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【INTERVIEW】笹口騒音が語る太平洋不知火楽団とうみのての先の現在、上野水上野外音楽堂でのフリーイベントの真意

StoryWriter

太平洋不知火楽団、うみのて、笹口騒音オーケストラ、NEW OLYMPIXと、様々な形態で音楽活動を行っているミュージシャン、笹口騒音が、2021年4月3日(土)に入場無料の合同レコ発〈笹フォークジャンボリー2021〜笹リンピック編〜太平洋×笹オケ×うみのて合同レコ発〉を上野水上野外音楽堂にて開催する。ゲストには、呂布000カルマ、のっぺら、クリトリック・リスが出演し、コロナ禍以降を占う野外でのフリーイベントとなりそうだ。

そんな笹口騒音にZoomでインタビューを行うことにした。もともと笹口は2010年前前後に、東京のオルタナバンドたちによるコンピレーションアルバム『TOKYO NEW WAVE 2010』に太平洋不知火楽団で参加しており、オワリカラやSuiseiNoboAzなどとともに新宿Motionを中心に熱いライヴを繰り広げていた。そんな彼らに刺激を受け、筆者は『StoryWriter』というZINEを作り、言葉で当時の音楽を取り上げていた。あれから約10年。止まることなく音楽制作を続けている笹口の現在を訊いた。

取材&文:西澤裕郎


どんな手を使ってでも自分の音楽をよりたくさんの人に聴いてほしい

──いきなりですけど、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』観ましたか?

笹口:久しぶりに映画を公開初日に観にいきました。今回はなんだか観なくてはいけない…… という脅迫観念のようなものがありまして。

 

──僕たちが中学生くらいの頃にテレビ版が公開されたじゃないですか? 25年近くかけてようやくひとつ物語が終わったという点で、笹口さんはどう感じられたのかなと思いまして。

笹口:実は私は後追いでハマったタイプなんです。大学生のときにVHSで観始めたんですけど、その頃はどっちかというとエヴァたちの戦いの迫力に惹かれていて。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』は一応、全部映画館で公開のときにリアルタイムで観れていて、まあいろいろ思うこと、ツッコミどころはあるんですけど、とにかく庵野さんが60歳になった今、いい加減もう14才の物語はここで終わらせるぞ! という気概を感じて。あと終わらせるからにはめちゃめちゃやってやるぞ! という感じがあって、表現的に勇気をもらったし元気がでました。

──25年越しの完結というのは想像できないプレッシャーもあったでしょうしね。そういう意味でいうと、しっかり広げた風呂敷を畳んだ感じはあった作品だなと思いました。

笹口:音楽もそうですけど、過去のヒット作をずっとやり続けることの苦悩ってあると思うんです。再結成するバンドもそうだと思うんですけど、僕レベルでも、ヒット曲をやらないと聴いてくれないジレンマはあって。基本的に昔の曲のほうが好きという人が多いんですよね。私としては、今のほうが進化できているつもりなんですけど、SNSで好きだって言ってくれるのは過去の代表曲だったりする。庵野さんは、シン・エヴァンゲリオンでそれを終わらせて、さらに好き勝手やりそうな気がするからいいなって思いましたね。

──そういう意味で、笹口さんも自分が生み出した作品をどう塗り替えていくかの10年だったとも言えますよね。太平洋不知火楽団とうみのての復活には、どういう経緯があったんでしょう。

笹口:笹口騒音オーケストラとNEW OLYMPIXというバンドを始めたんですけど、それはうみのてと太平洋の先にあるものをやろうとしたバンドなんです。

笹口騒音オーケストラ

 

 

ただ、私の力不足もあるんですけど、如実に聴いてくれる人が減ってしまった感じがあって。このままでは自らの存在が危ういというのもあり、うみのてと太平洋もやるしかないなと復活させた経緯もあるんです。こうやって言葉にしてみるとすごくイヤしい感じにも聞こえてしまうかもしれないですけど、やはりどんな手を使ってでも自分の音楽をよりたくさんの人に聴いてほしいという気持ちが根底に強くあるんです。

 

──太平洋不知火楽団とうみのての復活は、純粋に嬉しかったです。

笹口:うみのてと太平洋不知火楽団はどちらも終わらせたバンドだったんですけど、やはりもう1回やるからには、前と同じことをしないように心がけているというか。自分も変化するバンドが好きだし、飽き性というのもあって、「たとえば僕が売れたら」や「SAYONARA BABY BLUE」みたいな曲は1曲でいいなという気持ちはあるので、変えようというより、ひたすらこれまでと違うことを自分の中や外から探してみつけてひねり出してやっている感じはあります。

太平洋不知火楽団

 

──笹口さんのやっていることの延長戦というか、曽我部恵一さんの活動は音楽をやるうえでの理想像なのかなと思うんです。音楽をしながらレーベルやお店もインディペンデントでやる。

