watch more

【LIVE REPORT】クリトリック・リス、昨年の聖夜の悪夢を払拭した2022年のクリスマス・イヴワンマン

StoryWriter

クリトリック・リスが2022年12月24日(土)、ワンマンライヴ〈クリトリック・リス ワンマン2022東京〉を東京・新代田FEVERにて開催した。

毎年クリスマス時期に東名阪で単独ワンマンライヴを開催しているクリトリック・リス。昨年までは東名阪限定のツアーだったが、今年は仙台と博多も追加され初の全国5ヶ所でワンマンを開催。毎年CD交換会も行われており、参加したい人は中身が見えないような包装をしたCDを持ってきて、帰りに別の包装がされたCDを持って帰るシステムがとられている。

クリスマス・イブに行われた東京でのワンマンライヴをレポートする。

クリトリック・リス ワンマン2022東京

クリトリック・リスの年末ワンマンの時期が来るとクリスマスと年の瀬を感じる。決して多くないだろうけれど、そういう人は確実に何人かいるだろう。筆者もその一人である。

筆者がはじめてクリトリック・リスのクリスマスライヴに行ったのは2009年の大阪公演。夜行バスで行った。自分が独立して会社を立ち上げた2017年からは毎年、東京・新代田FEVERに足を運んでいる。クリトリック・リスがライヴをしてくれないとクリスマス気分を味わえないので非常にありがたい限りである。

そんなクリトリック・リス贔屓の自分からしても、2021年のクリスマスライヴはなかなかひどいワンマンだった。クリトリック・リスことスギムが酒を飲み過ぎ、同じく泥酔したクリオタ(※クリトリック・リスファンの呼称)たちとともに悪酔いをしアンコールを1時間以上行った。それまでも差し入れのウィスキーを1人で1本飲み切ってしまったこともあったが、エンターテインメントとしての姿勢を忘れずにやっていた。なのに、去年はそれがなかった。初めて来たというお客さんが多かったにもかかわらず、アンコールで毒づき、エクストリームなカラオケ大会が延々と続き、曲をやるたびにお客さんが帰っていくという地獄絵図が繰り広げられた。

そして迎えた2022年のクリスマスワンマン。スギムは事前のTwitterで「リベンジさせてください。今日泥酔したら引退する」とまで発信し、気合を入れてライヴに臨んだ。

パートナーのあいどんが注意事項と2部構成でライヴを行うことを述べると、スギムが「集中!」という言葉を発してステージに登場。哀愁漂う内容ながらメロディアスなダンスチューン「柳瀬次長」でクリオタを盛り上げると、同会場でBiSHが昼にワンマンを行っていたことに触れ「BiSHに会えるかもという期待で15時に来たけれどもぬけの殻でした!」と笑いをとり、「大阪ビリーバー」、下ネタを盛り込んだクリスマスソング「クリしみクリスマス」を歌い切った。

再び「集中!」と気合いを入れ「カレーライス」を歌うと、「このステージに立つのも1年ぶりでいろんなことを思い出すんやけど、ほとんど去年の後半は覚えてなくて。今日も遅れて来てくれる人もいて、後ろの扉が開いて光の中人が入ってきてくれるんやけど、去年は扉が開いて光の中、お客さんが帰っていく光景だけが思い出されます」と昨年の悪夢を振り返った。

そして今年頭に亡くなった名物客・林也寸夫を追悼する曲「也寸夫」を披露。悲しい曲ではなく、林との思い出を盛り込んだ愛に溢れた楽曲であり、林が毎回誰よりも早く打ち上げ会場に来てコーラを飲み続けていたことや、49歳まで守ってきた童貞をハプニングバーで失ったこと、50歳から音楽をはじめたエピソードなどを盛り込み、疾走感あるトラックに乗せて歌った。

