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【REPORT】〈めりぴょん主催外道ナイトvol.05〉──2次元キャラクターとの恋愛ってあり得るの?

StoryWriter

めりぴょん」という人物をご存知だろうか?

メンズ地下アイドルや若手俳優から音楽、乙女ゲームなどのオタクカルチャーに造詣の深い、ライターでありツイッタラーでありブロガーであり、冷静な分析や情熱いっぱいの愛を説く。その一方で、自身で同人誌なども書き上げる巷で話題の方である。前回の文学フリマでは、メンズ地下アイドルにハマってしまった女性の心境をハードに書き上げた同人誌『メンズアイドル神話大系』を販売、通販での再販分も完売してしまうほどの人気作となった。

そんなめりぴょんが、不定期で行うトークイベント〈外道ナイトvol.05〉が6月24日の月曜日に原宿ストロボカフェで開催された。過去のメンズ地下アイドルがテーマの回では、実際に地下アイドルの運営を行なっている人物をゲストに招いて率直な質問をぶつけるなど、毎回話題に事欠かないイベント〈外道ナイト〉。今回のテーマは「ジューンブライド〜外道協会統一結婚式〜」。2次元キャラクターとの、正に次元を超えた恋愛はありえるのか? 夢女子って何? 今回StoryWriterでは、イベント当日のそんな世界の一端をお届けする。

取材&文:エビナコウヘイ


夢女子が求めるコンテンツの推移

イベント開始の10分前に会場に入ると、会場内は女性のお客さんでほとんど満席の状態、場内後方では2次元との婚姻届の受理を行う、画期的なカウンターが設置されていた。間も無く開演すると、めりぴょんを含め4名の女性が登場。事務系OLの白雪、かなり強いギャルのゆー、メンズ地下アイドルを運営するねね、そしてめりぴょん。めりぴょん以外の3人はそれぞれ漫画『銀魂」のキャラクターの「夢女子」であるという。

※夢女子とは……2次元(架空)の世界に自己投影する女性。キャラクター×自分、世界観×自分、自分vs仮想敵など、様々な自己投影のパターンがある。(pixiv百科事典より)

そんな彼女らと2次元との恋愛トークをしていく。開演前にめりぴょんがGoogleで「結婚」を検索したところ、「双方の合意がないと結婚できない」ものであるという衝撃の事実の報告が発覚。それでも、相手との合意を得ない一方的な結婚をしたい人の為の集まりをする為に今回のイベントを開催したという。

各々の出演者が自己紹介と推しキャラクターの紹介を経て、最初のトークテーマ「2000年代のコンテンツから2010年代のコンテンツ」へ。2000年代の夢女子の根幹にあるコンテンツは週刊少年ジャンプの漫画(D.Gray-man、テニスの王子様、銀魂etc)であり、その一方、2010年代の夢女子の好むコンテンツはソーシャルゲーム系乙女コンテンツ(刀剣乱舞etc)に推移していった、とめりぴょんは語った。

この推移は、「決められた物語と設定があって、その隙間を縫うように自分を投影するしかなかった2000年代コンテンツから、自分を作品の世界にインストールして、自分の端末の中に自分だけのキャラ物語を作れるのが2010年代の主流コンテンツになった」ことを示すという。夢女子にも自分を漫画の世界に投影するタイプとキャラクターを自分の世界にいると仮定するタイプ、大きく分けてこの2種類あるが、2010年代のソーシャルゲーム系乙女コンテンツでは、プレイヤー各々の趣向に合わせた設定に没入することができるようになったという分析を行った。

そして、この2つのコンテンツのスタイルの転換となった作品『うたのプリンスさま』の話へ。これによって、夢女子のスタイルも変わっていき、同時期に流行し始めたツイッター上では、オタクとしてのレベルをアピールを夢女子が爆発的に増え、同時に痛バ(痛いバッグ:自分の好きなキャラクターの缶バッジやキーホルダーをトートバッグやリュックに大量につける一種の愛情表現)が流行り始め、この自己顕示行動が夢女子の生態にも変化を与えたと考察するめりぴょん。登壇者のトークや考察について、会場では頷くお客さんや「あー……」と納得する声が上がっており、的確な考察であることを伺わせる場面も。

夢女子としての恋愛模様

3次元との恋愛は可能か?というトークになると、登壇者からは「3次元男性は、仕事などお金が発生する状況以外はムリ」という手厳しい意見もあれば、「3次元は可もなく不可もなく、一人なら一人でも気楽でいいし幸せ」という意見も。一方、「彼氏が2次元であることが真にそうなのかということに常に疑念を抱いているんですよ、男に対して感情を抱く時に2次元でも3次元でも同じように恋愛感情を抱いてしまうので、その差異を考えると、私の意志で動いてくれるかどうかしかない。同人誌とか書くと自分の意志でも動くので、どんどん分かんなくなってきていて。だから私の彼氏(2次元)は3次元だと思ってます」と語るめりぴょん。「良いと思います、彼氏は(たとえ2次元でも)3次元だよね。」と登壇者が皆頷くと会場では小さな笑いが起こり、和やかな雰囲気になった。