笹口:曽我部さんは理想的ですね。ちゃんと聴いてくれる人がいて、音楽的実験もされている。バンドもたくさんやられていて、多作ですし、間口も広く聴かれている。僕の場合、新曲をあげたところで1ヶ月経っても1000再生されないみたいな…… で、それをあまり気にしている感じを見せなければいいんですけど、僕はすごく見せちゃうので(笑)。昔より今を聴いてくれよ! って。曽我部さんは、その点、そういう素振りを見せずに我が道をいかれていてすごいなと思います。

バンドは実写な感じがする

うみのて

──ストリーミングやプレイリスト文化が主流になる中で、笹口さんの曲は歪さがあるというか、プラットフォームなど関係なく表現されているのが魅力的だと僕は思います。表現せざるをえなくて作っている。そういう作品が世の中に以前より少ないと感じてしまうんです。

笹口:まあでも食えているかいないくらいのギリギリで音楽だけやっているので、やらざるをえないという側面もあるんですけど、自分では結構ストレートに表現してるつもりなんですが、歪とはよくいわれますし(笑)。自分が好きなバンドの音とか歌の表現、影響受けたものにはまさに歪なものが多い気がしますね。自分がこれが歌だな! って感じるモノはただキレイなだけ、や整っているだけのモノではないものというのはあると思います。〈笹フォークジャンボリー〉で言うと、呂布さんやスギムさん、のっぺらの歌も、そうそうコレが歌だよな…… と思う瞬間がたくさんあって。音と相まってその言葉以上のものを感じられるうたが好きなんです。

 

今って、具体的な日常とか恋愛の歌が流行っている一方で、インディに関してはすごく曖昧なものが多い気がする。自分にとってグッとくるちょうどいいところの音楽が、そんなに取り上げられていない。今はテレビや雑誌で取り上げるものがその媒体ごとに偏っていて、でもそこに入っていない場所に自分の好きな歌や人が多い感じがする。そういった既存の媒体には取り上げられていないけどちゃんと歌のある歌を歌っている人、自分を含め、その勢力を拡大していきたいという野望はあるんです。徒党を組むわけじゃないですけど、仲間といえる人をみつけたいです。そのために力がほしい…… 今年こそはバズります!

──10年前に僕がZINE『StoryWriter』を作ったとき、まったく同じ気持ちでした。知りたいバンドのことを取り上げているものがないから、自分で作っちゃおうというのが動機だった。そういう意味で、笹口さんはよりDIY感が強まってますよね。自分で作ってしまうというか。

笹口:コロナの時期は、ライヴも減ったので、ひたすら音源制作をしていましたね。いまはMVが大事だと思うので、かといって人に頼むのもお金もかかったり、意見があわなかったりするかもで、それならどうにか自分で技術を身につけようとしていて。昨年は音源制作をしまくってたんですけど、今年はMVを作りまくってます。

 

でも笹口騒音オーケストラでは上川敬洋さんというヤバい絵を描く人にアニメーションをお願いしたんですけど、それをBiSHのセントチヒロ・チッチさんがTweetしてくれて。

 

チッチさまがテレビに出るときは神様と拝んでいます(笑)。取り上げてくれたのもそうなんですけど、多少なりとも誰かに聴いていただいていたんだなというのが嬉しいんです。

──昨年末、SuiseiNoboAzもアルバム『3020』を出しました。同じ新宿Motionを中心に東京ニューウェーブ勢として活動していた笹口さんとしてはどのように感じられましたか。

笹口:たぶんお互いにオレのがヤバい! とおもっているので、心の中ではバチバチしていますね(笑)。現状、ボアズのほうが聴かれている感じするのでチキショー! どげんかせんといかん! って感じです。元うみのての高野くんもいるし。

 

──なんだかんだ、東京ニューウェーブ世代は今も続けている人が多いですよね。これほどコンスタントに作品をリリースし続けているのは笹口さんが1番なんじゃないかと思います。

笹口:そういえば音楽を休んでないですね……  逆に、そろそろ休んだほうがいいなとか思いつつ、コロナ時期はライヴがない今、制作しなくてどうするんだ! ってモードだったので、なぜ今逆にやらないの!? って他のミュージシャンに思うくらい傲慢な気持ちはあったかもしれません…… まあ今になって考えると一回休んでみるのも大事かもと思いますが、それにしても今頑張らないといけないのに、そうやって表現し続けている人たちがあまり目に見えない気がして。まあでも表にださずともひたすら内え向かって突き詰めてる人もいるだろうし、これからみんながコロナ期間で作っていたものがどんどん噴き出してくるのかもしれませんね。

──笹口さんは、2013年前後に「ロックンロール(笑)」という言葉を使っていましたよね。ロックの置かれている立ち位置を、ものすごく批評的に的確に表現されていた。そうした視点を持ちつつ、いまもバンドをやっている理由というかこだわりはどこにあるんでしょう。

