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眉村ちあきとクリトリック・リスが語る〈栗フェス〉、そして日本武道館

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クリトリック・リスが2020年11月1日(日)、初めての音楽フェスティバル〈栗フェス2020〉を、大阪城野外音楽堂にて主催する。

コロナ禍でいち早く開催を発表した本フェスを開催するために、客数は会場の約1/3、会場内でのアルコールは禁止というガイドラインを設け、眉村ちあき、赤犬、木下百花、imai、DJ後藤まりこ、ザ・タコさんといった7組の出演者たちが大阪の野外でパフォーマンスを行う。

本フェスの開催を目前に、クリトリック・リスことスギムと眉村ちあきの対談記事を行った。奇しくも12月にアルバムをリリースする2人。そして眉村は12月14日、スギムが目標としている日本武道館のステージに立つ。コロナ禍を経て、2人は何を考えているのか? 約1年半ぶりとなる2人の対談をお届けする。

取材&文:西澤裕郎
写真:大橋祐希


「あ、〈栗フェス2020〉あった……!」と思い出して(笑)

──〈栗フェス2020〉開催を決めて、スギムさんはすぐ眉村さんに出演オファーをしました。最初、出てくれるか心配していたのを覚えています。

眉村ちあき(以下、眉村):ええ?! 受けるに決まっているのに。

スギム:でもコロナ禍の中、ほとんどライヴとかしてないでしょ?

眉村:そう、していなかったんです。日本武道館で久しぶりにみんなと会おうと思っていたら、「あ、〈栗フェス2020〉あった……!」と思い出して(笑)。

スギム:早めにオファーしておいてよかった(笑)。

眉村:タイムテーブルを見たらスギムさんの前にやらせてもらえるので、ちゃんとボコボコにしにいかないとってなと思って、今仕込んでいます。

スギム:久しぶりにちちゃんのライヴ観られるので、楽しみにしています!

眉村:私、コロナ禍の中でアルバムを作っていたんですけど、心が本当にダメになりそうだったんです。なにもかもダメ! やだー! みたいな日々がずっと続いちゃって。そのとき、スギムさんのライヴに行かないといけないと思った。スギムさんのライヴに行かないと生命の危機を感じるぐらいヤバかったんです。

スギム:いやいやいや(笑)。

眉村:心の支えなんです。誰かのライヴに行きたいと思った時、絶対スギムさんのライヴを調べるんですよ。この日は空いているから行こうかなと考えているだけで、すでに楽しいじゃないですか。やっぱりそういう存在なんだなと思って。

スギム:うれしい。今回の〈栗フェス2020〉は転換の間に、あいどんにちゃんと注意喚起を言ってもらおうかなと思っていて。屈強なセキュリティを雇って、言うこと聞かない人の対策もちゃんとしようかなと思っています。

──コロナ禍で配信ライヴが増えましたが、眉村さんは配信ならではの凝った演出をしてきていましたよね。それを踏まえて有観客ライヴへの向かい方とかやり方の変化はあると思いますか?

眉村:私、有観客ライヴをどうやってやるか忘れちゃって……(笑)。

スギム:えー! だいぶブランクがあるからね。

眉村:これ現実ではできないよなみたいな演出、例えばグリーンバックで顔だけ浮いているとか、配信ライヴだからこそできることばかり考えていた時期があったから、「あれ? 有観客ってどうしてたっけ?」って。過去のライヴ映像をたまに観直して、ああ! なるほどと思っているんですけど、めちゃくちゃ緊張しています。

──スギムさんはどうですか?

スギム:僕は無観客配信が未だに慣れないですね。お客さんをいじったり、逆にお客さんに野次られたり、そういうコミュニケーションでライヴを進めてきていたから、ダイレクトに笑い声や野次が返ってこないのがすごく難しいなと思っていて。画面の向こうの人たちがどういう反応なのかダイレクトに伝わらないのが、未だにちょっと難しいなと思うところですね。

眉村:それもあって、2マン配信をすると相手の人の気持ちが分かるんですよ。リアクションがないことへのさみしさや不安があるだろうから、対バン相手には私1人でも「フーーーー!」って、やろうと思っていて。「フーーーー!」ってやるバイトやろうかなって思うぐらい、盛り上げたくなる。

 

スギム:あははは。やっぱり配信ってなると、今までやってきたライヴの生感が多少なりとも薄れるから、僕もあえてめちゃめちゃ酔っ払って出たりすることもあります。こいつなにをやらかすか分からんぞ、なにを言うか分からんぞっていう、あえてそういう向こうがちょっと心配になるような状態で出たりしたこともありますけど、本当に難しい。

