【REPORT】THE 夏の魔物、5年ぶりの雪解けー細身のシャイボーイを迎え、初めて過去を振り返った夜

THE 夏の魔物が主催するトークイベント「ROAD TO 12.25AOMORI THE 夏の魔物 presents MAMONO HOUSE X」が、2018年12月4日(火)、阿佐ヶ谷ロフトAにて開催された。

これは、12月25日に青森・リンクモア平安閣市民ホールで開催されるライヴイベント「夏の魔物2018 in AOMORI」のプレイベント。

ホストのTHE 夏の魔物メンバーに加え、本祭に出演する掟ポルシェと細身のシャイボーイがゲストで登場した。

本ページでは、当日の様子をレポートする。


■第1部「波乱万丈決定、それが成田大致なんです」

2部制で行われたこの日のトークイベント。

1部には、THE 夏の魔物よりアントーニオ本多、鏡るびい、Mai-kouの3名に、掟ポルシェがゲストで登場。

ちょうど1年前に掟ポルシェと対バンをしたことがあるという新メンバーのMai-kouが、なぜTHE 夏の魔物に加入することになったのか、という話題からトークはスタートした。

今年夏にインターンで働き始めたMai-kou。会社の課題として書いていたNOTEでパンク〜ハードコアへの愛を語った文章をエントリすると、その内容がネットを中心に話題を呼び、THE 夏の魔物のメンバーが鎌倉までMai-kouに会いにきたという。

「ブログに書いてあるバックグラウンドを持ったあなたに惹かれました。新メンバーになってもらえませんか?」というフロントマン・成田大致のストレートなラブコールに、Mai-kouは翌日に加入を決意。加入のニュースがネットで公開されると、会社からの内定が取り消しになってしまったという。

「波乱万丈決定、それが成田大致なんです」と掟が語ると、成田が送ってきた「俺のせいじゃん! 一緒にがんばろう」というLINEに「気が楽になった。THE 夏の魔物でやっていくことを決意した」と、当時の気持ちを明らかにした。

その後は、掟の仕事遍歴を中心にトークが進んでいった。正社員で勤めていた会社を「エロ漫画家になる」といって辞めたというエピソードに会場からは笑いが起こった。

また、「なんで成田大致と一緒にやっているの?」という掟の率直な質問に対し、アントンは「彼が私に興味を持ってくれている。自分に役割を与えてくれるから」、Mai-kouは「大好きなものを全肯定してくれた。10代からフェスをやっていて尊敬できる」、鏡るびいは「もともとTHE 夏の魔物のお客さんから加入したが、そのときの自分の価値観に1mmも疑いを抱いていないから」と、それぞれ答えを語った。

その後、掟ポルシェが「どうやったらTHE 夏の魔物が売れるのか」をお題に、「コンビニのおでんを突っつくような表現欲求に満ちた人を入れる」「徹子の部屋のエンディングテーマを成田が歌う」など、会場の笑いをとりながら1時間トークを繰り広げ1部は終了した。

■第2部「ごめんなさい、そしてありがとうございました」

休憩を挟み行われた2部は、THE 夏の魔物より成田大致、大内雷電、物販担当の吉川が司会で登場した。ゲストの細身のシャイボーイは、直前まで会場近くで待機、メンバーと事前に顔合わせすることなく登場という並並ならぬ緊張感の中、スタートした。

というのも、ゲストの細身のシャイボーイは、THE 夏の魔物の前身グループ・DPGのメンバーで、しっかりと話し合いや脱退の準備ができないままグループを脱退。それ以降、こうやってメンバーと会うのは約5年ぶりになるという。

成田は「確執はなにもない」と笑って語っていたが、普段は温厚な大内雷電の表情は異常なほど怖ばっていた。以前、知り合いの結婚式でたまたまシャイボーイとトイレが一緒になり、「ご無沙汰しております」というシャイボーイの挨拶に「ああ、よく挨拶できるね」と返答を返したというエピソードを披露すると、会場がより一層緊張感に包まれた。

3人で15分くらい話したところで、成田が電話で呼び出し、シャイボーイがステージ上に登場。ぎこちない雰囲気の中、乾杯をし、トークがはじまった。

細身のシャイボーイはラジオパーソナリティを目指し中学時代から1日8時間以上ラジオを聴き、自分でも番組を持っていることもあり、しゃべりは快活。しかしそのマシンガントークは沈黙が訪れないようにずっとしゃべっているようにも感じられた。

