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天津飯放浪記第22回 祖師ヶ谷大蔵 貴福「具材の旨味が滲み出る天津飯」

StoryWriter

おいっす。

先日仕事の都合で、小田急線は祖師ヶ谷大蔵駅へ。学生時代は小田急線新宿駅でピーク時には一日1000組近くの外国人観光客への案内をしていたボク。大学生ぶりに小田急線に乗って車窓からの風景を拝んだんだけど、電車からの風景って繁華街以外は地元青森と変わらない長閑な感じがありますな。窓から見えるあの家にはどんな家族が住んでいるんだろう……。そんなことを想像すると楽しいって、藤子不二雄A先生の『笑ゥせぇるすまん』に書いてました。ちなみに藤子不二雄A先生は、実家が寺院で幼少の頃は精進料理ばかり食べていたので、実質ベジタリアンだったそうな。

祖師ヶ谷大蔵駅に着くと、想像していたよりも大きな街でびっくり。それでいて新宿や渋谷のように大きな百貨店があるのではなく、商店街に活気がある感じがあってステキですな。ほっこり。

ウルトラマンの世界がお迎えする商店街。子供もニンマリでしょうな。童心に帰る気持ちで、商店街を闊歩していると……。

やって参ったぜ「貴福」。ほう。こりゃまた商店街の雰囲気にあった、年季入りのお店。入りづらい雰囲気もあるけど、大体こういうお店はハズレがないのは周知でしょう。震える脚を鼓舞していざ参らん。

店内ではご主人お二方がテーブルで新聞を読んでおりいそいそと準備。いいっすねえ。客が来てもそんなに気を使わなくてイイんですゾ。マイペースなお店の方がこっちもなんか落ち着く気持ちあるよネ。

早速メニューを拝観。東京の町中華でさえ相当なお値段に感じて気後れしてしまうけど、田舎者の血。天津飯の上の「エビウマニ飯」にそそられつつも、しっかり天津飯を注文させていただく。うま煮ってよく目にするけど、なんて自信に溢れた料理名なんだろう……。

天津飯を注文する時にお店の人が、「えっ」みたいな顔するのが毎回の楽しみになりつつあるんだよな……。やっぱり天津飯って頼む人が少ないんだろうな。どうしてそんなに人気がないのに、生き残って来れたのだろう。なんで店を開店するにあたって、さほど人気のない天津飯をメニューに加えようと思ったのだろう。きっと飢饉や戦乱、不景気の時代の最中でも熱狂的な天津飯フリークスがいたのだろうか? 目下、自分以外に天津飯好きな人を見たことがない。なので、もしも僕がいつか君と出会い話し合うなら、そんな時はどうか天津飯の魅力を知ってください。リンダリンダリンダリンダリンダ……。

\オマタセシマシター/

うむ! まずチャルメラ柄の丼がいい! 濃い目の色合いのタレと卵の色味が食欲そそるぞ! 実食!

お腹鳴るなあ……。

おお! まず初めに驚いたのがだいぶ大きめに切り分けられた具材! 玉ねぎと竹の子、椎茸くんが先陣を切ってお口に登場。これが全体に散りばめられており、しかも噛むたびに食材の美味しい味がじんわり口の中に広がる!だいぶ食感も残っているので常に楽しい! 具材を活かしきっているという感じだな! 何より蟹肉からもじんわり蟹のエキスが出てくるのがステキ! 天津飯なのにあんに負けずに色々な旨みが滲んでくる! 米はちょっと柔らかめで、あんは全体的に甘め。米も結構量があるんだけど、口の中に入るとあんに包まれた具材の旨さの方が強くて、米の存在感をかき消すほど。こりゃうんめえ!

ウーム、だいぶ満足だ……。久しぶりの多幸感。ローカルな商店街には大体こういうアタリの街中華料理屋がある。しばらくはGo To 地元の商店街にして、地元の魅力を探すのもいいかもしれませんよ皆さん。

今日の天津飯豆知識:
東京ではケチャップあんが主流だが、天津飯の発祥の浅草来々軒、日本橋大勝軒では醤油あんを出していたらしい。


⭐︎今日のお店⭐︎
「貴福」
住所:〒157-0072 東京都世田谷区祖師谷3丁目3−7
営業時間:11:00〜21:00
定休日:水曜日
電話: 03-3484-1951
火鍋栄光(ひなべ・えいこう)
大学時代には中国に留学、何度も旅行で現地に赴いては中国各地の料理に舌鼓を打ってきた若武者。現在はネオン輝く大都会トーキョーで、本場の味が楽しめる中華料理屋を彷徨う神出鬼没のゾンビ。普通の中国人はチンプンカンプンの日本発祥中華料理の代表格「天津飯」に人生を狂わされかけている。記事中の写真は©︎Photo by Kopei。

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