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【連載】ヨコザワカイト「digる男。」Vol.3「テクノポップがわからない」

StoryWriter

お世話になっております、株式会社SWインターンのヨコザワカイトです。

サブカルの聖地といえば、そう中野ブロードウェイ。僕が初めて訪れたのは4年ほど前、東京に越してきて間もない頃でした。カオスなサブカルの原型の中に飛び込んだような気分になる不思議な建物。4年前の僕は、そんな雰囲気の中ただならぬオーラを出しているCD屋を発見します。どれどれdigってみるかと入ってみたところ、なんと知っているCDが一枚も無いではありませんか。

その時の衝撃を今でも鮮明に覚えています。もしかして違う世界線に迷い込んでしまったのではないだろうか、と思うほどでしたから。地元のTSUTAYAにあるCDはほとんど借りたし、借りてなくともアーティスト名くらいは絶対に知っている。音楽の知識なら誰にも負けないんだ。そんな自負が当時ありました。それなのに、アーティスト名を一つも知らないCDが並んだ棚に囲まれる日が来るなんて。逃げるようにしてその店を出ました。

それ以来、僕の中ではトラウマになり、中野ブロードウェイに訪れた時もその店だけには入ることはありませんでした。

そんな僕のトラウマCD屋、“Shop Mecano”に今回行ってきました。

ようこそShop Mecanoへ。Shop Mecanoはレコード、CD販売キャリア29年。エレクトロニクス系音楽ライターとして、関連CDライナー執筆100枚以上。洋はKraftwerk、邦は平沢進関連では界隈一の知識を誇る中野泰博によるテクノポップ~エレクトロ~インディー音楽を集めた店です。(Shop Mecano 公式HPより)

 

中野ブロードウェイの三階。多くの観光客で廊下が賑わう中、そのオーラで一見さんを近寄らせない(ヨコザワの偏見)CD屋。それがShop Mecano。

店内は入ってみるとそこまで広くは無いのですが、CD一枚一枚に店長のポップが貼られており、テクノポップへの愛と情熱がムンムンと立ちこめています。4年振りに訪れて、その間色々な音楽を聴いてきたと思っていたのですが、相変わらず棚に並んでいるのは見た事もないCDばかり。唯一の救いは、4年の間に平沢進と戸川純を知ったことくらいでしょうか。

やはりこれでは埒が明かないと、勇気を出して店長さんに話しかけました。

「テクノポップ初心者の僕に、オススメのCDとかってありますか?」

今思うと、雑な質問だったと思います。しかし店長は、ニコッと優しく笑って棚から一枚のコンピCDを取り出してくれました。今回購入したのがこちら。

「テクノロイドっつーたら、あれだべ? 血じゃなくて電気が身体に流れてるやつのことだべ?」(歌詞カード テクノロイド-流れるのは血ばかりではない-より)

=楽曲リスト=
1. PLASTICS「PATE」
2. P-MODEL「美術館で会った人だろ」
3. リザード「浅草六区 -Single Version-」
4. 一風堂「ブレイクアウト・ジェネレーション(狂育世代)-Single Version-」
5. 81「2「踊れない」
6. ゲルニカ「戒厳令-Demo Version-」
7. ヒカシュー「プヨプヨ -Live Version-」
8. ジューシィ・フルーツ「ジェニーは御機嫌ななめ」
9. ムーンライダーズ「彼女について知っている二・三の事柄」
10. ビジネス「うわきわきわき」
11. WONDER CITY ORCHESTRA「HIGHWAY CRACKER」
12. GATE BALL「THE MODEL」
13. Shampoo「Tonight」
14. Mio Fou「ミラノの奇蹟」
15. portable rock「アイドル -Demo Version-」
16. MUSCLE BEAT「Bed-Room Queen」
17. HERE IS EDEN「金属バットとスペースシャトルの唄」
18. 有頂天「べにくじら」
19. GROOPY「かさをさしてライトで照らして」
20. DIE ÖWAN「さびた組曲」
21. 原マスミ「トラキアの女」
22. EP-4「5.21」

自主レコードレーベル“いぬん堂”が監修した、80年代日本のテクノポップ、パンク、ニュー・ウェイブのコンピCD。江口寿史が書き下ろしたジャケット写真のシンプルな女の子は、ずっと目が合っているようでなぜか心をザワつかせます。

店長曰く、P-MODEL「美術館で会った人だろ」などの有名どころを抑えつつ、GROOPY「かさをさしてライトで照らして」などの超マニアックな曲を収録しているところがいぬん堂っぽくてオススメとのこと。

収録曲は、とにかく病みつきになる22曲。気がつくと、何周も何周もループして聴いてしまいます。一番印象に残ったのは、ジューシィ・フルーツの「ジェニーは御機嫌ななめ」。イリア(奥野敦子)のキュートでおしゃれなボイスが心地よく耳に残ります。

“抱き合って眠るの そうすれば とにかく 少しは気がおさまるの”  

 

こんな素敵な歌詞に今まで出会っていなかったなんて。

今回のdigで、トラウマは完全に克服できました。それどころか、知っているCDが置いてない店があるなんて、最高なことだったじゃないかと思えるようになりました。

「音楽って形がないようで、いや無いからこそパッケージって大切だと思うのですよ」(MECANO瓦版 vol.29 店長店番日記より)

まさにこの言葉の通り、Shop Mecanoには、知らない情報以上の何かがたくさん棚に並んでいます。テクノポップが好きな方も、逆に全く知らないという方も、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

僕は又、店長にオススメを訊きに行かなくちゃ。
今度はジューシィ・フルーツのCDを探してみようかな。

※「【連載】digる男。」は毎週月曜日更新予定です。

ヨコザワカイト(よこざわ・かいと)
1997年生まれ、千葉県出身。大学では社会学を専攻している。株式会社SWで学生インターンをしながら就職活動中、そして迷走中。ガガガSPが大好き。

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