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8年ぶりの再会──Genius P.J’sクロダ、池永正二、kussyが語る音楽愛の変遷

StoryWriter

MCのchamoisとトラックメイカーのクロダセイイチという2人体制で、バンドサウンドとヒップホップを融合したサウンドをいち早く体現してきたヒップホップバンド、Genius P.J’ s。クロダの音楽への感度は鋭く、インディーズ時代のDAOKOとのフィーチャリングやズボンズのドン・マツオとバンドを組むなど、音楽家として真摯な活動をしてきた。そんなクロダが制作するトラックの上に乗るchamoisのストイックで哲学的なリリックは緊張感に溢れており、Genius P.J’ sを唯一無二な存在へと位置付けてきた。

Genius P.J’ sが結成20周年を迎えた2020年3月上旬、クロダから想い出深い鼎談のオファーを受けた。あらかじめ決められた恋人たちへの池永正二と、Fragmentのkussyと3人で話したい、と。実はこの3人での鼎談は、2012年6月にOTOTOYで行っている。あれから8年。久しぶりに集った3人で、変わった部分、変わっていない部分も赤裸々に語ってくれた。そして、これまでとこれから。未来に繋がる鼎談となった。

しかし、新型コロナウィルスの影響によって、5月1日に東京・吉祥寺NEPOで予定していた、あらかじめ決められた恋人たちへとのライヴ〈~Genius P.J’s 20th Anniv.~ vol.2〉は延期に。本記事の公開も一度様子を見る判断をすることとなった。それから約半年。まだコロナ禍は終息したとは言えないが、少しずつ日常が戻りはじめてきている。Genius P.J’ sも2020年11月30日(月)、渋谷WWWにて〈Genius P.J’s 20th anniversary〉の開催を発表。あらかじめ決められた恋人たちへ、nego、Tomy Wealthといった盟友たちと久しぶりのライヴへ臨む。

そんな現在、満を自して本鼎談を公開する。収録から時間が経ってしまっていることもあり、3人の最新のメールインタビューからはじめようと思う。

取材:西澤裕郎
構成:岡本隆之
写真:大橋祐希


コロナ禍以降の想いを、3人に訊く(2020年9月末作成)

──前回の鼎談直後にコロナ禍が起こり、記事公開できないまま半年近くが経ってしまいました。今、改めて記事を読み返して、どんなことをお感じになられますか。

クロダセイイチ(以下、クロダ) : 開催予定のイベントもほぼ全て出来なくなりこの記事も公開出来なくてとても辛い日々でした。悩む事も多くて。改めて記事を読み返してみると池永さんやKussyさんの話している内容の中に、ここから先へ行くヒントがある感じがしました。

kussy:当たり前の価値観が崩れてしまったなと。まさかフジロックが無い2020年になるとは……。

池永正二(以下、池永):懐かしい。1年以上前の記憶になってた。それだけ濃い半年だったんだと思う。内容は思った以上に違和感もなく恥ずかしさもなく、楽しく読めました。

──記事の中で「社会自体が暗い」ということ、音楽に少なからず光を入れているという話がでてきます。この半年間で、音楽へ向かい合う態度や考えにどんな変化がありましたか。

池永:ライヴができないので配信などアウトプットの方法での変化は色々ありますが、音楽へ向かい合う根本的な態度や考えはコロナ禍であろうとなかろうと変わりません。疫病が流行って態度が変わるほどあら恋の音楽はヤワではありません。ニューノーマルになろうと、そもそも大多数の自信満々なノーマルはやっぱり苦手なので、どの時代であってもノーマルとの距離感はあんまり変わりません。自分なりのニューノーマルを探して行きたいです。

kussy:音楽に向かう態度はコロナ前と特に変わりません。ただ音楽の世界に身を置いてる人たちとの横の繋がりはより強く意識するようになりました。

クロダ:生きてきた中で“社会が1番暗い”と感じていた時期でした。そして私も色々とありその闇に飲見込まれてしまい自分自身の中で音楽を続けていく事への光が薄れていくのを感じていました。いつか音楽が出来なくなってしまうかもしれないとこれまでも思っていたのですが、その“いつか”が近づいている感じがして。だからその時間がまだある今、光を入れた音楽を大切に作っていこうと思いました。

