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【連載】「嬢と私」~キャバクラ放浪記編~ 第10回 中野ナノカナ?

StoryWriter

前回までのあらすじ

エトウさんのフィギュア購入に付き合って中野までやってきたアセロラ4000。サブカルの聖地・中野ブロードウェイにて、自らの趣味がキャバクラであることを思い出し、奮い立つ。そして中野で初めてのキャバクラ体験へと向かった。

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中野のに数多く存在するキャバクラの中にあって、もっともスタンダードな店であることを伺わせる「ポワゾン」にやってきた私とエトウさん。呼び込みの男性によると、60分4,000円と、かなりリーズナブルなところも気に入った。

ここでひとつ確認が必要なこととして、その料金は果たしてどこまでの料金なのかということだ。キャバクラの場合、サービス税という、謎の税を料金に加算される場合がある。歌舞伎町の場合、時間帯によっては「サービス税25%~35%」という暴利をむさぼる店もあり、注意が必要だった。果たして中野はどうなのか。

「コミコミで?」

「コミコミで」

このコール&レスポンスで、我らキャバクラユーザーと店との間の信頼関係を結ぶことができる。どうやら「ポワゾン」は、優良店のようだ。

2階に上がり、ドアを開くと、そこには見慣れたキャバクラの店内が。いたって、普通。とくに中野らしさ、サブカルチックなところは見受けられない。私は、少し落胆した。いくらスタンダードな店とはいえ、サブカルの聖地にあるキャバクラならば、店内に『魔法の天使クリィミーマミ』のフィギュアぐらいあっても良いのではないだろうか。

まあいい。嬢がよければすべてよし。キャバクラ初期衝動を取り戻すべく、私の鼓動は、高まる。

「こんばんはー! ナオミですー」

ちょっと、歯茎が目立つ嬢、ナオミ嬢。年の頃としては、20代前半だろうか。だいたい、キャバ嬢の場合、20代前半と思っておけば、間違いない。

「えっ私、そんな風に見えます? じつは27歳なんですー」

意外にも、ベテランの年齢だった、ナオミ嬢。

「でも、ナオミ・キャンベルでもなければ、渡辺直美でもないですー。ましてや財前直見でもなくー」

自分で言った言葉に、笑い転げる、嬢。両手を叩き、歯茎を丸だしにして、まるでチンパンジーのような表情を見せる。そんなに面白いかと言われれば、たいして面白くない。私は、オープニングから萎えてしまった。

しかし、せっかくの中野。きっと、嬢もアニメ好きに違いない。きっと、毎日アニメ専門チャンネル「アニマックス」を見ているに違いない。さらに、伝説のアニメカルチャー番組「アニカル部!」を見て育ってきたに違いない。そういえば、ナオミ嬢の声はどことなく「アニカル部!」の顧問、モモーイさんこと桃井はるこさんに似ている。そして、ドレスのスリットから覗く太ももは、アニカル部の部長こと足立梨花ちゃんばりに魅力的だ。そして、顔は新入部員の加藤諒くんに、似ている。実写版、パタリロ。この嬢は、きっとアニメオタク。とにかく、まちがいない。私は、往年の長井秀和のごとく、そう思った。

「ところがー私アニメ全然知らないんですー」

まったくアニメカルチャーを知らないにも関わらず、サブカルの聖地・中野の嬢としてここにいる、ナオミ嬢。いや、いちいち会話の語尾を伸ばす、語尾のび子。本当に、ここは、中野なのか。私は、冷静と情熱のあいだで、次なる嬢へのチェンジタイムを待ちながら、のび子の相手をする覚悟を決めた。

15分ほど、PRIDEでいえばダン・ヘンダーソンとマーク・コールマンがガードポジションのまま膠着しているような、塩試合をおこなった私とナオミ嬢。ジャッジ小林、ダン。そんな判定の声まで聞こえてくるほど、私の心は冷めていた。

ダメだ、ダメだダメだ。このままでは、ダメだ。

次なる嬢には、ゴングと同時に奇襲をしかけよう。私は、タイガー・ジェットシンがサーベルでそうするように、マドラーを口に咥えて周囲を威嚇しながら、嬢の到着を、待った。

「こんばんは! 何してるんですか~? ウケる!」

笑いながら、やってきた2番手の嬢。

長身、色白。美形、そして巨乳。

シンプルに、タイプの嬢が、やってきた。

※「【連載】アセロラ4000「嬢と私」」は毎週水曜日更新予定です。

アセロラ4000(あせろら・ふぉーさうざんと)
月に一度のキャバクラ通いを糧に日々を送る派遣社員。嬢とのLINE、同伴についてTwitterに綴ることを無上の喜びとしている。未婚。
https://twitter.com/ace_ace_4000

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