【連載】東京初期衝動しーなちゃんの、ちゃっかりお見合い対談Vol.2 鈴木もぐら（後編）

4人組ロックバンド・東京初期衝動のヴォーカル＆ギターしーなちゃんが、ジャンル問わず、話をしてみたい相手と対談を行なっていく連載『ちゃっかりお見合い対談』。2018年にバンドを結成し、自主レーベル「チェリーヴァージン・レコード」を立ち上げ、DIYな活動を続けているしーなちゃんが、音楽に限らず、映画、お笑い、漫画などジャンルを横断し、それぞれの表現について、ざっくばらんに語り合っていく。

第2回のゲストは、お笑いコンビ空気階段の鈴木もぐら。2012年にコンビを結成、2016年に「マイナビLaughter Night」（TBSラジオ）の第3回チャンピオンライブで優勝し冠特番を獲得。同放送が好評を博し2017年4月に「空気階段の踊り場」としてレギュラー化し現在もなお高い支持と人気を集めている。キングオブコント2020では決勝3位を獲得するなど大きな注目を集める鈴木もぐらとしーなちゃんの初顔合わせは、ギャンブルの話から、高円寺のディープなおじさんの話、お金借りの話と、妙なグルーヴを生み出していった。

取材＆文：西澤裕郎
写真：大橋祐希

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日々のふざけんな殺してやるっていうのを峯田さんに言いに行ってました

──今でこそもぐらさんって、すごく柔らかい雰囲気じゃないですか。でも、銀杏BOYZのMV「援助交際」に映るライヴ時のもぐらさんって、めちゃくちゃとんがってる感じが出ていて、今とは全然表情が違うなと思って。

しーなちゃん：生きることに必死だったんですね。

もぐら：そうですね。普通にライヴに楽しみに行ってはいなかったので。

しーなちゃん：何を求めていたんですか？

もぐら：何を求めていたんですかね。

しーなちゃん：初期衝動？

もぐら：初期衝動かな、やっぱり。なんかね、日々のふざけんな殺してやるっていうのを峯田さんに言いに行ってましたね。みんなそうだったと思いますね。

しーなちゃん：私もライヴをやっている時は、殺してやるっていう気持ちでやってます。

もぐら：そのぶつかり合いですよね。

しーなちゃん：ぶつかり合い、殺し合いですね。

──その結果、しーなちゃんは骨折もして。

もぐら：どこ折っちゃったんですか？

しーなちゃん：踵です。

もぐら：踵を骨折したの!? 格闘家以外で踵を骨折するの初めて聞きました。

しーなちゃん：ジャンプしたら、2m下に落っこちて。

もぐら：え!? 現場で働いてるんですか？ どういうことですか？

しーなちゃん：ライヴ中に足場から落ちてしまい。

もぐら：スピーカーとかからですか？

しーなちゃん：そうです。飛べると思ったんですよ。飛べなかったです。

もぐら：「I can fly」みたいなことですか（笑）。心は飛んでたんですよね。

しーなちゃん：着地した瞬間になんかもうやばいと思って、終わったって。

──しーなちゃんは病院で働いているから、そういう感覚もわかるんでしょうし。

もぐら：こういう診察方法してきたら、ちょっとぼったくってんなとかもわかります？

しーなちゃん：そうですね。この薬なんで入ってるの？ みたいな。

もぐら：そういうのも分かっちゃうんですね。歯医者でそれが多いんですよ。いつこれ治療終わるんだよ！ みたいな。遠回し、遠回しで。1本の歯で何十万も取ろうとしやがる。

しーなちゃん：歯医者、高いですもんね。

もぐら：高いですよ。終わらないでしょ、もう。無限ループなんですよ。虫歯を治療しに行っただけなのに、ホワイトニングもやっておきますかっていうね、抱き合わせ商法も多いですし。骨折した状態でライヴやるんですか？

しーなちゃん：やってますよ。骨折した日に2本ライヴがあって。骨折してからレントゲン撮ったんですよ。その時はちょっとヒビが入ってるみたいに言われて。ちょっとヒビが入っただけだから、横浜で2本目のライヴをしたんですね。それで次の日にレントゲンを撮ったらガッツリヒビが入っちゃってて。その後1回、酒で痛みを和らげたんです。

もぐら：逆にすごい痛くなる可能性もあるでしょ？ 血流がよくなって。いい方に転んだんだね。

しーなちゃん：和らいだ。それで、酒飲めばいいのかなと思って。

もぐら：いろいろ麻痺させてね。

しーなちゃん：二日酔いの状態でCTを撮ったんですけど、ゲロ吐きそうになりました。乗って、グルグル回りながら立体的に撮るみたいな。二日酔いの中撮って、最悪でしたね。

