現在では「エモい」という言葉が一般化し、さまざまな文脈で使われることが多いが、音楽的な意味での「エモ」は1990年代にアメリカのインディシーンで興隆したものが源流となっている。American Football、Sunny Day Real Estate、Jimmy Eat Worldなどなど数えきれないほどのバンドが名作を残しているが、日本ではbloodthirsty butchersやeastern youthといった札幌出身のバンドが中心となりエモを体現した。エモはさまざまな音楽へ派生していき、2000年代はポストロックが盛り上がりを見せる。2010年代を通過し、2022年現在、東京では新たなエモを起点としたバンドたちが盛り上がりを見せている。その中心に立ち、これからのシーンを牽引していくであろうバンドが、くだらない1日だ。
2016年にヴォーカル・ギターの高値が福岡で結成し、東京に進出後の現在は、高値を中心に、太陽(Gt)、河合(Ba)、中川航(Drs)で活動をおこなっている。ドラムスの中川が主催するレーベルungulatesから、ANORAK!とのスプリット、シンガポールのCues, インドネシアのHulicaとの3Wayスプリットをリリースするなど、海外のバンドたちとの接点を持ちつつ、DIYで活動をおこなっているのも見逃せない点だ。そんなくだらない1日が、11曲入りのアルバム『rebound』を2022年4月29日に突如リリースした。バンドの名刺的な作品でありつつ、今後のバンドたちにも大きな影響を与えるであろう同作について、4人に話を訊いた。
取材&文:西澤裕郎
どうせ死ぬから全部無駄になっちゃう、バンド名の由来
──くだらない1日を筆頭に、ANORAK!、AGATHAなど、エモ〜ポストロックの流れを汲んだインディシーンが盛り上がっていると関係者たちの間で話題になっていますが、そのあたり当事者として実感はありますか?
中川:たしかに言われはするんですけど、当事者は分からないみたいな(笑)。
高値:やっていること自体変わらないから、実感があまり湧かないですね。
太陽:ただ周りに人が増えてきた感じはして。手伝ってくれる人とかツアーについてきてくれる人とかは増えたかなって感じがしますね。
中川:たしかに、映像や写真撮ってくれる人や、照明、音響とか運転とかね。
太陽:それも、年上じゃなくて、高値さんとか僕と同世代だったり、歳の近い人が多くて。そういう人が増えているのは、盛り上がっていると言ってもいいのではないかなと、ちょっと思いました。
──その中心に中川くんが主催しているレーベルungulatesの存在があると思うんですけど、レーベルを立ち上げたきっかけは何だったんでしょう。
中川:これは僕だけかもしれないんですけど、自分で何かを立ち上げる理由として、誰もやってくれないからやるみたいなところがあって。イベントやツアーを組んでくれる人がいないなら俺が組もうかって発想で。音源に関しても、CDを出してくれるレーベルがないから、自分で出そうというところから始まっているんです。
──ungulatesは、どのようにレーベル事業を運営してきたんでしょう。
中川:僕が高2のときに始めたクレイマン・クレイマンというバンドで20歳頃にアルバムを出したとき、とにかくタワーレコードに置いてみたいと思って調べたら、名前と型番があればバーコードをとれて置けることを知って。そのバンドのボーカルとungulatesって名前にしようと決めたんです。その後、僕はsans visageって激情ハードコアバンドを始めたんですけど、そのバンドで繋がった海外のバンドから「日本ツアーをやりたいんだけどブッキングをお願いできないか」と言われ、ungulates名義でブッキングツアーを組んだりライヴをやるようになりました。2020年もツアーを何本か組んでいたんですけど、コロナで飛んじゃったとき、ちょうどアメリカの友だちが日本に来ていて帰れなくなってしまって。そのぐらいのときには高値くんと知り合っていたので、アメリカ人のボーカルとギター、僕がドラム、高値くんベースでas a sketch padって名前で4曲入り音源を作ったんですよ。デジタルだけじゃなくフィジカル作りたいなと思ってカセット作ってみようと思ったときに、レーベルとしてungulatesから出しますって形にして。その次がくだらない1日だよね?
