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ヤマトパンクスとやまさきりくが語る、バンドを続けることの奇跡とは? 一度鳴らした音を何度でも鳴らし返すトートロジー

StoryWriter

ヤマトパンクスからの連絡は唐突にやってくる。4月上旬、この日も「やってます?」とだけLINEが届き、電話で話すと下北沢にいると言う。とりあえず行くと伝えて、地下にあるライヴハウスに足を運ぶと、自分のイベントでもないのに酒を煽り、場の中心で小難しいことからアホなことまでしゃべり倒していた。そして次々と知り合いを紹介してくれた。バンドマンに限らず、漫画家、アニメーターなどなど様々な若い表現者たちと出会い、そのまま別の店に移動して飲むことになった。そこで知り合ったのが、本対談に登場しているやまさきりく氏だ。元tetoのギタリストで、現在は新たにバンドOrder From Minor.を結成、2022年5月24日に初めての音源『飽和/ムウ』をデジタルリリースしたミュージシャンである。そんな彼から「ヤマトと対談をしたいです」と相談を受けた。初対面だったこともあり、自分は少し言葉を濁した。

深夜になり、みな酔い始めたころ、ヤマトと彼の旧友が口論になった。そこでヤマトが口にしていたのは、バンドマンはじめ作品を作って表現している人間たちが、どれだけ覚悟を持ってやっているか、ということだった。裏方である旧友の彼の発言に対し、お前も覚悟を持ってやっているのか、表に出る人間のことを深く考えたことがあるのか、とヤマトは投げかけた。その様子をちょっと離れた場所から見て涙を流していたのが、やまさきだった。正直、やまさき氏がどのような人物か知らなかったが、その姿を見て、先ほどの提案を受けたいと思った。翌日に早速対談をセッティングし、深夜3時頃一足先に帰って寝た。目が覚めて対談場所に訪れると、ヤマトはすでに友人たちと飲んでいた。そして、バンドのマネージャー、編曲家、医者などなど、職業も年齢も違う人たちの中で、この対談を行った。言葉だけじゃなく、その行動も含め、おもしろいミュージシャンだなと思う。そんな中で行われた2人の対談を、その酒席の外へもお届けする。

取材&文:西澤裕郎
写真:大橋祐希


この対談、お蔵入りでもいいです

──昨日ヤマトくんの紹介で知り合ったやまさきさんから相談を受け、いま居酒屋で取材をしているわけですが(笑)、どうして対談をしたいと思われたんでしょう?

やまさき:こいつ(ヤマト)のことが大好きで、しゃべっているところを誰かに見てほしくて(笑)。

ヤマト:なんとなく感じてました。俺のこと好きなんやろなって……(笑)。

やまさき:真面目な話や深い話がしたいわけじゃなくて、俺がヤマトのよさをプレゼンしに来ました。なんか、こいつ嫌われてるから(笑)。

ヤマト:嫌われてないわ! いや、嫌われてるか……。

やまさき:よく「付き合う人考えたら?」って言われたりするんですけど、俺はこいつのこと大好きなんです(笑)。なんならこの対談、お蔵入りでもいいです。俺が好きだって言いたいだけなんで。

やまさきりく

──いまだかつてない対談なので、最後までやりましょう(笑)。

ヤマト:自分で聞くのもアレですけど、どういうところが好きなんですか?

やまさき:改めて言うのはめっちゃ恥ずいけど、一番は人を肩書きで見ないところかな。俺、付き合う人を考えた方がいいよって言われるのが嫌いで。サラリーマンでもおもしろい人はいるし、自分の中でも付き合いをする、しないみたいな基準は最初から持ってるつもりなので、なんでそんなことを他人に言われなあかんねや!って。

──たしかに今この瞬間も、ヤマトくんの旧友だったり、いろいろな人が同席してる中、対談が行われていますからね(笑)。

ヤマト:ニートに作曲家にスタッフに……そっちには、明日オペの医者までいますから(笑)。

やまさき:言わんとすることは分かりますけどね、結局やっていることって、その人の内側から出てくるものだから。でも別に音楽的な部分だけがその人の全てではないし、何なら俺、ライヴを一回見たことがあるだけでPK shampooの音楽もあまり知らないんですよ。打算的に人との付き合いを考えたほうがいいよってことを、未だに言われることがあるので。しゃらくせえなと思ってヤマトとしゃべりに来ました。

ヤマトパンクス

──ヤマトくんからすると、やまさきさんは先輩に当たるんですよね?

