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【連載】本と生活と。vol.16『今日は誰にも愛されたかった』

StoryWriter

こんにちは! 最近ドライフラワーの定期便に登録しました、たまざわです。

花屋さんが多いまちに住んでいるので、もともと定期的に生花を買って、お部屋に飾っていたのですが、枯れていく様を見るのが心苦しくなってしまい…… 枯れる前にドライフラワーにすればいいんですけど、なかなかタイミングが掴めず失敗することもしばしば。だったら、最初からドライフラワーをお迎えしよう! と思い立って、Instagramで見かけて気になっていたサブスクリプション制の定期便に登録してみました。今はいろいろなジャンルでサブスクがあって、便利ですね。

さて、生活に寄り添う本を紹介するこの連載。第16回目は谷川俊太郎・岡野大嗣・木下龍也『今日は誰にも愛されたかった』です。

vol.16 谷川俊太郎・岡野大嗣・木下龍也『今日は誰にも愛されたかった』

『今日は誰にも愛されたかった』

著:谷川俊太郎・岡野大嗣・木下龍也
発売:2019年12月
出版:ナナロク社
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784904292914

作品情報:師弟のようなクラスメートのような3人の創作とお話の本。国民的詩人と新鋭歌人の詩と短歌による「連詩」と「感想戦」を収録。読み合いと読み違い、感情と技術、笑いとスリルが交わります。

【連詩とは】
詩人同士が、詩を順々に読みあいひとつの作品を合作する創作の形式です。今回は、詩人と歌人が紡ぐ、詩と短歌による「連詩」。歌人側は2人が交代しながら受け、具体的には、次の順で行いました。岡野大嗣(歌人)→谷川俊太郎(詩人)→木下龍也(歌人)→谷川俊太郎 →岡野大嗣 →谷川俊太郎 →木下龍也 →谷川俊太郎 →岡野大嗣……と、これを36番目までつづけ、ひとつの連詩としての作品をつくります。

 

本書は詩人・谷川俊太郎さん、歌人の岡野大嗣さん、木下龍也さんの3人による連詩の本です。表紙もキラキラでとても特別感がある一冊。

連詩ってなんだろう? という方は↑の説明文をぜひ読んでみてください。リレーのように3人で詩と短歌を繋いでいき、1つの作品にする方式です。

最初に「連詩」、「短歌」、「詩」とは何かについての説明や、著者それぞれのプロフィールの掲載が続いた後、ページが青くなって、そこから連詩がスタート。その紙の色がまた特別感があって、まるで映画館で上映前のCM後、本編がやっと始まるぞ! という気分になぜかなりました。それぐらい没入感があります。

私が特に好きな一節はタイトルにも使用されている岡野さんの短歌です。

四季が死期にきこえて音が昔にみえて今日は誰にも愛されたかった
(谷川俊太郎・岡野大嗣・木下龍也(2019年)『今日は誰にも愛されたかった』連詩より引用)

岡野さんはあえて短歌のスタイルを崩してみた上で、谷川さんの詩の「気持ちが収まらなかった」から連想したとおっしゃっています。聴覚や視覚が誤作動を起こすように、感情も時にそうなる場合があるのではとのことです。連詩なので、36個で1つの作品となるのは分かっているのですが、上記の短歌が頭の中に響いて、離れなくなりました。こんなに短い文で人間を表すことができるんだという驚きがあったんだと思います。

詩と短歌、スタイルは違えど、36個の連詩となると、1つの大作映画を観たような気持ちになります。感想戦という、著者それぞれがお互いの詩や短歌について語り合う章もあり、自分が感じた感情と照らし合わせていくのもすごく楽しい本です。感想戦を読んでから、また連詩を読むと詩や短歌の解釈も変わるので、とても不思議な一冊。

何十年も色褪せることなく、その時々の新鮮な感情で読み返せるだろうなと心から思った本でした。短歌や詩が好きな方はもちろん、「気になっているけどまだ手を出せてないジャンルだな」と思っている方にもおすすめです。

それでは今週はここまで。来週もよろしくおねがいします!

※「本と生活と。」は毎週水曜日更新予定です。

たまざわかづき
1993年生まれ。SWスタッフ。もともとクラリネットとドラムをやってました。音楽以外の好きなもの:本、映画、動物、ドラマ、Netflix、Hulu、ぬいぐるみ、文房具など諸々たくさん。モルモットのごまちゃんと生活してます。30歳になるまでに本屋さんの開業を目指しています。

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