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クリトリック・リスが初の音楽フェス開催を宣言した理由「明るい未来を提示したい」

StoryWriter

クリトリック・リスが、自身初となる音楽フェスティバル〈栗フェス2020〉を、2020年11月1日(日)に大阪城音楽堂にて開催することを宣言した。これまで自主企画イベントを行ったことはあるが、音楽フェスを開催するのはこれが初となる。2019年、日比谷野外音楽堂でのワンマンをDIYで成功させたスギムが50歳になった今、地元大阪で挑戦する初の音楽フェス。なぜ、スギムは音楽フェスを行うのか、そしてどんな構想を描いているのか。コロナ禍にいる現状についてから、なぜ今開催を宣言したのかまでをSkypeを通して語ってもらった。

取材&文:西澤裕郎


ライヴハウスを救うことが先決だと思っている

──ちょうど1年前の2019年4月20日、クリトリック・リス最大のワンマンライヴを日比谷野音で開催しました。そこから1年経った現在の心境を教えてください。

スギム : 僕の50歳記念ということで日比谷野音ワンマンを開催して、10月で実際に50歳になったんやけど、何かが変わったかというと特に何も変わっていなくて(笑)。振り返ると、けっこう前のことのような気もするし、最近のことのような感じもしますね。

 

──気候的にも、暖かくていい日でしたよね。

スギム : 奇跡のような日だったと思います。天候もよくて、外で散歩するにしても、お酒を飲むにしてもよかった。

──野音の後は、それまで通り全国のライヴハウスを巡りながらライヴを行なっていたわけじゃないですか。相変わらず年間100本を越えるペースで。

スギム : そこは特に変わらなかったですね。ただ、野音で初めてクリトリック・リスを観てくれた人が多くて。それ以降もライヴに来てくれる人が増えたのは嬉しかったですね。

──現在はコロナウィルス拡大による自粛の影響で、ライヴハウスでライヴができない状況です。最近、クリトリック・リスとしてはどういう活動をしているんでしょう。

スギム : 僕自身は3月末から自主的にライヴをやっていなくて。4月になってからはライヴハウスからも「やらない」って話が出てくる流れになってきたので、今は曲作りをしたり、いろんな人からもらったライヴハウスを救うためのドネーション企画などを行なったり考えたりしているところです。

──スギムさんは3月11日に、いち早く大阪のライヴハウス堺FANDANGOで口パクライヴを開催しました。あのときはどういう想いから企画をしたんでしょう。

スギム : バンドが出演をキャンセルする流れの中、ライヴハウスがどんどん休業していくことに危機感を感じて、何か方法はないかと探った結果があれやったんです。あれからだいぶ状況は変わっているので、今はああいうことすらできない状況になっていてしまいましたけど。

──その後はしばらく、体温計で熱を測って、SNSで伝えながらライヴをしていました。

スギム : ステージから1m以上は絶対に下がってライヴをしたり、僕なりに考えてやっていました。それまで、客席に降りるパフォーマンスが僕のライヴのやり方やったんですけど、コロナの影響で3月頭くらいからステージから降りず距離をおいて、お客さんとは触れないようなライヴパフォーマンスをしていました。それまで頼っていた客いじりができなくなったので、そういう意味ではライヴパフォーマンスを見つめ直すきっかけになって、いろいろ成長したと思います。

──なんとかライヴをする方法を模索していたスギムさんが、自主的にライヴを控えるようになった判断基準は何だったんでしょう。

スギム : それは日々流れてくる情報で判断していきました。3月末でみんなの考え方が急激に変わったんですけど、東京オリンピックが延期になったのを境にできないなと思いました。あそこで急に感染者が増えたんですよ。それで世の中が一気に外出するのもよくないって変わったので、その中ではさすがに続けられないなって。