もぐら：飲んできた人が悪いんですけどね（笑）。

──昔だったら、そういうのがロックスターみたいな見られ方をしたのかもしれないんですけど、今の時代のロックスターというのは概念も変わっているし、ロックなのかはよくわからいんですけど、しーなちゃんは破天荒なことしている部分で際立っていますよね。

もぐら：まあでも、体だけはやっぱり気をつけないと。踵は2つしかないから。歯だったら全然いいんだけど。気をつけてくださいね。

しーなちゃん：指ならいけますね。じゃあ。

もぐら：指もだって、少ないですよ。10本は少ないよ。

しーなちゃん：30本からですね。

もぐら：歯は多いから。

高円寺の広場は、うちの病院の患者さんが多いんですよ

──前回曽我部さんと対談をしたとき、下北沢と高円寺の話が出たんですけど、高円寺は今も独特の磁場を放っている感じがありそうですね。

もぐら：同じように見られることが多いですけど、下北の方がちゃんとしてるというか。

しーなちゃん：洗練されてますよね。高円寺はまじやばい。

もぐら：高円寺は来るもの拒まずで。

しーなちゃん：そう、変なおじさんばっかり。

もぐら：去る者も追わずみたいな（笑）。

しーなちゃん：高円寺の広場でたまに習字をやってるおじさんがいて。

もぐら：あ、いますね。

しーなちゃん：あの人に東京初期衝動のロゴを書いてもらったんですよ。そしたら、金くれって言われました。

もぐら：それはそうでしょ！ 商売でやってるんだから。タダでやってもらえると思っている方がおかしいでしょ（笑）。金払ってる話だと思ったら、払ってない話なんだ。

しーなちゃん：渋ってたら、じゃあLINEくれって言われて。LINEを交換したら許してもらえました。

もぐら：よかったじゃない。ちゃんと飯とか行ってあげてよ。LINE交換して＝飯行きましょって意味でしょ。ほんとに交換だけで済ませたりとかしたらダメだよ。それだったら金払いに行ってくださいよ。

──たしかに（笑）。

もぐら：頼みますよ、ほんと。今も高円寺の広場に変な人いっぱいいて。この時期でも人が減らないからって警察が陣取っていて物々しい感じですけど、まだ飲んでる人がいるんですよ。

しーなちゃん：高円寺の広場は、うちの病院の患者さんが多いんですよ。

もぐら：そんなことある（笑）？

しーなちゃん：待合室の感じに似ている。

もぐら：見た顔がいるっていうことですね。

しーなちゃん：あいつ患者だみたいな。

──高円寺は住みやすいですか？

もぐら：住みやすいですし。

しーなちゃん：安い。

もぐら：あと、何をやっても浮かないっていうのがあるかもしれないですね。下北って、外れると浮いちゃうと思うんですよ。高円寺はなんでもありじゃないかなっていう。

しーなちゃん：下北は綺麗だし、おしゃれな人がいるし。

もぐら：そう。やっぱりおしゃれな人が多い。

しーなちゃん：今日ちょっと裏切られました。もぐらさん、絶対汚い格好で来るだろうなと思って、私も汚い格好で来たんですよ。

もぐら：いや、全然綺麗じゃん！ Apple Watchしてるし！

しーなちゃん：そしたら、たけしさんのTシャツ着て来られちゃって。

もぐら：これはいただいたTシャツなので、大事に着てますよ。全部いただきもので、今日は全身0円ですからね。0円コーディネートですよ。エアマックスもアントニーさんにもらったやつだし。

しーなちゃん：裏切られました（笑）。

もぐら：いやいや、なんでよ。そんな綺麗な格好して、指輪までつけて。タダなんだから、今日のコーディネートは。

──あともぐらさん、高円寺WALKAHってヒップホップユニットをやってらっしゃるじゃないですか。さんピンCAMPあたりのヒップホップを感じてすごく懐かしいし、めちゃくちゃ格好いいですよね。