高値:そうですね。それがANORAK!とのスプリット。
中川:両バンドからスプリットをやるつもりだと話をもらって、それをungulatesからリリースできないかという話になって。コロナ禍で海外バンドのツアーブッキングもできないから、レーベルとして動かせたらなと思っていたのでいいきっかけになりました。もともとやりたかったことではあるので、すごく楽しくやれています。
──精神性として、レーベルを作ったり、海外からバンドを招聘したりするのも、くだらない1日として重要視しているところなのかなと思ったんですけど。
高値:自分でやるのは大事にしていますね。
中川:海外の友だちがそういう動きをしているのを見て俺もやりたいなと思ってはじめたところもあって。東南アジアツアーに行ったとき、カセットを自分たちでダビングしているのを見て、これでいいんだ! と思って。ダビングでテープ作って売り始めてみたり、意外とやれるじゃんってことが増えていきました。
高値:もともと、航さんにドラムをサポートしてもらうことになったとき、アジアツアーに行こうって話が出ていて。アジア圏には物価が低い地域もあって、日本で業者にTシャツを依頼して物販を作って持っていくと、現地の感覚よりもすごく高く売らなきゃ元が取れなくなってしまうことに気づいて。それで困っていたら、海外の人たちはシルクスクリーンで自分たちで物販を作っていることを知って。日本でも作れるはずだと思って、僕もシルクスクリーンをそこで始めるようになったんです。
中川:それがシルクスクリーン部になったんだ!
──シルクスクリーン部?
高値:友だちのバンドとかから受注を受けて、刷って、納品したりとかしていて。ちょっと仕事になっていてみたいな感じなんです。
──ちなみに、くだらない1日というバンド名のルーツはなんですか?
高値:あやふやなんですけど、人って死ぬじゃないですか? どうせ死ぬから全部無駄になっちゃう。そんな発想から全部くだらないなみたいな感じでつけたんです。
──無常観みたいなものが通底している?
高値:バンドってすごく無駄じゃないですか? わざわざ4人で集まってライヴしたり、4人のスケジュールを合わせたり。一方で、そういうのが楽しいのでそういうバンド名になっています。
──それを高校生ぐらいでつけたんですよね。達観した高校生ですよね(笑)。
高値:すごい面倒くさいやつなだけなんです(笑)。
メンバー4人の音楽ルーツ
──4人の音楽ルーツを聴いていきたいんですけど、高値くんはどんな音楽を聴いて、どんなものに影響を受けてきたんでしょう?
高値:ミッドウエストエモとかハードコアなど、90年代の音楽を中心にめちゃめちゃ影響を受けていると思います。
──きっかけはなんだったんですか?
高値:僕はすごく目が悪くて。中3の頃に買いに行ったメガネ屋さんのお兄さんに「君は何を聴くの?」って訊かれて、その頃聴いていたNUMBER GIRLを伝えたら、「これも聴くといいよ」ってAmerican Footballを教えてくれて。そのときはよく分からなかったんですけど、その年の修学旅行で一緒に回る友達がいなくて。悲しいなと思いながら帰りのバスに乗っているときに聴いたら、何を言っているかは分からないけど、すごく美しいなって。なんか悲しい経験をしてから聴くと、より美しく感じる気がしています。そこからエモっていうジャンルをめちゃめちゃ掘り始めました。
──そこからUSのエモを掘っていった?
高値:American Footballのキンセラ兄弟から掘って、Mineralとか、今はなきNAVERまとめとかでめっちゃバンドをたくさん掘りました。
──エモからポストロックとか音響派とか派生していくと思うんですけど、エモのどういう部分が1番染みたんでしょう?
高値:僕はリフがすごく好きで。一度聴いたら忘れられないギターのフレーズとかが、このジャンルには多いと思っていて。むしろ、そこを聴くためだけに聴いていた時期もあったりしたんです。自分がそういうリフを作って感動したいから、もっと掘って、いろいろなものを吸収して自分でいっぱい書いてみたいな。
──続いて、ベースの河合さんはどういう音楽を好んで聴いてきましたか?