笹口:自分でヒップホップ聞くのは好きだし、日本の人に限っていえばバンドより1人でやっている音楽を聞く節があるんです。でもなぜバンドやってるかというと、あんまりカッコいい理由じゃないですが、打ち込みのほうが手っ取り早いって人もいるけど、ぶっちゃけ自分にとってはバンドがの方が長くやってて手っ取り早いんですよね。人に叩いてもらったり弾いてもらうほうが勝手にその人なりの抑揚とかフレーズをつけてくれたりするので。音やリズムから自分で全部くみたてるラップトップミュージックはそういう意味ではアニメーション的というか。対してバンドは実写な感じがするのかもしれません。

──自分以外の想像力を取り入れることをした部分で庵野さんの話にも繋がりますよね。

笹口:でも、庵野さんが特集されていた『プロフェッショナル 仕事の流儀』を観ていて、1番大変なのは庵野さんの周りの人なんじゃないかって思いましたね(笑)。僕の場合もバンドメンバーは大変と思っているのかな? 庵野さんほどじゃないと思うんですけどね(笑)。

オリンピックイヤーってことで、いろんな王の祭典にしたいと思った

──いまは、どうやって楽曲制作をされているんですか?

笹口:いま私は九州在住なんですけど、去年アルバムを3枚作ったんです。コロナの中を掻い潜って、九州と東京を行ったりきたりして録りました。

──リモートでやっている人も増えましたが、そうではなく。

笹口:たぶんできるんでしょうけど、技術的にまだ音のズレとか気になりそうで。挑戦してみたいとは思うんですがまだできてないですね。

──僕らは良くも悪くも、音楽雑誌などのロック史観に影響されてきた世代だと思うんです。常にロックは進化していかないみたいな強迫観念はいまもありますか。

笹口:それはずっと思っていますね。ロックといえば常に進化もそうですけど、あとは自分はいろんな感情のゆらぎがあるほうが好きですね。つまりわかりやすくいうとスピッツよりミスチル派なんです。でも今はヒップホップの方にそういったロック的な魅力を感じるかもしれません。特に呂布さんはロックも好きな人だから、ロック的な抽象的表現もありつつ、ヒップホップ的な自分が強くでている表現をされていて。そういった自分にはできない表現に打ちのめされたりしているんですけど、ことロックをやっているからには少なくともロックをやっている人には負けないぞ! という気持ちはあります。

──ロックというものの本質が問われている時代な気もしますよね。

笹口:そういえば、呂布さんとリモートと話したときに、呂布さんはこのままの表現を突き詰めてもっと売れたいって言っていたんですけど、どちらかというと我々はテレビやラジオで放送できない側の人間というか。スギムさんしかりですが、でもその放送できない表現にこそ自分の本当に言いたいこと、歌の本質がある気もして…… むずかしいところです。

 

──4月3日には入場無料の合同レコ発〈笹フォークジャンボリー2021〜笹リンピック編〜太平洋×笹オケ×うみのて合同レコ発〉を上野水上野外音楽堂で開催します。呂布000カルマ、のっぺら、クリトリック・リスのブッキングテーマはどういった部分にあるんでしょう。

笹口:いま私が1番好きな人を呼びました。3組とも自分にないものを持っている人たちなんです。呂布さんは音源ももちろんとんでもないんですけど、ラップバトルでもキングという称号を何度もとられていて、のっぺらは僕が勝手に言っているんですけど、フロントマンの小棚木もみじさんが2021年現在の中央線の女王だと思ってて。それを踏まえて、オリンピックイヤーってことで、いろんな王の祭典にしたいと思ったんです。それで他に誰か王がいないかなと思ったときに、下ネタのナポレオンがいるじゃないか! と。クリトリック・リスさんにも声をかけて王を揃えたんです。今のこの時代に王っていうのももはや時代遅れな感じですけど(笑)。

 

──笹口さん自身もライヴ自体は久しぶりになるんじゃないですか。

笹口:1月にうみのてをやったくらいで、去年はひたすら制作期間で音源を作っていたので、本当に野外の大舞台でやるのは久しぶりですね。入場を無料にしているので本当に来たいと思ってる方には全員に来ていただきたいイベントです。1200人入るところを感染症対策で半分の600人ににしていて、まだ予約は半分くらいなので、気になっている人は是非きていただけたら嬉しいです。当日フラッとときていただいでも大歓迎ですので、ぜひ遊びにきてください!


■イベント情報

〈笹フォークジャンボリー2021〜笹リンピック編〜太平洋×笹オケ×うみのて合同レコ発〉
2021年4月3日(土)@東京・上野水上野外音楽堂
料金:無料(投げ銭制)
時間:お昼12時頃〜19時頃までを予定
出演:
太平洋不知火楽団
うみのて
NEW OLYMPIX
笹口騒音オーケストラ
スペシャルゲスト:
呂布000カルマ
のっぺら
クリトリック・リス
出入り自由
600名様限定
(コロナ感染対策上、客席を半分にするため)
メール予約先着入場:
yanagawa_records@yahoo.co.jp
詳細:https://lineblog.me/sasablog/archives/2618705.html

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