watch more

【連載】本と生活と。vol.30『映画が好きな君は素敵だ』

StoryWriter

こんにちは! 正方形のノートを探して三千里、たまざわです。

正方形のノートってありそうで全然ないですよね? ずっと求めていてやっと見つけたのですが、売り切れでめったに買えないし、ガシガシ書き込むにはちょっと高いし悩ましい。あと、360度折り曲げて使いたいのにすぐボロボロになる。私はなんでもメモる派なので、高級ノートだと綺麗に書かなきゃいけないというプレッシャーで結局何も書けないというスパイラルに陥ります。モレスキンとか、ロイヒトトゥルムとか私にとって超高級レストラン的存在です。正方形のノート、絶対需要あると思うんですよね。もっと手に取りやすい価格帯で増えてくださることを祈ります。

さて、生活に寄り添う本を紹介するこの連載。第30回目に紹介するのは、日本ペンクラブ編『映画が好きな君は素敵だ』。

vol.30『映画が好きな君は素敵だ』

『映画が好きな君は素敵だ』
編:日本ペンクラブ

内容:
映画はかぎりない喜びと楽しみを喚起し、想像力を果てしなくかきたてる。思い出の映画、はたまた映画人への想い、映画日記等々、遠藤周作、五木寛之、筒井康隆ほか24人の作家による映画に関する小説、エッセイのアンソロジー。素晴らしい映画の世界への旅に、あなたを誘う楽しい、嬉しい案内書。解説・長谷日出雄

 

本書は遠藤周作、太宰治、赤川次郎、村上春樹、安部公房などなど名だたる文豪たちの映画にまつわるエッセイや短編小説を集めた魅惑的な映画本です。タイトルが『映画が好きな君は素敵だ』という時点で、自己肯定感爆上げしてくださって、なんて素敵な本なんだろうって泣きたくなります。昭和59年に出版された本なのですが、最近だと、あまりこういうタイトルの本は見かけない気がします。

当たり前ですが、当時の娯楽と言うと限られてくるので、文章を書く人は少なからず映画からたくさんインプットしているのだなとあらためて文化の歴史を感じる一冊です。

さすが! と思ったのは戯曲も多く残し、演劇集団も結成していた安部公房がミュージカル映画が好きだった(というか、かなり関心を持って研究対象としていた感じ)ということです。幼少や若い頃の映画の原体験が作家・安部公房の作品や人生に大きく関わっているんだなと思うと、とてもワクワクします。

私が特に印象に残ったのは太宰治の章「弱者の糧」の語り出しです。

映画を好む人には、弱虫が多い。私にしても、心の弱っている時に、ふらと映画館に吸い込まれる。心の猛っている時には、映画なぞ見向きもしない。時間が惜しい。何をしても不安でならぬ時には、映画館へ飛び込むと、少しホッとする。真暗いので、どんなに助かるかわからない。誰も自分に注意しない。映画館の一隅に坐っている数列だけは、全く世間と離れている、あんな、いいところは無い。 ((昭和59年)『映画が好きな君は素敵だ』140ページより引用)

太宰節がめちゃめちゃ出ているなと思ったのと同時に、上記の文章は昭和16年に書かれたものらしいのですが全然古びてないな、むしろ現代の映画館好きは共感しかないんじゃないかなと個人的には思いました。

私は心を休めたい時にはだいたい本を読んだり、音楽を聴いたりするのですが、それもままならないほど不安な時は映画館に飛び込みます。真っ暗で密閉されていて、むしろ苦手とする場所なのに(特に私はパニック障害持ちなので)すごく安心するんですよね。それと同時に映画が終わった後は「やっぱり映画はいいなあ」って気持ちいい余韻に浸りながら、不安だったことも忘れていたりする。言葉では形容しがたいですが、魔法の箱だなって思います。

少し古い本なので、今は手に入りにくいかもしれませんが、映画好きな方は古本屋さんや古書市で見かけた際にはぜひ手にとってみてください!

それでは今週はここまで。来週もよろしくおねがいします。

※「本と生活と。」は毎週水曜日更新予定です。

たまざわかづき
1993年生まれ。SWスタッフ。もともとクラリネットとドラムをやってました。音楽以外の好きなもの:本、映画、動物、ドラマ、Netflix、Hulu、ぬいぐるみ、文房具など諸々たくさん。モルモットのごまちゃんと生活してます。30歳になるまでに本屋さんの開業を目指しています。+

PICK UP