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天津飯放浪記第49回 築地市場・五番「市場の跡地に芽吹いたのは天津飯」

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おいっす。僕は火鍋栄光。

晴々とした天候の下、今日は打ち合わせのちょっと前に築地市場駅へ。

市場が豊洲に移転したのが、2018年10月。ということで、約2年近くが経っていたことに驚く。僕は生まれてこの方、修学旅行でも家族旅行でも築地なんて行ったことがないので街の様子の変化なんて正直分かる訳もない。のんびりした駅前ね、くらい。とりあえず時間も余っているし、やることもないので市場跡地へふらり。

駅前からは想像もつかないシャッター街ぶりに、僕は思わず地元青森の駅前・新町を思い出す。妙に明るい空と、俯き加減の街のギャップがノスタルジー。子供の頃、お盆には田舎のおばあちゃんちに親戚の子供が10人くらい集まって2、3日泊まって大騒ぎしていたけど、僕たち孫が帰った後、再び大きな家に一人で暮らすおばあちゃんには、街がこんな感じに見えていたのかもしれない。おばあちゃんの家は、昨年取り壊してしまった。空気の読めないすしざんまいの爛々とした看板の存在感にムスッとした顔で、僕はこの街に”残る”何かを探していたのだ。

だいぶ奥まで進んだ路地裏、ふと目に飛び込んできたお店「五番」。

活気が薄れたこの街を物語る、色褪せたメニューの写真。うーん、ロマンです。

もはや市場でもなくなったこの街で、予想だにせず中華に出会えたことに感謝。草むらからエンテイ。今となっては、築地で中華を食べることに何の躊躇いもない! ここにもアレはあるのかい? いざいざ。

カウンター席に案内され早速目の前に比較的ポップなイラスト。麻婆オムレツ丼は麻婆天津丼ではないのだろうか? 麻婆オムライス? 「麻婆オムレツ丼」は、この連載の経費で落とせないのではないだろうか……。臆病な僕は天津丼を注文した。

店内はこんな様子。ホールの奥さんの日本語が上手で気づかなかったけど、店員さん同士の会話によれば皆さん中国人らしい。店内は他にお客さんもいなくて僕一人。店内BGMはテレサ・テンの「船歌(中国語ver.)」だし、店内は中国語の会話だし、中国に僕としては懐かしい感じもする。僕の後に入ってきた兄ちゃんも中国語、イカ料理をテイクアウトするついでに世間話で談笑。かつては大きな賑わいを見せていた街の跡地で中国の方々が仲良く生活している様子に、微笑ましくも不思議な気持ちになっていると……。

\オマタセシマシター/

すげえ熱々のあん! 湯気ブワーッなってますわあ!

ハヤシライスばりにドロドロ赤黒いあんがでっぷりと、そしてそこから酢の香りが鼻に刺さる刺さる……。いただきますぞ!

テイク2の写真

舌へのファーストアタックは過激なまでに酸っぱいあんだー!!

……とはならずに、思ったほどえぐみのない酸味。さらに恐らく我々にはあまり馴染みがないであろう、中国の調味料の味も口内に香ってくる。むしろもう一口…… もう一口! と食欲を刺激してくれる。んめえ!

そして、肝心の卵。こちらは何層にも重なった分厚い卵、プツプツと卵の層を切っていくのが歯を通じて伝わってくる! いつぞやのつつじヶ丘の北京家庭菜の回でもそうだったけど、中国人の料理人が作る卵は層が厚く品がある卵の焼き方が多いのだろうか……。よき。

そして具材は米、卵、あん以上。究極にシンプル。普通盛りとは思えないほどの盛りの良さにたじろぎ、もしかしたら飽きるかもしれないけど、付け合わせのザーサイがとびっきり辛かったのでこれで味変も狙うことができる。これは止まらんですぞ!

部活帰りを思い出すほどの量に、食べ終わった後はしばらく動けず……。マスクの中で思いがけず出たゲップも酸っぱい。久しぶりにこんなにモリモリ米を食べたので、打ち合わせで頭が回るか不安……。皆も大事な会議の前の天使飯は控えような。

今日の天津飯あるある:天津飯のもう一つの顔でもあるカニ肉。天津飯が生まれた当時はカニは値段が張るので、土佐堀川河口の川津エビを使ったエビ玉の天津飯を考案していたらしい。


⭐︎今日のお店⭐︎

築地食堂「五番」

住所:東京都中央区築地6-22-6
営業時間:
月~土:8:00~23:00
祝:10:00~22:00
定休日:日曜日

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