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ROTH BART BARONが創造するコロナ以降の全国ツアー 祝福されていない世界でタフネスある音楽を鳴らすために

StoryWriter

ROTH BART BARONがコロナ禍の2020年7月10日、4度目となるクラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトでは、1年ぶりとなるアルバムのリリースに加え、配信チームABANKとともに観客有り+有料配信 Live Streamingの全国ツアー開催を目指す。

「人と人が触れ合うことを失われた世界で、変わりゆく時代に音楽を鳴らすにはどうしたらいいのか?」

そうしたテーマを掲げ、コロナ以降の全国ツアーのあり方を創造していく。観客ありでのライヴ自体がほとんど行われていない2020年、観客を入れた全国ツアーのあり方をクリエイトする勇敢な姿と行動を全面的に支持する。

そもそも、筆者とROTH BART BARONとの出会いは2012年の夏終わりくらいのこと。音楽評論家の岡村詩野がレインボータウンFMで放送していた『radio kitten』内に、全国のミュージシャンから未発表音源を募集する企画「radio kittenへの道」があり、そのPODCASTを筆者が担当していたのがきっかけだった。彼らが同コーナーに送ってくれた音源を聴いて、あまりに素晴らしく自転車を漕いでライヴにかけつけ、その後、何度か取材をしたり、一緒にイベントに遊びにいったり、僕の主催するイベントに出演してもらったりもした。

あれから約8年。ROTH BART BARONは自分たちの音楽をより深化させ、海外でのレコーディングやマスタリングなど、音楽に対してより真摯に向かい合いながら作品を作り続けてきた。2020年には、4thアルバム『けものたちの名前』が、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのフロントマン後藤正文が立ち上げた新進気鋭のミュージシャンが発表したアルバムに贈られる作品賞”APPLE VINEGAR MUSIC AWARD 2020″で大賞を受賞。各所から大きな評価を得ている中、コロナ禍が世界を襲った。

 

こうした状況の中、ROTH BART BARONはアルバムを作り発表すること、それを提げての全国ツアーを行うことを発表した。アルバムのテーマは「祝祭」だという。コロナウィルスによって世界が変わってしまった2020年に、彼らが選んだひとつの選択は、我々にとって祝祭の鐘の音ともいえる。ROTH BART BARONの近況や本プロジェクトについて、Zoomを通してコミュニケーションをとった。

取材&文:西澤裕郎


世の中のバランスは狂っているし、狂気じみていると思いながら生きていた

──大変ご無沙汰しています! お元気ですか?

三船 : 登場の機会を探っていました。すみません(笑)。いつ振りでしたっけ?

──『ロットバルトバロンの氷河期』の取材以来だと思います。いろいろ懐かしいけど、こうやってまた話せて嬉しいです。

三船 : 西池(達也)さんと最初のライヴも、西澤さんが呼んでくれた青山MANDALAでやりましたもんね。懐かしい。九州料理の居酒屋でfelicity担当の平川さんと一緒にご飯を食べにいったこともすごく覚えています。あの店を通る度、いろいろ思い出します。

──僕も一緒です(笑)。あれが2012、13年くらいなので時の流れは早いですね。ましてやこんな世界になっているとは。新型コロナウィルスが国内でも騒ぎになってきたことで、バンド活動も影響を受けたんじゃないですか。

三船 : 前作のアルバム『けものたちの名前』のツアーが4分の3ぐらい終わって、残り4公演+ツアーファイナルみたいな中、こういう騒ぎになって。必要以上には怯えず、かと言って闇雲にはならず、ROTHとして冷静さを失わないギリギリのところまで判断したんですけど、若干延期になっちゃったところもあり、非常に悔しい思いをしました。

──三船くん自身の生活には何か変わりはありました?

