お世話になっております。digる男・ヨコザワカイトです。
「芸術は爆発だ」は岡本太郎の言葉ですが、確かに普段の生活において爆発が起こることはそうそうありません。
僕は音楽と出会う瞬間に爆発を求めています。あらゆる予想を超えた衝撃で、今までの僕の価値観を吹き飛ばして欲しい。これまでもどうしようもなく辛い時期が襲い掛かったきては、そうした突然の爆風がぬかるみにはまった僕の足を前へと突き動かしてきてくれたのでした。
という訳で前置きが長くなりましたが、今回紹介するのはそんな“爆発”を掲げたこちらの1枚。
酩酊麻痺
『ある爆発的な何か』
ヒ(Vo/Gt/Dr)、マリン(Synth/Dr)からなるツーピースタイマンバンド・酩酊麻痺のフルアルバム『ある爆発的な何か』。
「ある爆発的な何か」そんな言葉の繰り返しからこのアルバムは始まります。爆発は内なる力を指すのか、はたまた社会的なインパクトを指すのか。そんな事を考えてしまう1曲目「如何にか斯うにか」は、メロディを廃したポエトリーな曲です。
恐れずにいうのなら、形式はGEZANのそれを想起させます。ジャンル名があるのかは分かりませんが、言葉が投下されていくような音楽と言いますか。酩酊麻痺の自主レーベル「吐く月」という名前も、GEZAN主催レーベル「十三月」を思い出します。たまたまでしょうか。
アルバムは実験的な前半3曲と、メロディ重視で落ち着いた後半の3曲に分けられるでしょう。バンドの根本を貫くのはオルタナの精神です。また、ピアノの使い方はコードを弾いたり壊れたように弾いたりと振れ幅があって新鮮に感じました。
それでいてそこまで叫びはしないんですよね。ディストートされてはいるのですが、一点冷静さを感じると言いますか。かといって、暗く沈んでいくという訳ではなく。ジャケットアートの青が象徴するところだと思います。
イラストは、2018年に岡本太郎現代芸術賞を受賞し話題になったさいあくななちゃん。暴力的なほど様々なモチーフが重なっていますが、その一つ一つに何か意思を感じさせる強さがあり、それでいて少し悲しげであるという素晴らしいジャケットです。
ちなみに、アルバムは段々とポップネスを増していきます。5曲目「静灯」はシューゲで美しいギターが重ねられ単体で切り抜いても良いなと思う曲。生でも是非聴いてみたいです。
最後の曲「変な散歩」はもう完全にインディーロックですね。元々こういうバンドをやっていたのでしょうか。といっても、途中で破壊的なピアノが挟まれて不安にはさせられるのですが。普通なところでは収まりたくないというオルタナ精神、反骨精神を感じます。
僕はこのアルバムを高円寺のレコード店「Los apson」で購入しましたが、他にも色々な店舗で取り扱っているようです。詳細は以下のTwitterなどでご確認ください。気になった方は是非お手にとってみてはいかがでしょうか?
酩酊麻痺『ある爆発的な何か』お取り扱い店舗㊀pianola recordsさま@下北沢🦋 ありがとうございます🦋 pic.twitter.com/CxrYuabMkE
— 酩酊麻痺 (@meiteimahi) July 26, 2020
※「【連載】digる男。」は毎週月曜日更新予定です。
1997年生まれ、千葉県出身。大学では社会学を専攻している。StoryWriterで連載を担当しながら就職活動中、そして迷走中。最近は、密かに音源も制作している。