ヤマト:バンドの先輩ですね。今、新しくバンドを始められたから、そういう意味では後輩なんですけど(笑)。後輩のくせに挨拶ないなーとは思ってます(笑)。いや、冗談で、大好きな先輩です。

やまさき:わーい! 相思相愛やんけ!

──やまさきさんは新たにバンドを始めて、リリースも予定されているんですよね?

やまさき:はい。フィジカルで作ると単純にコストがかかっちゃうので、配信だけでリリースしようと思っていて。

──ちなみに、どんなバンドになるんでしょう?

やまさき:間口の広い物にしたいなとは思ってます。前のバンドは辞めちゃいましたけど、音楽自体は辞めるつもりは元々なくて。人生の中で1年間くらい活動しない時期があってもいいと俺は思っていたので、本当に自分のペースでのんびりやろうと思っています。もちろん、活動する以上は沢山の人に聴いてもらえたらいいなっていう気持ちはありますけど、大きいフェスのステージでやっていることが格好よくて、地下のライヴハウスでまばらなお客さんの前でやるのがダサいとかはないので。俺の価値観でしかないんですけど、そのあたりは本当にどうでもいいなと思っています。

どれだけレディオヘッドを聴いていようが、酔ってて声でかいやつの前では無力

──それこそPK shampooは、いま注目を浴びて大きなイベントやフェスからも声がかかっていると思うんですけど、やまさきさん的に、彼らの現状をどう感じてらっしゃいますか?

やまさき:俺はPK shampooのメンバーが好きなので、みんながお金持ちになればいいなと思ってますね。

ヤマト:頑張って売れまーす(笑)。

──ヤマトくん的にはメインストリームにいきたい気持ちはある?

ヤマト:以前インタビューして頂いたときにもチラっと言ったんですけど、売れたいと生活したいは別の次元というか。ご飯を食べたいとか、困らないくらいの生活はしたいけど、有名になりたい、みたいな意味で売れたいとはあまり思ったことないです。それこそ、やまさきさんとか、友達、先輩たちと、毎日仲良く遊べたらいいなと思っていて。まぁ、ある程度は有名になっていかないと実現できないこともあるし、続けるためにも、最低限メインストリームにおもねっていく覚悟はありますね。

 

やまさき:こういうことを言うと、インディーでやっているのが格好いいと思ってるの? みたいに言われがちなんですけど、メインストリームにも当然リスペクトがあるし、好きな音楽は沢山あるので、いい物はいいし。ライヴなら、目の前のステージで起こっていることや鳴ってる音が全てで、人気や数字はどうでもいい。例えばそこが東京ドームなのか、下北の小箱なのか、もっと言えば文化祭バンドがやってるような体育館だろうが、俺がカッケー!って思えればどうでもいいってことなんですよね。

ヤマト:俺も、その人がやってるバンドとか、描いている漫画とか作品がいいから友達になりたいと思ったことは、ほぼほぼなくて。まず人なんです。昔、大阪の十三ファンダンゴってライヴハウスの店長である加藤さんに「音楽って、結局人間やからな!」って言われたことがあって、当時は青臭かったので、「音楽がよければ人間なんかどうでもええやろ!」と思っていたんですけど、バンドをやっていくにつれて確かに人間が9割だと思うようになってきました。もちろん、一口に“人間”と言っても、別に常識的な、イイ奴であれ、って意味ではなくて……(笑)。とにかく、そいつのバンドの演奏がダサかったとしても、俳優で演技が下手だとしても、サラリーマンで営業成績が悪かったとしても、おもしろいやつだったらそれでいいし、おもしろくなかったら「帰れ!」って言う(笑)。おもしろいって言ってもそれは必ずしもユーモアセンスって意味じゃないですけど。どんな人であれそれは一緒かなって。

──ヤマトくんはもともとiPodに入っていた音楽を何度も聴いたり、『エヴァンゲリオン』のVHSを擦り切れるほど観たり、作品ベースで考えている人かなと思っていたんですけど、どこで考え方が反転したんでしょう?

