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StoryWriter

こんにちは! 先日2〜3年振りに健康診断を受けました、たまざわです。

2年ほどフリーランスとして働いていて、健康診断を受けそびれていたんです。昨年アレルギーで入院した時に検査的なことは受けましたが、THE 健康診断は久しぶりでかなり緊張しました。検尿がちゃんと採れるか心配で、前日の夜全然眠れなかったぐらいです。まじで私検尿苦手なんですよね(笑)。って何の話をしているんやという感じですが、めちゃめちゃ太っていたのでダイエットを決意しました(家に体重計がないので、今までなかったことにしてました)。

さて、生活に寄り添う本を紹介するこの連載。第20回目に紹介するのは、最果タヒ『きみの言い訳は最高の芸術』です。

vol.20 最果タヒ『きみの言い訳は最高の芸術』

『きみの言い訳は最高の芸術』
著者:最果タヒ
発売:2019年
出版社:河出文庫
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784309417066

作品情報:
「ただ私は生きていて、あなたも生きているんだということ。そんな当たり前のことが言葉の上にも描けたらいいな」(本文より)
「友達はいらない」「宇多田ヒカルのこと」「最初が最高系」「不適切な言葉が入力されています。」ほか至極のエッセイ45本に加え、文庫本の「おまけ」9本&「あとがき」を収録。あなたの心の中でうごめく「曖昧な感情」に、「曖昧なまま」そっと寄り添ってくれる沢山の言葉たち――最果タヒ初のエッセイ集が待望の文庫化!

 

本書は作家・最果タヒさんによる、エッセイ集。最果タヒさんと言えば、ことばをたくさん詰め込んだ独特な詩、ことばそのものをインスタレーションとした展示作品を制作されている作家さんです。

私が初めて最果タヒさんの作品に出会ったのは、2014年に出版された第3詩集『死んでしまう系のぼくらに』です。それまで詩は谷川俊太郎さんや長田弘さんなど、語感や、読む人に行間からも考えさせる含みを持った詩がとても好きでした。だから、最果さんのまるでことばが水のように体内に直接流し込まれるような詩を読んで衝撃を受けたこと、今でも覚えています。それ以降、歌集も詩集も展示も追いかけているファンです。

本書はエッセイ集なのですが、ことばに隙間がなく、それでもスラスラと読めてしまう。しかも、たくさん共感して読み終えた頃には、清々しい気持ちになっています。

特に好きな一節は「優しさの天才ではないわたし」の下記です。

優しさにも閾値があるんですよ。人間。運動神経とかと一緒ですよ。で、それでも優しくされた時の感動だけはみんなわかるから、だからこそ人は考えて考えて、知識と想像力を駆使しまくって、天然での優しさが発揮しきれないかわりに、なんとか気を使おうとするんだろう。自分とはちがう立場の人にとって、必要なこと、主張すべきことを、なんとか把握しようとする。傷つけないように気を配る。自分からは見えない景色をかき集めて、他者の視点を手に入れようとする感じ。優しさよりなんだかそれってかわいいよなあと思うのだけど、どうでしょうか。きっとそれが知性ってやつなんだと思います。 (最果タヒ(2019年)『きみの言い訳は最高の芸術』38ページより引用)

引用が長くなってしまいましたが、大事な部分なので全部載せちゃいます。時々優しさってなんだろうって考えることありませんか? 私は結構悩んでしまいます。周りの人から「優しいね」と言われることが多いんですけど、それって本当に相手のことを思っての優しさなのかなとか、自分の深層心理では自分の利益を考えての行動や言動だったのではないか、ずるい人間なのではないか、マイナス思考なのでそういうふうに考えてしまうんです。でも、上記の一節を読んだ時に知性という言葉にハッとしました。

今、SNSではすぐに炎上して、少しでもその人に落ち度があったら叩くのが当たり前になってしまっている。たしかに悪いことをしてしまったのかもしれないけど、優しさ以前に相手のことを想像する知性が必要なのではないかなと思います。炎上してしまう人にも、それを轟々と攻め続ける人にも。でも、最果さんが言っているように他者の視点を手に入れようとする感じ。この感覚は少し冷静になれば、誰にでも感じることができる感覚だと思います。自戒でもあるけど、そういう知性のある優しさを持った社会で生きていきたいです。

今回紹介した一冊はエッセイですが、詩がよく分からないという方、ぜひ最果タヒさんの作品を読んでみてほしい! 私は友だちに「詩でいい人いる?」と訊かれた時は、最初におすすめしてます。

それでは今週はここまで。来週もよろしくおねがいします。

※「本と生活と。」は毎週水曜日更新予定です。

たまざわかづき
1993年生まれ。SWスタッフ。もともとクラリネットとドラムをやってました。音楽以外の好きなもの:本、映画、動物、ドラマ、Netflix、Hulu、ぬいぐるみ、文房具など諸々たくさん。モルモットのごまちゃんと生活してます。30歳になるまでに本屋さんの開業を目指しています。

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