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【連載】ロビンの青い卵より vol.28「理想のあさごはん」

StoryWriter

「あさごはん」と聞くと、それぞれにいろんな風景が浮かぶと思いますが、最近、印象的だったあさごはんが三つある。

まずひとつは、先日大阪に行ったときのこと。

夜は華やかな大阪の街を堪能し、久々のお好み焼きも美味しくいただいた。その翌朝。お天気が良かったので、用事の時間までお散歩することに。

せっかくだから大阪らしいもの食べたいな。と、キョロキョロしたが閉まってるお店が多く、なかなか見つからない。かなり着込んでいたが、朝から何も食べていない身体からは力が出ず、歩いてるうちにだんだん冷え込んできた。

「なにか、温めてくれるもの。大阪らしいもの、なんて贅沢は言いません。なにか、なにか、温かいもの……」

そう心で唱えながら、身体が震えてきたところに、突然光り輝いて見えた三文字。

「な か 卯」

朝早くからやってるなか卯の安心感ったら。もはや貫禄さえ感じた。親子丼と迷ったが、まだ朝早かったので、豚汁定食を頼むことに。

待つこと5分。いや、もっと速かった。食べたいと思ったものが、こんな光のような速さで目の前に現れるとは、冷静に考えるとなんて有難いんだろう。

まずは本日の主役、具沢山の豚汁を一口。

くぅ。冷えた身体に、芯まで染みわたる。しかも、さりげなく柚子が入ってるという素晴らしい気配りに心の中で拍手喝采。

そして、黄金色に輝く卵をとき、お醤油をかけすぎないように少したらし、熱々のごはんにかける。分かってはいたけど、やっぱり美味しいと深くうなずきながら、箸休めの漬物、パリパリの味付け海苔を食べ進めていく。

和食の飽きさせない工夫。素晴らしい。

こんな完璧な朝ごはんはないんじゃないかと思いながら、普段より多めの量を、興奮しながらペロリと美味しくいただいた。

もうひとつは、ある日30分ほどジョギングしたとき、お腹が空いてふらっと入った立ち食いそば屋さんでの帰り際。そのときの食べた味はもちろん、お店を出るときの背中越しに聞こえたお母さんの「いってらっしゃい」の温かさが忘れられない。

なんだろう、この心から言ってくれている感じ。上京して一人暮らしを始め、少し寂しくなったところにこの「いってらっしゃい」を聞いたら、鼻水を垂らしながら「いってきます」を言ってしまいそうだ。

そして最後は、母の誕生日。

一緒にレストランにでも、と思ったが、歳を重ねると、母と過ごす朝の時間が少なくなったよなぁと思い、あえてのあさごはんに誘った。

朝日が入るお部屋で一口サイズの甘酒からスタートし、季節のお茶、お粥を作るときにできる重湯……すべてをゆっくり味わいながらいただく。ずっと行きたいと思っていたお店だったが、想像以上に豊かな時間が流れる。

夜、お酒を飲みながらゆっくり話すのいいけれど、朝日を感じながら食べるあさごはんもまた、究極の贅沢だなぁと、しみじみ。

他にも、旅行に行ったときのバイキングにも心踊るし、我が家でご飯を土鍋で炊いてるときの「シュシュポポッ」という音も香りも大好きだし、コーヒーを淹れて今日はどんなトーストにしようと考える時間も好き。

もちろんバタバタして何も食べられない日もあるけど、朝は食べた方がいい、食べない方がいい、いろんな情報が飛び交ってるからこそ、自分の一番心地いい「あさごはん」を、これからもゆっくりと見つけたい。

ルールを決めず、もっと柔軟に、毎日を楽しみたいなぁと思う、2023年の終わりであった。

岡田ロビン翔子(おかだ・ろびん・しょうこ)

1993年生まれ。2006年から2018年8月2日の解散まで、チャオ ベッラ チンクエッティ(THEポッシボーから改名)のリーダーとして活動。 頭の回転の良さからくるトーク力には定評があった。解散後はラジオDJを中心に、MC、モデル、自身のアコースティックライブ「ロン喫茶」など、マルチに活動中。 様々なジャンルに興味を持ち、多方面にアンテナを張りめぐらせ、スキルアップのために努力を欠かさない向上心の持ち主。

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