──まだコロナ禍を抜けたとはいえませんが、これから先に向けてお考えになっていることがあれば教えてください。

kussy:人が集まることには今後もまだ難しさはあるのかなと感じますが、基本に立ち返り、根本の音楽をしっかり磨くこと、そして意識を日本だけでなく全世界に向けて考えていきたい。

池永:音でバズる15秒勝負の楽曲がトレンドなのであれば、我々は1曲15分勝負の楽曲をじっくり作り込んで発表したいです。尺があるからこそゾワって来るような、そんな曲。あと、ライヴができなくなって、ある程度ライヴで再現できることを前提に曲作りをしていた事に気付いてビックリしたので、ライヴでの再現性を考えない録音作品も作りたいです。「こんな時だからこそ」と焦って作るよりも、今、この瞬間の空気感をギュッと吸い込んで消化して体感し、感じた事、思った事、すれ違い、納得いかない事や美しい事や取るに足らない事まで、地に足つけてしっかり音楽に焼き付けて作品を作って行きたいです。

クロダ:コロナ禍という事もあり色々と悩んだのですが11月30日(月)に渋谷wwwでGenius P.J’s 20周年イベントファイナルを開催する事にしました。Genius P.J’sのイベントとしては今まで1番大きな会場で、沢山の方の力を借りながら大切に準備をしています。正直来年以降のGenius P.J’sの活動は見えてません。このイベントを終えた時に“またGenius P.J’sの音楽がしたい”って思えたらいいな。そしてまた10年後に池永さん、Kussyさん、西澤さんとコロナ禍の事を振り返る鼎談が出来たらと思っています。


INTERVIEW:クロダセイイチ × 池永正二 × kussy

──今日は、2012年に鼎談した3人のメンバーとともに、8年ぶりの鼎談を行いたいと思っております。まずは、クロダさんのバンド、Genius P.J’sが今年で活動20周年を迎えられたということで、おめでとうございます!

クロダセイイチ(以下、クロダ) : 気づいたら20周年経っていた感じで…… おそろしいな(笑)。

クロダセイイチ

──近況報告じゃないですけど、それぞれ8年前と現在で変わった部分をお聞かせいただけますか。

クロダ : いろんなアーティストとジョイントして作るアルバム『republic』を作ったのが、2012年なんですけど。

kussy : 僕らはそのアルバムに参加していたんですよね。

クロダ : そうです。その流れで鼎談したんですよね。その後、バンドとしては台湾のフェスに出させてもらったりライヴをしながら、DAOKOちゃんと一緒に曲を作ったり、いろんな人に楽曲提供したり、CM音楽を作ったりしていました。今は「MSエンタテインメント」という事務所の”super squal”という部署に所属して音楽制作をしながら、自由なことをアウトプットする場としてバンドが常にあるという感じでやっています。

池永正二(以下、池永):僕は、あら恋を22、3年くらい続けていて。他に作曲をしたり、映画とか映像の音楽をやったりとか。あんまり変わってないですね(笑)。

池永正二

kussy : 僕に関しては、2013年にFragmentで〈フジロック〉に出たんですよ。それを機にFragmentは一線を退いていこうと思ったんですよね。24歳のときに〈フジロック〉に出られるアーティストになりたいと思って、Fragmentをリリースするためにレーベル「術ノ穴」を作ったんですけど、〈フジロック〉に出られたことで自分の中で一区切りついちゃったというか。「俺、もうこれ以上アーティストとしてはやれないかな」みたいに思っちゃって。周りにいる才能たちをフックアップしたり、イベント制作をする方が楽しくなってきたんです。この8年で起こったこととしては、レーベルというか裏方にどんどんシフトしていった。

──術ノ穴はもともと大宮近くのアパートの一室を事務所にしていましたが、一時期大企業の中に事務所を移していましたよね。

kussy : 16年前に術ノ穴を立ち上げたんですけど、法人化していなかったんですよ。4年ぐらい前にDOTAMAが「フリースタイルダンジョン」に出たことで仕事が殺到しちゃって回せなくなっていたんですよ。その頃、アニメや映画、東京ガールズコレクションなどのエンタメを網羅しているDLEっていう会社の社長さんから「音楽部署がないから来てくれないか」って誘ってもらって、術ノ穴ごと入ることにしたんです。今振り返ると、マネジメントもやってスタッフ増やして、足元を固くしてもらった3年間でした。ただ、その3年間で少しづつ音楽以外のことに目が向いちゃっていた。資料を作らなきゃとか、経営会議で他の役員をどうやって説得しようかとか、無駄なことに労力を割いていたんです。本当に経営脳みたいになっちゃっていて良くなかったんですよね。エンタメって、ゴールとか答えがないからおもしろいのに、数字の答えを求められることに行き詰まっちゃって。今はSpotifyとかのおかげで、マニアックな音楽でも世界中にいるファンに繋がる可能性があるわけですよね。僕らはやっぱり音楽制作をメインにして仕事が向いてるなと思って。それで今、新たに独立して小規模で会社をやっているんです。

kussy

──失いかけた音楽への愛情が復活してきた、と?

