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【連載】本と生活と。vol.5 京極夏彦『地獄の楽しみ方 17歳の特別教室』

StoryWriter

こんにちは! 無事GW中に引っ越しを終えたのですが、荷造りのことを考えすぎて1週間連載をすっ飛ばしてしまいました。申し訳ございません……  たまざわです。

現在、ほとんどの荷解きが終わったのですが、本だけは片付かず。そもそも、前の家から本棚に入り切らなくて床に山積みになっていた本が片付くわけないんですよね…… せっかくちょっと部屋も広くなったし、新しい本棚を買おうかなとお財布とにらめっこしている最近です。

生活に寄り添う本を紹介するこの連載。第5回目に紹介するのは、京極夏彦『地獄の楽しみ方 17歳の特別教室』です。

vol.5京極夏彦『地獄の楽しみ方 17歳の特別教室』

『地獄の楽しみ方 17歳の特別教室』
著者:京極夏彦
発売:2019年
出版社:講談社
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065173848

作品情報:
「今の十代の皆さんは、私が十代だった頃に比べても、はるかに優秀です。しかし、大人になった皆さんを待ち受けているのは地獄のような現実です。それはいつの時代も変わりありません。地獄を楽しむためのヒントを、もう地獄に堕ちている先輩が、少しだけお教えします」(京極夏彦)

「あなたの世界」は、言葉ひとつで変わってしまいます。SNS炎上、対人トラブル――すべては「言葉」の行き違い。語彙を増やして使いこなすわざを身につければ、楽しい人生を送ることができます。地獄のようなこの世を生き抜くための「言葉」徹底講座。大人前夜のきみたちへ。学校では教えてくれない本物の知恵を伝える白熱授業。「17歳の特別教室」シリーズ第5弾。

 

本書はエッセイや小説ではなく、講談社にて2019年に一般公募の15歳〜19歳の50名を対象にした特別授業をもとに構成された本です。シリーズ第5弾で、今回の講師は京極夏彦さん。『姑獲鳥の夏』や『魍魎の匣』等、数々の名作を手掛けている小説家です。私は高校生の頃に仲の良かった友人に勧められて、上記百鬼夜行シリーズでファンになりました。今作の『地獄の楽しみ方 17歳の特別教室』も、昨年本屋さんで偶然見かけて、「京極夏彦」、「地獄の楽しみ方」という言葉に惹かれ、思わず購入した経緯があります。

今回の授業は京極夏彦さんが考える「言葉」にまつわる内容になっています。高校生世代に向けた道徳的な授業って所謂、夢とか希望とかが謳われがちだと思うのですが、むしろ地獄を突きつけて、その上で楽しく生きるというところが京極さんらしいですよね。

この世の地獄を生き抜くためには「言葉」が最も大切で、そもそもこの世は言葉で形成されていること。そして、語彙を増やして言葉を使いこなせば、地獄さえも面白がることができ、楽しく生きていける。大まかにまとめるとそんな授業です。

本書で特に印象に残ったフレーズは下記です。

ただ、この世に面白くない本なんてないんですよ。言葉を受け取るほうは、いかようにも解釈できるんだし、過剰にできるんですから。本を読んで面白くないと思ったら、それはその本が悪いのではなく、その本を面白がることができない自分が悪いんだと思いましょう。 (京極夏彦(2019年)『地獄の楽しみ方 17歳の特別教室』109ページより引用)

自分の趣味趣向に合っていなかったり、理解の範疇を超えている本に出会うと、ついつい面白くないとすぐに判断しがちでしたが、上記の言葉でハッとさせられました。27年間生きてきて、「言葉」をずっと使ってきたはずなのに「言葉」に対する感性は全然磨かれてなかったなと猛省したフレーズでもあります。

本当に何も考えてなかった高校生の自分にこの授業受けさせたかったなというぐらい、この世の地獄を生き抜く京極夏彦流儀が書かれています。気になった方はぜひ読んでみてください! 17歳を過ぎた大人の方にもガツンと響く言葉がたくさん出てきます。私は完全に強打されました。

それでは今週はここまで。来週もよろしくおねがいします!

※「本と生活と。」は毎週水曜日更新予定です。

たまざわかづき
1993年生まれ。もともとクラリネットとドラムをやってました。音楽以外の好きなもの:本、映画、動物、ドラマ、Netflix、Hulu、ぬいぐるみ、文房具など諸々たくさん。モルモットのごまちゃんと生活してます。30歳になるまでに本屋さんの開業を目指しています。

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