三船 : もともとツアーがない時は3日間ぐらい家から出ないとか平気で起きるタイプの人間なので、こもるのには向いているんです(笑)。なので、曲を作っていました。ただ、1番ハードな5月とかは誰とも会わないことが結構あったし、セッションもできなくて。トイレットペーパー・パニックとか、データとしての情報は取り入れるようにはしていたんですけど、人の不安とかを過度に入れちゃうと自分も影響されちゃうと思って。データ以外の情報は取らないようにしていましたね。自分の心のバランスを、すごくケアして生きていました。

──テレビをつけるとネガティブな情報しか入ってこないし、不安を煽られていたので、それはいい選択だったんじゃないかと思います。

三船 : そうそう。水掛け論というか、わらわらした渦中にいると冷静な判断ができなくなるから。自分はわりと遠くから観ている角度で生きようと思って。うちはテレビもないし、街も静かになったし、かつてないほど音楽には集中できた時間なのかなと思いますね。

──ミュージシャンによっては曲が書けなくなってしまったという人も一方でいます。そういうことはなかったんですね。

三船 : 震災の時もそういう方が結構いらっしゃったんですけど、僕らは震災後の自粛ムードの中、プロフェッショナルなスタジオでレコーディングできる機会があって。西澤さんがピックしてくれた『Chocolate Demo』も原発の屋根が吹き飛ぶのを見ながら作っていた。コロナのような事態が起きなくても、世の中のバランスは狂っているし、狂気じみていると思いながら生きていたんです。非常事態でも生き続けられるタフネスのある音楽がリスナーとしても好きだし、そういう音楽を作りたい。雑な言い方をすると緊急事態にわりと強いバンドではあると思います(笑)。

 

──とは言え、社会との接点が少なくなることで、多少なりとも影響あるのかなとは思うんですよね。

三船 : うん、そうですね。ライヴができなくなって、ミュージシャンとしての活動の場が1つ失われた。1200人規模のツアーファイナルがチケットソールドアウト目前だったからすごく悔しかった。1200人集まることは今後数年は許されないであろう世界になっていて、真面目に考えるとすごくつらいんですけど、ミュージシャンである前に1人の人間なので、みんなと同じような苦しみやつらさはもちろんあります。

──僕が最初会った時は、そこまで大規模でライヴもやっていなかったじゃないですか? その時と比べて、現在のROTH BART BARONにおけるライヴの重要性は変わっています?

三船 : ツアーを重ねて、いろいろな街に行ったり、人に会ったりする経験が自分の音楽を豊かに、経験値もすごく上げてくれたんです。西澤さんと初めて会った時は、ただコンピューターの前に座って音楽を作る人間で、旅をしたいなと漠然と夢には思っていたけど環境も自分の勇気もなかった。いろいろな人と出会って、バンドも上手くいくようになり、できることが少しずつ増える中で、頭でっかちで悶々とした現代っ子が栄養をどんどん採っていく経験ができていった。ひとりぼっちで部屋で音楽と向かっている時間も大事ですけど、陰と陽みたいに、いいバランスで2つが溶け合うことが大事だなと感じています。

この世界は俺が生きやすいようにデザインされていないし祝福されてない

──コロナ期間中いろいろな人に話を訊いてきましたけど、三船くんの言葉は現実を冷静に認識してどうやって向かい合っていくのか、地に足のついた言葉だなと思います。

三船 : 自分はマイノリティとはまで言わないですけど、社会と馴染めなかった経験がすごくあって。見た目もこんなだから、今でも「お前、本当に日本人か?」とか「日本語上手ですね」とか言われることがあって。10代になる前の多感な時期に、褒められて貶されてみたいなことをジェットコースターのように毎日受けていて。自分は人と違うのかも、という疎外感を感じていたんです。両親も10代の頃に離婚しちゃって、高校は1年足らずで辞めちゃったので、みんなが学校に通っているのに俺だけ私服でコンビニで立ち読みをしていた。まだSpotifyとかもないからTSUTAYAとかCD屋さんに行って端から端まで借りて映画を観まくるとか、普通の人間になれなかった。それが今では全然いいことだと思っているんですけど、最初から「この世界は俺が生きやすいようにデザインされていないし、この世界からあまり祝福されてないし、どうしたら作り変えられるのか」という角度で生きていた。そうした中で世界と接触するため、音楽で繋がろうとしているというのは、たぶんあると思うんです。デザインされてない場所を、どう自分が生きるためにリデザインするかは今も常に考えるし、この10年間ずっと考えてきたことだと思います。だから、地に足がついているって言ってくれるのは嬉しいけど、普通の世界だとぶっ飛んでいるって言われるかもしれないし、自分の角度は変わっていないんですよね。