非現実世界に連れていってくれる人たちが集まっている

──眉村さんは、12月14日に日本武道館で有観客ライヴを行います。12月に武道館というのは、かなり思い切った決断なんじゃないですか。

眉村:武道館は1年以上前から予約を取って抽選で当たらないといけないので、本当は1年以上前から決まっていたんですよ。でも私はポロって言っちゃうから、ずっとスタッフさんが黙っていて、2ヶ月前ぐらいに初めて知ったんです。そこで、1年前から決まっていたんだったら、やるしかなくね? みたいになって。有観客ライヴも少しずつできるようになってきたし、私もいつやろうかぐらいの感じだったから、その時に「これだ!!」ってなりました。

──それにしても、よく決断しましたね。

眉村:やらない選択はなかったです。12月って言われたときは結構先だなと思ったし、今すぐライヴをしたかったけど、12月までファンに会うのを我慢することを選んで。……その前に〈栗フェス2020〉には出ますけど(笑)。

スギム:めちゃめちゃ後悔してないか(笑)!

──あははは。スギムさんにとっては、地元大阪で初の主催フェスとなります。どんなフェスにしたいと考えていますか。

スギム:音楽を久しぶりに野外で楽しめるという人も多いと思うから、平和なイベントにしたいですよね。お酒を飲んで騒ぎたいって人もおるかもしれんけども、そこはグッと抑えてもらって。僕は主催やから、そこは制作チームと協力して、きちんとやることは約束しますので安心して来てください。

──眉村さんは、今回のラインナップを見てどう感じられましたか。

眉村:今回のラインナップは非現実世界に連れていってくれる人たちが集まっている気がして。自分で言うのもなんですけど、めちゃくちゃ気分がよくなると思う。

スギム:ね。気候的にもまだ寒くもないし。野外でそれぞれがいいライヴをしてくれると思っています。青空の下で聴くにはぴったりの人たちやなって。ちょうどちちゃんぐらいの時に陽が沈んで照明が点くだろうから、絶対にいい感じになりますよ。

眉村:わあ! 楽しみだなあ。

普通のライヴをやってもダメだと思った

──お互い12月にアルバムのリリースも控えているので、そのことも訊かせてください。スギムさんはコロナ禍のはじめの頃、曲が書けなかったんですよね。

スギム:4月頃、ことごとくライヴがなくなってしまって。ここまでライヴのない日ってなかったから、家でぼーっとしていたんですけど、何もやる気が起こらなくて。たまにオンライン飲み会があるぐらいで、外にもほとんど出なかったし、ほんまに時間の過ごし方が分からなくて。

眉村:うん、なにしたらいいか分からなくなった。

スギム:5月ぐらいからなんとなく前向きになれて。1ヶ月くらいで6、7曲作りました。それが今回のアルバムにつながっていて、ライヴハウスをテーマにした曲とかも入っています。ちちゃんはコロナ禍、どうしていたの?

 

眉村:3月頭ぐらいに山にこもったんですよ。めっちゃ制作しようと思って。突然少年の真似して、みんなからの差し入れだけで生き抜くみたいな生活をしていました。山にこもって、ずっと作曲をしていました。

スギム:どこの山?

眉村:軽井沢。

スギム:避暑地やんか(笑)! ものすごく修行しに行っている感じやったけど、ちゃんとしたペンションに泊まっていたんでしょ?

眉村:そう、なんか木の小屋みたいなところで。

スギム:でも、ちゃんとそこで自分で曲を作ろうと思ったんやもんね。

眉村:4月はあまり動けなかったんですけど、みんなから声を集めて曲を作ったり、オンライン上で制作を一緒にする企画をやったり、とにかく何かをやらなきゃとずっと思っていて。5月はメジャー・デビュー1周年でオンラインライヴをして、その後もオンラインで普通のライヴを3回ぐらいやったんですけど、どんどん視聴者が減っていくんですよ。

スギム:俺もそうやった。

眉村:それで普通のライヴをやってもダメだと思ったんです。そこからめちゃめちゃ考えるようになって。魔法を使ったり、竜宮城ライヴをやったり、そういう撮影方法も始めました。

今回はまぜこぜに挑戦したアルバムです

──眉村さんのアルバム『日本元気女歌手』は、どんな作品なんでしょう。

眉村:私、気分で全然違う曲を作るから、まとまりが一切ないアルバムになっていると思います。

スギム:最近、めちゃくちゃ実験的な要素が多いよね?

