【連載】なにが好きかわからない vol.44「帰ってきたヒトラー」

皆さんこんにちは。

クリスマスも終わりまして今年も年の瀬になりました。昨日から実家に帰ってきておりまして、年明けの学校のテストや卒論提出などの予定に向けて諸々準備しておりまして、全く気持ち的にも休まらない状態です。

一応実家にいるので多少は休まるのですが、でも先のことを思うととてつもない何か巨大な掌に押し潰されたり、握り潰されるような圧を感じてしまいます。果たしてどうなってしまうのか…… と思って不安になったり、でも何故かどうにかなるんじゃないかという不思議な自信もあって自分でもよく分からない。とりあえずオードリーのオールナイトニッポンを聴いている時だけは一番幸せです。

さて、先日なんという気なしにAmazonのprime videoの作品一覧を見ていた時に、気になってはいたのに観れていなかった作品を見つけました。

「帰ってきたヒトラー」という作品。

本国ドイツでは原作の小説が発売されて200万部も売れたという大ヒット作品です。

 

あらすじは、現代にタイムスリップしたアドルフ・ヒトラー。誰も彼がヒトラー本人であると気付くわけもなく、準主人公のテレビ局に勤めるザヴァニツキの計らいでモノマネ芸人としてテレビに出演し人気に。実際にヒトラー役の俳優が都市に繰り出してドイツの人々と交流しつつ社会問題なども徹底的に聞き込んでいくうちにどんどん民衆の心を掴んでいく、というもの。フィクションとドキュメンタリーを織り込んだセミドキュメンタリーの形式を採っている作品です。

学校の生協で原作小説の和訳が売っているのを見かけてずっと気になっていた作品なのですが、ようやく映画を観ることができました。コメディ要素満載の作品だと思っていたのですが、観終わった後には不思議な恐怖というか罪悪感に呑まれてしまう作品でした。

最初は一緒にヒトラーの日常や人々との交流を笑って観ていられるのですが、段々と人々の心を掴んで映画の中では茶の間の人気者になっていくヒトラー。しかし、あるユダヤ人のホロコースト生き残りのお婆ちゃんがヒトラーを拒絶するシーンできっと映画の観衆は気づいてしまう筈です、「ヒトラーは決して善良な主義な人間ではなく、ナショナリズムを極めてユダヤ人を筆頭に多くの人々を恐怖に陥れた悪人だった」と。

右派や左派の考え方、どちらを善し悪しと捉えるかは個人の考え方の問題なのですが、ヒトラーが行なった事を知っている人は恐ろしさを感じずには居られないでしょう。

そしてこの一件で現代にいるはずのないヒトラーという存在に気づいた主人公はとうとう彼が本物のヒトラーであると気づきます。そして彼のもとに向かい、銃を突きつけ恐れながらヒトラー本人に真相を問い質すシーン。そのシーンでのヒトラーの言葉が印象的です。

1933年の当時、大衆が扇動されたのではない。彼らは計画を明示した者を指導者に選んだ。私を選んだのだ。

(ヒトラーを「怪物め」と罵るサヴァツキに対して)

私が?なら怪物を選んだ者を責めるんだな、選んだ者達は普通の人間だ。優れた人物を選んで国の命運を託したのさ。」

なぜ人々が私に従うのか考えたことはあるか? 彼らの本質は私と同じだ。価値観も同じ。

私からは逃れられん。私は人々の一部なのだ。」(字幕ママ)

大衆がヒトラーを選んだ。

何故なら彼は言葉が巧みで、暗い時代にその具体的な将来の計画を明示する事が出来たから。彼のカリスマ性に魅了されてしまった民衆がその本質の是非に関係なく彼について行く事を決めたわけですね。そして、映画のラストではヒトラーに笑顔を振りまく街の人々と、世界で巻き起こる難民の受け入れ拒絶運動をする人々の実際の動画、中東問題の動画を織り交ぜたシーンで終わり、終わった後に後味の良くない物を残します。

ドイツに限った話ではなく、世界では右寄りの考え方が多くなっている昨今。

ヒトラーがいない時代であっても、自分達のリーダーが言葉巧みに話を切り出せばそれに勝手に引きつけられていくのが普通の大衆なのでしょう。

僕みたいに何の主義信条を持たない人が多くなっている気がしますが、個人の事にも国規模の事にも「流される」という事だけはせず、自分の見方や考え方だけは自分で責任を持てるようになりたいものです。僕も誰かじゃなくで自分で将来のことを決めるようにしたいな。

僕も別にヒトラーじゃないけど、自分が思っている事や好きな事を受け取った誰かがその人の価値観に影響できる事はしたいです。

今週はここら辺で。

みなさん良いお年を。また来年もひとつよしなに。

※「【連載】なにが好きかわからない」は毎週木曜日更新予定です。
エビナコウヘイ(えびな・こうへい)
1993年生まれ、青森県出身。進学を機に上京し、現在は大学で外国語を専攻している。中国での留学などを経て、現在では株式会社WACKで学生インターンをしながら就職活動中。趣味は音楽関係ならなんでも。

あわせて読みたい