こんにちは! 2021年に入ってからもう半年も経ってしまっていて、急にふとびっくりしました、たまざわです。
連載も無事10回目を迎えることができ、とってもうれしい。実は自分の思っていることを発信するのがとても苦手でして。特に好きな本を紹介するという行為は、自分のすべてを晒す行為だなと個人的に思っていたので、こういう場を持たせていただいたことにも、読んでくださっている方がいることにも感謝感謝です。文章力はまだまだですが、これからもどうぞよろしくおねがいします!
生活に寄り添う本を紹介するこの連載。第10回目は谷川俊太郎『ひとり暮らし』です。
vol.10谷川俊太郎『ひとり暮らし』
『ひとり暮らし』
著:谷川俊太郎
発売:2010年
出版社:新潮文庫
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784101266237
作品情報:「どうせなら陽気に老いたい」著者の生きる歓びとは? 最新エッセイ集。詩の背後にある詩人の暮らしを綴った「ある日」収録。
本作は個人的にも大好きで、作品の数々は最も私の血肉となっているであろう詩人・谷川俊太郎さんのエッセイ集。2001年までの日記を綴ったページもあれば、幼少期のことを振り返ったページもあり、様々な角度から谷川俊太郎という人間を知ることができる一冊です。
特にキーワードをもとに谷川さんの考えを綴る、ことばめぐりの章が大好きで、何度も読み返しています。下記の「生」についての一節は暗記しているほど、自分の生活の一部になっているフレーズです。
「生きていてよかった」というような、通俗的な感慨の表現がどこかうさんくさく、気恥ずかしいのは、生きることの手ごたえはそんなひとことで言えるほど、やわなものでもうすっぺらなものでもないということを、私たちがちゃんと知っているからではないでしょうか。ほんとの生はもっと無口で不気味だと私は思います。 (谷川俊太郎(2010年)『ひとり暮らし』127ページより)
「生きていてよかった」は気軽に使いがちなことばですが、思考のレイヤーを深めて考えると果たして正しい使い方なのかなと悩んだことがあります。まだ死を意識していない、今を生きているのに使う言葉なのかなと思ったんです。今生きていることを意識することは生活を送っていてあまりないのに、「生きていてよかった」と本当に心の底から思っているのかなと自分自身への問いにも繋がりました。谷川さんが上記でおっしゃっているように、生はもっと無口で不気味ということばは、生活の中で意識してみると、たしかにそうだなと腑に落ちます。生は死よりスルーされがちですが、今を生きることで死にも繋がっているんだなと…… なんだか暗い話になってしまいましたね(笑)。
私は自分の気持ちが分からないことが多い分、本を読んだ後はそんな感じで内省したり、俯瞰したりして自分の気持ちを確かめる時間にもなっています。特に谷川さんのように好きな作家さんの普段考えていることが知れるエッセイは私のような人間にはとてもありがたいです。そうでもしないと、人に流されて、自分の気持ちも分からずに生きてしまう気がします。
情報過多社会の中で生活していると、自分の気持ちが分からなくなったり、知らない誰かの心ないことばに傷ついてしまうことがあると思います。繊細すぎると言われればそれまでですが、繊細ということは感受性も強いということ。昔は繊細すぎる自分が嫌いでしたが、最近はそれを逆手に取って、本や音楽、映画からたくさんのことを吸収できる感受性を持っている人間だと開き直っています。この『ひとり暮らし』はそんなふうに私を私らしくしてくれた1冊です。同じような悩みを抱えている方、ぜひ読んでみてください。
それでは今週はここまで。来週もよろしくおねがいします!
※「本と生活と。」は毎週水曜日更新予定です。
1993年生まれ。SWスタッフ。もともとクラリネットとドラムをやってました。音楽以外の好きなもの:本、映画、動物、ドラマ、Netflix、Hulu、ぬいぐるみ、文房具など諸々たくさん。モルモットのごまちゃんと生活してます。30歳になるまでに本屋さんの開業を目指しています。