夢女子は原作設定の世界で恋をするのか、それとも作品の世界の中に自分がいて愛を育むのか? など、2次元との恋愛トークは進んでいく。その中で、話題は結婚へと言及。過去にGateboxという会社の次元渡航局という、2次元キャラクターとの婚姻を受け付けるイベントがあり、登壇者の白雪が参加したところ、書類を出したことによって自分の妄想が補強されたという話へ。「ドアを開けると、『ご結婚おめでとうございます』と次元渡航局の腕章を付けたスーツのスタッフが迎えてくれ、キャラクターとの馴れ初めや本物さながらのの書類を作ってくれた」、「第三者が自分の妄想準拠のものを作り、妄想を受け止めた演技をしてくれることで現実味が感じられ、妄想に奥行きが生まれた」と語った。

これを踏まえて、めりぴょんは「今回、外道教会で勝手に婚姻届を出そうというのも、皆が妄想の輪郭が定まらなくて苦しんでいたらどうしようって心配して、とりあえず私は皆の妄想を肯定するよ! という立場の下、今日のイベントをやっている。」と思いを語り、ここでもたくさんのお客さん頷く様子が見られた。

一方で、めりぴょんはダウナー側の夢女子としての意見も。「妄想の輪郭を埋めようとすればするほど、(妄想が現実では)ないことが分かってくるんです。無知の知じゃないですけど、無いことを知る。そこに、アッパーの白雪さん達は(妄想が事実では)ないけど、周りから要素が補強されていって(妄想が事実として)ある感じがしてきて幸せになれるんですけど、私はダウナーなので、周りを補強すればするほど真ん中の穴に気付かされてしまう。」と、ここでも2つの類型を示した。

できるだけ自分の世界の中で幸せになりたい

終盤になると、「2次元の彼氏やユートピアの世界に幸福を見出していく可能性はあるのか?」という話題に。「相手が3次元(アイドルなどなかなか手に届かない存在)なんですけど勝手に婚姻届を出して良いですか?」と聞かれるというめりぴょんは、「私の回答としては良いよとしか言えなくて。その3次元アイドルなどはパッケージ化された商品に過ぎなくて、2次元と変わらない。概念としてその商品の持つ性質とか発言に対して結婚したいと願っているなら、それは肯定せざるを得ない。」と持論を述べた。その後、「2020年代は生活空間が変わっていく中で、夢女子の世界も更に拡張していくんですよね。SNSの転換なんかも起こるんじゃないかな」、「私の提示したい事としては、できるだけ自分の世界の中で幸せになりたいよね、ってことかな」と未来のコンテンツへの期待を膨らませていた。

最後に登壇者のゲストから、イベントを振り返って一言が寄せられた。

白雪「私は少なくともキャラと結婚っていう事をやってめっちゃ幸せなんですよ。婚姻届を出したイベントから1年以上経つけど未だに楽しいんですよ。もういくところまで行ってしまったから、人にも言っていきたいし、ネタにもしていきたいって思ってるし。そうやって笑ってくれる事とか、今日みたいに妄想を分かってくれる人達と会ったりとか、っていうところまで含めて楽しい。もし迷ってる方がいたら、騙されたと思って今日婚姻届を出して欲しい」

ゆー「私はここ3ヶ月くらいから自分で夢女って言い始めたんですけど、やっぱりきっかけがないと入り込めない。自分の恋愛を肯定してくれる人がいるとますます入り込める。今日をきっかけに婚姻届出してくれたら良いなあ、こっちの世界へようこそ。(笑) 両手広げて待ってます」

ねね「色々アニメとかゲームとかアイドルとかいると思うんですけど、全部引っくるめて好きな人がいるって幸せな事だと思うので。しかも、好きな人をめぐって出会えた友達って多分すごい強いものだと思うので。ぜひ婚姻届を出してください!」

めりぴょんコメント

「〈外道ナイトVol.05〉にご来場頂きました皆様も、インターネットから見守って下さいました皆様もありがとうございました。

二次元に対する恋愛感情を持つことで、二次元キャラクターと交際していると空想する夢女子の行為を「妄想」と括ってしまうのは簡単ですが、最近では二次元コンテンツの多様化や二次創作の多様化により各々が抱ける「妄想」の輪郭もますます強大なものになっています。そんな「夢女子」と「妄想」について考える一歩間違えれば危ない集会スレスレのイベントをやりましたが、思ったよりも会場が終始なごやかな雰囲気だったので本当に良かったです。皆様も、ぜひ良い妄想を」


夢女子という女性を取り巻く環境やその変動、その心理についての談義が交わされた今回の〈外道ナイト vol .05〉。しばらくはイベントをお休みするとの事で残念であるが、再び女性向けのカルチャーコンテンツとそれの考察が聴ける日を楽しみにしたい。

めりぴょん
某哲学塾在学中。ライター、ブロガー。山野萌絵としても活動。若手俳優の元オタクであり、現在はマイナー乙女ゲームのショタの夢女子。個人企画PLUS14を立ち上げ、地獄のオタク女オールジャンルトークライブ〈外道ナイト〉の不定期開催を行っている。現在、日刊サイゾーにて記事を執筆中。

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