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玉屋2060%、Wienners2度目のメジャーデビューを語る「自分たちが信じた音楽をより多くの人に届けるために」

StoryWriter

Wiennersが2020年5月13日、アルバム『BURST POP ISLAND』をリリースし、2度目のメジャーデビューを日本コロムビアより果たした。

前作『TEN』から約2年ぶりとなる本作は、Wiennres史上最もポップで、キャッチーで、一度再生したら停止ボタンを押すのに躊躇するほど、聴き手の心を掴んで離さない。1曲の中で何度の展開が変わる楽曲、エスニックな要素を感じる楽曲、スカのカッティングを取り入れた楽曲など、オルタナティヴロックを基軸にしながら、奇天烈でハイブリッドな超ポップアルバムとして仕上がっている。このアルバムを聴いているだけでも心が沸き立ち、コロナ禍でライヴに行けない我々に、音楽が好きでよかったと改めて強く実感させてくれる。

結成12年にして辿りついた、Wiennersの最高傑作。この作品が一体どのようにして完成したのか? 何度聴いても最高な本作は一体どのようにして誕生したのか。その秘密をどうしても知りたくなり、アルバム発売直前に取材をオファーし、アルバム発売日翌日にZoomでフロントマンの玉屋2060%に話を訊いた。

取材&文:西澤裕郎


どうやったら伝えられるか、誰に伝えたいかを明確にした

──ご無沙汰しています! コロナ禍の中、どうお過ごしですか?

玉屋2060%(以下、玉屋) : ずっと家にいるんですけど、ありがたいことに作曲の仕事をいただいているので、それをやりつつWiennersの次の曲のことも毎日考えている状況です。たまに外に行ってラーメンを食いたいたいと思うことはあるんですけど、もともとインドア派なので、めちゃくちゃしんどいとは案外思わないですね(笑)。

──先日、Twitter上で「#Wiennersリプライ作曲」という企画を行いました。どういうきっかけで、やることにしたんですか?

玉屋 : Wiennersの次の曲をどうしようかな思っていたとき、お客さんに「どんな曲が聴きたいですか?」ってリサーチ込みで訊いてみたら、思いの外いろいろなアイデアをくれて。メンバーと週2ぐらいビデオ通話のミーティングをしているんですけど、在宅で曲を作ってみようという案がちらっと出ていたので、お客さんからアイデアをもらう形で曲を作り始めるのはどうか? って話をしたんです。いい曲を作ることより、その過程を楽んでもらうことを目的にスタートしたので、ある意味どうなってもいいみたいな感じで、すぐ始められたというか(笑)。

──実際、Wiennersらしい楽曲でしたし、その過程が垣間見えたのはとても貴重でした。で、ここから『BURST POP ISLAND』について訊かせてください。メジャーでの作品ということで、どうやったら伝わるのかを徹底的に突き詰めて制作されたと、別インタビューで拝見しました。そういう要素に加えて、聴く側も玉屋さんやWiennersの音楽にチャンネルが合ってきたのかなとも思っていて。

玉屋 : あーたしかに。聴く側のチャンネルが合ってきたというのはあるかもしれないですね。そこまで考えていなかったですけど、楽曲提供の仕事を経て、自分の価値観がちょっと認められ始めたのもあるかもしれない。今までだったら、異物として弾かれていたものが、権利を獲得し出したというか。楽曲提供をし始めて、自分の曲ででんぱ組がバーンと跳ねた時って、事故みたいなものだなと思っていたんですよね。別に時代に合わせたわけではなく、たまたま時代が情報過多で速い曲を求め始めていた時、俺の曲と衝突してバーンっといったという感じだったので。たしかに、自分が歩み寄っただけではなくて、自分の存在がちょっとだけ認知されたという要因も、もしかしたらあるかもしれないですね。

 

──以前玉屋さんが、日本のアーティストは0から1より、1から10にする方が得意だとおっしゃっていましたが、今回のアルバムで玉屋さんがやられたことって、98を100にするような作業だと思っていて。例えば50から90は変える要素がわかりやすいけど、98から100にあげるための2点って、何を変えればいいか掴みづらいし、すごく細かい部分だと思うんですよね。今回、玉屋さんはどういった部分をチューンナップしたことで、このアルバムを完成させたんでしょう。

