watch more

【LIVE REPORT】モモコグミカンパニーが音楽プロジェクト(momo)で魅せた純度100%の表現、自分の言葉を曲にして歌おうと思った理由

StoryWriter

モモコグミカンパニーとシンガーソングライター・マナミによる音楽プロジェクト(momo)が2024年1月31日(水)、東名阪ツアー〈(momo)Release Tour -どこにもない日-〉のファイナルとなる東京公演をduo MUSIC EXCHANGEにて開催した。

1月15日(月)の大阪公演を皮切りに、1月24日(水)の名古屋公演を経て、東京公演でツアーファイナルを迎えた(momo)。平日の夜ではあるが、会場前には黒山の人だかり。順番を待って入場すると、会場は超満員の観客で溢れていた。

定刻を少し過ぎた19時7分。暗転しカラフルな照明がステージを照らす中、バンドメンバーが登場。しばらくの間を置いて、洋風の衣装に身を包んだモモコグミカンパニーが登場、本を手に取り、詩を朗読し始めた。一言一言に息を吹き込むかのように詩を紡いでいくと、バンドのアンサンブルとともに「あの子みたいにすごくはなれない」を披露。落ちサビ前にはピンクの花を手に持ち、ステージをゆっくり左右に歩きながらミドルテンポでメロディアスな同楽曲を歌い上げた。

楽曲の最後にはステージ上の花瓶に花を挿し再び本を手に持つと、青い照明の中、雨のシチュエーションの詩を読み上げるモモコ。朗読を終えると再び演奏が始まる。傘を広げて椅子に腰掛けながら「Rainy Sunday」を歌っていく。このライブが詩と曲が連動していることが徐々にわかってくる。続いては赤い照明が照らされ、夕日から夜にシチュエーションが変わっていく。オルゴールの音色から、バラード曲「slient night」をしっとりと歌い上げた。

ここで照明が明るく照らされ、「渋谷のみなさん、はじめまして。(momo)です!」とモモコが挨拶をすると大きな拍手が沸き起こった。「今日はツアーファイナルということで気合いが入っております。朗読と歌を組み合わせているので、どうしたらいいかわからなくて体が縮こまっている人もいると思うので、変な動きしてみてください」と観客たちと身をほぐしていく。「みんな、ほんとは叫びたいんでしょ?」と問いかけ、名古屋公演の記録用の定点カメラに「どこで「おれの、モモコ」って言えばいいのか」というファン同士の会話が記録されていたことを明らかにすると、そんな気持ちを吐き出そうとモモコ先導のもと、全員で「おれの、(momo)!」と叫び、会場の熱が一気に上がった。

続けて、バンドメンバーの紹介へ。キーボードのなわっちは、アルバムのプリプロをやった去年の5月くらいにはライブをやるとは思っていなかったこと、この日までがあっという間だったと振り返った。ドラムのあっきーのことを、モモコは「いろいろできるけどいつも笑顔で怖い」と笑いながら突っ込む。「緊張する」というあっきーに対し、「もっともっと緊張しろ!」との掛け合いで笑いを誘った。ベースのみのさんに対しては、Xで自分のファンにリプライしてファンを着実に自分のものにしているといじり、ファンたちはみのさんの名前を叫び、盛り上がった。そして、最後に紹介したパートナーのマナミのことを「控えめにいって天才」と紹介し、バッサリと切った髪について触れた。マナミは偶然思いつき、SNSでショートヘアーの第一人者の店に行ったことを笑いながら明かした。客席からは「かわいい」という声が飛び交い盛り上がりを見せた。