眉村:上手くないけど、癖になる感じをやりたくて。試行錯誤しているかもしれない。といいつつ、まっすぐで真面目なバラードも2曲ぐらい入っています。あと「ヒルナンデス」という番組に楽曲のエントリーをして、残り5人まではいったんですけど落ちちゃって。その出来事を回収するような曲も入っています。落としやがって! みたいな(笑)。

スギム:さすがのパンクスピリッツですわ(笑)。ピストルズも同じようなことやっていました。

──眉村さんは、最初の発言でアルバム制作時に心がダメになりそうだったとおっしゃっていましたが、どんな苦しみがあったんでしょう。

眉村:今回のアルバムで初めて共同編曲をやったんです。これまではずっと1人でトラックを作っていたけど、私がデモをアレンジャーに編曲してもらって、さらにそれを私が編曲するみたいな。アレンジャーは、その道のプロだから、めちゃくちゃすごいんですよ。とんでもなく飾り付けられて返ってくる。ピアノもバンバン弾くしソロがすごすぎて、ちょっと参っちゃって。今まで1人で編曲してきたのがバカみたいみたいな気持ちになっちゃんたんです。ギター、ベースとかもプロの人に弾いてもらった方がいいものができるしと思ったら、寝る前に薬飲んでねってもらうぐらいやばくなって。そんなとき、スギムさんのライヴに行きたくなりました。

スギム:そんなことがあったんや。

眉村:そんなとき、スタッフさんから「考え方を変えたらどう?」って言ってもらって。今まではパソコンの中の楽器を自分で選んで打ち込んでいたけど、これからは現実世界でこう弾いてって指示をする。そういう意味でのトラックメイカーになるって考え方をしたら? って。ハッと思ったし、たしかにと思って。現実世界で人を動かすぐらい、細かいところまで想像する担当の人になろうと思ったりするようになりました。

スギム:それはとてもいいと思います。

眉村:これからも自分だけでトラックメイクすることもあるし、人と一緒にやることもあるだろうし、まぜこぜでやろうかなって。だから、今回はまぜこぜに挑戦したアルバムです。

スギム:僕も今まで1人でトラックを作ってきたし、自分の中でやりたいことが消化できたらそれで満足やったけど、ここ最近は高井真くんのギターと一緒に曲を作れるようになって。それによって、やっぱり広がった。そこは、一緒に作る相手と気が合う、合わない、っていうのもすごくあると思うな。今回のアルバムもやれることは全部自分でやったけど、手伝ってもらう部分は手伝ってもらっていて。苦労はしたけど、自分の作りたいように作ったんですよね。

眉村:それが1番いいですよね。

──今回のクリトリック・リスのアルバムは、ガツーンっていう曲より粒ぞろいというか、しっかりいい曲が多い印象があります。

スギム:そうそう。「カレーライス」もちゃんと入れましたよ。

眉村:やったー! 大好き! 録り直したってことですか?

スギム:ちちゃんに前送った音源は、家で仮歌を入れたやつだったから、めっちゃ声も小さかったし、すげーテンションが低かったけど、感情を込めて歌ったものが入っています。

眉村:楽しみ! 私、スギムさんと大阪で2マンしたいです。前、難波ベアーズでやったから、次は八丈島とかでやりません?

スギム:いいですね(笑)。巌流島みたいな感じで。

眉村:あと、佐賀県とか(笑)。あと、いつかライヴで私のこと吊るしてください。

──眉村さんが新木場スタジオコーストで行ったワンマンで、スギムさんがミラーボールとして天井から吊るされたことがありましたもんね(笑)。

スギム:ミラーボールであり、恐竜の餌でもあったからね(笑)。

眉村:そう(笑)! 餌感がすごかった。本当は武道館でスギムさん吊るせたらいいなと思ったんだけど。

スギム:いやいやいやいや(笑)。

眉村: 2回連続スギムさん吊るすと恒例になっちゃうから、一旦休憩しようってなりました。だから、今回は吊るさない!

スギム:それが正しいと思います(笑)。


■イベント情報

〈栗フェス2020〉
2020年11月1日(日)大阪城野外音楽堂
時間:会場 12:00 / 開演 13:00
全席自由:3,900円
出演:
クリトリック ・リス
眉村ちあき
赤犬
木下百花
imai
DJ後藤まりこ
ザ・タコさん
https://eplus.jp/sf/detail/3279360001?P6=001&P1=0402&P59=1

■リリース情報
眉村ちあき 3rdアルバム『日本元気女歌手』
発売日:2020年12月9日
限定盤 CD+BD「2020.3.14 Mayumura Chiaki Naka-kon 2020」5,500円(+税)
通常盤 CD 3,000円(+税)

クリトリック・リス『ROAD TO GUY』
発売日:2020年12月16日(水)
レーベル:SCUM EXPLOSION
価格:2,500円(税抜)
CD / SCUM-002

■ライヴ情報
眉村ちあき日本武道館LIVE「日本元気女歌手 〜夢だけど夢じゃなかった〜」
2020年12月14日(月)@日本武道館
時間:開場 18:00 / 開演 19:00
チケット料金:
アリーナ指定席 8,000円(税込)/ スタンド指定席 8,000円(税込)/ 親子席 8,000円(税込・指定席)
受付URL(ローチケ):https://l-tike.com/mayumurachiaki/
配信チケット 3,500円

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