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StoryWriter

「アボカドって、美味しいよね〜」って伝えると、「女子ってアボカド好きだよね〜」って言われて会話を終わらされるのが寂しい。だって、もっと話したいことがある。

初めてアボカドを買ったのはいつだろう。思い返すと、あれは20歳のとき。一人暮らしを始めてすぐ、毎日のごはんの献立をどうするのか、誰も決めてくれないことを学んだわたし(当たり前)。

「なにをつくろうかな〜」と、なんとなく雑誌をパラパラとめくったときに目に留まった一枚のページを、なぜか今でも鮮明に覚えている。そこに載っていたのは、「アボカドとカニカマをマヨネーズで和え、ポン酢を少したらし、隠し味にわさび。最後にミニトマトを半分に切って飾る」という簡単なレシピと一枚の写真。

味の想像がつくような、つかないような……。どんな味か確かめたくなったので、雑誌を閉じ、人生で初となるアボカドを急いで買いに行ったから、私にとってその日がアボカド記念日。日付けは覚えてないけど。

一人暮らしをはじめた自分のためによくつくった、思い出の味だ。

水にさらした玉ねぎの上にのせてかつお節をかけ、醤油を少したらしたり、卵黄に大さじ1のお醤油にニンニクをすこーし入れて混ぜたソースを上からかけてみたり、ワカモレにしたり、何周もまわってシンプルにお刺身として、わさび醤油でいただいたり。

好きなレシピもどんどん増え、栄養価も高いことを知り、今ではニ日に一回のペースで食べるようになったアボカドだけど、食べ頃を“見極める“のはなかなか難しい。

今のご時世、しっかり消毒しているとはいえ、むやみやたらに商品に触れることはしたくないので、スーパーに置かれてるアボカドの前に立ったら、怪しくない程度にじーっと目を細める。なるべくハリがあって、ヘタがとれてなくて、青すぎなくて、黒すぎなくて、狙うは絶妙なところ。

見るだけ見て分からなくなり、最後はいつも直感!

そして家でアボカドの皮を剥くとき、

「あっ……固かった……」
「あっ……柔らかすぎた……」

と、一喜一憂している「おうち時間」も悪くない。

だが、なかなかの確率で、外すのだ。もう何回買ったか分からないのに、外しまくる。我ながら、直感の鈍さがダサい。

でも! 人生には失敗もつきもの。

柔らかくて少し黒くなってしまったアボカドを家に連れて帰ってきたときには、皮からくり抜いたアボカド(半分)に対してマヨネーズをたっぷり入れて、塩こしょうしたら、隠し味のわさびを、隠し味と思えないくらい大胆に。フォークでつぶして好みの柔らかさに調整し、カリッと焼いたトーストにのせて食べるとこれはもう、格別。

こんなときは、自分の鈍さに大感謝。

この自己流のつくり方が「世界一美味しいアボカドトースト」と思っていたが、最近行った「写真撮影禁止」のカフェで出てきたアボカドトーストに衝撃を受けた。

まずは、見た目。

薄ーーーーーーーーく切られたアボカドに、上からかけられたオリーブオイルの艶。そこに塩とこしょう。最後にほんのり赤く色づいているのはパプリカパウダーだろうか。

いたってシンプルだが、実に美しい。そして、めちゃくちゃ美味しい。

私があのお店で働いていたらこんなにも美しいアボカドトーストを提供する時はかなりのドヤ顔でお客様に運んでしまいそうだが、そんな顔は一切せず、穏やかな優しい笑顔でこれまた美味しい珈琲と一緒に運んでくれるお店の方もプロフェッショナル。

写真撮影は禁止のお店なので、これまた怪しくない程度に目をじーっと細め、脳内に記録し、雨の日に家で再現。

大好きな音楽をかけてお店で食べた見た目と味をイメージ。

パンはカリッと焼き、なるべく薄ーーーーーーーーく切ったアボカドをのせ、オリーブオイルと気持ち多めの塩こしょう。

そうするとなんということだろうか。

調味料はシンプルなのにめちゃくちゃ美味しくできてしまったのである。

「世界一美味しいアボカドトースト」のレシピ更新。

切り方一つでこんなにも味が変わるのかと学ぶ夏の終わり。

岡田ロビン翔子(おかだ・ろびん・しょうこ)

1993年生まれ。2006年から2018年8月2日の解散まで、チャオ ベッラ チンクエッティ(THEポッシボーから改名)のリーダーとして活動。 頭の回転の良さからくるトーク力には定評があった。解散後はラジオDJを中心に、MC、モデル、自身のアコースティックライブ「ロン喫茶」など、マルチに活動中。 様々なジャンルに興味を持ち、多方面にアンテナを張りめぐらせ、スキルアップのために努力を欠かさない向上心の持ち主。

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