──志村けんさんが亡くなったことで、ライヴハウスに出演するミュージシャンのキャンセルも一気に増えたということも聞きました。

スギム : タイミング的にも近かったんじゃないかと思います。

──クリトリック・リスはライヴ中心で音楽活動をされてきました。そういう意味では、現在収入が絶たれている状況だと思います。金銭的にはいかがでしょう。

スギム : 今のところは、サラリーマン時代の貯蓄がまだ少しあるので数ヶ月は持つんですけど、その後は身の回りのものをヤフオクとメルカリで売ろうと思っています。正直、今は物販の通販とかクラウドファンディングはあまり考えてなくて。なんでかというと、ライヴハウスを救うことが先決だと思っているからなんです。僕の物販を買ってもらうというより、各ライヴハウスが行っている施策のサポートをしてもらいたいですね。

 

──現状、すでにライヴハウスの閉店が何店舗か発表されています。大阪のライヴハウスの現状はいかがでしょう。

スギム : 先日、大阪のライヴハウスの人たちが集まって「現状、お互いどうや?」っていうYouTube配信をしていたんですよ。LIVE HOUSE Pangea社長の吉條(壽記)さんが2019年6月にAnimaというライヴハウスをオープンさせたんですけど、半年くらいでこういうことになってしまい、借入を銀行にお願いしているという話をしていましたね。正直、政府が助成金とかをしっかりしない限りは、多くのライヴハウスが持って2、3ヶ月なんじゃないかと、心配になります。

こういう時期だからこそ、楽しい曲を作っていきたい

──スギムさん周りのミュージシャンの方の現状はいかがでしょう。

スギム : 僕も家から出ていないので交流がないんですよ。ただ、周りのミュージシャンは働きながらバンド活動をしている人が多い。音楽一本でやっている人でプライベートでも連絡取りあってるのって、後藤まりこちゃんくらいじゃないかな?

──後藤さんとは、2020年9月に東名阪を巡るツアー〈まりクリ東名阪、天国と地獄ツアー〉の開催を発表しました。つい最近決まったツアーなんですよね。

スギム : まりこちゃんが家にいるうえで、Twitterを観てもニュースを見てもコロナの悪いニュースばっかりで。楽しくなるニュースを配信したいって。いろいろ考えようかって話をしたその日に、まりこちゃんが「今日発表したいねん」って(笑)。急いでまりこちゃんと俺で分担してライヴハウスに連絡をとって、その日のうちに発表しました。

──たしかに先が決まってないと、前向きになれない部分もありますよね。

スギム : がんがん未来の予定を入れていくべきですよね。いつ終息するかはわからないけど、すぐにでも動ける気持ちと体を作っていかないといけない。いま1番辛いのは、フリーでやっているPAさんとか照明さんといった技術者の人たち。物販もないし、自分から発信できるものもない。アーティストのサポートをする人たちなので彼らの生活も心配しています。

──コロナが終息して、ライヴができるようになったときに、ミュージシャンがいたとしても、それを支える人たちが転職してしまっていたりする可能性もあると思います。そういう意味で、音楽環境自体が地盤沈下していってしまうことも考えられるわけで。

スギム : ライヴハウスが本当に再開したときは、今まで通りにというのは難しいと思います。お金や集客の面とか、今までの2倍、3倍のくらい盛り上げてがんばっていかないとと思っていますね。そのためには、僕らアーティスト側も今まで通りではあかんだろうし、ライヴハウス側も変わっていかないといけないと思っています。

──現状、音楽スタジオも開いていないじゃないですか。その点で、先ほどおっしゃったように楽曲制作をメインでされているということなんですか。

スギム : まりこちゃんとも話していたんやけど、こういう状況だから作る気にもなれないって部分もあって。気分が落ちているときなので、それがダイレクトに楽曲に反映してしまう。僕の場合、コロナで休んでいる間に1曲だけできたんですけど、それは過去の楽しかったときの歌詞の断片を無理から膨らませて無理やり楽しい曲を作りましたね。どうしても今作っちゃうと、攻撃的なことであったり、ナイーヴな方向に行きがちなので。あえてこういう時期だからこそ、楽しい曲を作っていきたいなと思っています。

