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【連載】Times O’ Youth Vol.11 “平成への憧憬”と“未来への希望”を描く映像作家、lilsom

StoryWriter

音楽、アート、ファッションなど、様々なカルチャーの中で活躍する若きアーティスト・クリエイターを取り上げて紹介していく連載『Times O’ Youth~次世代カルチャーの担い手~』。第11回は、気鋭のフォトグラファー/映像作家 lilsomを取り上げる。

平成が終わりを告げてから、3年が経過した2022年現在。世の中では、「効率主義」「合理性」が謳われ、あらゆる無駄を削ぎ落とす動きが盛んだ。毎年、最新機種が発表されるiPhoneはどこまで軽くなり、高画質になっていくのだろうか。そんな時代の流れとは逆行して、1990年代後半から2000年代前半のカルチャー、略して「Y2K」と呼ばれるトレンドが、今をときめくユースたちの間で再興している。あの頃特有の“永遠の青春感”が、コロナ禍の不安やテクノロジーの進化に疲れた若者たちにとって新鮮に映り、心惹かれるのだろう。

そんなY2K的カルチャーの再熱を早い段階で嗅ぎ分けてきたクリエイターとして注目したいのが、”Go Back to 2000″をステートメントに、90年代~ゼロ年代の空気感を帯びた映像作品・アーティストMVなどを制作するフォトグラファー/映像作家、lilsom(リルソム)。ヒップホップからオルタナティヴ、ポップスとジャンルレスに様々なアーティストのMVやライヴ映像のディレクションを行い、VHSカメラやminiDVなど旧世代の機材を使ったアナログな質感の映像作品を制作している。今回の連載では「これだけは絶対に見ておくべき lilsom作品3選」と題して、lilsomの手掛けた作品の中で特に私がおすすめする作品を紹介したいと思う。


これだけは絶対に見ておくべき lilsom作品3選

1. LAUSBUB『Telefon』

 

北海道在住の女子高生2人によって結成されたニューウェーブテクノポップバンド、LAUSBUBのMV。昨年Twitterに投稿された動画をきっかけに脚光を浴びた彼女たちは、Yellow Magic OrchestraやBuffalo Daughter、Corneliusなどに影響を受けたポップでミニマルな音楽性で、アナログシンセサイザーやサンプラーを駆使した楽曲を制作している。VHSの4:3の画面比率の中、ノイズがかったブラウン管画質の映像が細かいカットで映し出されていて、LAUSBUBが織りなすノスタルジックな世界観と絶妙にマッチしている作品だ。

2. Mega Shinnosuke『Midnight Routine』

 

音楽に限らず、アートワーク、映像制作に携わるなど、全てをセルフプロデュースで行う2000年生まれのマルチクリエイター、Mega ShinnosukeのMV。80sディスコソング風のレトロな音が散りばめられたこの楽曲に、青みがかった映像で夢と現実の境を表現しているかのような幻想的なMVをlilsomは提供している。後半に出てくる手描き風のアニメーションが、抽象的な楽曲のイメージをより一層膨らませる。

3. ODD Foot Works『音楽』

 

ヒップホップ、R&B、オルタナティブ、ロック、ポップスなどジャンルを横断する自由奔放な音楽性を持つODD Foot Works。そんな彼らの最新曲「音楽」のMVをlilsomが手掛けている。ODDの新境地とも言えるド直球なパンクロック曲を、簡素な部屋でメンバーたちが思いっきり演奏している映像からは、まさに2000年代の“永遠の青春感”が溢れていて、混沌とした現代で、ある種の「未来への希望」を提示してくれているようにさえ思える。

北村蒼生(きたむらあおい)
2000年生まれ、東京出身。大学ではロシア語を専攻している。株式会社SWで学生インターンをしながら、就職活動をしている。好きなものは音楽、ファッションなどカルチャー全般。

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