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なぜ、彼らはTHE 夏の魔物で演奏を続けるのか?──バンドメンバー4人が語るロックのあり方

StoryWriter

左から、えらめぐみ、ハジメタル、komaki、越川和磨

ロックフェス〈夏の魔物〉を主催する成田大致が2017年に結成した“ペンライトをふれるロックンロールバンド”、THE 夏の魔物。5人のフロントマンをサウンド面で支えるのは、越川和磨(Gt.)、ハジメタル(Key)、えらめぐみ(Ba)、komaki(Dr.)といった強力なバンドメンバーだ。スーパーバンドと言っても過言ではないメンバーで構成された4人は、どのようなことを思いTHE 夏の魔物で演奏をしているのか。ライヴ前の4人に話を訊いた。

インタヴュー&文:西澤裕郎
写真:Jumpei Yamada


ヨコイチでの人間同士のコミュニケーションがまだ薄い

──前回のインタヴューで「THE 夏の魔物は図らずしもロックンロールバンドになった」と成田くんが言っていましたが、転換期なのかなという気もします。そのあたり、みなさんはどう思われますか?

越川和磨(以下、越川):はっきり言ってバンドって積み重ねて出来上がるものなんですよ。

えらめぐみ(以下、えら):西さん(越川)がおっしゃる通り、私もバンドは積み重ねだと常々思っていて。去年の〈夏の魔物〉のフェスとか、新宿JAMでのフリーライヴ以降、サウンド面で変わったって言ってくれるお客さんや関係者の方がけっこういるんですけど、それはバンドとしての積み重ねによる共通認識がようやく形になってきた時期なんじゃないかと。

──JAMのフリーライヴでバンドが変わったと成田くんは言っていましたが、バンドメンバーのみなさんにもその感覚はあるんでしょうか?

えら:それは前の歌を歌う5人が、ライヴハウスでライヴをやることへの理解が一歩深まったのかなっていうことだと思います。

越川:確かにそれ以降、いろんなことが起こり始めたなとは思っていて。ちゃんとコミュニケーションを取らなかった結果、大内くんが辞めるかもしれないってこと(>>リリース消滅、大内雷電の脱退発言、バンド最大のピンチ──THE 夏の魔物、約1年を赤裸々に語り尽す)にも繋がった。ヨコイチでの人間同士のコミュニケーションがまだ薄いというか、バンド云々とかじゃなく、(成田)大致はやり方が下手くそだなって思うんですよね。悪いやつではないんですよ。不器用というか。

 

──そういう成田くんの性格を知りながら、これだけのスーパーバンドのみなさんが、THE 夏の魔物を続けているのがなんでなのか不思議なんです。

越川:俺は単純に音を出せれば場所は問うてないし、足を突っ込んだ以上、情というか、メンバーとして、よりいいところに行きたいと思うんですよ。ただ、どこまで足を入れていいものなのかは難しい問題で、ハジメくんが最初よく「そこまで足つっこむのは違うと思うよ」って言っていて。

ハジメタル(以下、ハジメ):まあ、すでに十分突っ込まされていますけどね(笑)。

越川:あはははは。

ハジメ:僕の中では、前に立つ5人と一緒にやっているってイメージがあって。例えば、ドラム、ベース、ギターのバンドで、誰か1人いなかったらライヴはできないと思うんですよ。だけど、アイドルグループには1人いなくても平気でやっている人たちもいて、魔物にもそういう名残はまだあるよなと正直思います。

──えらさんも魔物歴は長いですよね。

えら:私は、一緒に音を出したいメンバーとバンドをやることがすごく大事で。西さんとハジメさんは、私がバンドを始める前から知っていた先輩で、ぜひやってみたいと思って始めました。最初のころは毎回メンバーが違って、私の中でこれはバンドじゃないと思って「こういう形だったらできないです」って言おうと思ったんですけど、そのタイミングで「ちゃんとバンドになりたい」って言われ、そういうことならとことん付き合いましょうということになりました。楽器を持っているメンバーと前の5人の乖離みたいなものは、いろんな面でまだあるんですけど、一緒にやっているうちにみんなのことを好きになったし、今はどうしたらみんなの理想の方向に近づけていけるか考えながらやっています。

大致は誰もやれなかったことをやろうとしている、それだけは忘れるなよって

──そんな中、komakiさんがドラムとして加入したことは大きな変化ですよね。

komaki:ドラムを探しているって話が人づてであって、日程が合うしやりますよって言ったら、1週間以内にレコーディングが決まって。その1ヶ月後くらいにシェルター2デイズがあって、1ヶ月くらいかけて目の前にある音符を一生懸命追いかけて30曲近く叩けるようになったら、今日のインタヴューがきたって感じなんです。