ヤマト:あるとき、相手の肩書なんてお酒を飲んだらどうでもよくなるってことに気づいたんです(笑)。うじうじ理屈をこねたり、誰がレディオヘッドに1番詳しいかみたいなマウントを居酒屋で取っていてもクソダサいなと思って。どれだけレディオヘッドを聴いていようが、酔ってて声でかいやつの前では無力ということに気がついたんです。まぁ僕は大声な上にかなり理屈もこねるハイブリッド型なのですが……(笑)。

やまさき:こういうことを言う人は基本的に苦手なんですけど、なぜかヤマトが言うと下品にならないところが好きなんですよ(笑)。そんなん言ったらみんなそうですけど、SNS上でしかこいつを知らない人とヤマトの人となりを知ってる人では、言葉の印象が全然違うんだろうなぁと思いますね。

ヤマト:相手がどれだけ理屈をこねてこようが、「なんなんじゃー!!!」って言ったら終わるというか(笑)。

──そんな考えのバンドマン、初めて会いました(笑)。やまさきさんは今の考え方に理解できる?

やまさき:うーん。バンドマンってパートで固まったりするんですけど、それめっちゃ嫌だったんですよ。

ヤマト:どんなエフェクター使ってるのみたいなことを話す会?

やまさき:いや、機材の話とかはもちろんすればいいですけど、最初からギターだからギターの人と話すとか、ヴォーカルだからヴォーカルとしかしゃべらないみたいな人が多くて。人をなんだと思っているんだと思って。昔、ラジオ局の人にインタビューをしてもらったとき、ヴォーカルの人以外と話すことないって言われたことがあるんですよ。4人組のバンドだったら、4人の人間が集まって、紛れもなく人生を懸けてそれぞれの背景を持ってやっているのに、曲を書いてない人に訊くことないんだよねって言われて。じゃあ、俺がアレンジに悩んでいる時間や、作ったギターって何なんだろう? って。百歩譲ってリスナーにそう思われるのはいいんですよ。知らなくていい部分なので。でもコンポーザーや内側の人で、そう思っている人って結構多くて。でも、ヤマトからはそういうのを感じない。どんな立場の人間だろうが、まず「お前はなんやねん!」って対話をしようとする。それは、たまたま立場や年齢が上の人だったら「雑に絡んで失礼な奴」に見えるけど、俺の見る限り、ヤマトは上も下も立場も選んでないんですよ。先輩にも後輩にも社長にも学者にも等しく失礼(笑)。立場で最初から話す気ありませんよ。みたいな人もたくさんいる中で、こいつは優しいなぁと思うので好きなんですね。

みんなが隣同士にいる“大阪感”みたいなのが、好きなんです

──ヤマトくんがサークルノリを続けたいと言っているのは、今の話にもつながっている?