──今言ってくれたみたいに、僕も社会と繋がるために音楽や文化があるとずっと思っていて。ただ、コロナ禍で、音楽だけに限らず、文化的なものが蔑ろに後回しにされていることも強く感じたんです。こんなに冷遇されているのかと。必要以上に音楽に対しての風当たりが強いことに驚いたというか、傷ついた部分があって。そのあたりはどう感じていますか。

三船 : 諸外国と比べて、芸術の教育が日本に伝統としてなかったのが歯がゆいですね。例えば、宮崎駿さんは日本では芸術家というより職人としての評価の方が強かったけど、『もののけ姫』と『千と千尋の神隠し』でフランスだったりヨーロッパがアートとしてアニメを評価してくれた。もし発見されていなかったら、1アニメスタジオの上手いおじいちゃんとして一生を終えていたかもしれない。そういうことってたぶんずっと起きていて。亡くなった山本寛斎さんだったり、今も元気なオノ・ヨーコさんとか日本を飛び出した人たちはアーティストとしてなし得ることができたけど、日本では村上隆さんぐらい頑張らないと認められないというか。そこは生き方として、自分も参考にしなきゃと思うところはたくさんあります。

──芸術の受け手の価値基準が成熟していない、というのも大きな理由の一つだと思います。

三船 : ヨーロッパの人たちはその教育をやってきたから非常事態にもお金を出してサポートできる。芸術がなくなったら俺たちの国のアイデンティティがなくなるっていうのが本能的に分かっている。その経験を今、初めて体感している最中だと思うんですよ。先進国の中で日本はそのへんが赤ちゃんというか。20年先を見て1つ1つ紐解いていく作業をしないと変わらないと思う。

自分たちの生存権を確保しながら音楽をずっと作り続けていくため

──今回、クラウドファンディングは4回目の試みとなります。自分たちでコントロールできないような世の中になっても、自分たちの活動を守っていくための仕組みなのかなとも思ったのですが、そのあたりはいかがでしょう。

三船 : 今まで、いろいろな音楽業界の人たちにお世話になる機会があったけれど、このアイデアを積極的に共有できる人に、なかなか出会えたかったんです。自分たちの生存権を確保しながら音楽をずっと作り続けていくために、じいさんになってもツアーができるために、歌が歌えるミュージシャンになるにどうしたらいいのか。生き残っていくスタイルを自分たちなりに作り上げることを考えた時、クラウドファンディングが1番合っていたんです。

──純粋に音楽制作に集中するためにという部分も大きいんですね。

三船 : 会社を通すと、どうしても生産性を高めて売れる曲を書かないといけないという先入観があるようで、そうすると、アートのためじゃなくて、お金のためのみたいな目標になっていく。だんだん感覚が麻痺してきて、お金のために生み出すことが正義になってくるし、本来作りたかった目的を見失ってクリエイティブがそっちの方向に引っ張られていっちゃう。僕も所謂J-POPにトライする機会が何回かあったけど、全部上手くいかず、僕には向いてないんだなと思った。だったら、日本中にいる何をしてもついてきてくれる人たちとゆるく繋がりながら、音楽をずっと鳴らしていける関係性が1番健康的なんじゃないかなと。それを切り拓いていって大きな流れにできたら、僕みたいに悩んでいる音楽家、作曲家、アーティストに1つの手段を提示できると思うんです。そういう感覚を持って、自分たちが作りたいディテール、フォーマットを提示する環境を作りたかった。スタートはそこからですね。

