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竹内アンナとAFRO PARKERが語る、「永遠のために今を」歌ったコラボ楽曲

StoryWriter

アメリカLA生まれ日本京都出身のシンガー・ソングライター、竹内アンナ。ポップミュージックを基盤にアコースティック・ギターにスラッピングを取り入れたギタープレイを武器としつつ、そこに囚われずジャンルも時代性も縦横無尽に駆け巡り、新しい価値観を生み出し続けている。

そんな竹内が、『ヒプノシスマイク』への楽曲提供などで活躍する2MC+5人の楽器隊からなるヒップホップバンド、AFRO PARKERとのコラボ楽曲「Now For Ever (with AFRO PARKER)」を2021年11月10日にデジタルリリースした。「底抜けに明るいわけじゃない」と語る両者だが、撮影から取材まで終始和やかで息のピッタリな姿がとにかく印象的だった。竹内のSNSでのオファーからはじまり念願叶って実現した本コラボについて、AFRO PARKERより弥之助とwakathugの2MCを迎えて、よく晴れた休日の昼間に話を訊いた。

取材&文:西澤裕郎
写真:まくらあさみ


「あのAFRO PARKERさんとやるの!?」、私の親も喜んでいます(笑)

──今回のコラボが実現したきっかけから教えてください。

竹内:もともと『ヒプノシスマイク』で1番好きな曲があって。誰が作っているんだろうと思って調べていった結果、AFRO PARKERさんに辿りついたんです。そこから他の曲も聴いていくうちにめっちゃ好きになって。SNSでフォローさせてもらいつつ、DMを送らせていただいたんです。その流れもあって、今回オファーさせていただきました。

弥之助:最初にDMをいただいたときに竹内さんのYouTubeを観たんですけど、ギターも歌もすごいな~と思って。こんな方から連絡が届いてどうしよみたいにあわあわした後で、タイミングがあったらぜひ一緒にやりたいですね、というお話をするようになったんです。

wakathug:DMをいただく1ヶ月くらい前くらいから、ラジオでもアンナちゃんの作品が流れていて結構聴いていたんだよね。

弥之助:ラジオの向こうの人からDMが届く高揚感があったよね(笑)。

──コロナ禍で、制作に集中できたという人と、曲が書けなくなってしまったという人がいらっしゃいますが、竹内さんは当時どのような影響を受けましたか。

竹内:最初の頃はライヴがパタンと全部なくなっちゃったので、精神的にもどうしたらいいんだろう?という状況だったんです。しばらくしたら、周りのミュージシャンの方々が家の中でリモートセッションや配信ライヴを始めたり、動き出して。その姿に私も勇気づけられて、こういう時だからこそできることもあるんだと切り替えることができて。そこから制作だったり、配信、それこそリモートセッションをやって過ごしていました。

──他の記事を読むと、かなり音楽を聴いたり、映画を観たり、漫画を見たり、インプットの期間にもなっていたのかなとも感じました。

竹内:今までだったら時間がないから後で見ようとしていたものが、こうやって時間ができたことで隅々までたっぷり味わえるというかインプットできたのはありました。それこそ、『ヒプノシスマイク』の楽曲とかもめちゃめちゃ聴いていたし、逆にそういうコンテンツにも支えられたことで、なんとかやってこれたのかなと思います。

──特にハマったものとか、刺激を受けた作品はどういったものだったんでしょう?

竹内:『アイドリッシュセブン』と『ヒプノシスマイク』にはめちゃめちゃ元気をもらいました。2つとも楽曲が持つパワーがすごい。どちらも頻繁に配信ライヴもやっていたので、そういうのをよく見て元気をもらっていました。

──今回のコラボは、まさに竹内さんの念願叶っての実現なんですね。

竹内:はい、めっちゃうれしいです。私の親も喜んでいます(笑)。「あのAFRO PARKERさんとやるの!?」って(笑)。

弥之助&wakathug:ありがとうございます(笑)。

──AFRO PARKERは、コロナ期間中、バンドの雰囲気はどのような感じだったんでしょう?

弥之助:もともと就職時にメンバーが地方に散らばっているので、コロナより前から、集まらずに制作を進めるような素地はあって。メンバーも比較的インドアな人間が集まってるから、バンドの雰囲気はそんなに変わらなかったです。ただ今思うと、1ヶ月に数回新幹線に乗って東京に来てスタジオ入ってということが、知らず知らず刺激になって、創作に繋がっていたんだなと感じますね。ずっと部屋の中にいると、マインドもどんどん錆びついちゃうんだなと気がついて。意味もなく散歩に出たり、慌てて違うインプットを無理やり探すみたいなことをしていました。とにかく刺激を探しに行かなきゃなくなっちゃうなという恐怖はありましたね。

──当時、刺激を受けた作品はどういったものだったんでしょう?

