【連載】ヨコザワカイト「digる男。」Vol.58「カレーとシンセサイザーの店『サルタナ』店主から借りたCDたち-後編-」

2019年6月にスタートした連載、ヨコザワカイト「digる男。」。大学生のヨコザワカイトが音楽を中心に、レコードやCD、カセットテープなど、様々なアイテムを古今東西digってきた。今週は果たして、どんな店に足を運び、どんな作品との出会いがあるのか。

第4回となる今回は前回から引き続き、2021年に高円寺での開店を検討しているカレーとシンセサイザーの店『サルタナ』の店主の自宅のCD棚から数枚をセレクト。

2020年10月28日（水）にトルカリ高円寺店にて、「サルタナ」の店主・灰谷文助がカレーを食べながらアナログ・シンセサイザーをいじることができる素敵なイベント〈Mixologist’s Nite（Powered by Sartana）〉を開催する。気になった方は是非お早めにチェックされたし。イベントレポートはヨコザワのnoteで公開する予定だ。

イベント詳細はこちら：https://note.com/sartaana/n/na28259b65b61

ヨコザワのnoteはこちら：https://note.com/kaito_yokozawa

そんな灰谷氏の自宅のCD棚からお借りした一部を紹介する。果たして、どんな珍盤が飛び出すのだろうか。

前回の記事はこちら：

【連載】ヨコザワカイト「digる男。」Vol.57「カレーとシンセサイザーの店『サルタナ』店主・灰谷文助から借りたCD-前編-」

カレーとシンセサイザーの店『サルタナ』店主・灰谷文助から借りた『Kontra Wagner』

まずは、こちらの『Kontra Wagner』。ユーモアたっぷりにワグナー関連の曲をまとめたコンピレーションだ。

特筆すべきは、ヒンデミット：午前7時に温泉場の2流オーケストラによって演奏される「さまよえるオランダ人」序曲。その名の通り、2流オーケストラに1度聴かせただけの「さまよえるオランダ人」を午前7時に温泉場で演奏させたというキワモノである。ここまで下手な演奏はこれまで聴いたことがないというほどさまよっていいる。

実はこちら楽譜も公開されていまして、わざと下手に演奏しているように聴こえたのは楽譜通りとのこと。

追記:こちら、記事公開時「説」と書いてしまいましたが、楽譜通りに演奏したのは事実です。ヒンデミットも作曲者として正式にクレジットされています。お詫びして訂正いたします。(ヨコザワ)

楽譜はこちら

灰谷さんには、しっかりとしたワーグナーもお借りしてきた。バーンスタイン指揮/ニューヨークフィル演奏。ああ、安心するなあ。

というわけで2枚目は、こちらも名演奏ならぬ“迷演奏”『ヘリコプター弦楽四重奏曲』。

4機別々のヘリコプターに四重奏の奏者が乗り込み演奏されるこの曲。ズバババというヘリコプターの音が常に鳴り響いている。その回転周期に合わせるように痙攣に似たトレモロが常に圧迫された空間を引き裂いている。

不安定で止まることを知らないこの演奏を好んで聴こうとは思わないが、アイデア勝負に収まらないプロジェクト作品としては目を見張るものがある。今だったら、YouTubeにアップするために既存の曲を演奏するだけに留まるだろう。

3枚目は、少し意向が変わり『Space-Capades』。時は1950年代、まだ科学技術の進歩が人々の暮らしを明瞭に明るくさせていた頃。SFは期待感を持って未来を明るく照らしていた。そんな頃の未来を志向した曲を集めたコンピレーションがこの『Space-Capades』。

Capadesとはショーのような意味なので、『Space-Capades』は差し詰め宇宙ショーといったところか。Ultra-Loungeからのリリース。このレーベルは、主にエキゾチカ、スペースエイジポップ、マンボ、テレビのテーマソング、ラウンジなどの音楽ジャンルをフィーチャーしたコンピレーションCDをリリースしている。

上記の楽曲には電話の音など様々な音が組み込まれていているのだが、まさに生活が物質的に発展していくのにつれて未来が明るくなっていくのを感じさせる。

いかがだっただろうか。訳の分からぬ3枚であったが、これが同じ棚から出てきたということで灰谷氏の収集のレベルの高さが窺える。そんな彼のイベントが明後日10月28日（水）に開催されるので気になった方は是非訪れてみてはいかがだろうか。

カレーとシンセサイザーの店「サルタナ」Twitter：@sartana_synth

※「【連載】digる男。」は毎週月曜日更新予定です。