玉屋 : まず、世間の人たちに自分たちの何が伝わっていて、何が伝わっていないのかを、洗いざらい探していくところから始めたんです。そのうえで、バンドでありたいか、どう見られたいのかを、去年、一昨年のツアーぐらいからメンバーとすごく話すようになって。それを達成するためにどういうライヴをやりたいのか考えたときに、俺たちは非日常の興奮みたいなものを届けたいなって。簡単な言い方になっちゃいますけど、まだまだモッシュ、ダイヴがあるようなライヴがしたい。だから、そういう曲を作って、そういうライヴをやっていこうと改めて目標を明確にしたんですね。目標地点を明確にしてライヴでトライ・アンド・エラーを重ねたんです。この2年ぐらいで、これは伝わった、伝わらなかった、というのを繰り返していく中で、その蓄積を曲に落とし込んで、今回のアルバムの曲作りを始めたんですよね。

玉屋2060%

──楽曲制作前の準備段階で、しっかりゴールを見定めたと。

玉屋 : 曲の作り方がめちゃめちゃ大きく変わったわけではないんですけど、前回のアルバム『TEN』を出してツアーを回ったとき、お客さんが盛り上がるだろうと思っていたポイントでそうでもなかったり、逆にここで盛り上がるのか、っていう部分をデータとして自分の中に入れていて。だからといって、盛り上がるからやろうっていうんじゃなくて、自分はこれを伝えたいんだけど、どう説明したら伝わるんだろうか考えて、そのデータを借りて聴いている人に説明をするということをしました。どうやったら伝えられるか、誰に伝えたいかを明確にしたことが今までとの大きな違いでした。まさにおっしゃっていた98点から100点にする作業というところは、深く追求していった部分だったなと思いますね。

──驚いたのが、2曲目「MY LAND」は1番最後にできた楽曲だというところなんです。1曲目「ANIMALS」に続いて、アルバムを加速させるWiennersらしい爆裂なポップソングです。目的やテーマがあって曲を作られていったという点でいうと、思い描いていた通りのアウトプットができたということでしょうか?

 

玉屋 : もともと、この曲なしで完結する予定だったんですけど、やっぱり最後の一手がほしいなと思って作った曲なんです。核となるという意味では、逆に最後に作ったから、アルバムを集約した曲にできたんじゃないかな。「MY LAND」の中で言っている、「酔狂な妄想や 滑稽な発想を さらけ出していいよ」みたいな部分は、自分の中でずっとあるテーマだったので。このアルバムで作る最後のテーマは間違いなくこれだなとは思いましたね。

曲を作る前に、自分に曲の発注書を書く

──アルバムの流れとして、頭のほうがWienners流の展開の多いハイブリッドな楽曲、後半にかけてクラシカルやトラッドな要素が入ってきたり、グッドメロディな楽曲など、曲の色も変わっていきます。

玉屋 : 曲順もすごく考えました。曲作りをしている段階で予定していたものとは、大幅に変わったんです。それこそ、この時代に届けるにはどうしたらいいのかを、ものすごく考えたというか。単純にCDで聴く人もいるし、サブスクで聴く人もいる。どういう聴かれ方をするのか考えたときに、前半3、4曲をまずバーっと聴くじゃないですか? そこで掴めば最後まで聴いてくれると思っていたので、前半4曲に核となるものをバーンっとやって、真ん中2、3曲で遊びを入れて、後半にいくにつれて、もう1つの核である「楽しいの先にある多幸感」みたいなものに辿り着く道筋を立てました。結果的に自分たちでも腑に落ちた曲順になりましたね。

──10曲目「ゆりかご」は、玉屋さんが布団に入っていた時に降ってきたそうですね。セルフライナーノーツには「ミュージシャンなら分かる感覚」とも書かれていたんですけど、それってどれくらいの頻度で起こるものなんですか?