河合:僕は高値くんと年齢が結構離れていて。出身が北海道の稚内なんですけど、CDショップもないようなところだったのでゲームミュージックとかを聴いていた気がします。そもそも音楽あまり好きじゃなかったんですけど、無理やりエレクトーンを習わされていて。高校に入ったら札幌に出てきて寮に入ったんですけど、そこの友だちに音楽をいろいろ教えてもらいました。札幌のバンドだったらCOWPERSとかbloodthirsty butchers、eastern youthとか。ルーツって言われたら、そのへんだと思います。
──ギターとかベースとかはいつ始めたんですか?
河合:高校のときに友だちの部屋にギターがあって。俺も欲しいなと思ったのでジャンプの裏にあるギター初心者セットを注文してコピーバンドをしていました。大学でサークルに入ってバンドを組もうってなったとき、ベースがいなくて、ギターを弾けるならベース弾けるっしょ?ってベースを弾くようになりました。だからベースも別に好きじゃない。音楽は好きなんですけど。
──東京に来てから音楽の趣味とかは変わりましたか?
河合:大学の友だちがやっていたバンドのライヴを観に行ったら、killieやBALLOONSとか、めちゃめちゃかっこいいバンドが対バンしてて。20歳以降はakutagawaだったり、malegoatだったり、そのへんのシーンをずっと観てましたね。自分でもバンドをやりたいなってなってからは、曲を作りたい、アレンジもしたいってなっていたんですけど、インプットが偏っていて好きなものしか聴いてないなと思ったので、ジャズやエレクトロニカやR&Bとか、あとはフュージョンとか、色んなジャンルの音楽をたくさん聴くようになっていきました。
──ギターの太陽くんはどんな音楽を聴いてきたんでしょうか。
太陽:高校生のとき、地元の伊那GRAMHOUSEってライヴハウスでバイトをしていて。5歳上ぐらいの先輩に「エモって知ってる?」って言われて、American FootballとMineralとPenfoldを教えてもらったんです。高値さんの話とちょっと被るんですけど、最初はよく分からなかったんですけど、ライヴハウスから僕の実家までチャリで30分くらいを毎週往復していたときに、アメフトとかを聴きながら帰ると、よく分からないけど、めっちゃいい音楽だなって瞬間が訪れて。
──ふと分かる瞬間があったんですね。
太陽:そうなんですよ。怒られた日とか(笑)。当初はPAになりたくて東京の音響専門学校に行ったんですけど、コロナで全く現場の授業とかがなく、家にいる時間がめっちゃあって。そのときに延々と有志が作ってるエモのミックステープみたいなYouTubeを漁りまくって。いろいろなバンドを知っていくにつれて、バンドをやりたくなって始めました。
──中川くんはいろいろバンドもやられていますけど、ルーツは?
中川:親がQUEENがすごく好きで家で流れていました。中学生の頃にケーブルテレビが見れるようになって、そこでSPACE SHOWER TVやMTVを見るようになってバンド音楽に興味を持ちはじめて、自分で初めて買ったCDはスペシャで出会ったBase Ball Bearのインディーズ盤でした。そこから彼らの音楽はSUPERCAR、NUMBER GIRLに影響を受けてると知って聴いてみたりしていて。あと、近所にタワーレコードができたので毎週行って試聴機にあるCDを全部聴いたりしていて、その中で洋楽コーナーにある音楽がめっちゃかっこいい!ってなって。最初はSlipknotとかBullet For My Valentineとかを聴いていたんですけど、そこからメタルコア〜エモ・スクリーモにのめりこんでいって、レンタルショップやブックオフ、ディスクユニオンに通う生活がスタートしました。高校生になりコンビニでバイトを始めたら音楽好きの先輩が突然CDを10枚ぐらい貸してくれて。それがtoeとLITEとENEMIESとExplosions in the skyみたいな感じでポストロック中心で。その中でもtoeを聴いて、日本にこんなにかっこいい音楽をやっているバンドがいるんだと衝撃を受けて、ポストロックやマスロックを聴くようになりました。
toeのライヴに行ってみたらenvyと一緒にやっていてかなり衝撃を受けました。自分がもともと選んで聴いていたパンク・ハードコアと、その頃好きになったポストロックが繋がった気がして。そこからハードコアなんだけど、美しくて泣けるみたいな音楽を知りたいとなり、激情ハードコアやポストハードコアをさらに掘るようになりました。僕が20歳くらいの時にはPenfoldやMineralの再結成してその来日ツアーを見に行ったり、Count Your Lucky StarsやTopshelf Recordsといったレーベルを中心にエモリバイバルムーブメントが盛り上がっていて、Midwest Emo〜Skramz周辺の音楽にさらにのめり込んでいきました。
──ドラムはいつから?
