞いた。

取材&文:西澤裕郎
写真:大童鉄平


モモコグミカンパニーの一部をえぐり出して踏み込んで書けた

──『きみが夢にでてきたよ』が出版されて約1ヶ月が経ちました。率直に、本になった今の気持ちを教えてもらえますか

モモコ:いろいろな人に手にとってもらったり、『王様のブランチ』で取り上げてもらったりしてすごく嬉しいのと同時に、本という形になったことが自分の中ですごく大きくて。前作『目を合わせるということ』は素人だった自分がBiSHに入った時期にしか書けなかった言葉で、今作はBiSHで活動しているモモコグミカンパニーの状態を形に残せた。私がおばあちゃんになった時にも、今年を振り返ることができる。それがすごく大きいです。

──本プロジェクトの企画を話し始めた4月頃は、コロナ禍で外に出れない時期が続き、それまで感じたことのない不安もありました。当時のモモコさんが記した言葉が残っていることはとても貴重ですよね。

モモコ:コロナ禍で本当に気持ちがしんどかったときもあったんですけど、それ以上に、当たり前すぎて見えていなかった大切なものに気づけた時期でもありました。BiSHやモモコグミカンパニーは、ファンの人たちの愛情や想いがあるからやっていけているんだという根幹の部分を見た気がしていて。人の心と心の繋がりを感じたんです。そのとき改めて、やっぱりBiSHってバンドだなと思えたんですよね。バンドって、心の魂で歌っている人が多いじゃないですか。BiSHも心から歌っているんだなということを実感できたし、誰かがつらい時に支えることができる音楽を発信していたのかもしれないことが誇らしく思えた。実際、自分が自分の音楽に支えられていたんです。BiSHのバンド性を強く感じた時期でもありました。

──そういう意味では、『きみが夢に出てきたよ』はモモコさんの心の叫びを文章で表現した作品とも言えますよね。

モモコ:このエッセイには、私の1番ダークな部分も書いているんです。一生言いたくもないし、見せたくもないと思っていた部分をさらけ出した。それによって、自分自身もすごく救われたし、1人じゃないと思うことができたんです。モモコグミカンパニーの一部をえぐり出して、自分に対して踏み込んで書けたことがすごく大きかったですね。

──日記は自分しか読み返さないものですが、エッセイは読まれることが前提の文章となります。モモコさんの中で、どう書き分けたんでしょう。

モモコ:日記は毎日の出来事が中心になるんですけど、今回のエッセイはそれより何倍もエネルギーが必要でした。私が1人の人間として、どれだけ自分を見つめられるかの闘いたった。それと同時に、ファンの人との対話でもありました。毎週エッセイをメルマガ配信していたんですけど、モモコグミカンパニーは私だけの物語ではないし、いろいろなファンの人の人生に組み込まれているので、その人がどうやって私に出会ってくれたのか、どういう気持ちでいるのかを聞きたかった。私の声よりファンの人の声の方がめちゃくちゃ貴重だなと感じながら、1つ1つのコメントを大切に読んでいましたね。

──エッセイを配信するたびに、支援者のみなさんからコメントを受け付けていました。支援者のみなさんも、自分自身との向かい合ったコメントが多かったですよね。

モモコ:ファンの人が、モモコグミカンパニーやBiSHに自分自身を反映してくれていることは絶対にあると思うんです。そういう意味で、私やBiSHはファンの人たちの鏡になっているというか、自己反映でもあるのかなと感じるコメントが多かったと思います。

──モモコさんは、自分の意見と全然違うコメントがあってもいいし、むしろそういうものを見たいということもよく言っていましたよね。

モモコ:私自身、自分の世界に入り込みやすい人間なんです。私の世界からはこういう景色が見えているけど、みんなからはどう見えているんだろうと、すごく気になる。それはBiSHに入ってからもそうで。メンバーが同じことをしていても全然違う気持ちでいたり、違うことを言っていることも少なくない。この世界に入ってから、自分の考えが全てじゃないって痛感したんです。同じようにBiSHのことを好きでいてくれる清掃員(※BiSHファンの総称)には本当にいろいろな人がいるので、その人の脳内や心を見られることがすごく貴重だったし、私の視野も広げてくれると思って読んでいました。

──たしかにBiSHは6人6様で、それで共存しているのが魅力ですよね。

モモコ:BiSHは6人個性豊かって言われることが多いけど、それにも増してファンの人が個性豊かなんですよね。だからこそ、ファンの人からの目線もすごく気になる。1対1の人間として、全部すごく貴重な意見だったと思います。

──約5ヶ月間、毎週コメントをもらいながら書き進めていったわけですが、コメントによってモモコさんの書くものに変化はありましたか?