もぐら：みんなそのへんのラップが好きだったんですね。それでああいう感じの90年代っぽい感じになっていて。

──音源リリースしてほしいです。

もぐら：もう辞めちゃった人もいますし、集まることはないと思いますけど、そうですね。

韻を1個挟んでいることで、作品としてそこに入っていけたりする

しーなちゃん：もぐらさんの出身地って、治安は悪かったんですか？

もぐら：治安は別に。何もない町でしたね。出身どこですか？

しーなちゃん：足立区です。

もぐら：足立は治安悪いけど、何もないでしょ。

しーなちゃん：何もないですよ。ウエアハウスっていう、CDとかDVD借りる場所しかなかったです。

──しーなちゃんは、ウエアハウスで、音楽とか映画、漫画とか、カルチャー的なものをめちゃくちゃ吸収した背景があるんですよね。

しーなちゃん：普通に座り込んで漫画を読んでました。

もぐら：何をしてもいい店だったんだ。

しーなちゃん：基本、足立区は何してもいいんですよ。

もぐら：そんな法律あったっけ（笑）？

しーなちゃん：基本なんでも許されますよ。映画館でブタメン食っても許されましたもん。

──何もない町で育ったから、もぐらさんも音楽とかお笑いとか欲していた部分もある？

もぐら：まあ、そうですね。ヒップホップに関しては、何もない田舎ってヤンキーがヒップホップを聴いて、それを後輩に教えてうわーっと広まっていくっていうのがあって。大金持ちの友だちがいて、そいつがよく東京に行ってCDを買ってきては聴かせてくれたりとかして。そこからというのもありますね。

──ヒップホップがわりとルーツというか、聴くことが多かったんですか？

もぐら：ヒップホップが多かったですね。日本語ですけどね。聴いてたのは。

しーなちゃん：ヒップホップから銀杏BOYZ。

もぐら：ヒップホップって、ストレートに伝えるのは恥ずかしくても、韻を使うと伝えられるみたいな部分が逆にあると思うんですよ。手紙で言葉を伝えるとか、電話で言葉を伝えるのと同じような感じで韻で伝えてるのがヒップホップなのかなって。ちょっと悪ぶってるめちゃくちゃなヤンキーみたいな人がヤンキーっぽいラップをしても、韻を1個挟んでいることで、作品としてそこに入っていけたりするのがヒップホップの好きなところなんですね。

しーなちゃん：ヒップホップ聴いてみよ。

もぐら：普通に愛してるって言うと恥ずかしいから、韻を踏んで伝えているみたいな考え方ですかね。韻を踏まなきゃいけない縛りって、日本的でもあるんですよね。俳句とか短歌って限られているじゃないですか。五七五じゃなきゃいけないとか、そういう縛りが1個あった上で言葉をどう伝えるかみたいなのがラップのおもしろところというか、好きなところですね。

「なんでそんなことするんだ」って言ったら、「窃盗団が入ったんだ！」って

──窃盗団が入って、思春期に聴いていたCDとか全部持ってかれちゃったんですよね。

もぐら：まるごと持っていかれましたね。ひどかったですね。あれは。僕の部屋だけなんですけど、もぬけの殻にされたっていう。19歳の時かな。

しーなちゃん：実家？

もぐら：実家です。銚子っていう漁師町の方なんですけど、僕が19で大学に入ったとき、住むところも決まってなくて、とりあえず寝袋だけ持って行ったんですね。寮が決まって「荷物全部送ってくれ」って親に電話をした時に「お前の荷物は全部ない」って言われて。捨てられたと思ったんですよ。「なんでそんなことするんだ」って言ったら、「窃盗団が入ったんだ！」って。ちょうどその時、九十九里とかあのへんを荒らしてたらしくて。海岸沿いで荒らしまくってはものをパクって中国に帰るみたいな。だからもう見つからないだろうって言われて。結局犯人は捕まってないんですけど、さみしいですよね。

しーなちゃん：思い出を窃盗団に盗まれた。

もぐら：でも窃盗団っていうことはたぶん捨てたりとかはしてないんですね。売るために盗んでいるわけではないじゃないですか。今もどこかで存在はしてると思うので。

しーなちゃん：エモ。ヴィンテージになってるってことですよね。

もぐら：ヴィンテージになってくれてたらうれしいですね。

──誰かが聴いてるかもしれない。

もぐら：そうだったらうれしいですね。

──しーなちゃん、他に訊きたいこととはありますか？

しーなちゃん：お金を貸してくれる人を紹介してほしい。

もぐら：まあ、いるでしょ。

しーなちゃん：いい金借りが。

もぐら：お金って借りたことあります？

しーなちゃん：ないです。

もぐら：お金は借りるなって言われてきました？

しーなちゃん：言われなくても、分かってきたかもしれないです（笑）。

もぐら：1個だけ言うのは、持ってない人から借りちゃダメですよ。

しーなちゃん：それはね、なんとなくそうですね。

もぐら：いつ返せるか分からないってことを伝えて、それでも貸してくれるっていう人から借りるってことですね。そしたら何のリスクもないですし。むしろ、返す時にちょっと乗せて返したりとかすれば相手も喜びますし。やさしい人が多いんで、あまりお金を持ってなくても貸しちゃう人がたまにいるんですけど、それはダメです。

しーなちゃん：ダメですね。持ってる人から借りる。

もぐら：はい。誰が持ってます？ 周りで。

──しーなちゃんのレーベルヘッドの青木（勉）さんは？

しーなちゃん：青木さんは、持ってるかなあ。

もぐら：社長さんですか？ いいこと聞きました。青木さんありがとうございます！

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