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StoryWriter

同伴、それは君が見た光。僕が見た希望。同伴、それはふれあいの心。幸せの甘い時。

そう、その通り。同伴とは、キャバクラを愛するものにとっての希望という名の光であり、キャバクラという沼へとハマっていくものにとっての蜘蛛の糸。しかし、それを知るのはもっと先のこと。

私は、ファーストコンタクト以来、思いを募らせ続けた嬢と久しぶりに会えることに心をときめかせていた。しかも、人生初めての同伴である。

同伴なんてカッコ悪い…… そう思っていた時代が自分にもあった。キャバクラ嬢と店の外で会い、そのまま店に連行されるなんて。だがしかし、ものは考えよう。どうせ店に行くのであれば同じことだ。外で嬢と会うことはキャバクラとは関係のないデート、だと思い込めば良いのだ。そう、これは同伴というビジネスライクな施策などではないのだ。

「楽しみだにゃん」

嬢からのLINEにテンションが上がる私。これはデート、デートなのだ。恋人とのデートがごとく、初めての嬢との食事をどこでしたら良いのか丹念に調べる私。失敗は許されない。

「何食べたいかなー?」

LINEで訊いた私に対し「まかせるよー」と、2日後に返信してきた嬢。2日間の熟考の末の、「おまかせ」。嬢は私にすべてを委ねてくれたのだ。その思慮深く慎ましやかな姿勢に、思わず身が引き締まる。

そうだ、食べログだ。食べログにまかせよう。私は、嬢からまかされたバトンを、食べログへと渡す。インターネットの時代に生まれてきて良かった。食べログがあるのだから。嬢にお伺いを立てるべく、いくつかの店をピックアップする。そして、私は結論に達した。

「外苑前のイタリアンの店とかどうかな?」

己が遥かに年上であることを最大限に意識した結果、ジローラモという存在を生まれて初めて肯定し参考にした末のチョイス、イタリアン。私なりに、精一杯格好をつけた街とジャンルを、嬢にLINEでプレゼンする。だてに長年派遣でテレアポの仕事をしているわけではない。提案ならお手のもの。

「どうかな~?」私は自信に満ちた言葉と共に、相反するように可愛らしいポムポムプリンのはてなマーク・スタンプをセットで送ることで、嬢の心を掴む作戦に出た。ジローラモ・ミーツ・りゅうちぇる。男としてのギャップを感じさせることが大事なのだ。

LINEを送り、待つこと18時間。結構、待った。そして嬢からのメッセージが届いた。

「イタリアンは、いいかな」

いいかな、とは。食べたくないということなのか。一瞬にして砕け散る私のプラン。あんなに調べたのに。しかし嬢の気が乗らないのならば仕方がない。さらば、ジローラモ。そして、再び食べログを頼る私。そこに届いたLINE。

「この焼き鳥屋さん、美味しいらしいよ!」

嬢からの、助け舟。食べログのリンクが送られてきた。これほど助かることはない。ありがとう、嬢。「どこにある店なのー?」私は尋ねた。

「店の、ちかく!」

嬢が所属する店付近にある、焼き鳥屋。

「歩いてすぐだよ!」

私は、初めてのデート(同伴)を嬢のテリトリーで行うこととなった。

〜第3回へ続く〜

※「【連載】アセロラ4000「嬢と私」」は毎週水曜日更新予定です。

アセロラ4000(あせろら・ふぉーさうざんと)
月に一度のキャバクラ通いを糧に日々を送る派遣社員。嬢とのLINE、同伴についてTwitterに綴ることを無上の喜びとしている。未婚。
https://twitter.com/ace_ace_4000

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