中川:小2ぐらいのときからピアノを習わされていたんですけど、あまり練習しなかったのでピアノの先生が「他の楽器もやってみたら?」ってドラムスクールを紹介してくれて。行ってみたら超音がでかいしかっこよくて。それで習い始めたのが10歳のときで、中学校に入ったら吹奏楽部でパーカッションをやっていました。その頃にバンド音楽に興味を持ち始めていて、高校1年生の時に中学の同級生とバンドを始めました。
アルバムを出して、へこんだ状態から跳ね上がるというか、幸せになりたい
──この4人体制では初アルバムとなる『rebound』が完成しました。このタイミングでのリリースに理由はあったんですか?
高値:実は、このアルバムのレコーディングに1年半くらいかかっていて。というのも、録り始めの頃にレコーディングした曲が3曲あったんですけど、そのあと、スプリットリリースとかがあって、出せていない音源があったんです。アルバムを作ってすっきりしたいと思い、メンバーたちと話し合って、今の自分たちのスタンスとか、自分たちの今の音はこういう感じだぞっていう基準を作ろうということになり、今回の『rebound』を作っていったんです。
河合:これを聴けばくだらない1日がなんとなく分かるよって音源がカセットテープしかなかったのもあって、ライヴでやっている音をアルバムに落としたかったんです。前に出したアルバム『くだらない1日』は、コロナになった瞬間、何かやれることがないかなという瞬発力で出した作品で。その時にアクションを起こすことに価値があると思って作っていたんで、今回のアルバムは普通にライヴの音を録りたい部分も強かったと思います。
──曲によって録り時期がだいぶバラバラなんですね。11曲の中で1番新しい曲はどれになるんですか?
河合:「やすらか」ですね。ラッパーの方に入ってもらったやつ。
高値:もともと僕がヒップホップを好きで。ヒップホップって、いろいろな客演があって、アルバムが成り立っている。周りのエモのバンドで客演が入っている作品ってないなと思って、結構前からやってみたかったんです。最近、iida Reoさんという方と航さん経由で知り合って。すごい音源がよかったんですよね。歌ってほしいなと思って、お願いしました。
──逆に、1番最初に録ったのは?
高値:「状態C」と「こわれはじめてゆく今」ですね。
河合:1番最後の2曲が、1番最初に録った曲です。
──アルバムの最初のほうの曲がエモっぽい感じで、後半はちょっとオルタナっぽかったり、サウンドスケープでエモーショナルさを生んでいる感じがありますよね。
河合:最後の2曲は、僕と航くんが参加した最初の音源で、いろいろなところで試行錯誤しています。その2曲だけスタジオも違うんです。バンドとしてどういう音にしようかと始めたのがその2曲で。その次にできたのが「力水」ですね。それ以降の曲は、この4人になってから録りました。
──「力水」が好きって人が僕の周りで多いんですけど、手応えのあった楽曲なんじゃないですか?
中川:僕と河合さんが参加して最初に発表した音源が「力水」で。ANORAK!とのスプリットとしてリリースしたんですが、エモはエモでも、和と洋みたいな感じで。結構いい組み合わせでみんな聴いてくれていたのかなって。僕としても、ここから参加してますって感じで自信を持って言えるみたいな曲かもしれません。
──「力水」は英語表記でMineral Powerと書かれていましたが、バンドのMineralをオマージュしている?
河合:まあ、そういうことで……。
高値:そういうことにしておきます(笑)。
──「アメフト部」は?
