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朝7時から8人の前で行われた四谷アウトブレイク〈絶対に歌ってはいけない早朝ギグ〉──都内ライヴハウス営業再開後最速レポ

StoryWriter

2020年6月19日(金)朝7時より、四谷アウトブレイクにて、〈絶対に歌ってはいけない早朝ギグ〉が開催された。

東京都内では、19日から休業要請などが全面的に解除。接待を伴う飲食店やライヴハウスの営業が再開できるようになった。

上記の指針が発表された6月12日、四谷アウトブレイク店長の佐藤”boone”学が、いち早くイベント開催を表明。早朝ギグは四谷アウトブレイクの名物企画で、これまで何度か開催されてきたが、ライヴハウスの自粛要請後は初めての開催となる。

そのため、「観客が歌う行為は禁止」、握手会は「すべての握手の間に手をアルコール消毒すれば実施できる」とするガイドライン案に準じ、「握手会あり」「絶対に歌ってはいけません」というルール順守のもと、限定8名の完全予約制で開催された。

その様子をレポートする。


都内ライヴハウス営業再開後最速レポート

早朝、都内は大雨。

眠け眼のまま身支度をし、マスクを装着して外に出て、朝6時台の電車に乗り込むと、椅子席は埋まっていた。

立ったまま電車に揺られ、四谷駅に到着し、できるだけ人との間隔を開けながら駅を出て、傘を差してライヴハウスへと向かった。

駅から5分くらい歩き、ライヴハウスへと続く地下への階段を降りていくと、テレビ局の取材クルーたちがモニターのチェックをしていた。大手テレビ局の取材班が何社か入っているようだ。音楽メディアは特にいない。

今回、約3ヶ月ぶりのライヴハウスでのイベントということで客として予約して来場したが、せっかくなのでライヴレポートを書かせてもらうことを店長の佐藤さんに伝え、検温をしたのち、ソーシャルディスタンスを守り、約200人収容の会場にポツンとおかれた8席の椅子に座って開演を待った。

7時。店長の佐藤さんの影ナレで「お客さま、今日はありがとうございます。かねてからの告知通り、一緒に歌わないように気をつけてください」と注意が呼びかけられた。また、「お客さまからドリンクを100杯ほど奢ってもらっているので注文してください」という、お客さんからのライヴハウスへの愛情を感じさせるアナウンスに笑いが起こった。

そして出演者が紹介され、最初の出演者・原田仁がステージ上に登場した。ROVOのメンバーでもある原田は、ボイス・パフォーマーでもあり、マイク一本でノイズミュージックを奏でる強烈な個性に満ちたミュージシャンだ。MCもなく、ひたむきに声一本と、サンプラーを駆使して肉体的なノイズミュージックを生み出していく。久しぶりに体感する大音量が耳をつんざき、スピーカーからの振動が身体を貫いていく。久しぶりのライヴハウスでの生音に心が躍る。

もちろん8人の観客は誰も歌わない。というか歌えない。さらにステージと客席の間に設けられた透明の幕も、この非日常感を演出するようで格好よくさえ感じる。ガイドラインをポジティブに転換してみせたブッキングでのライヴに、さすがアウトブレイクという気持ちにさせられた。

約20分のパフォーマンスを終え、続いて登場したのはIsshee。エレキベース一本で椅子に座って演奏がスタートした。エクスペリメントな演奏をエフェクトをかけて空間を自由に彩っていく。まったく展開が読めない演奏、歌もないので、こちらも観客は歌うことなどはなからできない。ひたすら神経を集中させてに埋没していく。

Issheeも約20分の演奏を終えると、原田仁が再びステージに登場し、2者でコラボをして約50分のライヴは終了した。

その瞬間の8名の観客たちの拍手は爆発的に大きく、心からの喝采が起こった。もちろん、自分自身もその中の一人である。

間髪なく、握手会が行われた。「すべての握手の間に手をアルコール消毒すれば実施できる」というガイドに乗っ取り、消毒をして握手をしていたが、出演者も観客も慣れていない握手会だったので、あっという間に終わってしまった。しかし、どの観客もライヴハウスで聞く大音量の音楽への喜びを語り合っているのが印象的だった。

はじめて会う人たちのほうが多かったが、久しぶりのライヴハウスということで、お客さん同士で垣根なく感想を話し合っているのも素敵な光景だった。その場を離れるのは後ろ髪ひかれる思いだったが、仕事に向かうため、ライヴハウスを出て、多くの通勤者であふれた電車に乗った。

どの業種よりも早く自粛を始めることを余儀なくされ、どの業種よりも最後に自粛が解除されたライヴハウス。まだまだ制限は多いが、ようやくライヴハウスでお客さんを入れて音楽を鳴らす一歩を踏み出すところまできた。まずはその一歩を素直に喜びたいと思う。(西澤裕郎)

■イベント詳細
〈絶対に歌ってはいけない早朝ギグ〉
2020年6月19日(木)@四谷アウトブレイク
時間:open AM6:00 / start AM7:00 / finish AM8:00
料金:前売 1,000円+1D 600円
限定8名

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