kussy : あ、それはもう。今が1番音楽を聴くぐらいです。

──他のお2人は、前回の鼎談から今に至るまでに、音楽熱みたいなものへの変化はありましたか?

クロダ : 曲が全然作れない時期が2、3年ぐらいあったんです。デモは死ぬほど溜まっていくのに、そこから完成までが全然できない。お仕事としてはできるけど、個人的なトラックがとても溜まって。それって、何を聴いても自分の焼き直しな感じがしちゃっていたんです。

池永 : 分かる(笑)。

クロダ : 「また同じコード進行だ、どうしようこれ」みたいな(笑)。そのストックをある歌手に渡した時に、同じ曲でもその人の声が入ることによって全然変わることに気づいたんですよ。自分らしさもトラックに入っているうえで、何か1個でも変わればおもしろいなと思って。

池永 : そうだよね。不思議だよね、あれ。

クロダ : あら恋も似ているところがあるのかなと思って。バンドメンバーもすごく増えたじゃないですか? ドラムにDALLJUB STEP CLUBのGOTOくんが入って音楽性もすごく変わったなと思っていて。続けるために、どんどん新しいことをしていかないと正直飽きちゃう部分は作る上でもあると思うんですよ。

池永 : メンバーが飽きてくるからね(笑)。

クロダ : そうなんですよね。私はスタジオとかライヴで毎回「あーやっぱりこの曲いいな..!」とか思いながらやるんですけど、周りはまたこの曲やるの…みたいの感じたりしてて(笑)。私としては、周りも楽しいと思ってもらいたいからアレンジしたり、その日だけのサポート、ゲストミュージシャンを呼んでみたりしていて。制作をしていく繋がりの中で、Coccoさんのプロデュースや奥田民生さんのベースを弾いている根岸(孝旨)さんが参加してくれたりして、そういうことでメンバーにもどんどん刺激を与えていく場所を作ることの必要性というのも感じましたね。

──池永さんは今共感をされていましたけど、音楽への情熱とか、愛みたいなところで言うと変わらないですか?

池永 : あまり変わってないですね。新しい音楽を聴いてカッコよかったら悔しいし。昔も今も、トレンドに乗っかったような上手な音楽は好きじゃないし、主流にも興味がない。でも、今いる場所から主流を狙いたい。そのためには技術も必要ですが、あくまでこの場所で培ったセンスで勝負したいって言うか。だから相変わらずです。

下手なもの出されへんっていうのは一緒

──僕も2011年まで作っていたZINE『Story Writer』を9年ぶりに作っているんですけど、逆にプレッシャーを自分で勝手に感じてしまっていて。Genius P.J’sとか、あら恋、Fragmentは、3組にとっての魂なわけですよね。それをアウトプットするのって、簡単にポンって出せるような感じでもないのかなって。kussyさんもなかなかFragmentで作品を出せないっていうことを取材前におっしゃっていましたが、みなさんの置かれている状況と、自分のコアとなる作品づくりに関してどういう考えでいるのか訊かせてほしいなと思います。

池永 : 下手なもの出されへんっていうのは一緒ですよ。だから納得いくまでやります。やりたい事や表現したい事のイメージがあれば、諦めなければ必ず完成します。劇伴の仕事も、仕事として割り切っちゃうと割り切ったような仕事が来るようになります。そうじゃなくって、できる限りあら恋と同じような姿勢で臨みたいです。どんな仕事でも必ずどこか一点、あら恋の池永でしか出せないポイントがあるので、そこだけは外さないように頑張ります。やりたくない事が分かって、やりたい事が分かってくると言うか、あら恋以外の事をしてあら恋っぽさが分かってきました。だからどっちもしんどいですが楽しいですよ。なんか全部繋がっていきます。点ではなく線ですね。劇伴での物語や心情、情景を意識した曲作りがあら恋のアルバムを豊かにするし、あら恋のライブ感が劇伴での曲の間合いとかテンポ感とか当てどころとか、映像における音楽のグルーブ感に繋がっていきますし。また、そのそれぞれの線があら恋メンバー8人分集まるのだから、バンドは素晴らしいです。その日、初見で集まるメンバーではなく、言うなればちょっとした家族、時々会う親戚みたいな集合体ですから。