高値:本当にただAmerican Footballが好きだから「アメフト部」ってタイトルで曲を作って。
──最後にクラブがつく曲が3曲あるのには、なにか理由があるんですか?
高値:クラブって最後につくと雰囲気が柔らかくなるかなって。「帰宅部」も、最初は「登山部」で。あと「激情部」。それはタイトルありきですね。naiadという京都で95〜98年くらいに活動してたバンドの『HARDCORE EMOTION』という素晴らしいアルバムに本当に感動して。英題を「Hardcore Emotion Club」ってことで、僕の中のnaiadを昇華した曲です。
──ちょっと歌モノっぽい感じだし、コーラスも入っていますよね。
高値:自分の中で聞こえていたnaiadのコード感だったり、構成の美しく壮大な展開など、自分の解釈も込めた日本詞激情を部活動として表してみた曲になっています。
──「すてないで」は、ライヴで観たときの印象が1番強いんですけど、いつぐらいに作った曲なんですか?
高値:去年の夏頃にオーディションに落ちてイライラして作った曲です(笑)。
中川:もっと前じゃない?
河合:5月とかかな。
太陽:原型はあったけど、めちゃくちゃアレンジを変えましたよね。
中川:リフは去年の頭に作っていて、形になってライヴでやり始めたのが夏ぐらいですかね。太陽くんと一緒にってことだよね。
太陽:そうですね。10月にレコーディングするってなって、そこに向けてアレンジしていた気がします。
中川:なので、この4人でアレンジしたのが「すてないで」以降というか。
──アルバム冒頭の「やるせない」はオープニング感のある疾走感溢れる曲で、間髪入れずに「レッドアイズオルタナティブブラックドラゴン」「原宿五階秘密基地」を繋げていく流れが気持ちいいです。曲順はどう考えていったんですか?
高値:曲順は、ライヴのセトリのように考えた気がします。リード曲が「レッドアイズ」とか「やるせない」だったので、そっちをどうしても聴いてほしいので前にしました。
──あと、単純にこれは河合さんに訊きたいんですけど、ベースラインがしっかり聴こえる感じのミックスではないじゃないですか。どういう意図がある?
河合:スタジオの特性というのはあります。あと僕が1番好きなのはハードコアとかそういうジャンルなんですけど、ベースの要望とか音作りはこだわっていて、僕が1番かっこいいなという音にしてるだけです。なので当たり前のことをしているつもりだったんですが、逆にどう思いましたか?
──不思議なベースの鳴りだなって。輪郭が掴めないというか。
河合:自分ではちゃんと輪郭だしてるつもりなんですけどね。実際のベース音って、耳よりも体で感じられるものだと思ってます。でもライヴの音を音源でも表現したいとかでは全然なくて、音源は音源としての表現を考えているつもりです。どちらかと言うと綺麗に音が分離してる作品の方が好んで聞きますけど、ライヴがめちゃめちゃ激しいのに音源だけそうなってるのは凄く嫌い。俺が輪郭ないんじゃなくて俺以外のベースが輪郭出しすぎ。
太陽:ライヴだったらベースってほぼ実音というか聴こえないですもんね。
河合:なんでみんなそんな丁寧に分離して、ベースはここの帯域だって言うのかなって思っちゃいます。
──話していて思うのは、メンバー内でコミュニケーションをしながら試行錯誤しながらできたアルバムということで。その風通しのよさはすごく感じました。
中川:4人ともこだわりが強いから、歩み寄りというより、俺の教科書ではそれはありえない!みたいなことは結構多いかもしれない、俺も、河合さんも。
河合:このレコーディングをするまでの間、なんでそこお前だけシンコペーションしているんだよって単語を50回くらい言ったよね(笑)。
高値:もうちょっとやさしくしていただきたい(笑)。
中川:ただ、こだわった分、最終的にめっちゃいいアルバムになったと思います。
──アルバムタイトルを『rebound』にした理由は?