弥之助:漫画や小説をいっぱい読むようになりましたし、詩も読むようになりましたね。景色が変わらない日常にいるので、波乱万丈も何も起こらない中で、その時の感情を描いた表現、みたいなものがより染みたのかなと。

──具体的には、どんな作家の本を読まれたんでしょう。

弥之助:ボードレールであったり、昔から好きなんですけど梶井基次郎の小説を読み直したりしていました。モヤモヤした感覚を言語化してくれるスッキリ感を求めていたのかなというのはあります。

wakathug:たしかに、自分も文学や哲学の本を読むようになりました。

──どんなものを読まれていたんでしょう?

wakathug:ドストエフスキーとか、トルストイとか、ちょっと暗い文学が時期的にマッチしたのもあって読んでいました。

弥之助:たしかに暗い時は暗いものの方がスッと入ってくるのはわかる。暗い時に底抜けに明るいものをぶつけられても、ちょっと今そういうのじゃないんで、ってなるというか。

ずっと記憶に残すために今をいっぱい楽しもうという曲でもある

──今回一緒に曲を作るうえで、どんな曲にしたいというイメージがあったんでしょう?

竹内:最初に弥之助さんとミーティングをした時に、大元になるイメージはお話をしていて。こういう状況下だから、行きたい場所に行けない人たちがたくさんいたと思ったんです。私も大学の卒業旅行に行けなかったり。そういう時だからこそ、曲を聴いて、いつかこういう場所に行ってみたいよねって思ってもらいたいし、いろんな場所に行ったことのある方たちには当時のことを思い出してもらえたらなって。どの世代が聴いても、あの時は楽しかったよねとか、楽しいことしたいよねって希望になるようなものになればいいなと思って作り始めました。

弥之助:行けなかったり起こっていた出来事が楽しかったんだなって各々が再確認したと思うんですよね。またやりたいな、という想いの中で生まれた曲ではありつつも、コロナの文脈関係なく別の感情として受け取れるような普遍的なテーマで作りたいというのも同時にありました。

──作詞は3人の連名になっていますが、歌詞はどういうふうに書かれたんですか?

竹内:ベーシックな歌詞を最初に私が作り上げて、ラップパートはお2人に書いていただきました。順番としては、トラックができて、メロディを入れて、その後に歌詞を書いて、最後にラップパートを入れていただいて、後は細かい調整をしたという流れですね。

弥之助:竹内さんから、こういう雰囲気のサウンドと方向性というリファレンスを我々がいただいて、こっちからトラックを具体的に出してキャッチボールをしていきました。

wakathug:リファレンスを聴いた時、僕たちが普段慣れ親しんでいる楽曲とほとんど同じということが分かったんです。だったら僕たちが知っている作り方で一旦トラックを作ってみようと、いつも通りに作っていきました。一旦いつも通りのAFRO PARKERとしてやって出してみようと。

──竹内さんは、AFRO PARKERのみなさんに、どういう部分を期待されてリファレンスを送れられたんでしょう。

竹内:リファレンスの中にはAFRO PARKERさんの楽曲も入れていて。この楽曲が好きで、こういうイメージになったらいいな、というのはお伝えしていたんです。最初のミーティングの段階でも、お互いの曲を作る上での共通点として100%ハッピーじゃない感じということを話していて。底抜けに明るいわけではなく、ちょっと切ない部分もある。私もそういうのが好きだし、そういうサウンドを作りたいと思っていたんです。根本としては楽しいんだけど、でもどこか影があるもの。ただ楽しいだけではないんだ、みたいなものになるといいなと思って、リファレンスをお送りしました。

──「底抜けに明るいわけじゃなくて、影がある」という部分は、AFRO PARKERのお2人も共通点として感じられますか?

弥之助:たぶん、僕らから出ていくものが勝手にそうなっちゃうというか。100%ハッピーな曲を作ろうとしてもそうはならない(笑)。

wakathug:そこまで振り切れはしないよね。生きている中で、上手くいかないことは絶対ある。その影のようなものも、AFRO PARKERはいつも表現していると思うので。

弥之助:なので内容とか情景の共有は一瞬でしたね。あーその感じっすねって。

竹内:最初、ドライブをざっくりとしたイメージとして掲げていたんですよね。ドライブと言ったら、大学生男女4人ぐらいで所謂パリピみたいな感じみたいな。でも、うちらは経験したことがないから知らないしなって。

弥之助:「男女4人でドライブしに行ったことあります?」「いやー、ちょっとないんですけど、楽しそうですよね、ああいうの」って会話をして(笑)。

──あははは。タイトルは早い段階でつけていたんですか?