玉屋 : 運が良ければ、年に3、4回とか。そのくらいですね(笑)。

 

──この曲に関しては2019年に降ってきた?

玉屋 : 2019年ですね。そういうことって無欲の時に降ってくるんですよ。ちょっと話が逸れるんですけど、Wiennersを始めた頃、めっちゃお金がなくて。交通費も払えないぐらいで、どうしようと思っていた時があったんですけど、そういうときってお金は手に入らないんです。でも、何の欲もなく、あーお金ないなって思ったとき、道端に1万円札が落ちていたことがあって(笑)。無欲でそう思うと神様がくれるじゃないですけど、そういうことが何回もあって。それと同じような感覚で、無欲でいい曲作りたいなと思った時にふっと降りてくる感じですね。

──意識的に曲を作ろうとしているときじゃないからこそ、降ってきたと。

玉屋 : 降ってくるという表現をしましたけど、たぶんリラックスした深層心理の状態の時に自分の中にあったものが正直に出てくるんです。思いつめると、深層心理までたどり着けない精神状態になるじゃないですか。とにかく目の前で焦っちゃうから。そうじゃなくて、リラックスしている状態とか、全然別のことをしている時に、自分の深い心の奥から記憶を引っ張り出すみたいな感覚でふわっと出てくるのかもしれないですね。

──そういう意味では、他の楽曲とは成り立ちが全然違うんですね。

玉屋 : そうですね。いつもだったら曲を作る前に、自分に曲の発注書みたいなのを書いたりするんですよ。

──自分で自分にですか?

玉屋 : そうです、そうです。「こういう曲を作る」という設計図をまず書いてから始めるんです。「ゆりかご」は、そういうのは全くなしでパッと出てきたので、他の曲とはスタートラインが全然違いますね。

──自分に発注書を書く作業は、昔からやっていることなんですか?

玉屋 : 無意識にやっていたことではあるんですけど、意識的に始めたのは、ここ2、3年とかの話です。楽曲提供の仕事をさせていただくようになって、誰かから発注依頼を受けて、こういう曲を作ってくださいと言われるじゃないですか。その通りにいい曲を作る経験を経て、ある程度、枠組みがあった方が仕事が早く進むなと思ったんです。自分で自分の曲を作る時って、欲や自我が出てきて取捨選択が難しくなってきちゃうんですよね。でも自分である程度曲の枠組みを決めれば、これ必要ない、必要だなというものが明確になってくる。そこを明確にするために、まず自分にも発注するようになりました。たまに外れていって、最初思っていたものより、こっちの方がいいわって変わることもあるんですけど。

──それって、玉屋さん自身がWiennersというバンドを自己分析できているからできることなのかなと思うんですよね。自分たちを客観視もしている。そこらへんのバランスがおもしろいというかすごいなとは思います。

玉屋 : 本当にそうですよね。人に対してだったらいくらでもアドバイスはできるんですけど、自分のことって分からないですよね。だから、今回のアルバムは特にメンバーからの意見をすごく吸い上げるようにしました。「Wiennersにどんな曲が必要だと思う?」とか「このアルバムに、この曲はテンション高いかな?」とか。自分だけで作っていると、どうしても視野が狭まってきちゃうので。メンバーから客観的な意見をフラットな状態でもらうことは今回すごく多くて。それが結構大きかったんじゃないかなとも思いますね。

聴いたことがないけど懐かしい音楽を作りたい

──Wiennersのバンド構成として、4人体制で、女性がいて、シンセが入るというバランスは必然性のあるフォーマットなんでしょうか。

玉屋 : このフォーマットじゃないと、自分のやりたいWiennersは難しいと思っていて。中でも女性がいることは、とても大きい。男だけでやると、どうしても汗臭くなるというか(笑)。汗臭いのもすごくいいんですけど、どこかでユーモアだったりウィットに富んだ感じで伝えたいという想いがあって。アサミサエという存在は、まさに適役で、自分が作った真面目すぎるものを噛み砕いてエンターテイメントとして届けてくれる。俺、すげー入れ墨が入った怖いハードコアの兄ちゃんが中指を立てているよりも、超かわいい女の子が笑顔で中指を立てていた方が怖いと思っているんですよ(笑)。俺たちのやり方はそうだよというか、毒づくにしても「オラア!」みたいな毒づき方じゃなくて、ざまあみろ(笑)! みたいな毒づき方をしたいところはあるんです。なので、このフォーマットというのは、自分が今バンドでやりたいことをする上で絶対必要と思っていますね。