──去年、僕の会社で『なぜアーティストは壊れやすいか?』というカウンセリングの本を出版したんですよ。その中で「1番大事なのは、1人でも自分を肯定してくれる人が身近にいるかどうか」という話があって。そういう意味で、バンドとともにマネージャーを兼任している西池さんはROTH BART BARONの守護神みたいな存在なのかなと思って。

三船 : 自分の主義として、裸の王様になりたくないというか。自分の言うことを全部イエスと言ってくれる人には興味がなくて。たまにドキリとさせられる、真っ向から立ち向かってくれるキャラクターが好きなんです。西池さんからはたまに真逆の意見が来て、議論した結果、掛け算になっていくことが多い。今のROTHのサポートチームは掛け算になる人たちが多いんです。バッググラウンドも、ジャズから、キューバ・ミュージック、森は生きているの岡田拓郎は僕と全然違う方向性の人間だけど通ずるものがあるというか。違うバッググラウンドが混ざると、多様性という言い方が正しいのか分からないですけど遠くに余計飛べるというか。ROTHのコミュニティ「PALACE」でグッズも作っているんですけど、絶対僕なら作らないようなデザインをしてくれたりする。それが最終的にROTHらしくなっていればいいんです。全然違う方向にいけるのは組織の力だなと思うし、自分1人じゃできないから、そういう時にバンドをやっている感覚があるなって思いますね。

──多様性って言葉がよく使われるようになりましたけど、それがいいとか悪いとかの話ではなく、世界は多様なんだよっていう事実を表している言葉にすぎないというか。

三船 : そうそうそう、当たり前のことなんです。

──ROTHは、そこをすごくナチュラルに捉えているなと思っていて。2012年に一緒にBiSのライヴに行ったじゃないですか。

三船 : 行きましたね。

──誘ったら、ぜひ行きたいですって言ってくれたのが今でも印象に強く残っていて。

三船 : 熱狂が伝わってきたんですよ。やり方は違えど熱を生み出したいというところは同じだと思うし、彼らとか彼女たちのチームワークみたいなものは本当に素晴らしいなって。毎日聴くかと言ったら違うけど、あの体験は大きかったなと思う。西澤さんがあの時1番フォーカスしていたのには何か理由があるだろうというか、そういう熱狂について行くのは好きなんですよね。

熱狂や素晴らしい体験を生み出すことが、バンドとしてミュージシャンとして大切なこと

──結成当初から一緒に活動してきたドラムの中原(鉄也)くんの脱退には、どういう経緯があったんでしょう。

三船 : こういう言い方をすると誤解があるけど、一緒に続けたいなと思って方法を探してきたんですけど、現実はそうはいかなくて。ファクトとして、2人の化学反応はこれ以上起きないというのがあった。それをちゃんと観て、誰かが決断しなきゃいけなかったんです。ぬるま湯のまま、今いるファンの人たちを満足させるために続ける、嘘のバンドの化学反応を続けることはできたかもしれないし、ハリボテみたいにドーピングしまくることはできるかもしれないけど、音楽ってそこじゃない。僕は社会的には本当にダメなことばかりなんですけど、音楽だけはちゃんとしようと思っているし、一貫して純度の高い音楽を作りたいんです。すごくタフな決断だったけど、お互い納得いくまで話し合って決めました。

 

──昔からの友人でもあるだけに、僕らが思っている以上にタフな決断だったんだと思います。

三船 : 7月11日に新代田FEVERで、少ないお客さんを入れて新しい編成で配信ライヴをしたんです。コメントが荒れまくったらどうしようとか、そういうことをすごく考えて、お腹が痛くなりながらも2時間ライヴして。励ましてくれたのもあるんだろうけど、みんなすごく喜んでくれて。もちろん悲しみも混じったような気持ちの人もいたとは思うんですけど、すごく助けられた。過去に戻ることはできないけど、この先ROTHが熱狂だったり素晴らしい体験を生み出すことが、バンドとしてミュージシャンとして大切なこと。いい音楽を作って届けて、人と一緒に感想する。その空間をどう作るかに気づけた期間でもあったと思っています。