あらかじめ決められた恋人たちへ

──kussyさんはFragmentの活動は、現在どのように考えているんでしょう。

kussy : Fragmentは、本当に全くと言っていいほどやっていなくて。自分で音を作ることに本当に申し訳ないくらい情熱がないんですよ。

池永 : やりたくないわけじゃないでしょ?

kussy : やりたくないわけじゃなくて、作ったりはするんです。たまに時間があれば。でもやっぱり本気じゃないんですよ。どこかでプロデューサー目線になって客観的に全部見ちゃうんですよね。なんで自分がスパッとFragmentに情熱を失うことができたかっていうと、才能のあるクリエイターが周りにいて、僕らより技術のある子たちがクオリティの高いものを出してくれるからなんです。もちろんFragmentをやっていたから分かるプロデュースセンスみたいなものも僕らにもあるとは思っているし、今もある意味、アウトプットし続けている印象はあるんです。

Fragment

池永 : Fragmentでできへんことは、他のことでできるっていう。

kussy : そう。Fragmentって、全然才能がない2人が集まってぐちゃぐちゃやって、謎のオリジナリティが生まれていた。だからこそ、あの天井はこれ以上、上がらないんですよ。それが非常にストレスだった。そうなると、もっと器用でいろいろできる人たちと一緒に作り上げていく方が楽しいんですよね。だから、曲を作らないとか、リリースしないっていうストレスを全く感じていないんです。

──その点で、Genius P.J’sはいかがですか?

クロダ : さっき池永さんが言っていたみたいに、仕事での楽曲制作も私は楽しくやれていて。そこで出会ったミュージシャンを新作に呼んでヴァイオリンやヴィオラのレコーディングをしたりとかしていて。そういうことがあったからこそ還元できることがあるし、Genius P.J’sに繋がるなっていうこともある。そこは池永さんと全く一緒ですね。

僕らの音楽って暗いと言われるかもしれないけど、絶対光を入れている

──数年間で得た人脈、知識、アウトプットの方法がある中で、20周年を迎えて制作するGenius P.J’sの音楽はどういったものになりそうですか?

クロダ : 音楽以外の経験、例えばうちのラッパーに子どもができたんですけど、詞の内容が変わってきていて。あとは、私も大切な人が亡くなったりもしたんですけど、だんだんテーマに悩むことがなくなってきたんですよね、うちのラッパーは「もう生と死に限ったテーマしか俺はリリックを書かない」って言っていて。生と死って当たり前にあるものだから、それに向き合っても嘘にならないというか。そういうものをアウトプットしていく場所になっているのかなって。前にあら恋のリリースパーティーに行ったんですけど、新曲とか昔の曲を観ていたら、今の池永さんの感情とかモードが見えるというか、それがあら恋って感じがした。kussyさんに関しても、今やりたいことが音楽にちゃんと出ているから。それが1番濃く出るのが、ホームのGenius P.J’sなのかなって感じはします。

──久しぶりに聴く新曲楽しみですね。

クロダ : そうですね…… 暗いんですよ(笑)。

一同 : (笑)。

──社会自体が暗いですからね。

池永 : 疫病に災害に汚職に。

kussy : たしかにー。

クロダ : 僕らの音楽って、一般的には暗いって言われるかもしれないんですけど、その中に絶対光を入れていて。あら恋もそういう感じがしました。ただ暗いものをやりたいわけじゃないんだって(笑)。

池永 : モロそう。分かる、分かる(笑)。

──あら恋は戦おうとしている感じじゃないけど、心は死んでないぞみたいな部分を強く感じるアルバムで、めちゃめちゃ勇気づけられました。

 

池永 : ありがとう。戦って論破して倒すんじゃなくって、想像して広げてほんの少し理解したい。それを儚いメロディと暴力的な音楽で表現したい。だらか心は全く死んでないね。身体は老化してってるけど(笑)。

