産業カウンセラーの手島将彦による新連載『こころの本〜生きづらさの正体を探る、産業カウンセラー手島将彦のオススメ本』。
『なぜアーティストは生きづらいのか? 個性的すぎる才能の活かし方』(2016年/リットーミュージック)、『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』(2019年/SW)の著者であり、音楽業界を中心にメンタルヘルスの重要性を発信し続けた手島がオススメする本を不定期連載で紹介していきます。
Vol.1 『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』
僕は2019年に『なぜアーティストは壊れやすいのか?〜音楽業界から学ぶカウンセリング入門』という本を書いたのですが、それを読んでいただいた方から「メンタルヘルスや心理学に興味を持ったのだけど、他にどんな本を読んだら良いですか?」という質問をいただくことが何度もありました。
そこで、あまり専門的すぎない、比較的読みやすいものを紹介していきたいと思います。
その1冊目はこれを選んでみました。
全ジャンルを通じて史上最多のゴールド・ディスクを獲得し、ロックの殿堂入りも果たしているロック・バンドKISSの中心人物のひとり、ジーン・シモンズによる、多くの有名アーティストが27歳で亡くなっている、いわゆる「27クラブ」についての考察です。
この表紙の写真とタイトルの「ヤツ」という言葉遣いのいかにもな感じ、YOSHIKIさんの帯の言葉が「僕は才能あるはずなのになぜ生きているのか?」とも読めることも合わさって、KISS的なエンタテインメントよりの内容と思った人もいたようですが、内容は、メンタルヘルスとアーティスト活動について、実に科学的かつ客観的にしっかりと書かれています。
ちなみに実はYOSHIKIさんも、ご自身の運営する米国非営利公益法人501(c)(3)「YOSHIKI FOUNDATION AMERICA」を通じて、うつ病、不安、自殺などのメンタルヘルス問題を抱える音楽クリエイターや業界関係者を支援するため、米グラミー賞を主催するRecording Academy(R)のパートナーである音楽チャリティ団体「MusiCares(R)」へ10万ドルの寄付をされるなど、メンタルヘルスに対する意識がとても高い方です。
取り上げたい部分はたくさんあるのですが、僕が印象に残った点をあえてひとつに絞るなら、ジーン・シモンズが、「自分はこういう人間だが、違う人間もいる。それを尊重し、より良いやり方を考えなければいけない」という姿勢で物事を理解しようと努力しているところです。これはメンタルヘルスや心理学、そして昨今よく言われるダイバーシティ(多様性)を考えるときにとても大切な姿勢です。
登場するアーティストは、ロバート・ジョンソン、ブライアン・ジョーンズ、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ジム・モリソン、バスキア、カート・コベイン、エイミー・ワインハウス、アヴィーチーなど。これらのアーティストに関心ある人にとっては、それぞれ深く掘り下げられた歴史的事実とジーン・シモンズのようなトップ・アーティストによる考察を知ることができるということだけでも興味深い内容になっています。
音楽好きな人、アーティスト、スタッフ、全ての立場の人におすすめです。
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担
https://teshimamasahiko.com