同時間をシェアするのが金曜ロードショーをみんなで観ている感じに近い

──今回のクラウドファンディングでは、新しいアルバムの制作とともに、全国ツアーを「観客有り+有料配信 Live Streaming」で行うことを目指しています。全国を映像チームABANKが同行するのは全く新しい試みですが、どうやってたどり着いたアイデアだったんでしょう。

三船 : 映像チームABANKと偶然出会ったのがきっかけなんです。ABANKに所属している箱庭の室内楽のハシダさんと何度か共演したことがあったり、「PALACE」に参加している知り合いもそこにいて。僕たちはオンラインでも、生の臨場感が楽しいなと思っている。同時間をシェアするのって、金曜ロードショーをみんなで観ている感じに近いんです。その現場にいなくても、時間を待ち合わせして、ライヴをやっているのはすごくおもしろい。だったらツアーをなるべく少ない規模でお客さんを入れて、みんなに映像を観てもらう全国ツアーができるじゃんって。コロナ禍中、配信ライヴを自宅スタジオから配信していたんですけど、全世界の子が観てくれるんですよ。台湾、インドネシア、スペイン、ポルトガル、アメリカ、モンゴルの子とか、いろいろな子がメッセージをくれる。部屋にいながら世界中の人たちが同時にライヴを観れるのは、普通のツアーじゃできなかった。そこで今回、全国ツアーで14公演をそうやって配信していくスタイルを取ったら楽しいなって。単純にわくわくしちゃったんですよね。

──アイデア出しの段階かもしれませんが、ライヴハウスの中は地方の特色が出づらいのかなとも思っています。どんな演出を考えてらっしゃいますか。

三船 : ご当地ならではと言うとあれだけど、そういったものも共有できる空間作りにしたくて。今ブレスト中なんですけど、映像ならではの体験としてコーディネートできる配信をしたい。今回わりと似通っていないライヴハウスを選ぶようにしているんですけど、なるべく真っ黒い背景はなくそうと思うし、こんなことを言うとあれなんだけど、クラウドファンディング次第ってところもある。支援が増えるほとコンテンツが充実していくので、その結果を踏まえつつ毎公演違うシステムでアイデアを膨らませていこうと思っています。音楽がそこにあるだけじゃなくて、体験としてみんなに感じてもらえるものを目指していきたいと考えています。

──支援者が増えることによって、より演出が変わっていくと思うと、一緒に作っている感が出てきておもしろいですよね。

三船 : セットリストから演出まで全部決めていいよという20万円のプランがあるんですよ。以前、20人で割って支援してくれたことがあって。20人の企画者がROTHをプラネタリウムで観たいってチームを立ち上げて、公演を1から作り出していったんです、当日の会場動線とか映像の演出も全部彼ら彼女たちが作ってくれた。僕らはただ言われた通り演奏するだけみたいな。もちろんコラボレーションしているから共に作っているんですけど、そうやって一緒に作っていく感覚を共有できるのは、人間の根源的な、お祭りというかフェスティバルを作っていく感覚に近い。やっている僕たちも、音楽を中心とした感動や熱狂、祝祭を作り出せるかどうかだと思っている。今回のクラウドファンディングもチケットを買うみたいなフィジカルの概念はあるけど、概念としてはツアー全体を一緒に作っていくという感覚なんですよね。

 

世界を作り変えられる想像力を持てるか

──アルバムのテーマも「祝祭」なんですよね。そこは今の考え方と連動しているものなんでしょうか。

三船 : そこは根底的なもので、元からあった感覚を少し浮き彫りにしている感じですね。もうほぼ98%くらいはできているんです。今はアメリカから(マスタリング音源という)嬉しい知らせが届くのを待っています。

──今回のアルバムが、コロナに大きく影響を受けているわけでもない?

