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【INTERVIEW】台湾高雄市のバンドThe fur.「自分が表現したい世界観を表すのに英語の方が適してる」

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写真左より柚文(Gt&Vo)、Zero(Synth/Gt/Dr)、Ren(Ba)

2019年10月7日〜10日の4日間、台湾のドリーム・ポップバンドThe fur.の来日ツアー公演が開催された。台湾では、インディーズ音楽の中でも特に大規模なアワードである第10回〈金音創作獎〉にノミネートされるほどの人気、海外でもUK〈LFOCUS Wales〉や、スペイン〈Primavera Sound〉等のフェスへの出演、UK〜EUツアー、SXSW2019へ出演。全世界のインディー・ロック / ドリーム・ポップ・ファンからも支持されている。

初日の東京公演にも多くのファンが集まった。シンセサイザーとドラムのサポートメンバーを加えたフルセットでのライヴ。シンセサウンドをベースにしながらも、カントリー音楽の要素も取り入れた柔らかな音楽の世界観が会場を魅了し、来日してから日本で撮影したオリジナルのVJを用い、その独特な色合いから、サイケデリックな雰囲気も醸し出す場面もあった。かと思えば、日本で遭遇した珍騒動を日本語で必死に伝えて笑いを誘う、和やかな場面もあり、The fur.というバンドの独特の存在感を日本に初めて届ける記念すべき公演となった。

今回が初来日となる彼女らに公演直前にインタビューを敢行。台湾インディーズ音楽シーンの変化について話を伺った。

取材・文・翻訳・写真:エビナコウヘイ


ファーのとても柔らかく暖かい感じが私たちに合うと思う

──バンド名”The Fur.”の由来を教えてください。

Zero(Synth/Gt/Dr):バンドを組む時に柚文(Gt&Vo)が書いていた曲が、The Fur.(毛皮)という言葉の感覚にすごく合うなと思ったんです。僕らもそんな激しい感じの音楽ではないですし。

柚文:動物の毛皮のファーと一緒で、とても柔らかく暖かい感じが私たちの曲に合うと思ったんです。性格も皆のんびりほんわかしていますし(笑)。

──メンバーの皆さんはどういった風に知り合って、バンドを結成するに至ったんでしょう?

柚文:私とZeroが同じ大学に通っていたのですが、お互い曲を作ったりDemoを作ったりしていることは知っていました。その後〈摇滚台中(ROCK IN TAICHUNG)〉というバンドオーディションに参加したところ選ばれて、バンドとしての活動が本格的に始まりました。その後、Zeroの友達のRen(Ba)に声をかけたんです。

Zero:その時はまだRenとそんなに親しかったわけではないのですが、急いでレコーディングをしないといけなくて、とりあえず「一緒にバンドやらない?」って声をかけたら二つ返事でいいよって言ってくれて。

柚文:私たちが作っていた曲を聴いたこともないのに、軽く「いいよ〜」って。そのまま現在に至ります(笑)。

──Renさんはどうして曲も聴いたことないのに引き受けてくれたんですか(笑)?

Ren:当時2人は高雄に住んでいたんですけど、ちょうど僕も台北から高雄に戻ろうと思っていて。僕も高校の時にバンドをやっていて、大学ではちょっとやってなかったんですけど、やっぱりバンドやりたいなあと思ってる時だったんですよ。ちょうど良くメンバーを探している人がいてラッキーでした(笑)。

2019年10月7日@新代田FEVERでのライヴの様子1

──勢いで引き受けちゃったんですね。皆さんは普段はどんな音楽を聴いたりするんですか?

柚文:なんでも聴くんですけど、よく聴くのはThe Cure、Alvvaysとかですかね。

Zero:僕はシンセポップやドリーム・ポップ、ハウス系が多いです。Mac Demarcoとかも好きだし、日本だとフィッシュマンズとかも好きですね。

Ren:HIP HOPやネオソウルが好きですね。ネオソウルだとエリカ・バドゥなんかも特に注目してます。細野晴臣さんも好きで、メンバー全員で彼のライヴに行ったこともあります。

 英語の響きが、私が一番好きで求めている感覚に近い気がしている

──The Fur.の歌詞は全て英語ですが、何か拘りなどあるんでしょうか?

