こんにちは! 週末にぷち新婚旅行で箱根に行ってきました、たまざわです。
箱根は自然に囲まれているし、美術館もたくさんあるし、温泉もあるし、最高ですね。私は聴覚過敏なので車のクラクションやバイクの音、電車の音が苦手だったり、人の多い場所だと耳のピントが合わなくて相手の言っている言葉が聴き取れているけど意味が分かるまで時間がかかることが多々あります。それが日々超ストレスなんですよね。
そんなことが一切ない自然環境に1泊だけですが身を置いて、人が少ない静かな美術館で好きな人の展示を見て、満月が見える露天風呂にもつかり、かなり癒やされました。ロマンスカーに乗ればすぐに行けるから何もかも嫌になったら、1人旅でも行ってみようかなと思います。
さて、生活に寄り添う本を紹介するこの連載。第39回目に紹介するのは、寺山修司『両手いっぱいの言葉』。
vol.39 寺山修司『両手いっぱいの言葉』
『両手いっぱいの言葉』
著:寺山修司
出版:新潮文庫
内容:
「一字」に影があるように、一行にも影がある。」――言葉と発想の錬金術師・寺山修司ならでは、諧謔と毒と合金のような、文字どおり寸鉄の章句たち。愛と暴力、快楽と死、賭博と夢、もちろん男と女。つごう52のキィワードの下、広く著作群のなかから集められ、あの鬼才のエッセンスがそのまま凝縮された413言をこの一冊に。さあ、町へ出ようッ。寺山修司をポケットに入れて……。
本書はあの寺山修司のあらゆる作品から印象に残るようなフレーズをキーワードごとにまとめた、まさに言葉で溢れているような一冊です。
詩集や評論集からの言葉はもちろん、映画や戯曲のセリフも引用されているのがファンにはうれしいところです。キーワード分けはされていますが、物語性は一切ないので、例えば空き時間にパッと何か読みたいときに適当にページを開いたところを読んでもいいし、好きな言葉のページにしるしをつけておいて自分を鼓舞する辞典としてそばに置いておいても頼もしい本です。
なぜこの本を今回選んだかと言うと、映画館で一度観た『花束みたいな恋をした』を配信でもう一度観たからです。主人公の麦くんは就職して忙しくなってカルチャーから離れていってしまった。映画館で観たときはさみしい感情と「わかる」という感情が入り混じって絹ちゃんの方に気持ちがいってしまったのですが、冷静に観返した今なら麦くんの気持ち分かります(映画観てない方、ぜひ観てください!)。そんな時にこの『両手いっぱいの言葉』が思い浮かんだのでした。
慣れない社会に揉まれて時間にも追いかけられたら、そりゃ好きだったカルチャーからも離れてしまうよなと。本書はそんな状態の時にでもちょっとした空き時間で自分を取り戻すフックとなるような言葉が見つかる一冊だと個人的には思います。
過去というのは「死の市」です。しかも完成品です。怒りによっては決して復元され得ないみごとな彫刻のようなものです。ー家出のすすめー((1997年)寺山修司『両手いっぱいの言葉』89ページより引用)
上記は私が1番好きな文章を引用しました。というか、1番好きがたくさんありすぎて、甲乙つけられないですね。特に寺山修司の言葉は何言っているんだこの人! と驚くこともあれば、どうしてこんなに美しい言葉が編めるのだろうと感服する言葉もあったり、良い意味でとても奇天烈で魅力的だなと思います。
私も本が好きですと公の場で度々言っていますが、たまに本が読めなくなる時期があります。そういう時は映画や音楽に頼るのですが、こういった一言集などをパラパラとめくることも多いです。同じような状況に陥って悩んでいる人にぜひおすすめしたい本です。
それでは今週はここまで。来週もよろしくおねがいします。
※「本と生活と。」は毎週水曜日更新予定です。
1993年生まれ。SWスタッフ。もともとクラリネットとドラムをやってました。音楽以外の好きなもの:本、映画、動物、ドラマ、Netflix、Hulu、ぬいぐるみ、文房具など諸々たくさん。モルモットのごまちゃんと生活してます。30歳になるまでに本屋さんの開業を目指しています。