ハジメ:もしkomakiくんが無理ですって言っていたら成り立っていない話なんですよ。だから、もっとkomakiくんに感謝しないといけないし全然足りないと思う。

越川:まあ、大致も大致だけど、komakiもkomakiやで。

一同:あはははは。

えら:なんで引き受けちゃったの〜?

komaki:言っていいのかわからないけど、前5人とやりたいっていうよりは、えらちゃんと一緒で、正直この3人とやってみたかった。自分がバンドをやり始めるときにミドリの野音のDVDを見てなんじゃこれはと思ったし、毛皮のマリーズを聴いていたから。20代前半から聴いていた人に食らいついていこう、がメインにあった。正直、まだ魔物というものを3割くらいしか知らない状態なんですけど、いろんなインタビューで「komakiくんが加入したメンバー」みたいに書いてあって、ああそうなんやと思って(笑)。別に嫌とかではないんですけど。

越川:それがさっき言った大致の頭の中で全部が完結しちゃっているってことで、「こう決めました。お願いします」っていうのが大半なんです。そこが彼のよさでもあるかもしれないし、悪いところでもあるかもしれない。komakiに関しては本当によくやったよなって思いますよね。この短いスパンの中で、レコーディングした上に、何十曲も覚えてきて。

ハジメ:komakiくんも相当苦労人なのでね。

越川:さっきの、なぜ続けられているのかっていう質問は、演奏する4人がリスペクトを持っているからで、komakiがこう叩いてきたからこうしようとか、えらちゃんがこうきたからこうしようとか、そういうコミュニケーションの中で関係性が作り上げられてきたからなんです。今までメンバーが入れ替わっていったのは、そのコミュニケーションがなかったんじゃないかな。その中で、みずほ(※麻宮みずほ/2017年10月にTHE 夏の魔物を脱退)は「西さん、本当にやりたいことがあるってメンバーに言いました」って言ってきてくれて、俺は「お前すげえじゃん」って褒めたんですよ。みずほは自分からメンバーに歩み寄ったというか、「本当はこういうことをやりたいからやりません」って伝えた。それは素晴らしいことだし、重要じゃないですか。どういうことをグループでやっていきたいかをちゃんと考えていかないとズレていくっていうか、ぶつかる感じはあるだろうなって。やりたいことをこっちはうまく咀嚼してなんとかしようとするんですけど、もうちょっと前の5人が各々アイデンティティを持って出してくれればこっちも飛び込んでいけるんです。5人はまだふわふわしているというか、固まっていない。はっきり言って我々が前に出てめちゃくちゃするのは簡単なんですよ。

ハジメ:簡単ですね。

越川:それしかやってきていない人たちなので叩き割ることなんて簡単なんです。だけど、それじゃ魔物としてのショーとして成立しないんですよ。例えば、えらちゃんが怒って帰りましてって日があっても、この4人のバンドだったら成立するんですけど、魔物を見にきたお客さんからしたらそうはならない。

えら:さっきハジメさんが言っていましたけど、バンドはだいたい1つのバンドに1つのパートが1人ずついるから分業になっているんですね。自然とメンバーありきで、ものの考え方が培われていく。もし本当にアイドルの側面を完全に捨てて、ロックバンドになりたいんだったら、バンドの考え方に頭からシフトしていかなきゃいけないのでは? と思うんです。

越川:ジャンルとしてのロックンロールっていうのは誰でも言えるんですよ。でも大致は誰もやれなかったことをやろうとしている。それだけは忘れるなよって。そこ太字で書いておいてください(笑)。

──それは本当に思います。魔物の異物感は誰も真似できない。

越川:俺たちがわからないだけで、誰も思いつかなかったビジョンがあって、それをやろうとしているんだったら楽しみにしています。

komaki:見ていると、成田くんは俺と似ているなと思うところもすごくあって。同い年っていうのもあるんですけど、俺よりもまだ青春を引きずっている感じがする。ロックンロールって、感情むき出しでいつもキレているのかっていうとそうじゃないことのほうが多いというか。どこか冷静な自分がいて激しく見せることに気づいてしまった自分と、それを否定したい自分が行ったり来たりしているように俺には今見えている。自分がやれることとして、成田くんがライヴ中に後ろを向いた瞬間に変な顔をしてみたりすると、すごく喜んでくれていることには気づいていて。まだ俺は下手くそだし早く技術でも追いつきたいんですけど、俺のめちゃくちゃ感が成田くんの救いになったらいいなって少しだけ思っています。