──ちょうど最近、SCHOOL YOUTH(※玉屋がWiennersを始める前に組んでいたバンド。吉祥寺WARPを中心に活動し、カルト的な熱狂を産んだ)のライヴの映像があがっていましたけど、伝説のライヴを観れて嬉しかったです。

玉屋 : 恥ずかしいですね(笑)。

 

──かつてのルーツという点で、アルバム収録曲のスカの要素が入った「ULTRA JOY」は、リファレンスにTHE SENSATIONS(※「50’s~60’sフレーバーをPUNKのテンションで吐き出す」をモットーに掲げたバンド。玉屋がベースとして在籍していた)の名前も出していたじゃないですか。どうして今回、そういうルーツ的な要素を入れようと思われたんですか?

玉屋 : 「ULTRA JOY」に関しては、会場限定で先行で出していたシングルなんですけど、いい意味で肩の力が抜けて、ちょっと遊び心も入れられたというか。今までやってなかった要素や、Wiennersで今までやってなかったことをやっていこうと、メンバー同士で話していたんです。それで、あえて避けていったスカのカッティングを入れてみて。今までパンクシーンとかでやっていたら「今更スカ? ダサッ」みたいな感じで捉えられちゃっていたと思うんですけど、逆にこれを今やったらウケるんじゃないかと思って。それで、ルーツ要素も入れようと、スタジオでも笑いながらカッティングしてもらって、やべーなこれって(笑)。

 

──すごく気持ちいいというか、この曲順で入ってくるのはよかったです。

玉屋 : あーうれしいですね。

──前作のほうが要素が強かったと思うんですけど、エスニックな要素、トライバル感みたいなものは、Wiennersの音楽においては欠かせないものだと思います。それはどういう意図から取り入れているんでしょう。

玉屋 : 俺が作りたい・聴きたい音楽って、聴いたことがないけど懐かしい音楽なんです。アジアとか様々な国を旅することがすごく好きなんですけど、例えばインドに行った時に、日本のお寺があるのって、すごく不思議じゃないですか。変な感覚になったりする。そういう不思議な感覚に陥りたいというか。説明するのすごく難しいんですけど、未来だけど過去とか、どこにもないけど知っていた景色みたいなものを見せたいし、自分も見たい。そうなった時に、必然的にワールド・ミュージックであったり、トライバルなものは自分でもよく聴くから、作る時に無意識でそういうものが入ってくるなという部分はありますよね。

──未来のことなのに、なぜか知っていたような気になるというか。そういう感覚って、わかる気がします。

玉屋 : そうです、そうです。本当に。

多くの人に届けたり広めないと、メジャーでやっている意味がない

──言葉を選ばず言うと、僕がずっとWiennersを聴いてきているのは、理解しきれないからなんです。自分が学生時代のときって、海外盤でCDを買うことが多かったから、何を歌っているか分からなくて、サウンドを聴いているようなところがあって。こういう仕事をやっていてあれですけど、プライベートで音楽を聴いているときって、日本語でも歌詞ってあまり聴いていないんですよね。

玉屋 : あー分かりますね、すごい。

──むしろ、フレーズとして突然入ってくるもののほうがスッと入ってくるというか。そこでグッとくるものに共感とすることが多くて。Wiennersって、ちゃんと歌詞に言葉があるけど、聴いた後に歌詞カードを読むと、こんなこと言ってたんだみたいなことが結構あって。それがおもしろい。個人的には、そういう聴き方ができるのもWiennersが好きな部分です。