代表曲「バンドマンの女」で大盛り上がりすると、対照的に物悲しいピアノのリフレインの上で若い頃食堂で出会ったおばさんに対しきつい言葉を吐いてしまったエピソードを描いた「おばけのおばちゃん」を披露。ダンストラックのうえで亡くなった友人モッチにまつわる思い出を歌にしたエモーショナルな楽曲「思い出のカラオケBOX」、続けて「味噌汁」でクリヲタたちが横乗りで体を揺らせ、第一部はお酒を一滴も飲むことなく昨年とは対極的にクリーンなライヴは幕を閉じた。クリヲタから「おめでとう!」という言葉を受けスギムはステージを去った。

5分足らずの休憩で再びステージに登場したスギム。「すべて順調に進んでます! 今日は3杯までと決めていますし、泥酔したら引退すると宣言していますんで」と気合を述べたあと、「ただ、泥酔しているかは己が判断するので引退しません! いまさら50過ぎのおっさんを誰が雇うねん!」と引退宣言撤回。そしてクリヲタから差し入れられた芋焼酎の水割り(濃いめ)を「酒相撲」のトラックにのせイッキし2部がスタートした。

キラキラしたメロディアスなトラックで「アイドルジャンキー」を歌うと、「集中!」と言いながらスギムは再び女子から差し入れられた焼酎を「酒相撲」のトラックにのせ一気した。続く「レイン」を歌い始めると歌詞を間違え、「集中!」と言ってやり直した。明日は大阪でワンマンがあるため、今晩の夜行バスで帰らないといけないスギム。寒波による雪の影響でバスが走るかわからなかったが動くことが判明したことを伝え、バス移動について歌った「BUS-BUS」へ。疾走感と多幸感あふれる「1989」でクリヲタたちと両拳をあげて盛り上がった。メロウなダンストラックに乗せて名前について歌った「BEAUTIFUL NAME」、過ぎ去った夏を童謡のようなメロディとともに歌いサビで激しいギターディストーションとともにシンナーという単語が飛び出る「LOST SUMMER」を歌い切った。

珍しくビールをたくさん飲んでいるあいどんが「2部も終盤です」と伝えると、会社での社畜エピソードを歌詞にしトライバルなトラックに乗せた「中間管理ショック」を感情たっぷりに歌った。「やっぱおっさんを裏切れないよね」と軽快なロック曲「おっさんライオット」でおっさんの熱い想いを歌い、「来年も新代田FEVERでやりたい!」と叫んだ。最後はライヴハウス愛を歌ったメロウな「WEEKDAYS LIVE LIFE」でクリヲタたちと手を左右に揺らし「去年見捨てないでくれてありがとう」と感謝を伝え、ハッピーなバイブスのなかで2部を駆け抜けた。

「やれた!」「やれるんや!」とスギムがライヴを振り返ると、「泥酔せずにやり切れたということで、ここからはエクストリームカラオケタイムや!」と「クリスマスキャロルの頃には」が流れる中、「メリークリスマス!」とテキーラをショットした。そのまま再び悪夢がはじまると思いきやアッパーなロック曲「MIDNIGHT SCUMMER」へ。クリヲタに対し「最後までよくがんばった。クリトリック・リスのライブに行こうじゃなく、飲みに行こうというツイートが多い。そうじゃなく真面目な感想書いてください。いい意味でも悪い意味でもクリヲタに頼ったライブはいやや!」と言いながらも、観客が少なかった池袋のライヴで「初めてクリヲタホットラインを使ってきてくださいと頭を下げました」とクリヲタに感謝を伝えた。そして本日4杯目の酒を飲み干し(本人曰く2杯目)、最後はクリトリック・リス的お祭りソング「エレーナ」、「俺はドルヲタ」でクリヲタたちも感情を開放し盛り上がり、OASISの「Don’t Look Back In Anger」で2022年のクリスマスワンマン東京編は終焉を迎えた。

鳴り止まないクリヲタたちのアンコールに応え、ゴダイゴ「銀河鉄道999」のカラオケをして「終了!」と叫び幕を閉じた……と思いきや、ヒートアップするクリヲタたたのリクエストに応え数曲を披露し、スギムは昨年のクリスマスのリベンジを果たした。

取材&文:西澤裕郎
写真:ryutaro saito

PICK UP