「去年の6月29日に東京ドームでBiSHが解散したんですけど、BiSHというグループを知ってますか?」とモモコが問いかけると、「次やる曲はタンバリンくんを使用し、BiSH時代から東京ドームでもやった曲をやらせてもらいます」と語り、大きな歓声に包まれた。「自分で書いた歌詞でもあるんですけど、当時からすごく助けられた曲です。一人であまり歌ったことがないんですけど、大切に大切に歌いたいと思います」と、モモコグミカンパニー作詞の「JAM」を、バンド演奏と共にモモコのタンバリンを組み合わせて歌った。客席から手拍子が起こる中、2番のサビでは「歌ってー!」と「JAM」を観客とともに合唱した。

ドラムの四つ打ちのキックがビートを刻む中、「渋谷のみなさん、たのしんでますか? 次はカバーソングやっちゃいます! 幸せをみんなと叫びたいと思います!」とチャットモンチーの「シャングリラ」をカバー。観客たちは満員の会場の中で各々に体を揺らして楽曲を楽しんだ。

楽曲が終わり、一度ステージから下がったモモコ。しばらくし、青い照明の中、本を持って再登場。陽気なバックBGMとカラフルな照明がのなか、アップテンポでダンサンブルなポップソング「アナザーストーリー」を観客たちの手拍子とともに歌い上げる。サビでは手を左右に振りながら客席と一体感を生んだ。再び朗読のパートになると、青いピンライトがモモコを照らす。ピアノの音色の中で、夜明けを示す詩を瑞々しく朗読した。そして、(momo)として発表した初楽曲「うそつき」を歌い、(momo)はステージを後にした。

間髪なく起こるアンコール。それに応えてステージに再登場したモモコは「まだまだ、力、有り余ってる感すごいですね! 楽しかったですか?」と問いかけると、大きな拍手が起こった。そのまま観客とせーのでマナミを呼び込むと、モモコが「3つお知らせがある」と語り、客席は歓声に包まれた。しかし告知内容を忘れてしまったモモコ。マナミに耳打ちして教えてもらうモモコらしさで和やかな空気に包まれた。そして、この日0時からアルバムがサブスク解禁されること、追加公演が決定したこと、モモのXが開設することを発表した。

「ツアーファイナルなので、せっかくなので(momo)の話を少しだけさせてください」と、マナミがこのプロジェクトについて語った。

「(momo)というプロジェクトが始まったとき、自分の中で小さな理念を作りました。(momo)はモモコグミカンパニーであり、(momo)という現象である。それがどういうことかというと、モモコグミカンパニーは(momo)の心臓。その心臓のまわりを小さな血管がたくさん枝葉のように存在していて。その血管は私だったり、バンドメンバーだったり、1人1人のスタッフだったり、そしてここにいるあなたのことでもあります。つまり、(momo)はモモコグミカンパニーだけでは成立しません。ここにいる誰一人欠けても成立しないプロジェクトです。なので、全員が(momo)。そんな大切なプロジェクトです」

マナミは、CDのブックレットもモモコやマナミ、スタッフたちで書いたものだと明らかにし、「これからも(momo)の物語はもうちょっとだけ続きます。それを近くでどうか眺めてくれていたら嬉しいです」と挨拶した。

続けて、モモコが、(momo)を始めたきっかけは詞先で誰かに曲を作ってほしかったこと、それを叶えてくれたのがマナミだったことを語った。ただ、自分で歌ったり、人前でライブしたい欲はなかったそうだ。「グループ時代もメインボーカルではなかったので、1曲人前で歌うというのは文字通り足がすくむ想いで。正直いまライブを完走できたのが信じられないなと思います」と語るモモコ。「ただ、ずっと人前で歌うことの素晴らしさは感じていたし、歌に苦労とか苦戦はしていたけど全然嫌いにはなれなかったんです。だから自分の言葉で書いた歌詞・曲を歌おうと思いました。そう思えたのはライブに来てくれたみなさんのおかげです。本当にありがとうございます」と感謝を述べると大きな拍手が起こった。

そして次に披露する曲が、2022年12月にBiSHがリリースしたシングル「ZUTTO」のために書いたが没になったワンコーラスを元に、マナミに作ってもらった新曲であることを明かした。

