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【連載】本と生活と。vol.29 荒木経惟『センチメンタルな旅・冬の旅』

StoryWriter

こんにちは! 週末に親友宅でハロウィンパーティーをしました、たまざわです。

最近なんだか気持ちも体調も安定していなくて、日々「しんどいなあ」と思って生活していたのですが1ヶ月振りに親友夫婦と後輩に会ったら少し元気になれました。何を言っても大丈夫、迷惑をかけても大丈夫と安心できる場所で大声で笑うこと、本当に大事です。親友は来月出産を控えているので、しばらく会えなくなりそうですが、爆誕した暁には自分の甥っ子のように愛でると決めています(笑)。

さて、生活に寄り添う本を紹介するこの連載。第29回目に紹介するのは、荒木経惟『センチメンタルな旅・冬の旅』。

vol.29 荒木経惟『センチメンタルな旅・冬の旅』

『センチメンタルな旅・冬の旅』
著者:荒木経惟
出版年1991年

内容:
これは愛の讃歌であり、愛の鎮魂歌である。新婚旅行での”愛”を記録、私家版『センタメンタルな旅』から21枚。妻の死の軌跡を凝視する私小説的写真日記『冬の旅』91枚。既成の写真世界を超えて語りかける生と死のドラマ。
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784103800019

 

本書はアラーキーの名で知られている荒木経惟さんの2編の写真集が収録された完全版です。アラーキーと言うと、最近も悪いことで話題になっていたので、不快に思われる方がいるかもしれません。ヌード写真の印象が強いですしね。でも、私は好きなので紹介します。昔なら、すぐ炎上するかも……とか思ってましたが、そんなのどうでもよくなってきました。そう思うこと自体、作品や作家さんに失礼です。

『センチメンタルな旅』は妻・陽子さんとの新婚旅行を写したもの。『冬の旅』はそんな妻・陽子さんが病床に伏して亡くなり、お葬式やその後までを写した写真集です。

以前は写真集をどう見ればいいか分かりませんでした。図録とも違うし、絵画はある意味抽象的ですが、写真は自分の目にも写る世界を切り取ったもので、どう解釈していいか分からなかったんです。でも本書に出会った時、写真は「生と死」という相反するけど、どこか通底しているものも表現できるんだなと驚いたのと同時に映画のようだなと思いました。

特に本書はまさに長編の映画を観ているような感覚になるのが不思議です。何気ない写真にも、その時アラーキーが感じた感情が反映されていて、1つのシーンになっています。

『冬の旅』では妻・陽子さんがアラーキーに宛てた手紙も掲載されているのですが、この2人は本当に心の底から信頼し合って、愛し合っていたんだなと思うと涙が止まらなくなりました。なぜだか分からないけれど、消えてしまいたいなと思うくらい気分が落ちた時はこの『冬の旅』を見返したくなります。死に向かっている現実的でかなしい旅なのに、生や愛の温かさを感じられるからかもしれません。

アラーキー=ヌード写真、女性の敵だと思っている人にこそ読んでほしい一冊です。一緒に暮らしているチロちゃんがとってもかわいいので、猫好きな方にもおすすめです。

※「本と生活と。」は毎週水曜日更新予定です。

たまざわかづき
1993年生まれ。SWスタッフ。もともとクラリネットとドラムをやってました。音楽以外の好きなもの:本、映画、動物、ドラマ、Netflix、Hulu、ぬいぐるみ、文房具など諸々たくさん。モルモットのごまちゃんと生活してます。30歳になるまでに本屋さんの開業を目指しています。

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