──kussyさんは自分でレーベルを立ち上げて、様々なアーティストを発掘していましたけど、ある種の反骨精神みたいなものが現在、自身にあると思いますか?

kussy : ヒップホップの「今に見とけよ精神」みたいなのはずっとあるんですよね。それこそFragmentもマニアックな音楽でしたけど、絶対音楽で食っていこうとずっと思ってやってきたし、僕らの規模でもちゃんと地に足つけてやってったるぜっていうのはありますね。ただ、国内を見まわすとなんか息苦しさを感じていて。「シーン」や「界隈」みたいなものってあるじゃないですか。それがすごく嫌になっちゃってSNSもつらいなと。ただ、AppleMusicやSpotifyで、世界と繋がれるんだっていうのは本当に希望になってます。日本の音楽やべー、かっこいいアーティストいっぱいいる、これを世界に届けるぞ! みたいな勝手な使命を持っているんです。

──クロダさんは20周年を機にいろいろイベントがあり、リリースとか企画がこの先続いていくわけじゃないですか。プロデューサー目線で、kussyさんからGenius P.J’s20周年にアドバイスというか、提言みたいなことはありますか。

kussy : 20周年って作りやすいと思うんですよ、そこでちゃんと祭感を出せるから。それってご褒美じゃないですか。

クロダ : そうなんですよ、ご褒美ほしい(笑)。

kussy : 新曲のリリースってドキドキするじゃないですか。僕は好きなアーティストにはどんどんリリースをしてほしいんです。だからこそ、2組には積極的にリリースを求めます。(笑)。

クロダ : そうですね(笑)。聴いてくれる人が1番の支えだと思うので。私もいろいろな音楽でドキドキしてきたから、そう思ってもらえる場所にできるようにしたいというのはあります。Fragmentが最初フジロックに出たって聞いたときは、わーってなったし、あら恋もそう。そういう盛り上がりは僕たちも作っていけたらなって思いますね。

──Genius P.J’s20周年のパーティーにFragmentが出ない理由というのは?

kussy : そこは、今の僕らでこの2組と向き合うには失礼だよなと思って、ごめんって言って。その分、鼎談はやりますって言って今日こさせていただきました(笑)。

クロダ : いろいろな人がFragmentなんでやらないんだって、思っている人がいっぱいいたりもするから。この鼎談を見てもらえたら、なんでやらないかがすごく明確になるし、周りの人も分かってくれるお話だったなって思います。

自分のワクワクがキープできていればいい

──当時の鼎談だと、みんな居場所がないみたいに言っていましたからね。

池永 : 独特な居場所に行っていますよね(笑)。

クロダ : 居場所はできたのかなって気もしますけどね。

kussy : そうですねー。おっさんになってきたから、あの時よりは落ち着く場所ができたというか。親しい信用できる数人とやっていけばいいのかなって。小さい居場所ができたような気はします。

──当時はよく30歳前後で辞める人が多いみたいな話も出てたんですけど、そこから踏ん張って続けていけば、何かしらブレイクスルーする場所があるような感じなんですかね。

kussy : 30で結婚だとか、今後の人生どうしようって悩むのは当然だと思うんですけど、そこで食っていけないから一線を引こうじゃなくて、食えなくても二足のわらじでどうにかやってほしいんですよね。僕、今XXX//PEKE//XXXっていうトラックメーカー専門のレーベルをやっているんですけど、1回辞めちゃったトラックメーカーたちに声かけていて。リリースして成果が出ないと「うーん」ってなっちゃうけど、成果がでなくても気楽に続けられる実験場を作りたくて。自分が出した音源で月に少しでもお金入ってきたら嬉しいじゃないですか。自信になったりそれっていいモチベーションだなって思っていて。食えないかもしれないけど。