三船 : もちろん、この7ヶ月の間に作った曲もたくさん入っています。1番ひどい時期に作った曲もあって、コロナだからこそできたものもたくさんあるけど、そこまでコロナコロナしいアルバムではないと思います。

──どちらかと言うと三船くんは世の中の事象によって右ならえする作詞家ではないので、今祝祭というテーマの作品が生まれるのがROTHらしいなとも思います。

三船 : 4年に一度のオリンピックが延期になったり、様々なミュージック・フェスティバルもなくなって、自分たちの存在を祝うことすらなくなった世界で、自分を肯定してくれる人が1人もいない状況はメンタル的に本当につらいことだと思うんです。この時代に生きている人たちが、肩の荷を下ろすとか逃避とかではないんですけど、勇気が湧いたり、ワクワクできるパワーが持てるような作品になっていると思います。

──メンタルがおかしくなるのは、世の中がおかしいからという部分も多分にあると思います。

三船 : 1番いいのは、その世界を作り変えられる想像力を持てるか、持てないかだと思うんです。僕は部屋に閉じこもってブルブルしているだけで一生過ごしたくないというか。何が正解かは分からないし、失敗もめちゃめちゃするし、人を傷つけるかもしれないけど、それでもやりたいことがあるし、ビジョンを描き続けたい。僕も引きこもりだった時は、ちょっとうつ病だったし、薬を飲んでカウンセラーに会っていたんです。今思えば、いろいろなアドバイスをもらっていたんですけど、結局自分で乗り越えるしかないというか。ふっと抜ける瞬間がある。それは夢中になれるものだったり想像力なんじゃないかと思うんです。

──三船くんが行動している姿からめちゃめちゃ勇気をもらいますし、挑戦しようって気持ちになります。

三船 : 西澤さんだったらエディットができる、僕たちだったら音楽を作れる。何か生み出せるものを作れる人たちは逆に今1番強いんじゃないかって思うんです。言ったら、AIに取って代わられない、誰でもいい仕事ではないわけですよ。そこを持っている人たちが生活に今1番必要とされているというか。一見みんな慌ただしくなるかもしれないけど、普段使っているコップをデザインした人とか、椅子を作った人とか、ながら聴きしてる音楽を作っている人とか、読む文章とか、そういうものを尊ぶべきだなって僕は思っているんです。

ROTH BART BARON Tour Streaming
https://camp-fire.jp/projects/view/299250?list=project_instant_search_results

PROFILE
ROTH BART BARON(ろっと・ばると・ばろん)

東京を拠点に活動していいる三船雅也を中心としたフォーク・ロック・バンド。
2014年に1st AL『ロットバルトバロンの氷河期』をフィラデルフィアにて制作、以降カナダ・モントリオールや英・ロンドンにてアルバムを制作。2019年11月に4th AL『けものたちの名前』を発表し、< Music Magazine >ROCK部門第3位を始め多くの音楽メディアにて賞賛を得た。
またサマソニ、フジロック、ライジングサンなど大型フェスにも出演。
活動は日本国内のみならずUS・ASIA にも及ぶ一方、独創的な活動内容と圧倒的なライブパフォーマンス、フォーク・ロックをルーツとした音楽性で世代を超え多くの音楽ファンを魅了している。2018年よりロットバルトバロン・コミュニティ”PALACE”を立ち上げ共にプラネタリウムでライブを開催するなど、独自のバンドマネージメントを展開。2020年5月30日に予定していた自身最大規模の公演となる”めぐろパーシモン大ホール”はアルバムレコーディングメンバーを中心に15人が舞台に集うツアーファイナル公演、2020年12月26日27日に延期公演が決定、2Days にて公演予定。
また、ASIAN KUNG-FU GENERATION 後藤正文主宰”APPLE VINEGAR MUSIC AWARD 2020″にて『けものたちの名前』が大賞を受賞。

https://www.rothbartbaron.com/
https://roth.theshop.jp/items/25159226

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