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【LIVE REPORT】藤本大祐、人生を歌った2年越しの20周年ライブ「僕には音楽があって、歌があって良かった」

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シンガーソングライターの藤本大祐が2024年1月21日(日)、東新宿・真昼の月夜の太陽にて、ワンマンライブ〈藤本大祐 20th Anniversary oneman live -Actually 22nd-〉を開催した。

藤本大祐は、2002年に地元・埼玉で弾き語りをスタートして以降、都内にも活動の場を広げ、20年以上のキャリアを持っているアーティスト。メッセージ性の強い楽曲を中心に包容力のある味わい深い声を魅力として活動を続けている。今回のライブでは、今年1月に配信リリースされた、過去発売音源をまとめた配信限定アルバム『ACTUALLY』を中心として、未音源化の楽曲も披露された。

都内は朝から雨が降り、降雪予報もあったものの、開演までにすっかり雨が上がり好天に。会場チケットはソールドアウトということで、たくさんのお客さんでフロアはごった返していた。尚、ライブの模様は生配信も実施された。

オープニングSEが響く中、バンドメンバー(ピアノ、ドラム、エレキギター、ベース)に続いて、藤本がステージへ上がる。アコースティックギターを持ち両手を大きく広げて声援に応えると、「こんばんは、藤本大祐です! 今日は僕の22年間を全部詰め込んできました。最後まで楽しんで行ってください!」と、「branch」からライブがスタート。軽やかなアコギの音色と、タイトなバンドの演奏に乗せた甘く爽やかな歌声ですぐに観客の気持ちを引き寄せた。バスドラとピアノがリズムを叩き出して、強烈な8ビートの「Overpaint」へ。〈最高をずっと上塗りしていこう〉と叫ぶロングブレスのボーカルに圧倒された。シリアスなメロディのミディアム曲「連」、イントロなしで歌い出したスローナンバー「HOPE」へと、一気に4曲を歌い上げた。

「はじめまして! 藤本大祐です!」と改めて挨拶すると、フロアからは「ダイスケー!」と野太い声援が。「20周年記念、でもじつは22年」とライブタイトルについて触れ、2002年1月18日に初ライブを埼玉で行ってから、2022年で20周年ではあったものの、コロナ禍もあり2年越しでの満を持した20周年ライブ開催となったことを振り返る。「22年もやってるなんて、ビックリです。今日は、ラブ&ピースな空間をお届けできたらと思います」とのMCから、ピアノの河原麻美の演奏のみで数曲を披露。2018年に舞台のために楽曲提供したという「名前のない食卓」をしっとり歌うと、続く「Only」では右手でリズミカルにエッグシェーカーを鳴らしながら、艶やかなエレキピアノと共に心地良い歌を聴かせる。ワンマンライブを行うのは2019年に生音ライブをやって以来、フルバンド編成でのライブは2012年以来ということで、「今日はワクワクが止まらない」という藤本。和やかに進むライブを、お客さんは時折ドリンクをお代わりしながら、リラックスして楽しんでいるようだ。MCでは、コロナ禍をきっかけに生まれたという曲「ピリオド」について紹介。“終止符”の意味を持つタイトルのこの曲は、コロナが終息することを願っていたことはもちろん、コロナをきっかけに、自分の人生を見つめなおす気持ちも込めて作ったという。力強いピアノの旋律と、〈エンドロールなんてシンプルでいいさ いつか来るその日まで〉と、精一杯生きようという意志が伝わってくる歌詞、終盤には転調してドラマティックな熱唱となった。

転換SEを挟み、再びフルバンド編成に戻りアコギを持つと、「孤独な空」へ。エッヂの効いたエレキギターのフレーズと、虚空に言葉を放つように淡々とした歌い回しのコントラストに、グッと引き込まれた。激しいロックサウンドで熱くさせた「シネマティック」ではステージ前に身を乗り出すようにパフォーマンス。「Birdcage」は妖しげなムードの音像からサビではディスコティックなリズムで踊らせる等、幅広いアレンジで飽きさせることなくライブは続く。

2017年にリリースしたミニアルバム『Panta Rhei』のリード曲「last love song」についてのMCでは、「誰もが遭遇せざるを得ない、“最期のとき”をテーマにした歌です。今年は年明け早々いろんなことがあって、このタイミングでこの曲を歌うことに意味があるという気がしていて。いつも以上にしっかり想いを込めて歌いたいと思います」と曲紹介から、目を閉じて大きく息を吸い込んでから歌い出した。伸びやかな歌声と寄り添うバンドの演奏がひとつになり、藤本を支えるように曲を届けると、観客からは大きな拍手が沸き起こった。そのまま次の曲へと進むはずだったようだが、アコギのトラブルがありいったんブレイク。「ライブって生ものですね(笑)」と呟く藤本。そんなアクシデントも演出となって、会場は和やかに。再開して始まった「landscape」では、エフェクティブなギターサウンドから徐々に広がっていく壮大なサウンドスケープを見せて、現実から離れた世界を構築してみせた。