ヤマト:サークルって、いろいろな人が集まる場所じゃないですか。中学高校からギターをやっていたやつもいれば、大学に入ってから初めて楽器を買いましたってやつもいて。でも、みんな仲間みたいな感じで話せる。もちろん好きな音楽も、やっていることも、学部も違えば歳も違うけど、一緒に酒飲んでれば、大体なんとかなる。もちろん、飲めない人に配慮はしますけど。そもそもやまさきさん、お酒飲まない人だし(笑)。とにかく、そのごちゃまぜ感が好きで。それは出身地である大阪という街の風土がそうさせたなのかもしれなくて。例えば心斎橋のアメリカ村に行くと、外国人が拙い日本語で話しかけてきて、こっちも拙い英語でしゃべり返しながら朝まで飲んだりするし、ミュージシャンという括りで見ても、バンドマンだけじゃなくて普通にラッパーもシンガーもアイドルも、オールジャンルいるんです。東京……たとえば下北とかじゃ、ちょっと考えられない雰囲気なんですよ。そこからちょっと歩けば、日本橋っていうアキバみたいな街があったり、その隣に西成っていうスラムみたいな場所、反対側には本町っていうオフィス街があったり、梅田があったり。歩こうと思えば歩ける距離感の街1つに、カルチャーも経済も生活もすべてが一緒くたになっている。ギタリストだからどうとか、オタクだから、サラリーマンだから、ホームレスだからとか関係なく、みんなが隣同士にいるんですよ。こじつけかもしれませんが、そういう“大阪感”みたいなのが、好きなんです。そういう距離感が嫌いな人もいるかもしれないけど、そういう人はあまり俺に近寄ってこないので大丈夫です(笑)。やまさきさんほぼお酒を飲まないから、飲みの席でというわけでもないんですけど、飲んでなくてもいいんです。この場所みたいにバンドマン、ニート、作曲家、医者みたいな、いろんな人が集まるごちゃまぜ感が好きなんです。

やまさき:と言いつつ、ヤマトとバンドを組みたいかと言われたら絶対やりたくない(笑)。面倒くさそう(笑)。

ヤマト:そんなことはない。いい歌詞書くよ~(笑)。それこそ、やまさきさんも自分で曲を作って歌って発信し始めた人じゃないですか?

やまさき:元々はね。だから俺はバンドを辞めたというより、元に戻ったなって感覚の方がでかいんですよ。

ヤマト:それこそさっきコンポーザー以外とは話せないって言われた話があったけど、もともとコンポーザーなわけだし、別の人が作った曲を弾くとき、どういう感覚でやってるんやろうなって。ここの歌詞こうした方がいいんちゃう? とか思っているのかなとか。

やまさき:あー、全然思うし、言ったことある。流石にめっちゃ初期だけど、今はごめんって思う。ごちゃごちゃ言って。こんなこと言っていいかわからないけど、前のバンドメンバーと仲悪いと思われているんですけど、全然仲良いんですよ。今後一緒にやっていくのは違うかなと思って辞めたんですけど。

──外から見ても、何があったんだろうと気になっていました。

やまさき:流石に全く揉めなかったわけではないけど、別に仲が悪くなってもない。こう言うとチープだけど音楽性と考え方の違いですよね。マジで。解散した訳じゃなくて続いてるバンドだし、相手側に迷惑かかっちゃいそうだから一方的に俺の考えだけを発言するのは控えますけど、色々なことを考えて各々でやっていこうというだけであって。そもそも、バンドに限らず人が毎日のように集まって何か一つのことを成そうとしていることを、仲がいいから続くとか仲が悪いから終わる、で語ること自体が浅すぎると思いますし。友達じゃないんだから。そういう次元の話じゃない。

──推測で外からあることないこと言われるのは嫌ですね。

やまさき:言いたいことや聞きたいことがあったら、言いに来なよって思うんですよ。煽ってるとかじゃなくて。連絡くれりゃいいし。陰口とかは相手にしないけど、面と向かって言えることなら真面目に話聞くよ俺は。

ヤマト:DMしてこいと(笑)。

やまさき:変な話だけど、昔神聖かまってちゃんがすごく好きで、本人に文句を言ったことがあって。

ヤマト:何を?

やまさき:CDを購入したら握手しますみたいなことをやっていて。そんなダサいことしてくれるな! と思って会場に言いに行って。本人と大喧嘩したことがある(笑)。

ヤマト:向こうの言い分聞きたいな(笑)。

やまさき:当時は、俺らもどうかしてたって言ってました(笑)。それがきっかけで結局、今となってはの子さんとも仲良くなったんですけど。

ヤマト:そこを見越して怒っているわけじゃないけど、結果論としてなっただけで。もし俺がダサいライヴをしたら、たぶんやまちゃんは「あれダサかったで」って言ってくれるだろうし、逆によかったら、いいってちゃんと言ってくれると思う。嘘をつかない人から褒められると素直にうれしいし、けなされると素直に腹が立つ(笑)。俺だって頑張ってんねん! みたいな感じ。でも変に勘ぐりあったりしない分、そこらへんは素直に付き合える人が好きですね。

やまさき:うれしい!