柚文:基本的に曲は私が作っているんですけど、自分が表現したい気持ちとか世界観を表すのに英語の方が適してるなと思ったんです。中国語とか他の言語で歌詞を書いたら、きっと曲調も変わってくると思います。英語詞に合う曲調や英語という言葉の響きこそが、私が一番好きで求めている感覚に近い気がしているんです。たぶんそんなに深い理由があって英語を選んでいるわけじゃなくて、直感的に英語がいいなって。私は修士課程まで言語学を学んでいたので、英語で仕事したり書いたりするのに慣れてたっていうのもあると思います。

──最近、アジアツアーやヨーロッパツアーなど海外で活動する台湾のインディーズバンドって多いですよね。これはなぜだと思いますか? 日本のインディーズバンドももちろん海外メインで活動したり、ツアーに行くバンドもいますが、台湾ほど活発ではないかもなあと個人的には思っています。

柚文:私が思う一番のポイントは、やっぱり海外の音楽もよく聴くし、ライヴのオーディエンスはどんな感じなのか、自分の好きなバンドがどんなパフォーマンスをしているのかとても気になりますよね。あとは、私たちの歌詞は英語なので、海外の人でも私達の曲の世界観を理解しやすいと思うので、海外に行って試してみたいです。自分の好きな海外アーティストと一緒の舞台に立てたら嬉しいですしね。

2019年10月7日@新代田FEVERでのライヴの様子2

Ren:旅行で行くのとはまた感覚が違うじゃないですか、できるならたくさん海外でライヴしてみたいですよね。

Zero:たぶん台湾のバンドって元々はそんなに海外公演を考えていなかったのかもしれないです。でもここ数年、”落日飛車(Sunset Rollercoaster)”が世界中で活動をしていて一定の知名度も得ました。こういうことが台湾のバンドに海外でのツアーや活動っていうことに大きな希望を与えたのかもしれないですね。僕らも必ず台湾内での活動に絞っているわけでもないですし。

柚文:でも日本でもCHAIがアメリカの〈Pitchfork Music Festival 2019〉に出演したり、すごく忙しくしてらっしゃいますよね。DYGL、The fin.とも同じイベントに出たことがありますし、海外で活躍しているインディーズのバンドって結構多くなってきているのは実感します。

──DSPSに前にインタビューしたときは、台湾の音楽業界、特にインディーズはまだ日本などに比べると成熟しきっていない感じがあるとおっしゃっていました。

柚文:確かにそうですね、現実的な問題ですよね。

Zero:台湾でも音楽だけでご飯を食べていくってやっぱりとても難しいですよ。台湾ってただでさえ人口が少ないのに(約2400万人:2019年)、その中でもインディーズとなるとさらに少数の中の少数ですし。

柚文:外に向かって広がっていくのが難しくなりますよね。でもそれはどこのバンドでも一緒で外に向かって規模を大きくしていくっていうのはやはり難しいですよね。

 

──8月にリリースされたシングル『Best Comedy』についていかがでしょう?

柚文:クオリティにはとても満足してますよ。今回収録の2曲は台北のレコーディングスタジオで完成したものなんですけど、録音して出来上がったサウンドにとても満足しています。

Zero:今回初めてレコーディングスタジオで録音したんですよ。1枚目のアルバム『town』は全て宅録だったので、今回のレコーディングについては環境的にもとても満足ですね。

柚文:リスナーの方には注目していただきたいですね。今回は2曲収録のシングルですけど、来年には2ndアルバムをリリースする予定で、既に私たちがもう完成が待ち遠しいアルバムになっています。皆さんもぜひ期待してくださいね。きっと私たちの歌を聴いたことがない人が多いと思いますが、ライヴや音源など多く私たちの作品や音楽に触れて、気に入ってもらえたらと思います。

2019年10月7日@新代田FEVERでのライヴの様子3

2019年10月7日@新代田FEVERでのライヴの様子4

2019年10月7日@新代田FEVERでのライヴの様子5

2019年10月7日@新代田FEVERでのライヴの様子6


■公演情報

The Fur.
〈Best Comedy〉 来日公演
2019年10月7日(月)@東京・新代田FEVER

=セットリスト=
1. Intro 200
2. We Can Dance
3. Friday Love
4. Best of Me
5. Avocado Man
6. Final Defense
7. Movie Star
8. Little Song
9. Messi
10. Short Stay

EN1. 25
EN2. Take on me(A-ha cover)

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