池永 : 食える可能性もありますしね。

kussy : あるし、そこでちょっと楽しんでもらいたい。変な副業をやるよりは、どうにかクリエイティブで月数万円稼げる。そういう仕組みを作りたいんです。

池永 : 食うための音楽よりも、食うためのことを考えない音楽の方がおもしろかったりするもんね。

kussy : そうなんですよ。だから、全員のサブレーベルにしてくれって言っていて。実はそっちの方がおもしろかったりするんですよね。

クロダ : たしかに。

池永 : 売れることだけが音楽を続ける方法、というわけでは当然ないですもんね。居場所が増えて、音楽の関わり方にもいろんな方法ができてくればいいですよね。

kussy : 続け方はめちゃくちゃ出てきたんじゃないかな。

──クロダさん、前回のインタビューでもそうだったんですけど、このお2人に質問したいことというか、話したいことがあれば。

クロダ : 質問じゃないんですけど、また10年後とかにぜひ鼎談を(笑)。

池永 : でもさ、ここからやと思うの俺。なんか目標ある? 10年後こうなりたいとか。

クロダ : なんだろう……。

池永 : なんか具体的な目標があったら、そうなっていくやん。8年前の対談から今の状況って、考えていたことなんですよね。やりたいこと、こういうことをしたいなって思ってたことが今と繋がっている。俺はあら恋がやりたくて、劇伴やりたくて、音楽を作っていきたいんですけど。それって、8年前に思ってた事と変わってなくって。

kussy : 現実的なことを言えば、作った会社を絶対に潰したくない。従業員もいるので。16年前からずーっと現場に出てバタバタやっているわけですよ。だから、10年後は社長がダラダラしていても会社が回るような状況を作っておきた(笑)。

──クロダさんは?

クロダ : ドキドキというか、自分のワクワクがキープできていればいいかなと思っていて。幸いなことに、今簡単に世界とリンクできるような時代になっていて。例えば、DAOKOちゃんと共作した「world is yours」って曲のYouTubeのコメントは外国語ばかりで。「まじ最高だぜ」みたいなのがいろんな国の人から来るのはおもしろいですね。台湾のフェスに去年出たんですけど、10万人ぐらい集まって、ライヴが終わった瞬間、みんなステージにぶわーって集まって来るみたいな体験をさせてもらって。日本でうけるのも嬉しいけど、単純に人が喜んでくれることがうれしい。もうちょっといろんな国行ってもいいかなって。感覚が違うところがいっぱいあると思うけど、それってワクワクしそうじゃないですか。そういうオファーとかも結構いただいていて。チリのラテンアイドルの曲を作ったり(笑)。

kussy : めっちゃおもしろいじゃないですか!

池永 : チリのアイドル音楽とか聴いたことない(笑)。

クロダ : しかも髭面の男5人組なんですよ(笑)。

kussy : 絶対にそういうのやった方がいいですよ。

池永 : ワクワクする!

クロダ : 2020年は新曲のリリースもしますし、結成20周年のあら恋との2マンも行うので、楽しみにしていてほしいなと思います。


■公演情報

〈Genius P.J’s 20th anniversary〉
2020年11月30日(月)@渋谷WWW
時間:開場 17:30 / 開演 18:30
料金:前売 3,500円
出演:
Genius P.J’s
あらかじめ決められた恋人たちへ
nego
Tomy Wealth

チケット予約
プレイガイド e+

Genius P.J’s official shop:https://herecords.stores.jp

■リリース情報

Genius P.J’s × あらかじめ決められた恋人たちへ
『Happy Cadillac / Fire Glove』
2020年9月30日リリース
ダウンロード / ストリーミングはこちら

 

Genius P.J’sとして4年ぶりとなる新作!

Genius P.J’s『people』
2020年10月14日リリース

現在20周年を迎え、企画の!つとし、数々のアーティスト達とコラボレーション作品を制作し続けているGenius P.J ‘s。記念企画第4弾としてのリリースはGenius P.J’s単独としては4年ぶりとなる新作『people』。本作品はアルバムという大きなストーリーを作っていく中でオープニングを飾るための曲であり、ここから物語が始まっていく。Genius P.J’sワールドの入り口を体感せよ!

 

オフィシャルサイト:http://www.genius-pjs.com/

Genius P.J’s(じーにあす・ぴーじぇーず)
kazz aka chamois(MC) クロダセイイチ(keyboard、programming、guitar)を軸に東京を拠点としたヒップホップバンド。
全編RAP MUSICまたはポエトリーをベースとし、 演奏はエレクトロニカ / HIPHOPを主体とする。個々の音楽的役割としても確かな基盤を持ち合わせ技巧派としても多く定評を呼びまるで音を映像として焼き付けたような静寂から徐々に湧き上がるエモーショナルな演奏と聴き手の周囲をその風景に変えてしまうような強烈な世界観 を形成するRAPとの融合。クラブ / バンドカルチャー問わず、数々の場で独特の空気を吐き出している。
>>Genius P.J’s Official HP
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