モモコ:かなりありました。ファンの人からコメントをもらって、エッセイ内に付け足したものがいくつかあります。自分の脳内や見ている景色だけでは書けなかった作品だと思いますね。ファンの人って全部肯定してくれるのが普通かもしれないけど、意外と違う意見もあるはずだし、そういうコメントが活かされていると思います。だからこそ、全然BiSHを知らない、モモコグミカンパニーって誰? という人が読んでもおもしろい本じゃないかなと思うんです。

──こういう形で読者と対話をしながら色を変えつつ本にするというのは、もう1回やろうと思ってもなかなかできない試みですもんね。

モモコ:今の時期だったからこそ、みんなの声がダイレクトに届いたのもあったと思うんです。普段だったら、いろいろな選択肢がありすぎるじゃないですか? 例えば、ライヴに来るとか、特典会に会いにいくとか。それができなかった時期だからこそ、ファンの人もBiSHとか私に対してどういう考えを持っていたのか改めて見つめ直してくれたのかなって。むしろ私以上に見つめ直してくれたかもしれない。そうしたファンの人の言葉を形にできて残せたのはすごくうれしかったです。私にとって宝物です。

この本は支援者の方たちとの共作だと思っています

──プロジェクトを始めてわりと早い段階から、自分が作ったと思える本になりそうだ、という手応えをモモコさんは口にしていましたよね。

モモコ:もしもファンの人と対話しながら作っていなかったら、今ほど自信を持って「書きました!」と言えなかったかもしれない。本当に力をたくさん借りました。だからこの本は、支援者の方たちとの共作だと思っています。

──本の中に掲載している撮り下ろし写真も、これまでのモモコさんとは違ったテイストになっています。

モモコ:洋服もメイクも髪色も全部自分で決めてセットしたんです。今のモモコグミカンパニーの内面はこんな感じです、という外見を自分で作り上げたので、生々しい写真になっていると思います。

──『きみが夢にでてきたよ』というタイトルは、どうやって考えついたんでしょう。

モモコ:家の近くにある歩道橋の上から道路や空を眺めるのが好きで、散歩をしながらふと思いついたんです。Twitterでエゴサをすると、毎日絶対に1人か2人は私が夢に出てきたって人がいるんですよ。私と会ったことがなくても夢に出てくるって、冷静に考えてすごいことだし、その逆で私の夢にファンの人が出てくることもある。ステージに立つ私とファンという関係性があるからこそ、お互いの夢に出てくる。不思議な関係だなと思ってつけました。

──最初にタイトルを聞いたとき、この作品にふさわしいなと思いました。

モモコ:ふと、これだ! と思ったんです。エッセイ集なんですけど、小説始まりっぽいプロローグを書かせてほしいと言って、最後に書き足しました。この本のいいたかったことがプロローグに詰められていると言ってもいい。まずは最初の1、2ページだけでも読んでほしいですね。

──読者の方たちからは、どんな反響や感想がありましたか。

モモコ:自分自身と向き合うきっかけになった、という感想をもらうことが多くて。それがすごく嬉しかったですね。私も普通に生きている人で、なんらあなたたちと変わりはない。むしろ、あなたたちより出来ないことが多いし、人見知りだし、弱い部分が多い。いろいろなことと戦ってしんどいなとか、その一歩を踏み出す原動力になったらいいなと思っていたので、「自分自身と向き合うきっかけになった」という感想や、一歩を踏み出す原動力になったと言ってくれる人がいてくれて、書いてよかったなと強く思います。

──今作を書き終えて、次はどんなものを書きたいと思っていますか。

モモコ:エッセイはずっと書き続けていきたいと思っていて。詩も書きたいし、小説も書きたいという気持ちがあります。

──モモコさんの小説を読みたいという声は、けっこうよく聞きますよ。

モモコ:ほんとですか? 私は自分の人生で自分が残したいものを書くがモットーなんです。言葉とか、その時に見えている景色って本当に儚いものだから、今の自分にしか書けない、自分にとって1番価値があるものを書きたい。そういう自然な流れで、また書ければいいなと思っています。

──エッセイか、小説か、詩になるかはわかりませんが、そのときのモモコさんが反映された作品になりそうですね。

モモコ:本当にそういう形で書きたいですね。今作も自然な感じで書くことができた作品なんです。2020年は、本の制作がなかった人生なんてありえなかったしそれくらい本を書くことに助けられた1年でした。だから、次になにかを書くとしても、そういう気持ちで書きたいなと思っています。


■商品情報


著者:モモコグミカンパニー(BiSH)
タイトル:『きみが夢にでてきたよ』
発売日:2020年12月4日(金)
税抜価格:1,500円(税抜)

装画・題字:うすた京介
写真:オノツトム
装丁:渋井史生(PANKEY)

ISBN:9784909877048
発行元:株式会社SW
発売元:日販IPS

・住野よる / 帯コメントより
一人の女性と彼女のファン達が共に創り続ける、“モモコグミカンパニー”という作品のはらわた部分が書かれている。その中身は、決して甘くない。

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