──人と接する時間が減るなかで社会と切り離される感覚は誰しもあるのかなと思うんですけど、気持ちの落ち込みをどうやって解消されているんでしょう。

スギム : 先の生活は不安だけど、そこまで気分は落ちていないんですよね。どうやって解消しているかっていったら、めちゃくちゃオンライン飲み会に誘われるんですよ(笑)。慣れてないからついつい間が怖くてしゃべっちゃうんですよね。カメラマンの竜太郎くんとも飲んだし、クリオタや、バンドマンともしますね。居酒屋みたいに騒げないので、そんなめちゃくちゃにならないように飲んでいます。

不謹慎と思われるかもしれないけど、この時期に出すことに意味がある

──そして、日比谷野音からちょうど1年経った今日、クリトリック・リス初の音楽フェス「栗フェス2020」の開催を発表しました。

スギム : クリトリック・リスは今年で15年目になるけど、自主企画はやったことはあっても、フェスという形ではやったことがないんですよね。僕の場合、ほぼ自分1人でやってきたというのもあったので。ただ、去年の日比谷野音を通して、西澤くんとかATフィールドの青木さんとか舞台監督の鈴木さんが手伝ってくれる体制ができたので、フェスっていう形をとって栗フェスというのをやってみたいなと思ったんです。

──地元・大阪でやることに関しては、特別な想いがあるんじゃないですか。

スギム : これだけ東京でライヴが多いのに今も大阪に住んでいるのは、大阪に対する愛があるからなんです。去年は東京の日比谷野音でやったからこそ、今年は地元の大阪で野音をやってみたいという気持ちはある。大阪城野音は出演したことはあるんですけど、出るより見に行っているほうが多かったから。出たときもサブキャラみたいな扱いで、そこまで出たっていう感触がないので楽しみです。

──現状、どんなフェスの構想を考えているんでしょう。

スギム : 自分はソロ・アーティストなので、ソロでやっている人とか、楽器を持たずにパフォーマンスしている人に魅力を感じていて。その人から学ぶことも多い。でも、そういう人がバンドの人たちと対等にやれるようになったのって、ここ数年だと思うんですね。そういう意味で、ソロだけどすごい人も出てきていて、バンド形態じゃないようなパフォーマンスの人たちに注目している。そういう人たちを中心に集めたらおもしろいかなと思っています。

──正直、まだ11月でもライヴが再開できているか保証がないのは怖いですよね。

スギム : 11月になったら全て片付いていると思って進めるしかないと思っています。11月もこの状態だったら、僕も生活できていないですから。クリトリック・リスをやめていますよ。でも、今はやりたい気持ちですね。タイムラインを見てもライヴ告知なんて一切まわってこないですから。だからこそ、この時期に明るい未来を提示したかった。不謹慎と思われるかもしれないけど、この時期に出すことに意味があると思うんですよ。

──正直、スタッフ陣もクリトリック・リスの祭りを終わらせたくないという気持ちがすごく大きくて。野音から1年というこの日に発表できたことはクリトリック・リスとしてもすごく意味のあることだと思っています。

スギム : 日比谷野音は、僕の実力とかだけでなく奇跡的に成功しちゃったので、あれに甘えていたら大失敗すると思っています。大阪という土地柄もあるし、日比谷野音を超えるくらいの努力をしないとと思っています。


■イベント詳細

栗フェス2020
2020年11月1日(日)@大阪城音楽堂
時間:OPEN 12:00 / START 13:00
チケット代:前売 3,900円(ドリンク代別)(全席自由)
出演者:クリトリック・リス 他
チケット最速先行 4月20日〜(※特典あり)
https://eplus.jp/crifes/
4/20(月)22:00〜5/31(日) 23:59
枚数制限4枚
小学生以上チケット必要
ご入場は整理番号順となります。
入場時にドリンク代500円
雨天決行/荒天中止
一般発売:8/1(土) 10:00〜
問い合わせ:エイティーフィールド03-5712-522

クリトリック・リス Official Twitter https://twitter.com/sugi_mu

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