竹内:タイトルは1番最後に決まりました。

wakathug:MVの撮影が終わった直後だったもんね。

竹内:そう。MVを撮っている時は誰もタイトルを知らなかったんです(笑)。

 

──「Now For Ever」は、歌詞にも出てくる言葉じゃないですか。そこまで時間がかかったのは意外です。

竹内:リフレインで何回も出てくるので、もちろん最初から候補ではあったんですが、自分のこの曲に対するイメージが青春ロードムービーみたいな感じと思っていて。日本語で映画のタイトルみたいなものをつけられたらと思って悩んで悩んだ末、やっぱりこれが分かりやすいなって戻ってきました(笑)。

弥之助:曲名ってそういうことありますよね。曲名にしようと思いながら書いた歌詞じゃなかったとしても、答えがそこに現れているということも結構あるんですよ。

竹内:普通だったら、「Now For Ever」は「For」と「Ever」をくっつけて使うことが多いと思うんですけど、あえて離しているんです。普通の「Forever」の綴りだと「今を永遠に」という意味になっちゃうんですけど、別に今をずっと続けたいわけじゃないというか。どちらかと言うと、忘れたくない、という部分があって。「For」を離してこういう並びにすることによって、「永遠のために今を」という意味になる。ずっと記憶に残すために今をいっぱい楽しもうという曲でもあるんです。歌詞が言いたいことは、そうなんだよなってことで結局戻ってきました。

──悩んだ末に、最後にピッタリはまるタイトルになったというのがいいですね。

竹内:タイトルだけじゃなくて、サビメロも実は5、6パターンぐらい出ていたんです。レコーディングのギリギリまで決まってなくて、前日に「どうしましょう……?」みたいな(笑)。タイトルもそうですけど、いろいろ試行錯誤した甲斐もあってキャッチーなものになったんじゃないかなと思います。

ハミングしたメロディに日本語の音節を当てはめていくと全然違う響きになる

──トラックに関しても、そうした試行錯誤があったんでしょうか?

弥之助:トラックは基本、うちのキーボードのBoy Geniusが作っていて。竹内さんからメロがついて渡されたものをバンド内で聴いて咀嚼してお返しをしたり、おもしろかったのが、英語風のフローで入れていただいていた仮メロに、「日本語の仮の単語で歌ってみたらいかがでしょう?」ってボールを投げ返したんです。

wakathug:ハミングしたメロディに日本語の音節を当てはめていくと全然違う響きになってくるんです。この点は僕たちも普段リリックを書くときに試行錯誤して作っていくのですが、今回のコラボでもそういう試みができておもしろかった。

竹内:日本語で作ろうってなった時に出てきたメロも、全然違うものになっています。言葉だけでこんなに変わるんだというのは作っていておもしろかったですね。

──MVはどんなシチュエーションで撮られたんですか?

弥之助:キャンピングカーで撮りました。

竹内:みんなでわちゃわちゃしましたよね(笑)。普通に楽しんでいる人をカメラでたまたま撮っていましたよ、って感じのMVになっています。

 

──アーティスト写真もすごく味がありますよね。

弥之助:どういう集団なんだよ、っていう(笑)。

竹内:MV撮影の日、初めてwakathugさんにお会いしたんです。Zoomのミーティングとかではお会いしていたんですけど、しばらく経ってから、そう言えば……って(笑)。

wakathug:もう何度も会っている気がしていたよね(笑)。

──みなさんで集まった時って、どんな雰囲気だったんですか?

弥之助:この写真の感じというか(笑)。

竹内:with AFRO PARKERって言っているだけあって、仲間でちょっと遊びに来た感じみたいな雰囲気はあったと思います。

本作のアーティスト写真

──今回のコラボで、男女でドライブというイメージが実現しましたね。

弥之助:このMVのおかげですね。

wakathug:ロケーションが本当によくて、天気もよかったしね。

竹内:前日まで台風だったんですけど、雲ひとつない青空ですごくよかったですね。

弥之助:2021年ベスト週末だったかもしれない。朝から牧場に行って気持ちいい中で楽しくMVを撮って、曲名も決まるし(笑)。

wakathug:そういう意味では、MVはこの曲の内容を体現しているかもね。

──そういう瞬間って終わる時がちょっと切ないんですよね。

竹内:あー明日から月曜日なんだって(笑)。

弥之助:そういう話もしていました(笑)。

引き算の美学の中、最後に大盛り上がりする足算のトラック

──竹内さんは今回のコラボをはじめ、これまでのイメージとは違う新しいアプローチの曲に挑戦されている印象があります。どんなことをやっていきたいか構想はあるんでしょうか。