ドラムのビートに合わせてお客さんの手拍子が自然発生した「ハッピーエンド」で、ライブはクライマックスヘ。藤本がタンバリンを叩きながら、明るく華やかな演奏と歌で、この日一番の盛り上がりとなった。バンドのメンバー紹介も行われ、木下純(Dr)、森澤将(Ba)、湯澤真人(Gt)、河原麻美(Pf)がソロを回して楽しませた。最後に藤本が、「そして藤本大祐でございます!」と自己紹介して大喝采となった。

「次の曲で最後です」と告げて、このワンマンライブをやろうと思ったきっかけについて話し出す藤本。「去年の夏に、BiSHのサウンドプロデューサーを務めていた松隈ケンタさん主催のオーディションに参加していたんです。そのオーディションは視聴者投票が必要だったので、久々にご連絡を取らせてもらった方がたくさんいて、みんなすごく投票をしてくれたんです。22年もやっているとモチベーションが落ちることもあったんですけど、オーディションをきっかけに、“僕にはまだこんなにも高い熱量で応援してくれる人たちがいたんだな”って思ったんです。だから、投票してくれたお礼の意味も込めて、ワンマンライブをやろうと思いました。僕には音楽があって、歌があって良かったなって思っています。本当にどうもありがとうございます」との言葉に続いて、「次の曲は、そんな僕と応援してくれる方の関係値を、応援してくれる人に向けて作りました。いろんな困難があっても、星が広がる場所に行って歌を届けますから、みんなついてきてね、という曲です」と紹介してから、「星が広がる場所」へ。アコギを弾きながら、ミラーボールがキラキラした星のように輝くステージで、疾走感溢れる曲を駆け抜けるように歌ってステージを降りた。

アンコールの声に1人で登場すると、17歳で書いたという曲「マテリアル」 について紹介。今では書けない歌詞を書いていると言い、「思春期に生きづらかったんだろうなあと思った(笑)」と当時を振り返りながら、弾き語りで披露した。〈泣き出した空の下で 小さな太陽に手を伸ばした〉と、瑞々しい10代の感性で描かれた世界はとてもピュアに聴こえた。歌い終わると、「思春期の頃は本当に暗かったんですよ。よくまあここまで人生の軌道修正ができたなと思います(笑)。それはひとえに周りにいてくださるみなさまのおかげだと思います」と、観客に向けてにこやかに感謝の言葉をかけた。

3月31日にGRAPES KITASANDOでライブを行うことを告知すると、最後の曲へ。「昔、実家で飼っていたワンちゃんが亡くなったときに作った曲です。当時、曲にしないと消化できなかったんです。大きなステージで歌ったこともあったし色んな場所に連れて行ってくれた曲です。今日ここにきてみなさんと会って、まだまだ本当に行きたい場所、観たい景色があるなと思いました。もっと自分の音楽をよりよく豊かにしていきたいなと思うので、引き続き応援をよろしくお願いします!」と一礼する藤本に、観客は拍手で応えた。

「僕はきっと、人生を終えるときまで歌を歌っていると思います。あなたの貴重な人生の1ページに僕を刻んでくれて、本当にありがとうございます。精一杯の愛を込めて、「風花」」と、静かにアルペジオを弾き、スポットライトを浴びながら丁寧に歌い上げた。エンディングではバンドメンバーと手を繋ぎ両手を上げて、「今日は本当にどうもありがとうございました!」と観客に感謝して終了。甘い歌声、真摯なメッセージと熱い演奏で、冬の夜に心温まるハートフルなワンマンライブだった。

取材&文:岡本貴之
写真:SUGA TOMOKA


藤本大祐 20th Anniversary oneman live -Actually 22nd-
2024年1月21日(日)@東新宿 真昼の月夜の太陽
セットリスト
1. branch
2. Overpaint
3. 連
4. HOPE
5. 名前のない食卓
6. Only
7. ピリオド
8. 孤独な空
9. シネマティック
10. Birdcage
11. last love song
12. landscape
13. ハッピーエンド
14. 星が広がる場所
EN1. マテリアル
EN2. 風花

Official HP:https://www.fujimotodaisuke.info/

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