玉屋 : 結成当初も、1stアルバムの時からも、ヴォーカルと他の楽器を並列で考えていて。言葉も楽器なので、語感はすごく重要だと捉えているんです。これしかないだろうというメロディに、これしかないだろうという言葉が乗って、初めて人の心に突き刺さるんですよね。だから、どんなにいい文章を曲にしたとしても、いい歌詞になるとは限らないんです。1行でもいいので、メロディと語感がパッと合わさった時に半端ない力になってガーンと突き刺さる。そういう力みたいなものはずっと信じていますね。その単語が刺さればいい。その後、歌詞を見返したら、聴き取れなかった部分もこういうことを言っているんだというところまで伝わる。そうやって作ることが、プロのエンターテイメントの仕事かなと思っています。まずは端的な部分だけ突き刺さってくれれば全然オッケーだし、自分もそういう音楽の聴き方をしているし、それはすごくありますね。

 

──取材をするとき、たまに、音楽を聴いた後に、歌詞だけ文章で読んで分析しているときがあって。ん、これでいいのか? と思う時があるんですよね(笑)。

玉屋 : 音と言葉が離れた作業ですもんね(笑)。

──そうなんですよ。メロディにぴったりハマる言葉が絶対あって、それを見つけるというのも、クリエイティブなんだなと今訊いて思いました。

玉屋 : ちょっと話が違うかもしれないんですけど、ヒップホップって言葉が単純に入ってきやすいじゃないですか。それは、ヒップホップが言葉がメインの音楽だからというのもあるんですけど、メロディがないから喋っている時と近いニュアンスで言葉を伝えられるんです。それをメロディに乗せた瞬間、例えば、おはようございますという歌詞を、おはよーございまーす♪とかって歌っちゃうと、入ってこないんですよね。ちゃんと喋ってるニュアンスと同じメロディをつけないと入ってこない。そこは自分でもすごく意識している部分ですね。本来の言葉のリズムが違うだけで、俺は気持ち悪いんですよね。自分で曲を作る時はそこをできるだけはめるようにしていますね。

──たしかに、書き言葉でも、スッと入ってくる文章を読み返すと、五・七・五とかになっていたりするんですよね。それをより音楽的にしていったものが、スッと入ってくる楽曲なのかなって訊いていて思いました。

玉屋 : たしかにそうですね。語感とリズム感はすごく大事ですね。だから自分も韻を踏むわけで。気持ちよくスッと入ってくることは、エンターテイメントとしてすごく大事だし、何かを訴えたい時に、力ずくで訴えるよりも気持ちよく入ってくる方が絶対に届くので。音楽的な気持ちよさみたいなところで、聴き手の耳に勝手に侵入していくみたいなイメージはありますよね。

──2020年2月15日に渋谷クアトロで開催したツアーファイナル「BACK TO THE ANIMALS TOUR 2020」でメジャーデビューを発表しました。MCでの言葉も含めて、熱い気持ちになりました。自分も頑張ろうって。

玉屋 : ありがとうございます。あの日は本当にお客さんもすごく盛り上がってくれて。自分たちがメジャーでもう1回やることを、あんなにたくさんのお客さんが喜んでくれるとは思わなかったので、本当にめちゃくちゃグッと来ましたね。

──もともとWiennersはメジャーで活動していたバンドですが、このタイミングで再びメジャーで活動を始めるということに対して、どういう気持ちなんでしょう。

玉屋 : 決意を固くするというか、今までなんとなくやってきた部分をちゃんとやるタイミングだと思っていて。言葉を選ばずに言うと、売れるためにとった手段という感じではある。今まで俺たちは、売れることに対して積極的だったつもりだったけど、今思い返すと、やれていなかった部分があって。もちろん、売れるためということが第一目標ではなく、自分たちが信じた音楽をより多くの人に届けるってことが1番の目標なんです。メジャーでやるってことは、そこの努力も厭わないという、自分たちに対する言い聞かせという部分もある。より多くの人が関わってくれる中で、今だったら、このメンバーで積極的に売れるための行動ができる。そこまで成長したと思えたからのメジャーという感じですね。

──業界的な話になってしまいますけど、嫌な感じのメジャー行きというのがあるじゃないですか。今まで関わっていた人が全員変わっちゃうみたいな。その部分で、Wiennersはマネージャーの町田さんも含めてずっと同じチームで動いてきているし、気持ちよく応援しています(笑)。