竹内:リリースする度に、今までやったことないことだったり、ちょっとした遊び心を常に意識しているんですけど、自分の軸であるアコギを合わせたらおもしろいなと考えていて。そこで起こる化学反応みたいなものを、今後も試していけたらいいなと思っています。

──ちなみに、今作でのアコギの役割はどのように考えられたんですか?

竹内:最初はとりあえずアコギは1回置いておいて、最後にイントロと落ちサビのちょっと目立つところに入れていただいたんです。

wakathug:かなりいいアクセントになったよね。

──曲の最後にはサックスなど上物の楽器もたくさん鳴っていますよね。

弥之助:AFRO PARKERは7人いて、音の要素も多いので、グッと引き算した形で進行していって、最後のここぞってところでドンっと圧を出すようなトラック構成かなと思います。

wakathug:最後は竹内さんのフェイクも入るし、僕らの声の合いの手も絡めて「全部乗せ」っていうイメージですね。

竹内:わちゃわちゃパートです(笑)。

──引き算の中で最後の一気に足し算になるのにはエモーショナルさを感じました。

竹内:グッと来ますよね。

──AFRO PARKERは、今後どんなことをやっていきたいか構想はありますか?

wakathug:僕らは今まで、“生音ヒップホップ”という形態でやってきたんですけど、ここ数年は、どの音を生で鳴らして、どの音を打ち込みやサンプルで鳴らすかを試行錯誤しているところがあって。そのバランスをもっと突き詰めていきたいと思っていますね。

弥之助:いま思うと、バンドを組んだ最初期は、ライヴでの再現性がトラックメイクの足かせになっていたというか。逆に生音に全部置き換えて、全然違うニュアンスの別曲としてライヴでは楽しんでもらえばいいじゃんって開き直りができてからは、創作する時の要素の幅が広がっていったというか、何でもありになってきているんです。

wakathug:そこからトラック的なところを突き詰めていくと、いろいろな表現がもっとできるんだと気づいたというのはありますね。

──音源制作とライヴを別物として考えることによって、表現の方法も広がっていったと。

弥之助:そうですね。そこは別物として捉えるようになりました。

──竹内さんは先日弾き語りツアーも開催されましたが、ライヴと音源制作に関してはどういうふうに考えてらっしゃいますか?

竹内:私も全く別物として考えていて。弾き語りをする時は、それ専用のアレンジをわりとガラッと変えて作るんです。それと同時に、今回みたいに全然ギターを弾かない曲という考え方も意外と自分の楽曲の中にはあって。今回は本当に全然弾いてないんですけど、それを弾き語りでやるとどうなるのかなと思うし、今からどうやってやろうかなというのは考えています。

──今後、ライヴで2組でのコラボを観たいですね。

竹内:明日もAFRO PARKERのライヴ(※10月24日に渋谷WWWXで行われたAFRO PARKERのワンマン公演)に出演させていただくんです。

弥之助:出演ありがとうございます。初披露なので今から楽しみです。ところで竹内さんはラップがすごく上手いんですよね。

wakathug:今、僕も同じことを言おうとした。「TOKYO NITE」を聴いた時に、あ、ここからラップ来るんだ、すげーと思って。……ラップやりません(笑)?

弥之助:ラッパーとしてお呼びするのも。おもしろそう(笑)。

竹内:あははは。今までのラップパートは見様見真似で書いてきたものなので、今回こうしてMCのお2人が作ってきてくださったリリックに参加させてもらえて、歌っていてめっちゃ気持ちいいと思って。みんながカラオケで歌ってくれたらいいなって。

弥之助:クローバーとハートとみたいな感じで、カラオケでデュエットしてくらたらね。

竹内:最初、そういうことも考えていましたよね(笑)。ラップ部分も掛け合いが歌いやすいと思うので、ぜひ歌ってみてほしいですね。


■リリース情報

竹内アンナ「Now For Ever (with AFRO PARKER)」
発売日:2021年11月10日
価格:281円 (税込)

作詞:竹内アンナ / 弥之助 / wakathug
作曲:竹内アンナ / Boy Genius

竹内アンナ Official HP https://takeuchianna.com/
AFRO PARKER Official HP https://www.afroparker.com/

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