watch more
StoryWriter

皆さんこんにちは。

万年金欠マンの僕です。厳密に言うとそんなに無いわけではない(お金はしっかりもらってる)のですが、あまり使いたくないんですね。だって、ただでさえ同年代の友達より社会に出るのが遅れてしまったので、その分は彼らより切り詰めて貯金しないとダメじゃないですか。でも最近は病院に通ったりもしているので、医療費とか検査費も掛かったり、イヤホンを落としたのでまた買わなきゃ…… みたいな、(主にしょうもない)予想外の出費が嵩んでしまって。アホってのは、生きてるだけでお金が余計に掛かってしまう生き物なんですなあ……。もう嫌になっちゃうね。お昼ご飯はお弁当持って行って節約しているんですが、それを帳消しにしてしまうような些細なミス出費がある。アホと不注意は身を滅ぼすんですわ。

こういう小さな事、もしかしたら気づかなくても良かったような些細な失敗に気づくことが多いんですが、大っきい失敗も小さい失敗も等しく凹んでしまいがちな最近の僕。こういう時に思い出した僕の好きな一冊。それが今日お話したい『一発屋芸人列伝』です。

現在は、番組の構成作家などをメインに活動しているお笑い芸人の髭男爵の山田ルイ53世さんが、自身と同様に一発屋のレッテルを貼られてしまった芸人達(ジョイマン、HG、小梅太夫や波田陽区etc…)の現状や、最盛期の話をインタビュー形式でまとめた一冊です。

文章としては、一発屋と呼ばれる彼らが自分の心境や生活の現状の告白を受けて、山田ルイ53世さんが的確なツッコミを入れつつ話を聞き出していくスタイルになっていて、重苦しいかもしれない内容を読みやすくまとめています。発売イベントのサイン会&トークショーにも参加したんですけど、これも作品の内容と相反して悲壮感0で面白かったです。

新旧時代を問わず、世の中では下積み時代や苦境をまとめる作品っていうのは結構あるのですが、大体そういった作品は「今となっては必要な経験だったと思う」、「これからも希望を捨てずに邁進していこう」と、前向きで希望を持たせる綺麗な締め方をしてしまうものが多いなあ、と個人的に思っています。それが良い悪いという話ではなくて、実際には自分の辛い状況をまだ打破できていなかったり、それを乗り越えられない人って絶対数いると思います。むしろ、そういう人の方が多いと思うんです。美談に仕上げてしまうんじゃなくて、彼らの辛さや、やりきれない気持ちをしっかり伝える事って、実はこっちの方が受け手に与える影響や意義が絶対あるはずなんです。

だって、皆がそんなに強くないでしょう。自分にも降りかかってくれるのかどうかさえ分からない、不確定な希望を見せられるよりも、同じような境遇にいる人がどうやってもがいているのか「リアル」を追求する方が、結果的に彼らの支えになるんじゃないかなって。

「自分の単独ライブのチケットが1週間で三枚しか売れていなかった。手売りするしかないと、コンビニで自ら二枚購入したら、出てきた番号が4と5。その3日後、再び二枚購入したら6と7。更に2日後には、誰かキャンセルしたのか、2が出てきた」(ムーディ勝山と天津木村 バスジャック事件の章より)

「一度売れて、今売れていない人達、即ち失敗した”芸能人”が一発屋である。芸能界という同じ土俵で優劣が確定した以上、勝ち組の有名人いくら毒を吐いても「お前に言われる筋合いないわ!」と一蹴されて終わり。同じ野次でも外野の客と相手チームのベンチからでは、対応も変わる。しかも、吠えている当人は、前の打席で三振しているのだ。もう武器は通用しない。波田陽区は苦しんでいた」(波田陽区 一発屋故郷へ帰るの章より)

もちろん、芸人さんが語るお話なので笑える要素はたくさんあるのですが、これって読みやすいけど結局は悲惨な話。彼らにとっては、笑ってもらえることが冥利に尽きるので結果オーライですし、職業柄そんなに悲壮感全開ではございませんが、ここに紹介される一発屋芸人達は依然低空飛行状態で、一部の方を除いてまだ何も打破できていない状態。それでも何とか一生懸命生きようとしている。それを、自分達の芸風としてのスタイルや山田ルイ53世さんの巧みな文章で、カカオ65%くらいのチョコレートのような食べやすさになった1冊だと思います。

相手が芸人さんなので、面白い!と笑い飛ばす作品なのか、リアルな部分を捉えていくべきなのかはちょっと悩みどころですが、どっちに捉えても面白い作品なので、一読してみることをお勧めします。

今週はこの辺で。

また来週、1つよしなに。

※「【連載】なにが好きかわからない」は毎週木曜日更新予定です。

エビナコウヘイ(えびな・こうへい)
1993年生まれ、青森県出身。進学を機に上京し、現在は大学で外国語を専攻している。中国での留学などを経て、現在では株式会社WACKで学生インターンをしながら就職活動中。趣味は音楽関係ならなんでも。

PICK UP