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【連載】なにが好きかわからない Vol.13「仮面ライダーアマゾンズ」

StoryWriter

こんにちは、電車で座ると両隣を空けられがちな僕です。

就活云々を手短に話させていただきますと、前回の「スーパーイケメン」「秀才」「明朗快活」の三銃士が揃ったグループ面接、何とか通過しておりました!!! 歓喜!!!

通過の連絡が来たときは素直に嬉しかったのですが、時間が経つにつれて「あの面接官のあんちゃん、実は僕と同じサイドの人間だから、気後れしている僕を見て可哀想に思って、慈悲の心で進めさせてくれたのかな?」などと思い至っております。ええよ、それでもええんや。

慈悲の気持ちでもいいからチャンスをくれるっていうことが嬉しいんです。

ただ思ったのが、企業研究って意外と効果あるのかな? ということ。結局、相手に媚びて好かれそうなポイントを控えておくってことができないとダメなんですね。もっと早く知っておくべきでした…。

さて、今回お話させていただくのは、こんな就活サバイバルを生き抜く僕らの投影かな?

仮面ライダーアマゾンズ」です。

仮面ライダー… 僕は小さい頃から仮面ライダーの名を冠した作品であれば、昭和・平成シリーズ問わず何でも鼻息を荒くしてしまう仮面ライダー・ヤリチンでした。小学校の頃は同級生が誰も知らない昭和の仮面ライダー作品に出てくる怪人のモノマネとかしていたものです。毎回敵の悪だくみを嗅ぎつけては、ちょっとボコボコにされたあとに、ライダーキック!!! キックキック!!! あぼーん!!!!

… よくもまあこんなワンパターンな作品を飽きずに数十作も観ていたものだと思います。

そんな子供向けで勧善懲悪なヒーローシリーズで、幾つか大人向けというか、ちょっとストーリーに凝った作品もいくつかあるんですけど、その潮流の中で生まれた昨今の名作「仮面ライダーアマゾンズ」。これがまあアツい、アツい! 劇中で仮面ライダーなんて呼称も使われないシリアスさ。手足は引きちぎる為に、喉笛を嚙みちぎられる為にあるのではないか錯覚しかねない描写の連続。

簡単にあらすじを説明します。野座間製薬の極秘研究で生まれた人工生命体アマゾン。ある日、トラブルで4000体もの実験体が脱走することになってしまいます。彼らは普段人間に擬態していますが、薬が切れてしまうと食人本能を抑えきれず人を襲い… 主人公の水澤悠もある日、日課の注射を拒絶すると本能のままに家を飛び出し、アマゾン駆除班によるアマゾン狩りの場面に出くわしてしまい、自身もアマゾンへの変身を遂げてしまい… というものです。

作品全体として薄暗く、コミカルな要素なんて何一つありません。ひたすら殺すか殺されるか、身体のどこかを噛みちぎられるか、或いは引きちぎられるかの戦闘シーンの連続。序盤はアマゾンである自分に気付いてしまった主人公の苦悩が描かれており、やがて人を食べたくないと苦悩するアマゾン達に出会う中で「守りたい人ならアマゾンでも人間でも守るし、狩りたい人もアマゾンだろうと人間でも狩る」、正に自分の欲するままに行動する野性(アマゾン)としての生き方を選びます。色々細かい理詰めの制約がある現代に中指を立てるような戦い方に僕は毎回ドキドキスッキリしておりました。

 

アマゾンズを観るたびに思うんですけど、人間ってやっぱり動物なので自分の心からの欲求、自己意志の赴くままに行動するのが絶対良いに決まってるんですよね。秩序がないもの、野性的なものを見て「汚らしい、動物みたい」っていうことを言う「行儀の良い人」を見かける度に「この人って相当良い教育受けてきたんだろうなあ、育ちが良いんだろうなあ」って僕は思うんですが、このいわゆる「理性的」であるという事に憧れ、自分もこうなりたい! と思ったことはなくて… なんで節操あることやルールに対してそんなに意識を向けて生きているんだろうって思ってしまうんですよね。特に現代ってそういうのが多いと思っていて。

マイノリティの保護だとか色んな規制ってすごく理性的なものですよね、自然界に元来ないものを無理矢理作り出してるわけですし。本来ならいわゆる強者の生きやすさが100、弱者の生きやすさが20であるというのが当たり前の世界で、皆が等しく60くらいの生きやすさを享受しようっていう秩序の世界を創ろうとしている気がしているんですけど、そうすることによって既に100の生きやすさを享受できる人間にとって窮屈で生きにくい、究極的に言うと小さな不幸が既に始まっていると思うんです。だから皆がそこそこの生きやすさで我慢しないといけなくて、それが100にはなれないなって。

僕自身そういう風に考えている部分もあって、僕は皆が競争社会にあって100を目指す、その過程で10しか生きやすさを享受できない辛いことがあって必死にもがく、そういう状態の方が生きているってことなんじゃないかな。自分がやりたいことに対して、他者への配慮とか深く意識しすぎずに向かっていける状況をもっと作り出せたら、もっと活力を持てるんじゃないかなあって思ってます。

あまりに社会の潮流に反したことばかり言ってしまいました。気を悪くされた方は申し訳ないです。でも生きるってそういうことですよ、きっと。

既に左腕右足くらいは引っこ抜かれたような僕の就活ですが、それでも社会の中で勝てるように、他の就活生の手足を噛みちぎりながら内定を得たいと思います。

それではまた来週。

次回はもうちょっと頭よさそうな話を書きたいですね、ガハハ!

※「【連載】なにが好きかわからない」は毎週木曜日更新予定です。
エビナコウヘイ(えびな・こうへい)
1993年生まれ、青森県出身。進学を機に上京し、現在は大学で外国語を専攻している。中国での留学などを経て、現在では株式会社WACKで学生インターンをしながら就職活動中。趣味は音楽関係ならなんでも。
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