ヤマト:もう対談終わりにして飲み直しましょう。とりあえず、リリース情報を下に載せて(笑)。

やまさき:音楽の話もまったくしてないし、飲みのことしか話してない(笑)。

何度でも再び生まれ続けなきゃいけないっていうのが音楽のおもしろいところでもあり地獄でもある

ヤマト:もうちょっとだけ話しますか(笑)。どういうバンドにしたいとかあるんですか?

やまさき:前のバンドを辞めたとき、ドラムの(福田)裕介も一緒に辞めちゃったんですよ。でも、彼が音楽自体を辞めるのは嫌だなと思って。正直、彼がドラムを叩く場所を残すために始めたんです。コンポーザー的にはダメだと思うんですけど、俺が今現在表現したいことがめちゃくちゃあるのかって言われると、正直あまりないんですよ。だけど、裕介が好きなんでどうせ音楽続けるなら一緒にやりたいなと思って。でも、そもそもアイツが前のバンドを辞めた理由の一つなんですけど、連日ライヴをしていてライヴ中に足が思う様に動かないってずっと悩んでて、悩むことで余計に足が動かなくなって、っていう負のループでジストニアになりかけたこともあって。ただ、俺は裕介の人間性もドラムも好きなので、完全に辞めてまうのは寂しくて。裕介が今はやりたくない、出来ないって言ったら絶対やらないしと伝えて、彼のペースで活動できるように始めたんです。俺は弾き語りのライヴも誘われたら出たり、友達のレコーディングを手伝ったり、1人でも出来ることはやっているんですけど、新しくバンドを始めた理由は、裕介にドラムを辞めてほしくなかったからなんですよね。

ヤマト:音楽ってバンドを続けること自体の美しさを語られるじゃないですか。例えば40年やって売れなくても、やっていることが美しいみたいな価値観がある。こんなにやっているのに儲からないし、評価されないしって、逆風が吹き続ける界隈の中で、続けること自体に価値というか意義を見出していくのが、ある種、音楽というか、バンドだと思っていて。複数人数でやっていることなので、そこが奇跡なんだよね。

 

やまさき:バンドってどれだけ多くても、メンバーは10人ぐらいじゃないですか。本当に特殊な集団。

ヤマト:あんなにでっかいアンプに高いギター、シールド、エフェクターを繋いで、1個しか音が出ない。全部パソコンから流したっていいというか、その方が楽だし安いしクオリティも高いかもしれない(笑)。とにかく、めちゃくちゃな商売というか、カルチャーだとは思うんです。

やまさき:めっちゃ、コスパ悪いしな。

ヤマト:音楽を鳴らすとき、再生っていうじゃないですか? 再び生かす、つまり、一度鳴った音を何度でも鳴らし返すことそのものに意味を見出すトートロジーみたいな部分が、ある種、バンドのおもしろさの根幹ではあると思うんです。もちろん、音に付随する歌詞として戦争やめろとか、恋人を愛してるとか、主張やら何やらが塊魂みたいにくっついてきたりはするんですけど、本当のコアの部分は音が鳴っているのか鳴っていないのか。何度でも再び生まれ続けなきゃいけない、っていうのが音楽のおもしろいところでもあり、地獄でもあるというか。バンドって、軽くスタジオでリハするだけで安くても5千円くらいかかるんですよ。やめさせようとする淘汰圧かかりすぎてるから(笑)。

──やまさきさんは裕介さんがいなかったら、バンドを組んでいなかったかもしれない?