ものすごくエネルギーのあるものに対して、どうやってうけて返すかがバンドにとって重要

左から、えらめぐみ、komaki、越川和磨、ハジメタル

──バンドらしくなってきたという点で、新曲「さよならメモリー」は西さんと成田くんがスタジオに入って一緒に作った楽曲なんですよね。

越川:どうやって曲を作っているのか聞いたら、鼻歌をボイスメモに録って送るんですって言われて。自分はそういうやり方でやったことがないのでスタジオに呼んだんです。俺とやるときはそうしようって。レコーディングも別々のところでやることが多くて。みんなスケジュール的に集まるのが難しいし申し訳なくはあるんですけど…… 僕もハジメくんもとんでもないリーダーのいるグループにいたわけで、わけのわからない指示とかキレられ方をしてきているんですけど、大致はキレもしないし気を使っている部分もある。年上だから怒れないってところはあるんだろうけど、もっとガシガシ言ってきて、突き抜けてやったほうがいいんじゃないかなって。

ハジメ:その突き抜け方も大いに間違えそうですけどね。

一同:(笑)。

越川:でも、ものすごくエネルギーのあるものに対して、どうやってうけて返すかっていうのはバンドにとって重要。そのぶつかり合いを歌やパフォーマンスで返して底が上がっていけばいいなと思うんですよ。根本的にこれでいいのかって自問自答をしてほしい。komakiは2DAYSの1日目終わったあとに練習に行ったんですよ。それって、自問自答の末の結果じゃないですか。明日もっとこうしたいから練習しておこうって。これはすごく重要なことで、komakiはそこまでやっているから、1ヶ月の中で30曲以上を叩くことができる。ライヴが終わったら普通は飲んで帰って寝たいんですよ。体を使うパートだし、しんどいじゃないですか。それでも彼は行くんですよ。そういうところをバンドメンバーは見ているからリスペクトしますよね。だったら俺らもってなるし相乗効果はある。そういう、お互いにリスペクトして高め合うなにかが5人の中であると、おのずとやりたいことが1つになると思うんです。それくらい、このインタビューをちゃんと読んで考えてほしいなと思いますね(笑)。


LIVE REPORT : La.mamaの魔物

バンドメンバーへの取材後、渋谷La.mamaにて、THE 夏の魔物のフリー・ワンマン・ライヴ〈La.mamaの魔物〉が行われた。

開演時間になると、ゲストの伊藤賢治がグランドピアノ1台で弾き語りを披露。持ち時間20分で2曲を演奏する以外トークをするというまさかの展開で会場を盛り上げ、同じくゲストの団長(NoGoD)のDJに。今回のフリーライヴは夏の魔物2018のプレイベントということもあり、本祭に出演するアーティストの楽曲をトークしながら盛り上げていく。最後はクリトリック・リスの「バンドマンの女」で一体感を生み出し、THE 夏の魔物へとバトンを繋いだ。

「THE 夏の魔物、出てこいやー」という観客の呼び込みにSEが鳴り響き、THE 夏の魔物がステージに登場した。

いきなり新曲「音楽の魔物」で成田がシャウトし、ゴリゴリのバンドサウンドとともにライヴがスタート。ドラムにkomakiが加入したことにより、明らかに全体のサウンド感が変わった。よりソリッドで疾走感のあるオルタナサウンドは、ダイレクトに聴き手に突き刺さってくる。「バイバイトレイン」では泉茉里と成田大致のツインヴォーカルが美しく混じり合った。

MCで成田は「La.mamaはイノマーさんとライヴした場所。今日、本当は対バンしてほしいってことを連絡したんですけど、ニュースで(口腔底がんになったことを)知って。シェルター2デイズの後に電話して、またLa.mamaでやりましょうよって話をしました。音楽続けていればいろんなことがある」と、話す予定ではなかったといいながらしみじみと語った。

そこから「しゅきぴ(仮)」、越川によるリフが印象的な最新曲「さよならメモリー」を披露。「グラストンベリーやレディングフェスばりのらららの合唱でお願いします」という成田の言葉に応え、客席との合唱で本編は幕を閉じた。

鳴り止まないアンコールに登場すると、再び「さよならメモリー」のリフが鳴り響く。「みんな想像してくれ! ここは苗場かもしれない、グラストンベリーやレディングフェスかもしれない。大合唱をお願いします! みんなで作っていきましょう」と成田が叫び、本日2回目の「さよならメモリー」を歌うと、「俺たちはどんどんバンドを続けていくし、どんどん作品をリリースしていって、みんなの大切な思い出の1ページに残るような曲を作っていくのでこれからもよろしくおねがいします! 俺がずっとやり続けている曲をやります」と、成田が歌い続けてきた「恋愛至上主義サマーエブリデイ」を歌い〈La.mamaの魔物〉は終了した。