「ワンコーラス目以降は後から付け加えたものにはなるけど、解散という終わりがはっきり見えているとき、私はこれから大切な何かを失うんだって時期に書いた歌詞が元になっています。その頃は、それぞれの一つに括られたものが独立する準備をし始めているような時期で。それぞれに正義があって、誰も間違っていないんだけど、お互い傷つけあったり、傷を負っていた時期でもあって。これがバラバラになるってことなのかなとか思ったけど、一人一人の考え方にすごく感化されて、自分も頑張ろうと思っていた時期でした。大人になっても、一生懸命生きている人ほど傷ついちゃうことってあるし、自分のことを傷つけたり、誰かのことを傷つけてしまうことも絶対あるはずなんです。私は、それは一生懸命生きて、世界に自分の爪痕をつけているようなポジティブな意味だったんじゃないかと、そのとき書いていた歌詞を見ると思うんですよね。だから傷つくことって悪いことじゃなくて。ついちゃったものは自分ががんばってきた証だし、それが致命的な傷にそのときは思えても、日が経つにつれていろんな愛に触れていくにつれて、癒えて、どんどんかすり傷のようなものになっていくんじゃないかと思うんです。だから、いま目の前が真っ暗になっている人も、自分はこんだけ頑張って生きたんだと思って、自分で自分のことを傷つけてしまっても、傷つけられても、自分のことを認めてあげてほしいなと思っています。そんなふうに願っています。ここに来てくださった(momo)の一員のみなさん、1人1人に」

そして「ZUTTO」のために書いていた歌詞から生まれた「かすり傷」をマナミのアコースティクギターの音色に乗せて歌った。観客たちはその歌詞と歌声にじっくり耳を傾け、一音一音を聴き逃さないように向かい合っているようだった。同曲を歌い終わり、「ありがとうございました。(momo)でした」と挨拶をすると、大きな拍手と歓声が会場を包んだ。「幸せなファイナルでした!」と笑顔でモモコは伝え、ステージを後にした。

どんなライブになるのかとまったく予想がつかないまま足を運んだが、モモコグミカンパニーがやりたいことが純度100%詰まったライブだったと感じた。同時に、決して独りよがりなものではなく、どこか客観視してエンターテインメントとしても成立するような演出が見受けられた。朗読と楽曲を交互に披露する演出もそうだし、BiSH時代のモモコが大切にしてきた楽曲を歌ったり、チャットモンチーの楽曲をカバーしたことなども含め、ライブとして観客を置いてけぼりにしない仕掛けが要所要所に仕込まれていた。最後に披露された新曲「かすり傷」は彼女がエッセイでもテーマにしたことのあるものだ。表現方法は違えど、モモコグミカンパニーが伝えたいことは一貫している。それをさまざまな形で世の中に届けていこうとしているのだなと感じたライブだった。初の東名阪ツアーとは思えないほど、モモコグミカンパニーらしさが詰まった素敵な一夜だった。

取材&文:西澤裕郎
写真:内藤まみ


(momo)Release Tour -どこにもない日- 東京公演
2024年1月31日(水)@東京・duo MUSIC EXCHANGE
セットリスト
1. あの子みたいにすごくはなれない
2. Rainy Sunday
3. slient night
4. JAM / BiSH
5. シャングリラ / チャットモンチー
6. アナザーストーリー
7. うそつき
En. かすり傷 (新曲)


■追加公演情報
2024年4月18日(木)PENNY LANE24(札幌)
2024年4月25日(木)DRUM LOGOS(福岡)
2024年5月9日(木)LIQUIDROOM(東京)
チケット情報は公式SNSにて追って公開いたします。

(momo)X:https://twitter.com/momo_nekoinu

■書籍情報

BiSH解散までをリアルタイムで綴った等身大の生の記録、『解散ノート』(⽂藝春秋)が2024年2⽉14日に発売。

書誌URL:https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163918044

PICK UP