やまさき:俺が1人でバンドセットと銘打ってやることはあっても、少なくともバンド名を付けてやってはいないと思います。僕は前のバンドは5年ぐらいやったんですけど、その活動を通して裕介が大好きになって、こいつが辞めるのは嫌だって思ったんです。それは俺のわがままなんですけど、最悪、足が動かなくなったらバスだけ同期で出すから一緒にやりたいって言いました(笑)。でも裕介が他にやりたいことがあって、バンドがその邪魔になるんだったら一緒にやらなくていいしって話もした上で、一緒にやろうって言ってくれたので、やろうぜって感じで始めたんです。

ヤマト:曲は、ロックンロール系なんですか?

やまさき:ロックンロールではないかもしれない。僕はポップでキャッチーなものが好きで、どっちかと言うと、「俺が俺が!」みたいなのがすごい苦手。なので、僕っぽい曲になるんだろうなと思いますね。もともと俺はこうだ!というのに強い憧れはあるんですけど、自分がいざやるってなったら上手くできなくて。自己肯定感も低い方だと思うので。照れちゃうなって曲を書きます(笑)。

 

ヤマト:照れロック(笑)。

やまさき:ただ、格好いい人間がやっているんだから格好よくない訳ないじゃないですか? やっぱり結局人ですかね。音楽は人やな!

ヤマト:そう! 音楽と人!

──ヤマトくんは『音楽と人』編集長の金光さんとも、インタビューで10時間以上続けて酒を酌み交わしていますもんね(笑)。

ヤマト:逆に、俺は「俺が俺が!」でしかないので、隙あらば自分語りですよ(笑)。社会とか世間とか時代とかの話は曲の中で一切してない。

やまさき:言い方が正しいかわからんけど、ヤマトは自分に自信があるよな。

ヤマト:自信というか、無条件に自分のほうが正しいと思い込む癖がありますね。

やまさき:俺が正しい!っていう。

ヤマト:聖書書いたろかなって思ってるくらい(笑)。

やまさき:新約?

ヤマト:超訳(笑)。

やまさき:俺も別にこう言ってはいるんですけど、サポートメンバーの中川も含めて、このメンバーたちと一緒に音楽をやってダサくなる訳がないみたいな、そういう自信はあるんです。

ヤマト:音楽って別に必需品じゃないし、だからこそ作品より人が際立つ、みたいな部分はあると思います。小麦粉とか、必需品すぎて誰が作ったとか知らんし(笑)。

やまさき:解散したバンドとか、もっと言うと死んじゃった人とか、神格化されちゃうじゃないですか。それって受け手が自分の中で作り上げたいいイメージが、もう絶対に揺るがないからなんですよ。会ってみたらイメージと違ってがっかり、なんてよく聞く話ですけど、会うこともできないから、がっかりすることもできないんです。でも俺はまだ生きてるので、仮に今まで応援してくれた人を失望させる結果になっても、生きてる限り自分がやりたいことをやっていかなきゃいけないなって思うし、それでもし悲しむ人がいたらみんなごめんねって感じです。謝りに行けるのであれば1人1人の玄関をコンコンしたいぐらい。

ヤマト:失望されてもいい、っていう希望を持つ。矛盾しているようだけど、音楽ってそうやって続けていくんですよね。

やまさき:そう、矛盾してる。でも、そう俺は思いながらやっているし、これからもやっていくと思うんだよね。他にやりたいこと、マジでないし(笑)。


■リリース情報

『PK shampoo.mov』(読み:ピーケーシャンプー・ドット・モブ)
LIVE at新木場USEN STUDIO COAST
・発売日:2022年7月6日(水)
・品番:FWWW-006
・価格:5,000円(税別)
・形態:Blu-ray
・収録内容
2021年11月18日(木)
『HELLO my name is PK shampoo』
LIVE at新木場USEN STUDIO COAST
・購入特典
新曲「SSME」
※特典は基本的に付属していますが、念の為ご予約の店舗にご確認ください。

Order From Minor.
配信シングル『飽和/ムウ』
収録曲:
1. 飽和
2. ムウ
https://t.co/q4U5ZLMa1V

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