ある程度トークとお酒が進むと、少しずつ話は本質に迫っていった。

シャイボーイは「当時はとにかく辞めたいという気持ちだった。これ以上続けると自分がダメになる」と思っていたことを話した。また、「その当時のことがしんどすぎて記憶に蓋をしていたところがある」と心境を語った。

話は、DPGのメンバー・オーディディションの舞台裏まで遡っていく。

「合格させないからオーディションを盛り上げるために参加してくれ」という成田の誘いにより、シャイボーイはオーディションに参加、そのパフォーマンスを見た審査員たちから絶賛の声があがり、まさかの加入を果たすことになったという。

当時は大人のスタッフもおらず、友達同士だったメンバーでグループを本格化させていった結果、メンバー同士に齟齬が生まれ、グループは崩壊の道を辿っていく。成田は「俺がもっとしっかりして腹を割って話せていれば」と反省の念を素直に口にした。

大内は、「性格的にどんな人とも仲良くしてきた。唯一わだかまりがああるまま終わったのがシャイボーイだった。やり直そうとは言わないけど、こういう場所を設けてくれたことには感謝しているし、俺たちには魔物がある。細身のシャイボーイという活動があるのも認めている」と、少しずつだが目を合わせながら言葉を紡いでいった。

そうした本音のぶつかりあいに、細身のシャイボーイは自身のことをこう語った。

「2013年にDPGの活動をしていたのは、2017年のオールナイトニッポンのオーディションに受かるためにやっているところがあった。10対0で自分が悪い状況で勝手にDPGを抜けて、2017年のラジオオーディションを受けた結果、1次審査で落ちてしまった。中3から1日8時間ラジオを聴いてきたのに落ちて周りが見えなくなってしまい、何かを変えないとと思って「あいのり」に参加することにした。いまは恋人もできて幸せだけど、あのときDPGを続けていたらどうなっていたか考えることもあるし、不義理を働いたから落ちたのかもしれないとも思うこともある。そんなことがあったのに、5年ぶりにこうやってイベントに呼んでくれたり、夏の魔物に行けることも本当に楽しみにしています。…… ごめんなさい。そしてありがとうございました」

シャイボーイが素直な言葉で語り、かつて一緒に撮影したMVを3本続けて観ながら、4人は当時の思い出を語りあった。その様子は、青春時代を共に過ごした男友達といった様相で、はたから観ているこちらからしても胸に迫るものがあった。過去は過去として残るし、完全になかったことにはできないかもしれないけれど、こうして4人が同じステージに立ち、笑ったり、真剣な顔をしながら気持ちをぶつけ合っている姿は時代の流れを感じさせてくれた。

そもそも成田大致ほど、過去を振り返らない人物とは出会ったことがない。これまで何度も取材をする機会があったが、メンバー脱退のことに触れようとすると、「過去のことはもういいじゃないですか」と一蹴されてきた。それが、自分からこういう場を設け、そして本音を語り合うというのは、成田自身にも心境の変化があったからに違いない。

来年1月6日のバンド結成記念日ワンマンでは、細身のシャイボーイ、同じくDPGのメンバーだったトランザム✴︎ヒロシがゲストヴォーカルで出演することも発表された。

過去をしっかりみつめ、そして未来を作ろうとしているTHE 夏の魔物。

12月19日にはビクターエンタテインメントから2ndアルバム『この部屋が世界のすべてである僕、あるいは君の物語』が発売され、12月25日には青森・リンクモア平安閣市民ホール「夏の魔物2018 in AOMORI」が開催される。その先にはどんな未来が待っているのか。初期から彼らを追っている身からしても、新しい光が見えるようなトークイベントであったことには間違いない。(西澤裕郎)


■イベント詳細

バンド結成記念日ワンマン VERY BEST OF THE 夏の魔物
2019年1月6日(日)新宿MARZ
時間:昼帯
ゲストボーカル:細身のシャイボーイ、トランザム✴︎ヒロシ
詳細後日発表

夏の魔物2018 in AOMORI
2018年12月25日(火)青森県 リンクモア平安閣市民ホール
出演者:
THE 夏の魔物 / MOROHA / BiS1st / BiS2nd / GANG PARADE / EMPiRE / WAgg / KERA / LAUGHIN’ NOSE / THE NEATBEATS / ザ50回転ズ / 百々和宏withウエノコウジ / DMBQ / Wienners / ユキテル(空きっ腹に酒) / 吉田豪 / DJ掟ポルシェ / DJ高野政所 / 久保ミツロウ&能町みね子 / テンテンコ / 眉村ちあき / せのしすたぁ / RINGOMUSUME / 二丁目の魁カミングアウト / 細身のシャイボーイ / and more

・THE 夏の魔物 公式サイト

 

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