最強のバンドメンバーと、フロントマン5人が、これからどのような形で混ざり合い進化を遂げていくのか。誰もやっていない道を進むことがロックンロールであるのであれば、THE 夏の魔物はその道を恐れずに進んでほしい。そんなことを思うライヴであった。

■夏の魔物2018プレイベント THE 夏の魔物 フリーワンマンライブLa.mamaの魔物
2018年8月3日(金)渋谷La.mama
セットリスト
1. 音楽の魔物
2. 魔物BOM-BA-YE ~魂ノ覚醒編~
3. SUNSET HEART ATTACK
4. バイバイトレイン
5. 日々のあわ
6. しゅきぴ(仮)
7. さよならメモリー
en1. さよならメモリー
en2. 恋愛至上主義サマーエブリデイ


■作品情報
THE 夏の魔物「音楽の魔物」
品番 : NNMM-0005
販売価格 : 1,080円(税込)
販売店舗 : タワーレコード新宿店 / 渋谷店 / 難波店
販売期間 : 2018年7月20日(金)各店舗開店時間より販売開始
収録楽曲 :
1. 音楽の魔物
2. ケモマモハート

自主企画情報
THE 夏の魔物 presents
アイドルだとか、バンドだとか、そうじゃねえとか、あぁうるせぇ !!!!
2018年8月22日(水)TSUTAYA O-nest
時間 : OPEN19:00 / START 19:30
出演 :
THE 夏の魔物
BILLIE IDLE®
二丁目の魁カミングアウト

フェス情報
UDO ARTISTS 50th Anniversary 夏の魔物2018 in TOKYO
2018年9月2日(日)お台場野外特設会場J地区
時間 : OPEN 9:00 / START 10:00
一般発売 7/28 10:00~
出演 :
サニーデイ・サービス
でんぱ組.inc
筋肉少女帯
SPANK HAPPY
ROVO
忘れらんねえよ
ベッド・イン
どついたるねん
トリプルファイヤー
ART-SCHOOL
向井秀徳アコースティック&エレクトリック
田渕ひさ子
おやすみホログラム×アヒトイナザワ
THERE THERE THERES
スパルタローカルズ
Hermann H.&The Pacemakers
HUSKING BEE
eastern youth
前野健太
頭脳警察
羊歯大明神(遠藤ミチロウ、山本久土、石塚俊明、関根真理)
ラフィンノーズ
SA
百々和宏withウエノコウジ
KING BROTHERS
DMBQ
MAD3
デキシード・ザ・エモンズ
SCOOBIE DO
ザ50回転ズ
Sundayカミデ
爆弾ジョニー
Wienners
tricot
バックドロップシンデレラ
魔法少女になり隊
アーバンギャルド
Shiggy Jr.
the twenties
キイチビール&ザ・ホーリーティッツ
おとぼけビ〜バ〜
挫・人間
GANG PARADE
ゆるめるモ!
桜エビ~ず
Negicco
夢みるアドレセンス
アップアップガールズ(仮)
せのしすたぁ
ぜんぶ君のせいだ。
ゆくえしれずつれづれ
フィロソフィーのダンス
RINGOMUSUME(りんご娘)
ENGAG.ING
吉田豪
杉作J太郎
DJ掟ポルシェ
高野政所
鹿野淳(MUSICA)
DJやついいちろう
新しい学校のリーダーズ
クリトリック・リス
二丁目の魁カミングアウト
椎名ぴかりん
倉持由香
カンパニー松尾
爪 切男
伊藤賢治
スーパー・ササダンゴ・マシン
THE 夏の魔物
and more…

◯夏の魔物2018 in OSAKA
日時:9月9日(日)
会場:大阪・味園ユニバース
一般発売 7/28 10:00~
ACT:
鮎川誠(シーナ&ロケッツ)
フラワーカンパニーズ
人間椅子
大槻ケンヂ(形態未定)
ROLLY
THE NEATBEATS
KING BROTHERS
奇妙礼太郎
Sundayカミデ
TOMOVSKY
クリトリック・リス
BILLIE IDLE®
ぜんぶ君のせいだ。
せのしすたぁ
二丁目の魁カミングアウト
ONIGAWARA
空きっ腹に酒
みるきーうぇい
DJ 石塚淳(台風クラブ)
うつみようこ
THE 夏の魔物

・THE 夏の魔物 オフィシャル・ウェブサイト
http://thenatsunomamono.com/

・夏の魔物フェスホームページ
http://natsunomamono.com/

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