玉屋 : そうやって言っていただて、本当にありがたいですよね。お客さんからも純粋に売れてほしいと思っている声をすごく聴くので。そこに単純に答えたいなというのもあるし、関わってくれている人の数が多くなっていくからこそ、多くの人に届けたり広めないと、メジャーでやっている意味がないので。それもあらためて痛感したし、そうやって言っていただけると、よしってもう一度引き締めるぞって気持ちになりますね。

今だからこそできることを考えているとワクワクできる

──ここまで最高のアルバムが完成して、今後Wiennersはどういう活動を計画しているのか。気になっているところではあります。

玉屋 : お客さんのことを考えて、どういうふうにやったらフロアが盛り上がるんだろうと考えて作った楽曲もあるんです。なので、ツアーやライヴで演奏して、間違っていなかったということを実感して、次に次にっていう時ではあった。ライヴで完成する要素もあるアルバムだったので、そこは残念ではあるんですけど、あまりくよくよしないで、今できることを前向きに考えてはいますね。それこそ、リプライ作曲をやったり、ネットラジオも先週始めたんです。今だからこそできることを考えていると、おもしろいアイデアが湧いてきたり、ワクワクしてきたりするんです。落ち込むというより、今まで手をつけてなかったこれやろうとか、そういうマインドにバンド全体で向いている気はしますね。

https://www.youtube.com/watch?v=6usFZRhx5J4

 

──たしかに、こういう状況じゃなきゃ、リプライ作曲とかなかったかもしれないですもんね。玉屋さんがTwitterアカウントを開設したのも、2月のツアーファイナルでしたし、一気にオンラインでの動きも加速しましたもんね。

玉屋 : 本当にそうですね(笑)。

──順番を間違えちゃったんですけど、最後に一つ質問させてもらっていいですか? 今回のアルバムを作るにあたって影響を受けたアーティストなり曲があれば訊きたいです。

玉屋 : 単純に参考に聴いた曲はすごくいっぱいあって。今流行っている音楽もめちゃめちゃ聴いたし、自分が最近すごくハマっているEDMとか、ヒップホップとかも聴きました。具体的なアーティストというよりは、アーティスト名とか分からずにYouTubeでDJセットで観たりしているんです。例えば、アフロハウスのリズム感みたいなものはすごく取り入れられています。もちろん、アフロハウスをそのままやるのではなくて、そのリズムや語感を取り入れている。あと、ゴムミュージック。そのあたりのリズム感には影響されましたね。

──中南米のダンスミュージックの影響があるのは、おもしろいですね。本作を紐解く一助としてだけでなく、このアルバムを通して、他の音楽につながっていくのは楽しいですね。

玉屋 : Wiennersを聴いて、ゴムミュージックとか、アフロハウスには絶対たどり着かないと思うんですけど、そこもおもしろいかなって。そういう局地的な音楽と、最先端で売れている音楽の纏う空気をちゃんと聴きながら、今Wiennersでやるには、こういう楽曲にして説明すればいいんだなというのをすごく考えながら作ったアルバムになっているんじゃないかと思います。

Wienners(うぃーなーず)

2008年、玉屋2060%(Vo/Gt)を中心に吉祥寺弁天通りにてWiennersを結成。パンク畑出身の瞬発力と鋭さを持ちつつも、どこか優しくて懐かしい香りを放つ男女ツインボーカルの四人組ロックバンド。2014年9月7日のライブを最後にオリジナルメンバーであるMAX(Vo/Key/Sampler)とマナブシティ(Dr)が脱退。新メンバーに旧知の仲であるアサミサエ(Vo/Key/Sampler)、KOZO(Dr)を迎え、約9ヶ月ぶりに再始動を果たす!!予測不可能だけど体が反応してしまう展開、奇想天外かつキャッチーなメロディーで他に類を見ない音楽性とユーモアを武器に様々なシーン、世代、カルチャーを節操なく縦断しつづける。
https://www.wienners.net/

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