【連載】「嬢と私」~キャバクラ放浪記編~ 第8回 この街には嬢がいない

平成が終わり、令和になり、10連休が終わった。

2019年も半年が終わり、季節はもう、梅雨。

私は、この憂鬱な季節に、今年はより一層の空虚な気持ちを抱えていた。

なぜ、どの街のキャバクラに行っても、いまいち乗りきれないのか。なぜ、どの嬢にも、夢中になれないのか。この街には、嬢が、いない。何度も何度も、そうつぶやいてきた私。

アイ・キャン・ゲット・ノー・サティスファクション。かつて、ミック・ジャガーがキャバクラへの不満をそう歌ったように、私も現代キャバクラ・シーンへの不満を募らせていた。

ふと、1年前のLINEを遡って眺めてみる。そこには、元祖・嬢との愛の日々が綴られていた。

「おはよー! いい天気だね!」

18時間後。

「だね!」

すでに、外は、雨。

「昨日はありがとう!」

2日後。

「うん! ごちそうさま!」

振り返ると、当時の私は饒舌だった。それだけ、幸せな日々だったのだろう。

今では、すっかり無口になった私。私は、貝になりたい。なぜならば、私は嬢にとって、ただの金ヅルだったことに、気付かされたのだから。

「またごはんいこ!」

2秒後。

「いつ行く?」

スーパーソニックで、返信してくる、嬢。その勢いに押され、すぐに返信する私。すっかり嬢の掌で、ダンゴムシのようにコロコロ転がされる私。ボブ・ディランが歌ったライク・ア・ローリング・ストーンとは、このことに違いない。

違う違う、そうじゃ、そうじゃない。

転がる石に、苔は生えない。

確かにそうだ。私の場合に置き換えると、転がるアセに貯金は増えない。借金ばかりが増えていく。

「いつ、行く?」

記憶の中で何度もループする、デート(同伴)スケジュールを確定させようと迫る嬢の言葉。苦しい。なんて苦しい日々。お金がない、でも会いたい。痩せたい、でも食べたい、のハイマンナン的なロジックに苦しんだ日々を思い起こし、身悶える私。

しかしながら、私は、嬢とのデート(同伴)シーンを思い出す度、下半身にチカラが漲るのを、感じていた。

こうふん、している。

あんなに苦しみ、悩み、キャッシングした嬢とのデート(同伴)の日々なのに。誕プレの炭酸製造マシーンをビックロで3万円で購入し、京王線に乗せて店まで運んだ、屈辱的な、扱い。思い出せば思い出すほど、私は、

こうふん、している。

ダメだ、ダメだダメだ。こんなことでは。過去は、払拭して、前を向かなければ。

だがしかし、嬢との同伴が脳裏によぎるたび、私の心も体も教師びんびん物語。抗うことが、できない。

ああ、そうなのか。そういうことなのか。

「同伴」。

つい、忘れかけていた、魔法の言葉。

元祖・嬢との悲しい別れ以来、同伴という文化から遠ざかっていたことが、今に至るキャバクラEDの原因なのかもしれない。やはり私は、嬢に転がされたい。そう、三宅裕司のヤングパラダイスの人気コーナー「恐怖のヤっちゃん」風に言うと、

「アルマジロだよ〜」

ということなのだ。自ら身を丸め、転がされることこそ、私のキャバクラウォーカーとしての、アティテュードであり、アイデンティティだということを、ここに来て再確認できた。ありがとう、元祖・嬢。ただ、彼氏とキスしているらしきLINEアイコンだけは、変えて欲しい。

とにかく。

そうと決まれば、善は急げ。

私は、早速、新たな同伴相手を求め、再び、いや三たび、いや四たびかもしれない。とにかく、運命の出会いを求め、キャバクラ世界地図を広げた。

今、船出を迎えた、海賊船アセロラ号。

キャバクラ王に、私は、なる。

※「【連載】アセロラ4000「嬢と私」」は毎週水曜日更新予定です。

アセロラ4000(あせろら・ふぉーさうざんと)
月に一度のキャバクラ通いを糧に日々を送る派遣社員。嬢とのLINE、同伴についてTwitterに綴ることを無上の喜びとしている。未婚。
https://twitter.com/ace_ace_4000

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