高値:バンドを2016~2017年から始めて。音楽って楽しいんですけど苦しいことがとてつもなく多くて。特にコロナが始まってからの3年間、4人になってから、すっごい悲しいことが多くて。ありえないぐらいへこんでいるというか、これ以上人生的には下がらないくらいへこみきっている心身の状態だったんです。このアルバムを出して、へこんだ状態から跳ね上がるというか、幸せになりたいと思って、『rebound』というタイトルにしました。
──この作品がきっかけになって、バンドとして上がっていこうと。
高値:今の自分の状況を変えたいとか、明るくなりたいみたいないろいろな願いを込めて、こういうタイトルにしていますね。
──バンドとしての夢というか、どんな活動をしていきたいなと思いますか。
高値:僕は、まずコロナでアジアツアーがなくなっちゃったので、リベンジという意味でも海外にライヴをしにいきたいです。あと、日本で数年間行けてない土地も結構あるので、そういうところを回ったりしていけるようになりたい。あと、海外とかで日本も含めてなんですけど、もっと大きい規模で自分たちが集客ができるようなバンドにしていきたいと思っています。
──僕は、と言っていたのは、そこでもメンバー間で議論があるんですか?
河合:たぶん、やりたいことは各々違うんでしょうけど、メンバーありきでバンドだと思っているので。バンドとしての方針があって、その中でどれだけメンバーのやりたいことができるかって話になってくると思っていて。高値くんがこういうのをやりたいとはっきりと思っているんだったら、俺らでよしやろうぜってなるしなっていう話だと思います。
中川:やっぱり影響を受けたのは邦楽もあるんですけど、欧米の音楽から受けた影響が大きいので、そういうところでも対等に聴いてもらえるようになっていきたいですね。
■アルバム情報
くだらない1日『rebound』
収録曲:
1. やるせない
2. レッドアイズオルタナティブブラックドラゴン
3. 原宿五階秘密基地
4. 力水
5. アメフト部
6. すてないで
7. やすらか (feat. iida Reo)
8. 帰宅部
9. 激情部
10. 状態C
11. こわれはじめてゆく今
2022年4月29日 デジタルリリース
2022年5月4日 CDリリース
■ライヴ情報
2022年4月29日(金)@TOKYO・CONNECT KABUKICHO FESTIVAL
2022年5月3 日(火)@YOKOHAMA・B.B.STREET
2022年5月5日(木)@NAGOYA・STUDIO 246
2022年5月6日(金)@KYOTO・GATTACA
2022年5月7日(土)@OSAKA・KEEP AND WALK FESTIVAL
2022年5月10日(火)@SAITAMA・HEARTS
2022年5月11日(水)@TOKYO・MARBLE
2022年5月15日(日)@GUNMA・SUNBURST
2022年6月5日(日)@TOKYO・THREE
2022年6月6日(月)@TOKYO・ERA
2022年6月24日(日)@OSAKA・PARA-DICE
2022年6月25日(月)@OSAKA・COME TOGETHER MARATHON FESTIVAL
2022年7月8日(金)@TOKYO・SHELTER
■バンドプロフィール
くだらない1日は、高値(Vo/Gt), 太陽(Gt), 河合(Ba), 中川航(Drs)による東京拠点のインディーロックバンド。
2016年に福岡で結成され、3枚のEPと1枚のアルバムを自主制作でリリース。その後、東京のレーベルUngulatesとサイン。東京のANORAK!とのスプリットEP、シンガポールのCues, インドネシアのHulicaとの3Wayスプリットをリリース。欧米のミッドウェストエモ〜激情ハードコアにインスパイアされた楽曲に、ポエトリーリーディングを取り入れた歌唱スタイルの融合を実現し、Tiny Moving PartsやHotel Booksといったバンドを彷彿とさせるサウンドはeastern youthやLOSTAGEといった国内エモ/オルタナシーンのファンからの評価も高い。2020年コロナ禍以降も果敢にツアーを開催し、楽曲とライヴの強度を高め続け、2022年度は各種ライヴサーキットへの参加、4月16日の渋谷spotify O-crestにて開催されるHalf-Life pre. 「LEGARE※レガーレ」への参加を皮切りに、アルバム発売に伴う全国ツアーを開催予定。今回はバンド史上最も脂の乗ったタイミングで制作された待望のニューアルバム”rebound”のリリースとなる。